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人力! 地獄タクシーを利用しよう

登場人物紹介

・近藤 由美

不死身の少女。

自称美少女だが全然美少女ではない。 ちなみにブスでもない。

身長155センチ 体重44キロ


・地獄タクシーの主人

副業で地獄タクシーをしている獄卒。

橙色。 目が他の獄卒より優しげ。

実は結構嗜虐的。


・箱状

タクシーとして使われている大きな箱。

結構薄くて意外と軽い。

タイヤは付いておらず、動かす際は紐で引きずって無理やり動かしている。

はぁ、疲れた。 もうどれくらい歩いたかな……。


私は不死身の美少女(自称)近藤 由美。


前回はホント酷い目にあったわ。 獄卒のクソガキ共ホント容赦を知らないんだから……。


あの後私は頭だけで転がりながら逃げた。 時間が経つと次第に胴、腰、腕、脚が生えてきて、さらにダッシュ!


流石に何時間も走り続けている。 心臓もふたふたする。


ちょっと休憩したいところだけど、この辺はだだっ広い何もない荒野。 見渡す先には身を隠す場所すらない。 故に油断してると簡単に獄卒共に捕まってしまう。


はぁ……、こっちもバスとか電車みたいな乗り物があればなぁ……。


あれ、何がこっちに向かってくる。 大きな箱状のように見える……。 前方には獄卒が居て箱状を引いて走っている。


身を隠さなきゃ、はぁ……、はぁ……、よいしょっと。


重い腰を開けて箱状から逃げる。 しかし次第に距離を詰められついに追いつかれた。


「お嬢ちゃん、逃げなくてもいいじゃないか。 別に俺は君をとって食おうってわけじゃない」


箱状を引いていた獄卒がこちらに向かってきた。 橙色で気体の身体をした獄卒。 目は心なしか今までの獄卒より優しげ。


「俺は獄卒だし、君が今この地獄を彷徨ってる近藤 由美ちゃんなのも知ってる。 でも今の俺は獄卒としてじゃなく副業の地獄タクシーとしてここにいるんだ」


今は獄卒じゃない? とりあえず私を痛めつけるのが目的じゃなさそうだし安心かな?


「ここで君に質問だ。 君はこの地獄タクシーを利用するかい?」


これは願ったり叶ったりの展開? 地獄に堕ちて初めてのラッキー到来ね。


脚もクタクタ、太もももパンパン。 返事はただ一つ!


「お願いしまーす!」


「ご利用ありがとうございまーす!」


私は地獄タクシーを利用した。


———


「ひぃ、ひぃ……ふぅ、ふひぃ……」


あれ、何かおかしいぞ?


「はぁ……、はぁ……。 ぐっ、ぜぇ……ぜぇ……」


ピシャリ!


「にぎゃっ!!」


私は鞭で尻を叩かれ飛び上がる。


ぐっ、このタクシーおかしい。 何がおかしいって?


それは私がこの箱状を引いて歩いてるからだ。


なんでそうなる。 私も驚いたのだけどこの地獄タクシー。 実はセルフサービスらしい。


つまりどういうことかというと、乗り物部分の動力源も自前なの。 早い話が利用したら最後、この重い箱状を一定距離引いて歩かない限り解放されない「地獄」なのだ……。


ホント、地獄の連中を少しでも信用した私がバカだったわ……。


ピシャッ!


「んニャァァ!」


ペースが落ちると後ろの箱状の中にいる獄卒が中から鞭で尻を叩くので止まることも許されない。


せっかく脚が疲れたから利用したのに……。 泣きっ面に蜂とはこのことね。


「おい由美。 速く走らねーか!」


ピシャ、ピシャリ!


「ひぃ、痛いぃぃ」


私のお尻は真っ赤に腫れてまるでお猿のお尻。 このままじゃ私の脚とお尻がもたない。


なんとかして逃げないと!


「ふわぁぁ、由美。 お前があまりにもトロいから俺眠たくなっちまったよ」


「は、はぁ……」


「俺少し横になって寝てるから、俺が起きるまであそこに見える山のふもとまで行けよ」


「山、山……、どこに?」


「ほれ」


山を探していると獄卒は私に望遠鏡を渡した。 そして私はその望遠鏡で山の位置を確認する。


えっ……、あそこまであるけと?


山は望遠鏡で見ても小さく写るくらい遠い。 正直普通に歩いても今日中には着かない。 ましてや箱状を押してなんて……。


逃げなきゃ!


———


「はぁ……、はぁ……、大分離れたね」


獄卒が箱状の中で寝ているのを確認した私は全速力で逃げ出した。


脚がクタクタで棒のようになってたのに、必死に走れば意外にも素早く動けるんだなって感心しちゃった。


って感心してる場合じゃないよね、次は隠れる場所を見つけないと……。


最初に居た場所と違いこの辺はところどころに岩や古い建物の残骸、遺跡のようなものもあるから隠れるには持ってこい!


こんなに廃墟があるんだからこの地獄にも街があるのかな?


ん? 下から水が流れる音がする。


あら、排水溝発見! てことは、下は下水?


あまり気がすすまないけど、下水道ならしばらくやり過ごせるかな?


臭いのは嫌だけど、拷問されるよりはマシよね……。


マンホール、マンホールっと……。


「あったー!」


マンホールを発見! これを開けて中に入れば……。


よいしょっと、うーん。 ……あれ、急に空が暗くなった?


違うこれはっ!


「由美ィィッ! てめぇ、逃げやがったなっ!」


ひぃぃ、出たー!


私の前に現れたのは先ほどの地獄タクシーの主人。


最初の優しげな表情はどこにやら、今は鬼の形相でこちらを睨んでいる。


「ひっ、ひぃぃぃ……。 ごめんなさい、ごめんなさぁいぃ」


怖い怖い、死ぬ死ぬ死ぬ、殺されるっ! いや、私は死なないからもっと酷い目に……。


ふぁっ!


ジョロロロロォォォ……。


私は恐怖のあまり失禁してしまった。 でも今はパンツが濡れてるなんてどうでもいい……。


なんとか、なんとか許してもらわないと!


「ご、ごめんなさい!!!」


私は最終奥義、土下座を発動した。


頭を地面に擦り付けたい、尻を揺らし無様に命乞いをした。


この場を凌げるなら恥なんてなんのそのよ。


「………………」


獄卒は無言で私を見下ろしている。


私の必死の謝罪は通じたのかな?


「いいぜ? タクシーからは解放してやるよ」


や、やった?


「ただしっ」


バシャッ!


えっ、何? なにかの液体を頭からかぶせられた?


うっ、臭い。 いや、臭いというより痛い。 これは理科の実験とかで嗅いだことがある……。


そうそう、刺激臭ってやつだ。


ガタンッ!


「そんなにマンホールがいいなら入れてやるよ、ドロドロの身体なら下水の中に馴染むだろ?」


「いや、やだ……、助けて。 溶けるぅぅー」


私の身体は次第にその形を保てなくなり、ドロドロになっていく。


最終的にスライム状になった私を獄卒は持ち上げる。


「じゃあな、お達者で〜」


私は下水の中に放り投げられ、汚水やゴミに混じりながら何処かへ流された。



溶けてスライム化した由美。 この状態は次回にも一部引きずります。

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