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第15話 女王陛下のお茶会。ルーブルシア王国の思惑のお話

 サロンの端には王宮侍女たちが、数人控えている。

 見慣れた光景と言えばそうなのだろうけど、私の服装はというと少し薄汚れたブラウスと足首までのスカート、ダグラスもシャツとズボンという格好である。

 場違い感が、半端ない。

 

 しばらく待つと、侍女に先導され護衛を引き連れた女王陛下と……誰だろう? もう一人王族と思われる男性がやって来た。


 私たちは、立ち上がり礼を執る。

「ああ、久しぶりだね。マーガレット・レヴァインとダグラス・ゲートスケル。今日は公式の場ではない、楽にしていてかまわないよ」

 そう言われても私たちは礼を執ったままでいる。今の身分は、平民だ。

 この場で王族のお姿を見るだけでも不敬になる、まして発言なんて。


 女王陛下のため息が聞こえた。

「何ともまじめだね。ここに招いておいて不敬なんて言わないから、楽にしてくれないかい? そちらのダグラスも……身分を捨ててマーガレットのお供をしてるという噂は本当だったんだね」


 女王陛下が近づいてきて、私の頬に手を添えて顔を上に向けさせる。

「お化粧を取ったら随分幼くなるのだね。今は何て名乗ってるの?」

「メ……メグです。女王陛下」

 お顔が近い。もう少し近づいたらキスが出来そうなくらいの近さだ。


「メグ……ああ、マーガレットの愛称だね。可愛らしい名だ」

 そうして、女王陛下はダグラスの前に行った。


「よくメグを守りここまで連れてきてくれたね。ダグラス」

「有難き事。ですが、女王陛下に感謝されることではありません」

 女王陛下は、ダグラスの不遜な言葉にも気を悪くした風もなく

「そう。これは手ごわいライバルが出来たものだね。ランラドフ」


 女王陛下と共に来ていたもう一人の男性に向かって面白そうに言う。

「姉上。面白がらないでください」

 姉上? 王弟殿下?


「お初にお目にかかります。キャサリン女王の弟ランラドフ・アイストルストです」

 そう挨拶をして、私の手をとり甲に口づけをしてきた。

「メグでございます。王弟殿下には、ご機嫌麗しく存じ上げます」

「ランラドフと呼んでくださってかまわないのに」

 にこやかに言ってくる王弟殿下に私もにこやかに返す。

「私は、平民です。とても王弟殿下のお相手にはなりません」


 貴族令嬢としてではなく、平民が使っている丁寧な言葉で返した。

 私は貴族に戻りたいわけじゃない。

 この国の平民として、つつましく暮らしたいだけだ。


「これは振られたねぇ、ランラドフ」

 女王陛下が含み笑いをしている。

「さぁ、お茶会を始めよう。各自好きなところへ座ってくれたまえ」

 立ちっぱなしの私たちをそう言って女王陛下は座らせてくれた。

 お茶を飲み、お菓子を食べながらたわいもないことを話す。

 懐かしい貴族のお茶会。


「平民として暮らしたいのなら、そうしてくれてかまわないよ。わが国民として、歓迎しよう。ただ、住まいの指定はさせてもらうけどね」

 女王陛下の提案に私はきょとんとしたが、ダグラスの方はすぐに反応した。


「何者かに……いや、ルーブルシア王国の者に狙われる可能性があるという事ですか」

「かもしれない……程度だよ。そう警戒しなくとも大丈夫。あの国の人間は誰もそなたたちがあの瘴気の森を生きて抜けているとは思ってないさ。それこそ、聖女様でもない限り不可能だ」

 そういって、女王陛下は私をチラッと見る。


「ただね。今回は聖女様が召喚されているだろう? 私には、あの子が聖女だとはとても思えなかったからね」

 つまり、エミリーが聖女じゃないと分かったら、本物の聖女を探しに来るって事?

 またあの国に連れ戻されてウイリアム王太子の婚約者にさせられるかもしれない。


 私は、ゾッとして両腕で自分の身体を抱きしめる。

 その震えている身体をそっとダグラスが抱き寄せてくれていた。

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