報告しましょう
登場人物紹介
・近藤 由美
地獄で虐められ続ける中で、以前自分が行ったイジリをいじめと再認識し、事の重大さと罪の意識が芽生えつつある
実は地獄に堕ちる前の記憶が一部抜けているようだ。
・ファスト
獄卒長の一人。
獄卒長の中では一番まともな人物のようで、報告役も任されている。
最近、この世界の在り方に疑問を持ち始める。
年齢は75歳。
序盤は彼視点で進行。
・零
通称零様。
地獄のトップの地獄王だが、敬語で話しどこか機械的。
用心深い人物で彼の姿を見た人物は居ないと言われている。
読み方はレイ。
・フォース
獄卒総長。 叫喚奏者の二つ名を持つ。
体格のいいおっさんの姿をしていて、酒飲みで一日中酒を飲んでいるので酒臭い。
肩書き通り、獄卒長より格上だがぐうたらした性格から上司からも部下からも信頼されていない。
中盤、彼視点で一部進行。
・シークス
地獄副将。 焦熱童女の二つ名を持つ。
無邪気な12歳くらいの少女の姿をしている。
炎を操る力とモノを分解する大槌を持つ。
中盤から終盤にかけて彼女視点で進行。
・セブンス
地獄将。 焦熱大老君の二つ名を持つ。
仙人風の老人の姿をしている。
直属の部下であるシークスにじぃちゃんと慕われている。
私は獄卒長のファスト。
主な業務は地獄でも屈指の大都市の運営。 そして地獄王であらせられる零様への定期連絡だ。
「ファストです。 定期連絡に参りました」
…………プツン。
ガガ……ガピー、ガガ……。
「…………お疲れ様です」
私を労う声の持ち主は、先ほども述べた零様その人。
といってもこの場に本人の姿はなく、やりとりはスピーカーによる音声のみで行われる。
実は地獄長の私ですら、じかに顔を合わせたことはない。
「ではご報告致します……」
かくかくじかじか……。
私は由美の現状確認、そして5名の獄卒長の死亡、その死に至るまでの経緯について報告した。
更に由美が意識を失った後、即ち八百万岐大蛇に丸呑みにされた時から消失までの流れも……。
「報告ありがとうございました、またの報告をお待ちします……それではこれからの業務遂行のためにも、私からこの地獄について少し教えましょう」
今後の業務の参考にと零様にこの地獄と近藤 由美の関連性を話した。
零様が言うには、この地獄の全ては近藤 由美の罪の重さから成り立っている。 そして我々やこの地獄の内に秘めるエネルギーは彼女の罪に比例する。
以前巨大化した際は手も足も出なかった獄卒長、それを五人も同時に消したということは彼女なりに反省の念が生まれた結果、罪の一部が打ち消され我々が弱体化したからだという。
…………一点、引っかかる。
近藤 由美が痛みを知り更生させるのが我々の役目だ。 だがそれが私は解せない……。 誰がそれを我々に命じなぜ今日まで従ってたのだろう。
記憶が正しければ我々地獄の住人は昔からこの地で生きていた。 私もこの世界で生まれて75年だ。
なのに何故だかこの世界は14歳の少女を中心に回っているのだ。
ダメだ……考えても思考がぐるぐる巡回するばかりだ。
零様の前で考え事もあれだ、とりあえず帰りながら考えよう。
「それでは、失礼しました……」
ギィィィ…………バタン!
…………零様、彼は本当に信用をおける方なのか?
あの方は機械的過ぎて胡散臭さ以上に不気味さすらある。
昔から仕えているとはいえ、姿さえ見せない地獄王に忠誠を誓い続けるのは正直……。
少し調べてみるか、近藤 由美について。 そして彼女がここに堕ちる直前のこの世界で何か起きてなかったのかを……。
———
「いゃぁぁ、熱い熱い! 足が焼けるぅ」
「走れ走れぇ、立ち止まると燃え盛る鉄の大地にお前の皮膚がくっついて剥がれちゃうぞぉぉ?」
うぃぃぃ、ついに出番ということでオジサンはついついはしゃいじまった。
女の子の鳴き声を聞きながら飲む酒はやめられねぇなぁ。
「あぁぁ、いぎぃぃ……だめ。 もうだめだよぅ」
はっ、不死身の癖にもうくたばるのか? いじめっ子の分際で甘えやがって……。
仕方ねぇから、俺は弓を構え……。
そして放つ!
放つ、放つ、放つぅぅ〜!!
「ギャァァァァ、何これ! いっぱい落ちて」
俺の放った無数の矢がスコールのように彼女に襲いかかる。
グザッ!
「うっ! あぁ……」
グザッ、グザッ!
「ギャン!」
グザグサグサグサグサグサグサグサグサッ!
「イタイイタイ、刺さるダメ、あっ、脚が! 頭にいっぱい……、ヴォッ、ヴァァァアッ!」
ドサッ……。
はぁ……生き絶えたか。
いくら不死身とはいえ身体は人間だもんな。 やり過ぎるとすぐダメになっちまう。
せっかく俺の元に生き返ってきてくれたのに……。
不完全燃焼だな、酒でも飲んで昼寝するか。
……お前は誰かって?
あぁ、俺か? 俺はフォース。 獄卒総長ってのをやってんだ。
部下からは叫喚奏者のフォースとか呼ばれてるな。 なんか微妙にダサいからやめてほしいぜ……。
———
「ギャァァァ、まーた熱い場所ぉ」
「ホラホラ、早く逃げないと突っついちゃうよぉ?」
えへへ、人間人間たのしぃな、私といっぱい遊んじゃうー
もっと、もーっと元気になぁれ! お尻にチクリ!
チクッ!
「あぁぁぁ!」
えへへ〜、この真っ赤な棘はね? 高熱で熱した鉄串なんだよ。 これで突き刺すとぉ?
ボッ!
「イヤァァァァッッ!」
身体の中で着火して一瞬で火だるまさんなんだよぉー。 どう、私が作った自慢のおもちゃなんだよ?
「熱い熱い熱いーっ、水水水水水水水水水!」
えへっ、凄いねぇ。 脚がぐるぐるの渦みたいになって目ん玉飛び出しながら走ってるんだよ。
「由美ちゃんって言ったね? 水が欲しいならこっちにくるんだよ?」
「あぁぁぁぁあ、お願いぃ、死んじゃうぅ」
そんなに水が欲しいんだね、可哀想に……。
それじゃ、満遍なくたっくさんの水をプレゼントなんだよ?
「えぃっ!」
私は熱した大きな大槌で……。
「ギャッ!?」
叩いちゃったー!
バラバラバラ……
「いやぁぁ、身体がバラバラァァァ!」
この大槌で叩くと身体がおもちゃみたいにバラバラになっちゃうんだよ?
でも大丈夫、魂は身体の各部位と繋がってるから痛くは無いし、死んだりもしないんだ。
しかも血や身体の中身も出たりしないから、怖いのヤダーな獄卒さんでも使えちゃうよぉ?
なんでバラバラにするって?
それは手脚があると抵抗されてやりにくいからだよ? 私は身体が小さくて力がないから困るんだよ……
さて、バラバラになった各部位の穴に大焦熱の水を入れるんだよ。
目、鼻、口、耳、ヘソ、お尻の穴、四肢の断面の隙間などなど〜。
ゴポゴポゴポ……
「ふぃー、いっぱいいっぱい入れたよ? これでまた遊べるね?」
…………あれ、動かないよ? どうしてかなぁ。
「シークスやぁ? それはのぅ……、やり過ぎたからじゃよ?」
あっ、セブンスじぃちゃんだー! いつの間に来てたのかな?
「人間はのぅ、熱い水はダメなんじゃ」
「えーっ! そんなぁぁぁぁ……」
シークス失敗しちゃたんだよ、次は満足するまで遊んでもらえるよう頑張るんだよっ!
だから由美ちゃん、また私のところに来てね!
……あっ、自己紹介まだだったんだよ。
私はシークス。 地獄副将って肩書きがあるんだよ? 意味はよくわかんないけど偉いんだよ。
焦熱童女シークスなんて呼ばれてるんだよ。 ちょっと恥ずかしいんだよ……。
ちなみに私と話してたのは地獄将ってのをしてるセブンスじぃちゃんなんだよ。
焦熱大老君ってあだ名があるんだよ。
さて……それじゃ、私は部屋でゲームするんだよー!
———
〜現実世界・とある高層ビルの上層部にある機械室
ガガガ……ジジジ……ガピッ、ガガガ
プツン!
「こんにちは、マスター」
「零、地獄の修復具合と対象のステータスを頼む」
「修復作業終了しました。 対象の罪ポイントは5802減少し、現在は1008になります。 強制浄化を継続しますか?」
「……Yesだ」
「了解しました。 強制浄化を続行します」
チッ…………このまま0になるとお楽しみが終わっちまう。
だがこのままでは終わらせない。
まだまだ面白おかしく苦しんで貰うぞ、近藤 由美……。
補足
・マスター
現実世界から地獄にいる由美を監視している。
性別は男。
由美を痛めつけるのは強い憎しみなのか、それとも戯れか……。
・肩書き
地獄王>?>地獄将>地獄副将=獄卒総長>獄卒長>その他
獄卒長内ではファスト=セコンド>シィ>ゴウ=ロク=ナナ>ハチ
・由美の身体
痛覚はかなり制御されており、痛みに強い耐性がある。
小さなダメージならすぐに再生してしまう。
バラバラになっても死にはしないが、3日後に崩壊と再生を行う。
崩壊後は詰み対策として安全な場所にワープする。
また、物理法則より漫画でありがちな表現が優先される。 早い話がギャグ補正のようなものがある。
防御面は無敵だが、身体能力は一般的な女子中学生(14歳)の平均よりやや低い。
・由美の衣服
身体同様再生する。
なぜか下着は絶対に破壊されない。