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第41話 情報提供のお礼とお水の販売

「話を戻していいかな」

 ずっと黙っていたハワードが言ってきた。

「このポーションが本物だとして、俺にはこの赤の……魔力回復はいらないと思うんだけど」

「ああ。必ず本人が使うとは限らないでしょう? 重傷者が自分で使えない時もあるから」

「なるほど。他の冒険者にも使って良いんだな」

「はい。お店の方では普通のポーションをギルドと同じとまではいきませんが、安く売るのでその時は宣伝してもらえたら嬉しいです」

 私は、ハワードにニッコリ笑って言う。


「ちゃっかりしてるな。それで、こっちのポーションの値段は?」

「値段は無いですよ、売りものじゃないし。そのポーションも、今回の騒動が終わったらただの美味しい水になるので、そうなる前に戦闘中に使ってしまってください」

 一瞬、みんなが驚いた顔になった。


「使用期間は、騒動が収まるまで……だと?」

 クラークが訊いてくる。

「そうですよ、この世に無いポーションですからね。高額転売されても困りますし。使用期間内も高額転売された時点でただの水になりますから」

 高額転売防止策を練るのは、商売の基本ですからね。


「まぁ、どちらにしろ、これが本物だったら……の、話だろ? とりあえず、有難く貰っとくよ」

 クラークはそう言ってこの情報交換の場を締めくくった。


 そして、キャロルとシンディーは、お水を10リットルずつ購入してくれた。

 男性2人はともかく、女性2人は立派なお客様だ。


 私はボブと二人で

「ありがとうございました」

 と、丁寧にお見送りをしてしまった。


 ベンには悪いけど、あらかたの情報は手に入ったかな。

 一度、あの破れた結界のところには行かないといけないけど。私たちの所為だし。

 女神はあの国は見捨てるって言っていたけど、私たちの所為で……って事になると後味が悪すぎる。


「ダグラス、女王陛下の謁見の手続きをとってくれるかな」

「俺も連れて行くというのなら、今すぐにでも謁見の段取りを取り付けるけどな」 

 私が振り返りながら言うと、ダグラスからそんな返事が返って来た。


 なんだか胸が痛い。辛い痛みでは無く、なんというのだろう切ないと言うか、涙が出そうになるくらいの安心感に伴う痛み。


「ついて来てくれるんだ」

「あたりまえだろう。そのために」

「ダグラスはいるの?」

 私は力なく笑った。ダグラスは、そっと私を抱きしめる。

「そうだ。だから心配するな」


 そう言って背中に回している手で、ポンポンとしてくれる。

 私は、その腕の中で子どもの様に安心しきっていた。

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