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第36話 戻って来た日常……本当に?

 王太子がルーブルシア王国に帰ってしまった後、ダグラスはしばらく王宮勤務を命じられたようで私のそばにいることはなかった。

 私の方はというと、特に何事もなく日々お店を開け接客をしている。

 あれから、街中の護衛の兵士の数もいつも通りに戻った。やっぱり、ルーブルシア王国からの国賓ウイリアム殿下と一緒に紛れて入って来た諜報員たちの所為で大人数配置していたのだろう。

 

 私の中の女神は王太子との会談後にしゃべったのを最後にずっと無反応だ。

 人間の(ことわり)の中に、女神が出てくる方がおかしいのでそれは、それで良いのかもしれないけど。

 



 丁度、お客様が途切れた午後。

 ベンもボブもカウンターで、顧客帳の確認をしたり売り上げとボトルの仕入れ数を確認していた。

 

 最初に入って来たのは近衛兵、その後に女王陛下、王弟殿下と続き騎士団の一部がお店に入って来た。後は平民の格好をした兵士や騎士がお店を囲むように配置している。

 このお店がある通りも封鎖されていたとは、後から聞いた話だけど。

 

 ボブとベンが素早く反応し跪いて礼を執ったのに対し、私はその異様な光景に固まってしまっていた。雰囲気が怖くて身体が震えてしまっている。

 王弟殿下が私の方に来ようとした行動より早く、ダグラスが私のそばにやって来ていた。


 そして、私の横でやっぱり女王陛下に対し礼を執っている。


「ああ、すまない。怯えさせてしまったようだね」

 女王陛下の目配せで兵士たちの雰囲気が柔らかいものになった。

「王宮では話せない事なので、こちらにお邪魔したんだ」

 

 今日の女王陛下のいで立ちは、裕福な平民を装っている。


「奥にいかれますか?」

 …………って、奥はキッチンと食卓として利用しているテーブルしかない。使用人みんなでご飯を食べるので、大きいけど。

「そうだね。ここよりは、防音性が高そうだ」



 表の騒ぎで察して、クレアは雑用の女性たちを家に帰していた。兵士の護衛付きだけど。

 奥に入るとクレアも礼を執っている。

「久しいなクレア」

「女王陛下におかれましては」

「ああ、挨拶は良い」

 女王陛下はそう言いながら、キッチン横のテーブルのところに王弟殿下と並んで座る。


 なんか、ものすごく違和感があるのですが。

 それでも、私は紅茶を入れる。お毒見役の侍女を連れてきてないようなので、飲まないかもしれないけど。


「どうぞ。お口に会えばよいのですが……」

 私はお茶菓子と共に紅茶を出した。

「ありがとう、頂くよ」

 そう言って、女王陛下は何のためらいもなく紅茶を飲む。周囲に立っていた近衛たちがザワッと反応したけど。


「これは……、噂には聞いてたけれど本当に美味しい。それに、疲れが吹き飛ぶようだ。これが聖女様のお力なのか?」

「いえ。疲労回復の魔力ですわ。水の浄化も自然となるわけではありません。聖女の無意識の力は、瘴気の浄化と結界の強化だけですわ」


「それも、立地が遠ければ遠い程タイムラグが発生するというわけか……、成程各国が欲しがるわけだ」

「各国……ですか」

 私はつい、そうつぶやいてしまった。


「まぁ、座りたまえ」

 女王陛下は、自分の目の前の椅子を勧める。

 いいのかな、今座っているのは女王陛下と王弟殿下だけだ。他はみんな立っている。

 騎士や兵士たちは壁にそって立っているし、二階や三階に上がってしまった者たちもいる。

 諜報員を警戒してのことだろうけど。


「さて、本題に入りたいのだが」

 私が座ったのを確認して、女王陛下は切り出して来た。

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