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第45話 行軍 聖女様のおまけ付き

 騎士団を中心とした大国アイストルスト王国の小隊。その中にでも班が分かれており、わかりにくいのだけどだいたい50名ちょっとくらい。

 小隊としては最低限の人数だけど、女王陛下が言った通り戦争に行くわけでは無い。


 各班の号令が響く。

 名目はルーブルシア王国付近に発生した魔物の討伐。

 ランラドフは、一糸乱れず整列している小隊を前に全体を鼓舞するような演説をしていた。


 その様子を、ダグラスは複雑そうな顔で見ていた。

「どうしたの?」

「前世の……。いや、いい」

 戦争の事でも思い出しているのかしら。実さんは何も言わなかったけど、きっと良い思い出ではない。日本に残ってでさえ、思い出したくもない経験を()いられたのだから。


 私とダグラスは馬に二人で乗っていた。途中で交代させるために、余分に1頭馬を連れて行っている。

 私は自分で乗ると言ったのだけど。

 貴族令嬢、奥方たちの社交場、早朝パークで乗っていた程度の経験では、とても危なくて1人で乗せられないとダグラスだけでなく、その場の全員から言われてしまった。

 まぁ、レディーの乗馬服は上だけ見たら軍服っぽいけど、下はロングスカートになっていて、馬に横乗りで乗るように出来ているからね。

 



 以前、乗合馬車に乗ってアイストルスト王国へ向かったときは一週間位かかったのだけど、野営で2泊しただけで3日目のお昼にはルーブルシア王国付近までたどり着くらしい。

 軍の進行とは速いものだなと思っていると、それでも私がいるからゆっくり進んでいるとの事だった。


 森の外れ川の近い広場で各部隊が野営の準備をしている。

 野営テントを張る係と火を(おこ)し炊飯をする係と別れて、要領良く準備を進めていた。

 私は、近くの川に手を入れ水を浄化する。この辺は、薄く瘴気が漂っている。

 誰も気づかないくらいに。

 料理も手伝いながら、疲労回復の魔法……というか魔力を施した。


「だいたいね。馬車を出しても良いくらいなんだよ。女の子にこんな強行軍を経験させるなんて」

 ランラドフは、私とダグラスの横でご飯を食べながら文句を言っていた。

「馬車なんて要りませんよ。ランラドフ様、ダグラス、食後のお茶を入れますけど?」

「ああ。ありがとう」

 ランラドフからは、笑顔でお礼を言われたけど、ダグラスの方はいつも通りの返答だった。

「いや、いらない。それより、メグはもう少し食べろ」

 私が2人にお茶を入れているすきに、ダグラスは私のお椀におかずを入れていた。


「だからそんなに食べられないって言っているのに」

 そう言いながら、ランラドフとダグラスにお茶を渡す。

「ダグラスはいらないって言ってなかった? メグちゃん」

 ランラドフは、当然と言えば当然の質問をしてきた。

「ああ。この人、いるときも『いらない』って言うんですよ」

 ダグラスの方を見ると、いれてもらったお茶を当然の様に飲んでいる。

 私は、お椀に入れられたおかずを一生懸命食べていた。


「ふ~ん。この人……ねぇ」

 ランラドフは、変なところに反応してるけど。

 日本の古い世代の男性なんてそんなものだ。ってこの世界じゃ、わからないよね。

 

 私は、野営テントを丸々1つ使ってくださいと言われた。

 私の他に女性はいないから、仕方ないのだけれど。テントの前に護衛が立っている。

「この方たち、一晩中ここに立っているの?」

 私はランラドフに訊いてみた。

「うん。交代はするけど、男所帯でメグちゃんに何かあったらいけないからね」

 何かって……いや、わかるけど。でもねぇ。

 私はダグラスの服を掴む。


「護衛はいらないから、寝てください。私はダグラスとこのテント使うから」

「まぁ、妥当ですね」

 ダグラスは、ランラドフにそう言って、

「現地に着いたら、魔物退治をしないといけないかもしれないんだ。余分な体力使わないで寝てくれ」

 と、テントの前に立っている護衛役たちにそう言っていた。


「メグちゃん。ダグラスも男だよ?」

 わかってる? って、感じでランラドフは言ってくる。それこそ、今さらだわ。

 ダグラスの前世……実さんは義務の様に子どもを()した後、私に指一本触れなかったのだから。

「俺は保護者です」

 ダグラスはランラドフにそう言って、私を連れてテントに入って行った。

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