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後始末をしましょう

登場人物紹介

・近藤 由美

オナラで地獄の住人を一掃した自称美少女。

爆発には耐性があるらしい。

前回のサーカスで蛇嫌いになった。


・ファスト

地獄の獄卒長。

以前由美が彷徨っていた巨大都市を治める者でもある。

肩書きこそ同じだが、シィ、ゴウ、ロク、ナナ、ハチの5名のより格上らしい。


・八百万岐大蛇

獄卒長ナナのペット。

爆風にも耐える非常に頑丈な身体を持つ。

シュゥゥゥ……。


先程の大爆発によりライブ、もといサーカス会場は跡形もなく消失していた。


風の音、一面焼け野原。 つい先刻までの賑わいは嘘のように辺りは何もない。


私もさっきの爆発でさすがに……。


さすがに?


「…………」


………あれ、私?


「ぷはっ! ケホッ、ケホッ!」


生きてる?


「生きてたー!?」


再確認する。 私はあの爆発をこの身ひとつにも関わらず生き延びていた。


身体は黒こげだけど、欠損どころか他に怪我すらない。


……そっか、そうだよね。


私の身体は漫画的な表現が適応される。


漫画のキャラって爆発を受けても黒こげになるだけだもんね。


そして、さっき私が起こした爆発もそう。


漫画でたびたび見られるオナラにより爆発する描写。


もし、私が漫画のキャラみたいな現象を起こす体質ならオナラのガスで爆発を起こせる、そう思ってダメ元で試したもの……。


成功しただけでも驚きだけど、まさかここまでの破壊力を持つとは思わなかったわ……。


女の子としてはちょっと恥ずかしいけど。


だけど……。


周りに広がるのは瓦礫だけじゃない。 よく見ると観客の死骸のようなものも無数にある。


それだけじゃない。


シィ、ゴウ、ロク、ナナ、ハチ……。


私を痛めつけている主犯格。 地獄の獄卒長達も真っ黒になって倒れ込んでいる。


…………うん。


確認したけど、彼らに息はない。


私はやったんだ。 地獄の幹部達を一人で退けたんだっ!


凄いぞ、私! どうだ、私で弄んだ罰だっ!


「ふふっ、ふふふ……ハーハッハッハッハッ!」


つい高笑いが出てしまう。 それはそうだ、私は買ったんだ!


笑え、私! 笑うんだ。


…………わら、えよ。


目が、涙が……。 身体が……震える。


怖い、怖い。


違う、私は嬉しい気持ちいい、気分がいいんだっ!


「ヴォエエェェ」


ドボドボボボボ、ビチャ……ビチャ。


ぎぼぢわるい、何これ?


「なんなんだよーっ!」


あぁぁぁぁぁぁぁぁ!!


スカッとしたのは事実だ。 気持ちよかったのも嬉しかったのもホント。


でも、冷静になって初めて分かったんだ。


命を殺めた罪の重さ、怖さ、恐ろしさ……。


精神が持たない、おかしくなりそうだ。


だから、さっきだって大袈裟に笑ってみせた。 笑えば嬉しい気持ちになれるかもって思ったから。


でもダメだよね。 自分には嘘はつけないや。


私はやってはいけないことをしたんだ……。


「その通りです」


はっ! 誰かが私の後ろにっ。


「どうも初めまして。 私の名前はファスト、地獄の獄卒長を務めるもの」


獄卒長……ファスト?


形は細身長身の人型。色は黄土色。 顔もしっかり整っているけど、身体は他の地獄の住人と同じく煙のような感じで、もしかすると不定形なのかも。


「地獄の幹部様が私に何の用よ。 こいつらを私が殺したから敵討ちってとこ?」


はは、そうだよね。 仲間がやられたら許しちゃ置けないよね。


今回はたくさん暴れたんだ、もう反撃する気力もない……。


今日は大人しく殺されて、目覚めた時にどうするか……、あと気持ちの整理もしよう。


「違います。 別にこの地獄の住人の生死は問題ではありません。 問題は貴方です。 前に巨大化して獄卒の街を破壊したことを思い出して下さい」


「…………あのとき?」


「貴方はあの時、獄卒達を大量に虐殺しましたが、今のような気持ちになりましたか? いや、私にはわかります。 貴方は悪気一つなかった」


「…………そういえば。 でもあの時はすぐに駆けつけた二人の獄卒長、シィとセコンドの襲撃を受けたからそれどころじゃなかったんだ」


「違うな。貴方は思い出したのです。 人としての良心、そして心の深層に封印された記憶、感覚。 それらは今蘇りつつある……」


私の記憶。 それって……一体……。


ゴトッ!


何もないはずの焼け野原、その瓦礫の下から何かが動いている。


ゴトゴト……ガタンッ!


ギャオォォォォォォォ!


これは八百万岐大蛇(ヤオヨロズノオロチ)


あの爆発で生きてたなんて……。


「ほほぉ、これがナナの秘蔵っ子。 地獄の猛獣、八百万岐大蛇。 やはり爆発程度では死にませんか」


ああぁぁ、大蛇はこっちを睨んでいる。 その迫力の前に足がすくんで動けない……


「助けて、たすけてぇ……」


神様仏様獄卒様、ファスト様。 私は藁をもすがる思いでファストに助けを請う。


しかし……。


「勘違いしないでいただきたい」


ガッ!


「キャッ!」


ファストはすがる私を冷たく突き放す。


「私は獄卒長を消した貴方の現状を確認したまで。別に貴方の味方ではないし、助ける義理もないのです」


そんな……。


「大丈夫、この地獄は永遠ではない。 ここは貴方の内なる罪悪感で構成された貴方のための世界。 ここの責め苦、ここの住人は貴方の気持ちひとつでどうにでもなる。 早く助かりたければ己を振り返ることです」


いや、それどころじゃ……。


やだ、助けて。 ギャッ、やだ、やだやだ


大蛇が私に絡みついてきて身体の自由を奪う。


苦しい。 サーカスの時の調教とは違う……本気だ、本気で殺すつもりだ。


シャァァァァァ!


首の一つが大口を開け、私に迫り来る。


バクン!


「あがっ、離して! やだ、くるじぃ……。 やだやだやだーっ!」


大蛇は私の頭からゆっくり丸呑み。 最初は頭、そして肩から腹、ついには脚までもがその長い身体に呑まれた。


「あぁぁ、やだぁ。 だしてぇ、苦しい! ギャッ、何? 熱い熱い、痛い痛い痛いぃぃぃぃ……」


蛇の体内から分泌された液体は容赦なく私の身体を焼く。


違う、私は消化されてるんだ!!


あぁぁぅぅ……ダメだ、息も苦しくなってきて意識が遠くなってきた……。


あぁぁ……。


ぁ…………。


……………。


私の身体は限界を迎え生き絶えた……。


———


〜その後……。


私は獄卒長ファスト。


地獄に堕ちた少女、近藤 由美の現状確認のためこの場に出向いた。


近藤 由美は大爆発を起こしそこら一体を破壊。 近くに居た地獄の住人千名余り、そして5名の獄卒長が死亡する。


件の少女、近藤 由美はその後、罪の意識を取り戻し罪悪感に苛まれていた。


しばらくして瓦礫の下に埋まっていた獄卒長ナナのペット、八百万岐大蛇が目覚める。 大蛇は爆発によるダメージで怒り狂った状態で、その場にいた由美に襲いかかり丸呑みにした。


ここまでで近藤 由美の意識と記憶は途絶えたと推測する。


数日後に大蛇が残した排泄物を調べると由美と思しき骨が発見された。


私は骨を採取し、不死身の身体が復活する様子を観測することにした。


しかし彼女の身体は私の予想を遥かに超えていた。


何を隠そう彼女の身体は骨だけになりながらも、体温があり無いはずの心臓の鼓動が聞こえた。


どうやら意識はないだけで彼女はまだ死んでいなかったようだ。


それから三日を過ぎた頃、彼女の骨が突然光り出した。


驚いた私は彼女の骨を調べようと駆け寄る。


しかし彼女の身体は光と共に消えてしまっていた……。


どうやら彼女の身体は再生困難と判断されると、一度存在が抹消され、安全な場所にて肉体が再構成されているようだ。


肉体がワープするのは、再生後すぐに肉体が破壊されるのを防ぐためだろう。 早い話が「詰み対策」だろう。


ふむ、中々興味深い。 近藤 由美、再会が楽しみだ。

由美は身体が破壊されてもしばらくは生きています……。

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