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第46話 ルーブルシア王国の周辺 森の瘴気の浄化

 予定通りルーブルシア王国の周辺を囲っている森に3日後の昼前にはたどり着いた。

 瘴気が以前より濃くなっているのに、中で戦っている気配がする。

 小隊全体が指示待ちで止まっていた。


『ありゃ~、無茶するね。中で戦っているのって、支援系頼りの冒険者たちでしょう?』

『女神?』

 久しぶりに、女神が話しかけてきた。

『女神じゃないって、光ちゃんだってば。あ~ゴブリン相手にあんなに苦戦してるよ』

『見えるの?』

『見えるの? じゃない。仕事してよ、聖女様? 自然浄化じゃ間に合わないよ』

 その言葉に、私は覚悟を決める。何もしなくても、私を中心に10メートルは瘴気は来ない。


「ランラドフ様。今から私は少し森に入ります。だけど、私が許可を出すまで軍を動かさないでください」

 私の横で、馬に乗っているランラドフに言う。私が入って行ったからと、彼が森の中に入る指示を出してしまったら戦う前に犠牲者が出る。

「わかった。従おう」

 ランラドフがそう返して来たのを確認してダグラスに馬を進めてもらう。

 馬が怯えるようなら、降りようと思っていたのだけど。


 森の……戦いが始まっているかなり手前で、私は馬から降ろしてもらった。

 手を胸のところまで上げる。何も考えずとも私は知っていた。

 聖女の能力の使い方を……。


 私を中心に、闇が光に変わるように森中のすべてが浄化された。


 私が戻るまでもなく、ランラドフが森に入って来ている。

 ランラドフに軍をこちらに移動させるようにお願いすると、即座に元の位置に戻って行った。


 冒険者らしき人達や傭兵が魔物相手に戦っているのが、人間の目でもはっきり見える。

 瘴気が払われたことで、動きが変わっていた。あれなら、ほどなく討伐はなされるだろう。


 後は、怪我人だけど。

『エリアヒール』

 光ちゃんが、私の中から教えてくれる。

 えりあ? まぁ、良いか。

 どんな怪我でも治りますよーに。


 ぶわ~と、身体から力が出て行った感じがした。ちょっと、くらくらする。

 向こうで歓声が上がっている。良かった倒れてる人達のほとんどが起き上がっていた。

『すごいでしょう? 浄化も同時にしてるから身体に何か入り込んでいても消えちゃうからね。剣とか砂や小石とかも除去するし』

 いや……万能過ぎない?  


『それより今のうちに森を抜けた方が良いよ。瘴気が払われてるのは一時的なものだから』

『そうなの?』

 私は、小隊と共にこちらに移動してきていたランラドフに言って、早くこの森を抜けるように指示を出してもらう。

 私も、ダグラスと一緒にまた馬に乗った。そう、ロングスカートで跨れないから、乗ったで正解だ。


 戦いを横目に小隊は森を走り抜ける。

 作戦も何も立ててない状態では、軍隊は使い物にならないからだ。

 

 ほどなく私たちはルーブルシア王国の領地に入る。

 そして、騎士たちが下馬し兵も休憩に入らせたところで、ランラドフが私に言う。

「僕は、ルーブルシアの国王に会ってくるよ。何をするにしても、勝手は出来ないからね」

「わかりました」

 私がそう言ったのを確認するように、ランラドフは隊の半数を連れて王宮に行ってしまった。


 小隊の残りは休憩をしている。確かにルーブルシア王国の許可が下りないと野営テントも張れないし、国内の施設を使う事も出来ない。冒険者や傭兵なら必要の無い手続きがいる。

 本当に、国として動くのは面倒臭い。 


「ダグラスも身体を休めていて」

 私の横で立っていたダグラスに向かって言う。

「メグもな」

 ダグラスは、私を抱き込んで私ごと座った。怖いからやめて欲しい。

「私は大丈夫よ。戦う訳じゃないし」

 また、ダグラスの膝に乗ってるし。転生してから、スキンシップが多いなぁ。


「今しか言えないかもしれないから、言っておくが」

 ダグラスが、真剣な顔をして言ってくる。

「メグが死んだら、俺も死ぬからな」

 ん? 何ですか? その病的発言……。


「あ……あのね、ダグラス? 私が死んでも普通に長生きして下さいな」

「ああ。いや、気持ち的な問題じゃ無くてな。俺がどう思っていても、お前……メグが死んだら俺の身体も勝手に死んでしまうんだ」

「はぁ?」

 ナニヲイッテルノカワカリマセン……。

「だからそのつもりで、メグも身体を大事にしろ」

 そうダグラスは続けた。

 なるほど、それが言いたかったのね。


『逆に言うと里美が死なない限り、実も死なないんだけどね。転生の時、実が言った条件なのよ。死んじゃったら里美を守れないでしょう?』

 私の中の、光ちゃんが、ダグラスが言ったことに補足してきた。

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