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第51話 聖女の力と聖女エミリー

 クラーク達が竜魔王との戦いの準備の為に、ルーブルシア王国の冒険者ギルドに行くと言って野営テントから出て行った。

 クラーク達が本来どういう身分でも、冒険者として動くのであれば依頼主も冒険者もギルドを通さないといけない。面倒くさい取り決めだけど、冒険者が王族、貴族の依頼を受ける時に理不尽な要求をされないためのものなんだそうだ。

 報酬もギルドを通すので、変に値切られなくて済む。




 そうやって、クラーク達と別れた翌日。


 その日は、魔物の数も多くて私たち後方支援の仕事も多かった。

 ダグラスはそんな時でも私のそばにいるので、事情を知らない周りの目は少し冷たい。

 だけど、騎士は指揮官の命令以外で動けない事も知っているので、前線に出ろとは誰も言わなかった。


「ありがとう。これで故郷に連れて帰れるわ」

 遺体を綺麗にし、状態保存の魔法をかけたら、女性が涙を拭いながらお礼を言ってくれた。


 さて、次は……と思ってダグラスと移動を始めようとしたら、いきなりブワーッと力が出て行った感じがした。

 くらくらして思わず倒れそうになるのを、ダグラスが支えてくれる。

 

 見なくても分かる、森全体の瘴気が払われた。

 だけど、こんな強力な力を出せるなんて、今の今まで私は知らなかった。

 

 馬の(ひづめ)の音がする。私たちのすぐそばまでデリックとエミリーが乗った馬が来ていた。

 デリックが馬から先に降り、ゆっくりとエミリーを降ろす。

「聖女様のおかげで瘴気が霧散致しました」

 やけに大きな声でデリックが、今の現象がエミリーの功績かのようにたたえる。

「え? ええ。私が来たからにはもう大丈夫よ」

 エミリーの方が、一瞬戸惑ったように言っていた。


 何? エミリーが私の中の力を使った? いや……違う。中からの干渉で出て行った。

 …………光……ちゃん?

 

「そこの。ちょっとどいてくれる?」

 エミリーが、遺体の横にいた女性に声をかける。

「聖女様?」

 女性がエミリーの指示に従う。

 エミリーが手を……拳をかざし。手の中でパキンと何か割れた音がしたかと思うと、金粉が舞い今まで死んでしまっていた男が息を吹き返した。


 何? あれ。あんな、生物を生き返らせるようなポーションなんて。


 目の前で、エミリーは女性に感謝され周りにいた人々もおお~っという雄たけびをあげてエミリーを聖女として称えた。

「それで、追放されたはずの女がなぜ我が国の地を踏んでいるのか?」

 デリックが、冷たい目で私を見て言う。


「メグ様は、我が国の軍属で」

 そう言って私を庇った騎士ディルラン・ヘイスティングズは、次の瞬間ルーブルシア王国の兵士に剣で斬られていた。

 こういう時に交渉するための貴族騎士。それを問答無用で斬りつけるとは、アイストルスト王国に宣戦布告したも同然だわ。

 

 まさか、こんな暴挙に出られるとは思っていなかったので、私の周りにいる騎士や兵士は雑用係も含めて5~6人しかいない。

「何をする。貴殿は、己が行いの意味をわかっているのか。このような暴挙」

 もう一人の騎士イライアス・ギャルヴィンは、もう油断していない。

 剣に手を掛けながらの問答である。


「アイストルスト王国には感謝している。ただ、その者は我が国が追放した罪人。罪人が追放された国の地を踏めば咎められるのは道理であろう?」

 デリックがそう言っている横で、エミリーが勝ち誇ったような、見下した目で私を見ている。


「マーガレット・レヴァインは我が国を追放された罪人だ。捕らえよ」

 手を高く挙げデリックは、兵士たちに命令した。

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