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99小人の村へ行くことにします

「ユーキさんが何か怖いんですが」

「ああなると放っておくしかない。ところで、清算はどうする?」


 サンドマンさんはいつの間にかそろばんを手にしている。


「最初は以前と同じで、素材を取ってもらってから清算をしてもらおうと思っていたんですが、ユーキさんがあれじゃあちょっと無理に見えます」

「まあ、俺も口を出せない」


 これからしばらくは王都に居る予定だし、サンドマンさんに頼んでおこう。


「ユーキさんをお任せしていいですか?鎧は置いていきますので材料に使ってください」

「仕方ない。頼まれよう。しかし鎧抜きで大丈夫なのか?」


 俺は今着ている胴鎧を脱いで置いておく。


「戦いませんから大丈夫だと思います。この鎧も使えば安くなりますよね」

「多少はなる。分かった、清算が終わったらフレンド通信をする」

「ありがとうございます」


 これで用件はすんだ。最後の用件を済ませないといけない。


「ところで、小人の話なんだけど」


 急にユーキさんが顔を上げる。


「どこにいるとか、話せる?」

「それは俺も知りたいな、教えてくれるか?」


 俺に詰め寄ってくるのが2人になった。


「今からそれを聞きに行くんです。今日は遅いからゲームの明日になりますけど」

「小人の素材もあったら買うぞ」


 サンドマンさんがしまったそろばんを取り出す。


「小人の素材は今の所ないんですよね、クエストを受けただけで、報酬は食料だったので食べつくしました」


 俺の説明にそろばんが引っ込んだ。


「食料だけなのか?」

「そうですね。それ以外受け取っていないので食料以外の特産があるのかも知らないです」


 やったのは鳥退治と子守だから今思えば道具屋くらい覗けばよかった。


「秘密なの?」

「秘密なんです」


 黙っていると約束した。話を漏らしたのは運営なので俺は他の人にも説明していいかどうかを聞きに行く予定だ。


「小人の素材が手に入ったらこっちに来てくれ。優遇する」

「できるのは3日後だからね」



 秘密を守ると言われたら突っ込んで聞いて来ない人達なのは有難い。

 前に別のゲームで、情報を公開しないのは反しているといいう変な運動が起こった事がある。俺は隠すことがなかったので平気だったが弟が巻き込まれて大変だった。

 その時は弟の居場所を話せと脅されたので、運営にメールを出してゲームをやめた。やるのもやらないのも自由なのがゲームです。


「ただいまっと」

「あ、お帰りなさい、お客さん」


 ミミリアさんが俺の声に反応して出てきた。


「お菓子、買ってきましたよ。本当にお釣りをもらっていいんですか?」

「良いですよ。それで、どれだけ買えました?」

「あちらです」


 何故か指さされた先にはテーブルを占拠するお菓子の山があった。貨幣の価値を見誤ったという話ですね、これは。


「ありがとうございます」


 とはいえ菓子は菓子。アイテムボックスに置いておけば腐る物ではない。しばらくアイテムボックスを圧迫するが、幸運にも種類は多くないのでまとめて入れておく事が出来る。


「空旅人のアイテムボックスって本当に凄いですね」


 ミミリアさんが感心した声を出す。


「これしか取り柄がないとも言いますね」


 でも商売するなら物凄く便利な能力だろう。


「お客さんは明日出発ですか?」

「はい」

「ご飯はどうします?」

「あるなら下さい」


 そういえば素材でバフが付く話はよく聞くものの、宿屋の食事でバフが付くというのは聞いたことがないな。何故だろう。

 部屋に上って一休み。すぐに目が覚める。ゲーム内での休眠ははやい。と思ったらログイン限界の通知がきた。寝たのに寝に帰るというのも変な気分だ。


『 いつも拙作Six Sense Onlinを遊んでいただいてありがとうございます。

 今回、プレイヤー名:ジョップ様が王都西、街道フィールドに置いてハイドルートを攻略いたしました。条件が揃いましたので公表させていただきます。


 今回は障害物排除のための生産クエストです。王都の西にある薬草の村サズと果樹の村フォウに移動できるようになりました。


①特定NPC(冒険者ギルド含む)から依頼を受けている。

②特定アイテムを必須評価で製作し、道を塞いでいた大岩を取り除く。


必須条件を①②を満たしている場合、クエストとして報酬が渡されます。

 今回解放されたシステムとして農作地が解放されました。詳細はシステム担当NPCよりお聞きください。


 今後もSix Sense Onlinをよろしくお願いします』


 時間が経って宿屋のベットの上でログインすると、ハイドルート解放の報告があった。リルさんの考えた通りハイドルートだったようだ。薬草の村と果樹の村か。

 農村という言葉に何となくひかれる。家を農家の様に作って晴耕雨読の生活は憧れる。

 階段を下りて宿の食堂にいくとミミリアさんがこっちを見て驚いている。


「ようやく目を覚ましたんですか?もうお昼ですよ」


 ああ、ログアウトしていたから本来起きる予定の朝から時間がずれたな。特に時間を考えずに入ったからだろう。


「朝チェックアウトした方が良かったですか?」

「いえ、冒険者の人はお寝坊さんが多いので大丈夫です。お疲れだったんですね」


 忙しいというか、せわしない気分というのは確かだ。


「急いでやる事をやってますから。食事を貰ったらチェックアウトしますね」


 ミミリアさんにそう告げて急いで食事にかかる。さて、今日はビギの村へ行った後小人の村に行かないといけない。

 忙し忙し。妖怪いそがしに憑りつかれています。

 街道はリゴブリンが出なかった。イベントでないと出ないのか、この前狩りすぎて減ったのかは分からない。ビギの村に入ってすぐ、村長の家に向かおうと思った俺の目にビギの村の惨状が入って来た。


「これは、きついか」


 昨日の今日というか、この前の今というか、リゴ武神の襲撃の件で壊され、焼かれた家はまだ手が付けられていなかった。こういう物を見せられて素通り出来るほど心が強くないのです。


「あ、ナントだ」


 子供たちが俺をみつけると寄ってくる。


「なあなあ、なんかお菓子くれよ」

「遊んでよ」

「いや、今日は急いでるから、土産は村長に渡しておくよ。それで、村長は?」


 流石に今日は急いでいるので話を進めることにする。


「あっちで家立ててるよ」


 あれ、村長の家は別に被害がなかったと記憶している。村の男総出で家を建て直してるのか?


「せいっせいっせいっ」

「ようっようっようっ」


 何をやってるんだ村長兄弟は。俺が見たのは俺では持てない材木の長い物、石の重そうな物を下からホイホイと投げては屋根の上で受け取る村長兄弟だった。


「すいません、こんにちは」

「おやナント。手伝いに来てくれたのか?」


 いやいや村長についていくのは無理、じゃなくて、今回は用がある。


「いえ、ちょっと村長に重要な話があります。少し良いですか?」


 このさいだから村長ズにも簡単に話をしておこう。


「うん?構わんが、皆、少し休憩じゃ」

「何か珍しいな」


 村長達が手を止めて、村人たちが休憩に入る。


「あ、ところでビギとセカの村の全員に行き渡るように見舞いのお菓子を持って来たんですが、あとでセカの村に持って行ってもらえますか?」

「何じゃ、気を使わなくてもいいのに」

「村長、菓子ですって」

「ナントも気が利くようになったな」


 俺の言葉に村長よりも休憩していた村人たちが集まった。


「言っておきますがセカの村の分もあるんですからね」

「それは俺が責任もって持って帰ろう」


 アクス村長がじろりと村人達を睨みつけると村人が硬直する。俺が出した菓子を持ち帰るために村人達は一旦家に戻って行った。菓子を大量に買っておいてもらってよかった。


「それで、重要な話というのは何じゃ?」


 アレク村長が話を続けるよう促してくる。


「完全には言えない話です。もし友好を求めて隠された別の村の人間がやって来たとき、村長達はどうしますか?」


 まだ小人とは言えない。許可を貰ってないのです。

 俺のごまかしが混ざった言葉に村長達は視線を交わす。


「ふんっ儂らは自分の目で見た物を信じる」

「そいつらが良いか悪いか、話はあってからだ」


 こういうタイプなら大丈夫か。利用という方向性はなさそうだ。


「そうですか、話を聞いてくれてありがとうございます」

「もういいのか?」

「はい。急いでいますので」


 二人と別れようとして、ふと思い出す。


「そういえば、王都の方でサズとフォウへの道が開いたそうです。良かったですね」

「何?それは本当か?」

「それはいつだ?」


 こっちの話の方が食いつきが違った。離れようとした俺に一気に村長兄弟が詰め寄ってくる。


「えっと、さっき空旅人の話で伝わって来たことです。何かあったんですか?」


 俺はちょっと怖く思いながらインフォを思い出す。


「いや、悪かった、ちょっと色々あってな」

「急ぐんじゃろう?話は後で教えよう」


 今度は追い払うような感じだ。王都を支える村同士何かあるようだ。後で教えてもらえるなら今は優先がある。


「それじゃあ、また」


 俺は小人の村へと向かった。


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