魔獣達のおやつタイムです
・近藤 由美
驚異の再生能力と生命力をもつ少女。
バラバラになっても死なないし、ガイコツになっても喋れるらしい。
脚が高速道路の自動車並みに速い。
・セコンド
スイッチが入ると口調がかわる獄卒長。
剣だけでなく斧や縄も使いこなす。
むしろそっちの方が本命だとか。
黒縄技師セコンドの二つ名を持つ。
・部下の獄卒
二人登場。
身体がガス状で不定形なので撒菱の上も走れる。
女の子の泣き声が好き。
・魔獣
犬型、鳥型、豚型が居る。
鳥型は食べる時に綺麗に食べれる場所を分解する。
………はぁ、いつまでこんなこと続くのかな。
帰りたい……。 もう嫌だよぉ……。
私は悲劇のヒロイン、近藤 由美。
いや、ちょっと違うかな。 これは全部私が招いた事態。 だから悪いのは私。
だからこの世界から許しが出るまで私は文字通り身を削って痛みを知るの。
…………っておいっ! おかしいだろ。
たしかに川口にしたことは酷いことだけどさぁ、おかしいよ。
いじめだよ? ちょっと意地悪しただし、そもそも受験ストレスを発散するためでさぁ……。
あと、そもそもよ。 そもそもあの子が私の彼氏の赤松君を奪ったのが原因だしさ……。
はぁぁぁぁぁ……、やっぱり納得いかないわー。 マジないわー。
…………さて、愚痴ってもしょうがないし、今日もここから脱出する糸口を探るわよっ!
頑張れ私! いけいけ私ぃー!
ガンッ!
「ぐえっ!?」
痛ったぁぁぁぁ、何よ? もう、誰?
急に後ろから殴られ私は怒り心頭だ! 思い切り抗議しようとばっと振り向いた。
一体どんなやつよっ…………はっ、こいつは!?
「久しぶりですね、まさか私のホームグラウンドで再会が叶うとは嬉しい限りですよ」
胡散臭い笑顔とわざとらしい敬語で喋るこの男は、以前私が巨大化して大暴れした時に静止に入った獄卒長で、名前はたしかセコンド。
セコンドは最初こそ礼儀正しそうな奴だけど、スイッチが入ると滅茶苦茶するやつ。
前回なんか全身から自主的にモザイクが出るくらいえげつない姿にされたんだから……。
なんで全身からモザイクって? あぁ、私の身体はある程度表現が抑えられる仕様らしくて、あまりにも酷い姿になっちゃうと自主規制の意味でモザイクが生えるの。 まぁ、そんなことは今はいいじゃない。
まーたグチャグチャにされるのとか勘弁なんだけど……。
「何を嫌そうな顔をしているのでしょうか。 大丈夫、今度は手順に沿って丁寧に罰してあげますよ」
「はぁ……それならよかったぁ。 ってよくないわ! 結局また酷い目にあうんじゃない! ヤダヤダ、絶対ヤダからっ」
猛ダッシュで逃げる。 ふふっ、実はこの地獄に来てから私は脚が速くなったのよ。
ほら、脚が渦を巻いたようにぐるぐるになってるでしょ。 そして走った跡には煙が舞って目くらましもできるんだからっ!
ほーっほっほっほっ、セコンドのやつ追ってこれないみたいね?
今回は私のビックリ体質のダイショー
「リッ!?」
ガリッ!!!
いっ!
「いだだだだ、ひたはんだぁぁぁ」
うぅ、口の中が鉄の味がするぅ……。
痛みのあまりついついしゃがみこんでしまう。
そして……。
カツ……カツ……カツ……。
追いつかれた。 てかはやっ! もう追いついてる!?
「ふっ、私も舐められたものです。 そんなんで……」
カッチン!
「逃げられるわけねーだろっ!」
シュルルルル、ギュッ! ギュッ! ギシッ、ギシッ! ギュッギュッギュッ!
———
「ゲヘヘヘ、待て待てェェ!」
「早く逃げないと追いついちゃうゾ?」
あぁん、最悪!
あの後、私は硬く、更にしなやかな黒い縄で胴体と両腕を縛られて、撒菱が巻かれた地面を走らされた。
撒菱は割とゆっくり走れば避けられるように配置されているけど、背後から追いかけてくる二人の獄卒がそれを許さない。
「ホラホラァ〜、追いついちゃったよぉ? 可愛いお尻にお仕置きだっ!」
ピシャリッ!
「ギャ! 痛っ……」
「怯んでる場合かね? さぁ、走れっ!」
ピシャリッ!
「ひぎゅっ!」
立ち止まって捕まろうものなら、細い木の棒でお尻や太ももと言った柔らかい部位を叩かれる。
これが地味に痛い。 もうなんども叩かれてお猿のお尻みたいに真っ赤になっている。
そして急いで走ると……。
「あぅ、あがっ!? イタタタタァ!」
足の裏には大量の撒菱が刺さる。 おもわず痛さでピョンピョン跳ねる。
さらに漫画的表現が適応される身体故に、身長の5倍くらい飛び跳ねる。
飛び跳ねれば当然落ちる。
身長の5倍の高さからの落下だ。 縄で縛られているのもあってバランスよく着地できるわけがない。 よって腹から、背中から、尻から……その時々の体制によって様々な部位が下になり、そこに撒菱が刺さる。
刺されば当然また飛んで……を繰り返す。
遠くで見ていたセコンドはそんな苦しむ私の様子を楽しんでいた。
「ははっ、楽しいだろ。 さて次のお楽しみが待ってるぜ」
———
「ひぃぃぃ、来ないで来ないでぇぇぇ!」
ワンワン! ギャオォォォ! フンッ、フンスッ!
私は地獄の猛獣、いやもはや魔獣ともいえる醜悪な外見をした生物達が蠢く谷に突き落とされる。
谷底では腹を空かせた魔獣達はギラギラした目で私を待っていた。
私が谷底に落ちるが否や、彼らは私に襲いかかる。
しかし私だって簡単には捕まるつもりはない。
この地で得た自動車にも負けない俊足で、魔獣供との距離を突き放す。
「へへーん、ざまぁみろ! やーいのろま! バーカ、こっちまでおいで〜、おしーりペンペーン」
こんな感じで立ち止まって煽ることが出来る程余裕。
余ゆ……
ガシッ!
う?
「魔獣からは逃げられても、俺からは逃げられまい。 さっき逃亡に失敗したばかりなのに、お前は学習能力のない阿呆だな」
あわわ……セコンドさん、ホント早いのね。
「ごめんなさい、マジ許して! 逃げないからもっと優しい罰にしてぇ」
ザシュッ!
あれ、腕が……。
シュッ! シュッ! シュッ!
「ひぎゃぁぁぁぁ、身体が、身体がぁぁぁ」
セコンドが何処からか取り出した巨大な鉄斧の切れ味は抜群。 私の身体は一瞬にしてバラバラに……。
「これで魔獣供も食べやすくなったろ……」
ち、ちくしょう……この鬼畜がっ。
ウゥゥゥゥ……グルルルルゥ……。
ひっ、魔獣達!
「さぁ、ゆっくりよく噛んで食べるんだよ。 ゆっくり…………ね?」
こいつっ……。
四肢と首、胴がバラバラになった私を囲むように魔獣供はグルグル回っている。
おそらく誰が、どこから、どう食べようか……。 じっくり見定めてるのだろう。
あー、今回もダメだった。 はいはい、もーさっさと食べなさーい!
私からすれば痛い目に遭うには変わりないんだから早くしてほしい。
このいつやられるか分からない感覚がヤダ。 自信がないテストの答案が返却される前の感覚だわ……。
………………ガブッ!!
「ギャッ!」
……………………ガブッ、ガブッ、ガブッ!
「ギャワァァァァァァァァ!」
魔獣供のうちの一体が食らいついた瞬間、一斉に他の魔獣も食らいつく。
ワイルドに気にせずひたすら噛み砕く奴もいるが、中には目玉や舌、骨を取り出して、服を綺麗に剥いてから食べるこだわり派も居た。
このこだわり派のせいで滅茶苦茶痛かった……。
私は身体は綺麗なドクロマークの頭蓋骨と、犬が漫画で咥えてそうな骨数本に服の繊維の切れ端だけが残った。
更新速度が下がり気味ですが、よければまた次も宜しくお願いします。