緒
どうも、蔦川志織です。今起きました。目は開いてないけど。寝返りを打つと目を閉じてても分かるくらいカーテンの隙間から光が差し込んでいた。
だけど、どうしても瞼が開かない。瞼が重いせいでいつも私は起きれない。
そう、私がいつも起きるのが少し遅くなるのは瞼のせい。
そんなくだらない事を考えながらゴロゴロとしていると、ガチャリと、扉が開く音がした。
「姉ちゃん、そろそろ起きねーと母さん怒るぞ。」
そう言ってきたのは我が優秀で可愛くて優しい我が弟、志穏。
志穏はシャッ、と大きな音を立ててカーテンを開けた。
だけど、どんなに光が差し込んでも私の瞼は言う事を聞かない。
「志穏〜…目があかないよ〜…ねむいよ〜…」
私がそう零すと志穏はため息を吐いて私を引っ張ってベッドから落とした。ゴツン。良い音…。頭がヒリヒリ…。
私は頭をさすりながら起き上がった。既に志穏は部屋から出ていった後だった。
私は着替えや身支度を適当に済ませ下に降りた。
「おはよ〜」
お父さんは既に仕事に行った後らしく、その場に居たのはお母さんと志穏だけだった。
「おはよう。早くご飯食べちゃいなさい。」
そう、私はこう見えてこう見えてそこそこ頭が良い。そこそこ頭が良い私立中学に通ってる、
私は置いてあったトーストをさっさと口に入れ飲み物を飲み干し、鞄を手に取り玄関に向かった。
「行ってきまーす!」
私がそう言うとお母さんと志穏は行ってらっしゃい。と声を掛けてくれた。
私はいつも通りに駅に向かい、電車に乗り込み、学校へ向かった。少し遠いけど別にどうって事無かった。
何より、このぼーっとできる時間が好きだった。
私は電車を降りると駅の近くの公園に足を動かした。
「お!志織!おはよ!」
「おはよう、志織ちゃん。」
そう挨拶をしてくれたこの2人は私の大好きなお友達。与倉香葉、そして手操柚希
2人は今年からお友達になった。2人自体は幼馴染らしい。
それでも2人は私と仲良くしてくれるし私は2人が大好きだった。
私達3人は学校へ向かった。
途中でテストがめんどくさいとか眠いとかそんなくだらない事や世間話をしながら。
「あ、あれ樹神さんだ。」
「え、こ、樹神さん?」
香葉が樹神さんの方へ視線を向けそう呟くと柚希もそちらに向いた。
樹神凛花…。文武両道の天才少女。しかも外見も身長がスラリとしていて顔も綺麗。噂を聞けば性格も良いらしい。剣道も凄い成績を残しているらしい。
学校生活での凛花は確かに優しいらしいが、ノリが良いらしい。そう、言ってしまえば陽キャ。だけど誰も特に差別する事もないので、陰キャ組からもノリの良い陽キャ組からも好かれる。
さて、ここまで聞いたらただの凄い女の子と思うだろう。
だが私はあいつの裏を知ってる、小学校が同じで長く仲が良かった時期があったから。
あいつはやべぇ奴だ。ひでぇ奴だ。小五の最後らへん。こっぴどく傷付けられ、縁を切られた。
その後しばらく話す所か関わらなかったが…。なんと、この中学。凛花の家から近いのだ。同じ中学と知った時はショックを受けた。その事は今も覚えている…。
「…おり、しおり…志織!」
私はそう呼ばれ意識が現実に引き戻された。長い間考え込んでしまっていたそうだ。取り敢えず私はあいつが嫌いだ。優秀ぶってるのも、何やかんや楽しそうなのも。私を裏切ったのも。全部嫌いだ。
「遅刻しちゃうよ?」
私は柚希にそう言われ
「うん!少しボーってしてた!ごめん!」
そう謝り私達は少し早足で向かった。
頑張ってノートを取り、取り敢えずお昼ご飯。持ってきていたお弁当を広げる。
相変わらず美味しそう。流石私のお母さん。
香葉と柚希が来ると私はお箸をとった。
「いただきまーす!」
それぞれが言うと私達はお弁当に手を付けた。
「ごちそうさま〜」
私達はお弁当を食べ終え、片付けて昼休みを迎えるところだ。
…まだ時間じゃないから昼休みじゃないけど。
私達は教室で適当に話し込んでいると何かが揺れる気配がした。
「…ん?なんか揺れてない?」
「そう?」
私がそう言うと香葉は頭を傾げた。
「ほんとだって〜揺れてるよ。なんか無いかな。」
私は何か揺れてると分かるものを探そうとした、その時。
ガタン!
大きな音がした。教室に置かれていた観葉植物が急に倒れた。
それが合図のように、教室は一瞬激しく揺れた。それがきっかけで皆が机の下に焦って隠れた。私達もすぐに隠れ、様子を伺った。
その後はそんなに激しくは揺れてなかったが、完全に収まらない。
いつまた激しい揺れが来るかわからないという事もあって教室内はなかなか落ち着かない。
しかも、揺れが全然収まらない。
怖い。その恐怖心が私を、私達を焦らせた。
しばらくして、揺れが収まり、私達は机の下から出てきた。
私たちが立ち上がると誰かが体育館に行こう、そう言いクラスが移動しようとした。その時。
「ぎゃあああ!!!!」
そんな声が聞こえたかと思えば、クラスの男子が扉の前で倒れた。
教室に広がる血の匂い。
全身、鳥肌が立った。
「ひっ…。」
柚希はそれを見てその場にしゃがみこんでしまった。香葉もしゃがみ込み、柚希の背中を摩っていた。
「そ、そうだ。後ろの扉から逃げよう、、」
私は力なくそう呟いて、扉に手をかけた。
「…開かない…!?」
さっきの自身で歪んだのか、全然開く気配がしない。
「か、香葉、柚希、どうしよ、私たちも、死んじゃう。」
私はそう言うと柚希は目に涙を浮かべていた。
香葉も顔が強ばってる。
「大丈夫…大丈夫。」
香葉は言い聞かせるようにそう言った。
わからない、何が起きたかわからなかった。
私は再び倒れた男子の方に目を向けると、倒れていたはずの男子が立ち上がっていた。
私はその男子を探した。
血の量も凄いのに、なんで??
動けるわけがない。私はそんなことを思い、少し目で追う。
その男子は近くにいた女子の襲いかかった。
見た目も変わって、まるで、化け物のようだった。
その女子は苦しそうな声をあげたあと、さっきの男子のように倒れてしまった。
私は喉がカラカラになった。
また、ほかの女子を襲いかかりそうになった、その時、扉が急に倒れた。
化け物のようになってしまった男子は扉の下敷きになってしまって、動きが封じられた。
そして、扉の奥にいたのは…。
「え、なんで、凛花が、いるの?」
私はそうつぶやいた。
凛花はポケットに手を突っ込んでいて、恐らく扉を蹴飛ばしたのだろう。
「え、なんで皆いるの?扉とか全部閉まっててまさかとは思ってたけど。早く逃げなよ。」
凛花はそんなすっとんきょうな声を出し、廊下の方を指さした。
皆は一斉に逃げ出した。
残ったのは私と香葉と柚希だった。
私は声を振り絞った。
「り、りんか。その下、男子が、襲われて、おそった、男子が。」
私はそう言った。途切れ途切れだったけど、伝わっただろうか。
凛花はさっきの明るい女の子、という様子と変わって凄く面倒くさそうな顔をしていた。目は虚ろだった。
凛花は渋々、と言った様子で扉を持ち上げると、今にもその男子が襲いかかってきそうだった。
凛花は驚いたのかやばいと思ったのか持ち上げていた扉をそのまま落としてしまった。
小さな悲鳴をあげたかと思うとそいつは暴れ出した。
「これで起き上がるとかこいつ人間じゃないだろ。」
凛花はそう呟いた。
だけど、表情は何一つ変わってない。
「ねぇ、早く逃げないと不味いよ!」
香葉がそう声を上げる。
私はハッとして、凛花に恐る恐る話しかけた。
「な、なんでこの教室来たの?」
「さっきも言ったろ。扉閉まってたから。普通避難する人間達が扉をしっかり閉めるとは思えないから。」
凛花はそれだけ言ってその場から離れようとした。
その時、下敷きになっていた男子が急に起き上がって扉を投げてきた。
香葉は柚希を庇うようにしゃがみ込み、私をなるべく近くに寄せてくれた。
私は顔を上げると、驚いた。香葉と柚希も同じように驚いていた。
凛花はなんと、扉を壊していた。素手でやったのか血がぽたぽた垂れている。
私達が困惑していると、一瞬、何かが光った気がして凛花の方を見た。私はまた驚いた。凛花の瞳が紫色に光っていたから。
「凛花、その目、、」
私がそう言っても無視をしていて、暫くしてから凛花は刀を出して、そいつに向かっていた。