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第20話 とりあえず商売、商売……って、女王陛下からの呼び出し?

 商業ギルドに、商標登録と特許を申請して、『女神さまの魔法陣』の上で契約をする。

『女神さまの魔法陣』は、各国の商業ギルドに置いてあって、この上で作った契約証は偽造が出来ない上に契約通り実行されないと天罰が下るらしい。

 後からの書き換えは出来ないし、誰かが盗んでしまっても必ず持ち主の元に帰って来るという優れもの。

 ベンに連れられて行った商業ギルドでの契約も、無事に終了することが出来た。

 これで、商売が始められる。



 とりあえず私はお店の表通りに出てお水の試飲を勧めていた。

 年配の裕福そうなおばさまが立ち止まる。荷物持ちの使用人も連れている。

「お嬢ちゃん、えらいわね。お家のお手伝いなの?」

 お嬢ちゃん……その言葉には、抵抗があるけど試飲してもらわないと売ることも出来ない。


「私が売ってるの。お店には、大人の人もいるから安心だよ」

 ウソは吐いてない。

「そうなの。えらいねぇ」

 そう言ってコップを一つ取り少し飲んでくれる。

 その顔が驚きに変わった。

「これは……美味しいわね。おいくらなのかしら?」


「2リットルで小銀貨1枚、10リットルで銀貨1枚 それに、ボトル代がどっちも銀貨1枚。空になったボトルを持ってきてくれたらそれに入れるから」

 売り方は前世でのものを、参考にした。ボトルは中のお水が傷まない魔法加工付きで、一度買えば、お店に持参してくれる限り無料だ。


 下町の平民には手が出ない、だけど、裕福層なら安いと思って買うだろう。

 前世からしたら、かなりぼったくり価格だけど、その分味も良く、美容にも良い。 

 生活に欠かせない水、一度料理やティータイムに使ってしまえば、元の井戸水に戻せないという考えだ。

 

 この世界はどの国にも、義務教育が無い。

 (がく)が無いと収入が低くなるのは、前世の世界と同じ事。

 普通の平民は、銅貨より下の豆銭で生活している。年収だって、銀貨が数枚もくればいい方だ。

 どんなに安くしても、井戸から()めば無料の水を買ったりはしない。


 だから、王都中の飲み水用の井戸や、洗濯場に……時間がかかっても出掛けた。

 味はそのままにして、気付かれないようにこっそりと、安全な水にするために……。

 本当は貴族の領地にも出向きたいのだけど、今は難しい。日本の様に、田舎の水は美味しいというのを信じたいのだけれどね。


 そんなこんなの作業が終わった頃、女王陛下から呼び出しがかかっていた。



 通されたのは、王族のゲストルーム、ダグラスと二人連れて来られていた。


「しばらくこちらを使ってもらう事になった」

 女王陛下がこんなところまでやって来て、言った言葉がそれだった。


「何か、わたくしの行動に問題でもございましたでしょうか?」

 下町を中心に井戸まで出かけてたのが不審行動に見えた?


「ああ。いや、そなたに問題があるのではなく。というか、ルーブルシア王国の人間は知らないのかい? 明後日は年に一度の『聖女様が女神様の祝福を得る儀式』がある日だよ」


 そんなことは、聞いたことが無い。

 王妃教育にもそんな項目無かった。常識ソフトには、引っかかるものがあったけど……。


 明後日は、初めて異世界から召喚された女性が女神さまから聖女認定された日だ。

 ルーブルシア王国の教会はその同じ日時に毎年、自国の王室に内緒で行っている儀式。


 儀式を行うのは何も聖女様本人で無くてもいい。

 正しい手順で(みそぎ)を行った乙女であれば……。

 聖女様本人に至っては(みそぎ)を行わなくても、その時点で人妻であっても構わないという、なんとも寛大な女神さまである。


 (みそぎ)を行った女性が、神殿に代々伝わっている魔法陣の中で跪いて祈る。

 それだけで、聖女様がこの世界のどこにいても『女神の祝福』を得られ、本来の能力(ちから)を発揮できるようになる。


 本来なら、簡単な行事である。

 多分神殿の巫女が毎年行っているのであろう。


 教会が自国の王室に内緒で行うようになったのは、聖女様が他国で祝福を受けたことがあったからではないだろうか。


「王妃教育には、そのような項目が無かったもので失念しておりました。その行事が終わる時間まで、わたくしはここにいればよろしいのでしょうか?」

「そうだねぇ。明日から神殿の方に行ってもらって、儀式の時間には、謁見の間に移動してもらう事になるけどね」

「かしこまりました」


 私たちは、女王陛下が退出して扉が閉まるまで礼を執り続けた。


 もし、わたしが祝福を受けてしまったら、この王宮の外に出ることが出来るのだろうかとの不安を覚えながら……。

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