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第17話 女王陛下のお茶会。お互いのメリットのお話

「心配しなくても不敬なんて言わないよ。最初から、そう言っているだろう?」

 紅茶を飲みながら、女王陛下はそう言ってきた。


「同じ家で暮らすことになるんだ。あまり親の小言みたいなことを言っていると嫌われてしまうよ、ダグラス」

「はぁ」

 そんなものですかねって感じの気の抜けた返事だ。


「なんで、ダグラスと同じ家に」

「護衛に都合が良いからだけど、何か問題でも? 当面の騎士としてのダグラスの仕事は、メグの護衛だからね」

 女王陛下にそう言われてしまっては、了承するしかない。


 私の『アイストルスト王国の平民になりたい』という願いは叶えてもらっている。

 保護もダグラスの女王陛下への忠誠と引き換えに手に入った、だけど何か引っかかる。


 私に良いことばかりだ。


「わたくしを自国民として国家予算を使ってまで保護をすることに、女王陛下……いえ、この国にとってどんなメリットがあるのでしょう」


 思い切って聞いてみた。だって、王族が何の思惑もなく冤罪とはいえ、追放された他国民を自国民にするだけならまだしも、保護を確約するなんておかしい。

 相手国からの引き渡し要請があれば、簡単に引き渡されてしまう立場だ、今の私は。


 目の前の女王陛下は、ほぅというような顔をしていた。

「これは、幼い見た目に騙されるねぇ。さすが、王太子の婚約者だっただけの事はある」


 女王陛下は、飲んでいた紅茶を置いて私をまっすぐ見る。

「メリットはあるよ。そなた……メグが聖女だった場合、このまま我が国に留まってくれるだけで、真っ先に聖女の恩恵を(たまわ)れるというメリットが」


 やっぱり、私の事を聖女だと思っての援助。

「では、私が聖女ではない場合はどうされますか?」

「むろん、その場合もこの国の国民として扱うよ。保護は必要なくなるだろうけど。心配しなくても追い出したりしない。危険があるというのなら保護も続ける」


「メリットが無くなるのに……ですか?」

 私の言葉に、女王陛下は感嘆のため息を吐いた。


「その場合は、私の見る目が無かっただけの事。勉強料だよ、次に活かすための。だけどね、メグ。私は今、その慎重さと頭脳が手に入るだけでも、十分メリットがあると、そう思い始めているのだけどね」

 そう言い終えた女王陛下の顔からは、笑顔が消え、心なしか声も低くなっていた。


 しまった、やりすぎた。

 不安とこの場が公式の場でないという甘えで、つい先の事を訊きすぎわ。


 警戒する私の様子に、女王陛下はフッと笑みを浮かべる。


「約束は違えないよ。メグとダグラスは、あくまで我が国の平民として迎える。ただ、先ほど言ったようにダグラスには騎士爵を与えるし、メグの通行証(ネックレス)は資格が無くなるまでは、私の意志でも外すことは出来ない。ダグラスは仕事で来るとしても、メグもいつでも遊びに来ると良い」


 そう女王陛下が言って、このお茶会はお開きになった。

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