第1話 次の転生先に乙女ゲームの世界はどうですか?
よろしくお願いします。
茉璃 靜さま頂いた、カバーイラストを挿入しました。
注)本編に、挿絵はございません。
カバーイラスト:茉璃 靜さま
「マーガレット・レヴァイン。
お前との婚約を破棄することを、ここに宣言する」
ここはルーブルシア王国の主に貴族階級が通う王立学園。
その学年終了ダンスパーティーも終盤に近付いた頃、国王陛下の第一子ウイリアム王太子殿下がそばにいる小柄で可憐な少女エミリーの肩を抱き、高らかに宣言した。
乙女ゲームの中の悪役令嬢は、性格が悪く我がままで、王太子殿下との婚約も自分の父親にねだって無理に成約させたものだという設定だ。
そしてこの国の王太子は、主人公エミリーにベタ惚れしていつでも自分の味方をしてくれる。
他の攻略対象だってそう、ほら会場のすみで控えているダグラスだっていつも優しくそばにいてくれるのだから。
乙女ゲームの主人公をプレイしていた篠崎えみりは、現実の異世界の中でも乙女ゲームの中と同じだと信じ切って行動をしていた。
現世で聞こえた最後の言葉は、お医者様の『ご臨終です』というものだった。
園山里美 享年105歳。
男尊女卑が激しかったあの時代の日本に産まれて、人生色々あったし戦争も体験した。
だけど、最後は私の死を惜しんで泣いてくれる子どもや孫そのまた子どもにまで囲まれて……。
本当に、良い人生だったわ。
ああ、なんだかフワフワしている。
身体も心も、軽い感じだわ。
死後の世界って、こんな感じなのかしら……。
三途の川ってのは、人間が作った概念ですものね。
外国ではレテの川なんていう名称でもあるらしいし。
私は、このまま記憶が無くなって新たな人生を歩めるのだと信じていた。
『もし……もし、あなた。園山里美さんですね』
何も無いと思っていたところから、女性の声が聞こえる。
「はい」
気が付いたら、白く何もない空間に私は座り込んでいた。
目に映る自分の手足は若々しく見えるし、返事をした声も若い。
目の前に、フワフワと丸い光が浮かんでいる。
これが噂のお迎えさん?
『この度は、大往生でしたね。おめでとうございます』
「ありがとうございます」
死んでおめでとうと言われるのも変な気がする。
だけど、天寿を全うしたのなら、めでたいのかな?
『あまり良い境遇では無かったのに地道に善行を積まれて』
あら? 何か、この感じは……。
「私に頼み事でも?」
光の玉が、ガバッという感じでこちらに寄って来た。
『はい。頼まれてもらえませんか? 次の転生先に乙女ゲームの世界はどうですか?』
私は、聞きなれないその言葉に唖然としてしまった。