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98サンドマンさんの店

 目的にしていたユーキさんが居ないとこれは困った。

 別に新しい場所で新しい鎧を作ってもいいが、出来ればトッププレイヤーだというユーキさんに続けてもらった方がいい。前の鎧をベースにすれば値引きが効くかもしれない。倹約である。ケチではない。

 それはそれとして、どうやってユーキさんを探そうか。

 そうやって頭の中で記憶を探って行けばもう一人関わった人が居たのを思い出す。商人のサンドマンさんだ。


「すいません、商人のまとめ役みたいな事をやっていたサンドマンさんという人は何処でしょうか」


 目に入った別のバーベキュー屋の屋台で食事を買いながら店の主人に聞いてみる。

 牛串焼き屋との違いは、肉だけでモモやランプなどと串を分けていたのが牛串焼き、野菜を交互に挟んで色々な肉魚介を焼いているのがバーベキュー屋だ。屋号がそうなっているんだからそうなんだろう。

 ちゃんと味見してみたけどうまい。現実ではバーベキュー何て食べたことないので人生初体験だ。どこかでタレは売ってないか?肉だけならまだ山とあるから自分でやってみたい。


「サンドマンさん?あの人なら店が出来たんで出て行ったよ」


 オーノーッ。あの人もか。やっぱり凄腕な人はさっさと店を作って出ていくという事か。


「サンドマンさんの店は知っていますか?」

「おう、あの人は普通にここにも仕入れに来るから、場所は買い取り場担当の雇われNPCが知ってるよ」


 希望はつながった。店の主人にお礼を言って俺は俺がきっかけでできた一括買い取り場に行ってみる。この前はサンドマンさんが一括買い取りしてくれたので行くのは初めてです。


「思ったより大きいな」


 イメージとしては受付カウンターと裏に買い取った物を置くだけの小屋だった買い取り場は、冒険者ギルドぐらいに大きい店舗と言っても信じられる大きさの物だった。


「すいませーん」

「はいはいはい。販売ですか仕入ですか?」


 俺が声をかけると同時に口早に店員らしい人がやって来た。


「販売の方なんですが、もう一つ用がありまして、サンドマンさんのお店の場所を知りたいんです」

「店長のお店ですか?」

「サンドマンさんが店長なんですか?」


 忙しく手を擦り首を振る店員さんの言葉に俺は聞き返す。


「どうやら初めてご利用の様子ですね。簡単に説明しますと、この買い取り場は何人かの商人が出資して作られています。そして商人の部下、サンドマン商会ならわたしめ、名はトリルと申しますですが、が持ち回りで毎日人を変えて担当しています。宜しければ今度からこのトリルめをご指名ください」


 自己紹介を混ぜて説明された。運が良い事にこの人がサンドマンさん部下というならば店の場所を知っているだろう。


「まずはこれが販売する物です」


 俺は上質な素材をいくつか取り出してカウンターに乗せる。資金はまだあるので売るつもりはなかったけれど、教えてもらうんだしこれくらいしておこう。


「これはこれは中々凄いですね。少々お待ちください」


 カウンターの中へ引っ込んだトリルさんは虫メガネや一目では分からない何かの道具を取り出して鑑定している。


「すべて上質な素材とはすばらしいですね。それではこの金額でどうでしょう」


 俺は提示された金額を見ないでそのまま懐に収めるとサンドマンさんの店の位置を聞いた。


「それで、店の場所なんですが」

「おお、そうでしたね。地図を用意します」


 用意されていたらしい地図、というかパンフレットに門から店までの道筋が書いてあった。


「これは見やすい」


 俺は迷子になりやすいのでこういうのは有難い。


「いや、空旅人の商才は確かですな。自分の店までの地図を作るとは」


 いや紙が豊かにある現実出身だから思いつく事だろう。


「私達では鳴り物で宣伝するしか思いつきません」


 頭の中にチンドン屋が浮かんだ。我ながら古い例えだ。まだやっている人はいるとTVでやっていた。トリルさんは手を揉みながら俺に付け加える。


「このトリルがちゃんと宣伝していたとお伝えください」


 よくある部下その1みたいなキャラだな。支店みたいな物を任されているんだし商売上手な人なんだろう。


「ええと門から大通りを通って」


 方向音痴と言っても俺は地図を呼んでいく分には大丈夫な方だ。でも見間違えて道を1本ずれる事はよくあります。


「ここか」


 店としては普通の店だった。てっきりマンションの一階のイメージだったのは現実に偏っている。ここはファンタジーな世界だったんだ。

 目の前の店は昭和の映画に出てきそうな店だった。よくある八百屋や魚屋の様に商品を展開しているタイプで、扱っているのは道具類の様だ。ポーション1箱いくらと書かれている。


「ある意味ファンタジーじゃないな」


 普通の道具屋だ。NPCの店がドラクエ風に、見せる用の商品とカウンターで中から言った商品を取り出してくるタイプなので全部陳列しているのは現実の方に近いかな。


「何か酷い言われ様だな」

「あ、サンドマンさん、お久しぶりです」


 俺の独り言を聞きつけてサンドマンさんが店の奥から出てきた。


「おや、お前さんは確か場外買い取り場の時のプレイヤーだな。ナントとか言ったか」


 俺を覚えているとは流石商人。俺は名前と顔を一致させるのが苦手なので友達は少ないのです。


「買い取りの時以来だな。また何か売りに来たのか?」

「いえ、ユーキさんに鎧を作ってもらおうと思ったんですが、店の場所を知らないので教えてもらおうと思って、知ってそうな人を訪ねている所です」


 俺の答えを聞いたサンドマンさんが首を傾げた。


「確か俺と一緒にフレンド登録をしていなかったか?」

「あ」


 そういえばしていたような気がする。結局全く使っていないので忘れていた。ステータスウィンドウを開いて確認する。


「していました。早速話してみます」

「忘れる奴も珍しい」


 呆れられてしまった。まあ現実でもよくある事なので慣れている。


『もしもし、ユーキさんですか?』

『はい、ユーキです。ナントって、ああ、初心者の鎧を作ってあげたお客さん』


 流石鎧職人、俺の事は鎧で覚えているようだ。


『ねえ、小人さんの映像に映っていたの、あなたでしょ?』


 ちょっと違った。


『そこは後で話すとして、鎧を作って欲しいんです。店を開いたそうで、場所を教えて欲しいんです』

『鎧の依頼?良いよ。今どこ?』

『サンドマンさんの店です』

『サンドマンさんの店ぇ~?じゃあすぐ近くだよ』

『そうなんですか?』

「だってお隣だもの」


 うわっいきなり背後から声がしてびっくりした。振り返ればユーキさんがいる。その隣にはサンドマンさんもにやにやと笑って立っていた。


「びっくりした?」

「驚きました」


 前にもこんなことがあったような気がする。


「あはは。私は素材を買い取るのに便利だからサンドマンさんの店を利用してるんだ。それにしても…」


 おおっユーキさんは俺の鎧に目を向ける。


「私が作った物とちょっと変わってるね、何したの?」

「ああ、検証パーティの人が、始まりの草原のボスを倒すのに耐久値が足りないのに無茶するなと、回復と強化をしてくれました」


 もしかしてあれか、芸術家に多い余計な事をするからやらないという話か?


「良い腕だね、でも、あんまり強化した意味がなさそう。どういう戦いをしたんだか」

「俺は戦いが得意じゃないですから、接近でぼこぼこにやられました」


 仔馬とはいえボスはボス。蹴りは非常にきつかった。


「だろうね、耐久値が間違いなく酷く下がってるよ」


 ユーキさんが鎧を撫でる指の動きが体にまで伝わってくすぐったい。


「こんな所で話すのもなんだ。うちの店に来ればいい。どうせ売りに来たんだろう?」


 サンドマンさんが自分の店を指す。店の奥というのは見るのが初めてだ。勧めに従って、店の中で藩士をすることにする。


「これはまた全く違うな」


 店の中は外とは全く違った。一面ガラス張りの部屋にガラスケースの中に陳列された商品が展示されている。TVで見たアメリカの店がこんな感じだった。ようは商品を取られないようにするための展示の仕方だ。


「こっちはいかにも警戒している風な作りですね」

「まあな。盗賊が普通に存在する世界だから、触られただけですり替えられる場合がある。外の商品は大した効果はないか他でも普通に売っている物を展示している」


 盗賊系のスキルでテレポートとかあったらどうなるんだろう。俺はそんな事を思っていたら、さらに奥に連れて行かれた。


「ここに売る物を出してくれ」


 買い取り場用の大きな台が置かれている部屋だ。周囲は棚で囲われていて、見た事がある物ない物、素材の状態で置いてあった。


「少し買い取り場の方で売ったんです。トリルさんがよろしくと言っていましたよ」


 アイテムを取り出しながら俺はさっきの事を告げておく。


「ははあ、あっちにも行ったのか。今度から俺に売りたい時はこっちに来てもらって構わないぞ」

「そうですね、売れるものがあればそうします」


 アイテムは台一杯になっている。


「この前がこの前だからこっちに案内したんだが、あんまり変わらなかったな」


 しつこく狩っていると普通にそれなりの量の上質素材はあります。


「これ、見た事ないや。何だろう」


 ユーキさんが骨を一つ持ち上げた。


「む、≪鑑定≫センスではガーディアン・フォウルの大腿骨とある。すると始まりの草原のボス、ガーディアン・フォウルのアイテムを持っているのか?」


 サンドマンさんが口を挟んできた。


「はい。それで、そのアイテムを含めて鎧を作ってもらおうと思っています。ユーキさん、どうですか」

「ちょっと待ってて」


 ガーディアン・フォウルの素材を見て色々と鑑定か何かしているユーキさんは他のビギの草原の素材をくっつけては離すという事を繰り返して唸っている。


「何してるんですか?」

「これは結構てこずりそう。時間がかかるけど、良いかな」


 俺の質問に答えずにユーキさんが顔をあげた。何か目が輝いている。


「ああ、こうなったら職人としての方に頭が行ってるから、聞きたい事は後にした方が良いぞ」


 サンドマンさんの言葉に俺は頷いて後ずさってしまった。ユーキさんの目の輝きはキラキラどころかギラギラとかランランとか、物凄く眼力のある物でした。


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