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第25話 『女神様の祝福を得る儀式』 いや、女神様? 質問に答えてよ

 光の玉は、私の目の前で私と同じくらいの身長の女性……といっても光のかたまりなのだけど……になった。


『今まで、多くの女性を聖女として召喚させましたが、誰も私を受け入れることが出来ませんでした。器では無く、精神的に……です。私を受け入れるための綺麗な魂、綺麗な心』


「ちょっと待って。私は綺麗では無いわ。だって、前世でも夫から愛情をもらえないのを恨んで、お(めかけ)さんたちに嫉妬して……、マーガレットになっても、婚約者相手に同じ事を繰り返してたみたいだし」


『それでも戦後、夫の生死が分からなくなっても、お(めかけ)さんたちの世話をしていたでしょう? 自分だって、食い詰めていたのに。だから、マーガレットもゲームのような意地悪令嬢にならなかった。メグに至っては、無償で王都中の水を浄化してまわっていた』


 違う、それは光の玉が言っているような綺麗な気持ちではなくて。


 光の玉……いえ、光の女性は私の両手をとって自分のてのひらと合わせた。

『わかっています。だけど、あなたのそう思える気持ちが尊く、美しいのです。だからお願いします。私の運命に付き合ってください。どうか、私を受け入れて』


 そう言って、私の中にスゥッと溶けるように入っていった。

 さすが女神様、言いたいことだけ言って人の質問に全く答えてくれてない。

 しかも、受け入れるとも何とも言ってないのに勝手に入って来た。



 光がゆっくり収束していく。

 異空間だと思っていたところは、しっかり現実の場所だった。

 綺麗に光が無くなって周りを見渡すと、貴族と王族の数名が倒れている。


 巫女たちは、ほおっという感じで、恍惚(こうこつ)(ひた)っているかのような顔をしていた。みんな頬が赤い。

 他の方々は……あの女王陛下まで呆然とした顔をしている。


 そんな中、ダグラスは私のそばにやって来て、自分の上着を掛けてくれた。

「さぁ、とりあえず。着替えて家に帰るか……」

「そうね」

 私は、ダグラスに促されるまま歩き出そうとした。


「お待ちください。聖女様」

 王族の方々がいるところから、焦ったような声がしてこちらまで来て私たちの前で跪いた男性がいた。

「ランラドフ殿下」

 私が声を発したのと同時に、ダグラスが警戒し、私を護るように立ちふさがる。


「今しばらく、王宮に留まっていただくわけには参りませんでしょうか」

「殿下……どうかお立ち下さいませ。わたくしなどに、跪いてはなりません」

 私は、ダグラスの背から少しだけ出て言う。完全に出ていく事は、ダグラスがその腕で(はば)み、許してくれなかった。

 

 聖女は平民だけど、どこの国の王族よりも立場が上だ。だけど、王弟殿下を跪かせるのは心臓に悪い。

 私は、前世でも天皇陛下の写真にお辞儀をしていた世代なんだから。


 私の言葉に、王弟殿下は素直に立ち上がる。

「では、王宮に留まっていただけると……」

「いえ。わたくしは、家に帰りとう存じます」


 私がそう言うと、周りの近衛がザッと身構えた気がした。

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