表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

47/77

第47話 ルーブルシア王国側 ランラドフ・アイストルスト王弟殿下の考察

 謁見の間というのは、どこの国もそうそう変わらない。

 本来ならそういう場所に案内されるのはどうかと思うのだが、まぁ、向こうは小国のとは言え国王。

 こちらは王弟……今回はあちらの方が立場が上、しかも、名目上は魔物討伐の協力だという事で何も言うまい……ランラドフはそう判断し謁見の間、中央より少し前に立っていた。


「遠いところをよくおいで下された。が、しかし今は見ての通り結界が壊れ魔物の討伐で精一杯のところ。ろくなもてなしが出来ぬ事をお許しいただきたい」

「もてなしを期待して来たわけでは無い。こちらの国の王太子、ウイリアム殿の要請を受けて、魔物討伐に微力ながら協力しようと参ったのだからな」

 ランラドフの側近が、ウイリアムの書簡を宰相に渡す。宰相から国王の手にその書簡が渡った。


 謁見の間に控えていた貴族がざわついていた。今、ざわついたのが第二王子派か……と、観察しランラドフはあらかたの顔を覚えてしまった。

「それは、有難い」

 書簡を読み終えた王が言った……本当に有難いと思っているのかどうかは疑問だが。

「して、ウイリアム殿はどこに? 我が国は討伐に取り敢えず小隊を用意したが、指示があるまで待機させてある。彼と会い直接打ち合わせがしたい」

 打ち合せによっては、増援もありうると匂わせながらランラドフはいう。


 国王が少し慌てたような気がした。

「ウイリアムは……、今所用をこなしておってな。今夜にでも、会談の場を設けよう」

 少し遅い気がしたが仕方がない、ルーブルシア王国は隠したがっているが、ウイリアムは今軟禁状態なのだから。

「では、夕刻にでも再度登城するが構わぬな」

 夕刻、そこまでしか待てない、そういう意味でランラドフは通告した。

「承知した」

 国王は、しぶしぶそう返答をしてきた。


 あの王は、傀儡(くぐつ)だ。姉上が以前そう言っていたのをランラドフは、思い返していた。

 この国は、ウイリアムを失ってしまったら、迷走していくだろう。

 今の謁見の間の王の言動、まわりの貴族たち。

 そして、アイストルスト王国に国賓として滞在していた時のウイリアムの言動から、この国を動かしているのが誰だかランラドフには、わかってしまっていた。


 小国とはいえ唯一聖女を召喚できる国。迷走されたら迷惑だ。


 一旦戻り、国境沿いの結界より先、街よりの安全なところに野営テントを張らせた。

 食料を数か所の食堂に頼むように指示を出す。小隊とはいえ50名以上人数がいる、冒険者や傭兵も利用しているだろうから一か所では無理だろう。


 メグが駐屯地になる場所に結界を張ってくれた。

 一度結界を張っただけで、維持は自然に出来るとは聖女の能力は本当に素晴らしい。

「メグちゃんだけでも、宿に泊まったら良いと思うのだけど」

 ランラドフはそう提案したのだけれど

「いいえ。私はルーブルシア王国を追放された身です。大っぴらに滞在できる立場ではございません」

 メグからは、そう言って断られた。


 夕刻、早い時間にウイリアムとの会談が実現した。

 表向きは、お互いの騎士や兵の戦力の確認と魔法を使える者の有無の確認。国境沿いの地図を提供と説明。

 この会談が実現している時点でそれ以上は必要無い。この会談を以てウイリアムの軟禁状態は事実上解除された。


 それ以上の事は、こちらの国の()()が間に合うかどうかにかかっている。

 後は、どれだけ第二王子デリックの派閥を油断させられるか……だけど。

 その事を口に出さなくとも、ウイリアムとの意思の疎通は出来たようだった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ