97治癒魔術が発見されたそうです
現実30日目。
エメラダのハイドルートが解放されていた。重要なのは特殊NPCという部分で、もしかしたら称号を消すNPCが出てきているかもしれない。後で探してみよう。
さて、チェックインはしたし、お菓子は頼んだし、次に行こう。センスを買いに神殿へ行くのだ。何を取るかは決めている。王都でやる予定の生産系の追加だ。その後今ある分をレベルアップして上位に上げないといけない。
そして神殿へ行くと以前と似たような光景にでくわした。神官王になると宣言していたプレイヤーがまた倒れていた。
「おーい。生きてるか?」
ゲームなので死ぬことはないが何で一々道のど真ん中で倒れているのか。
「う、ううう。眠い」
「まだ寝不足なのか」
これはゲームの中の仕様なのかリアルなのか分からない。ゲームによっては睡眠値という物がある。ゲームの中で睡眠をとらないと寝不足の状態異常が付いて動きや能力発動が悪くなるタイプの物だ。しかしこのゲームは別にそんな物は付いていないはずなんだが、何で倒れているんだ?
「おーい。こんな所に居ても通行の邪魔だから、引きずっていくぞ」
「やめてくれ~頭が割れる~」
もしかして繰り返してるから何回か引きずられていくような事をやらかしているのか?
「うううう」
プレイヤーネームに注目すると、一度名前を聞いたプレイヤーなので表示された。そうそうメシアという名前だった。俺は人の名前を覚えるのが苦手なので現実にも欲しい機能だ。今回は前回ほどではなかったようでメシアは自力で立ち上がる。
「何でまた外で寝てたんだ?」
「うん、実は神聖魔術をついに見つけたんだ」
「なんと」
それは凄い。その割に掲示板で広まってないのは何故だ。
「早速掲示板に書き込んだんだが、大事な≪神力≫のセンスの取り方が真面目に神官として修行するという物なので、不評何だ」
前に聞いた修行から行くと、それは確かにきつい。人によってプレイは違うが、俺のような魔術でファイヤー!な攻撃をしたいだけで後はのんびり過ごしたい、そんなプレイヤーにはやりたいと思わないだろう。
「それは不憫な事で」
「お前も言い方が古いな」
ほっとけ、時代劇は好きなんだ。メシアはまだふらついているので肩を貸す。
「そういえば、神聖魔術ってどんな物なんだ?」
「いや、それが俺は修行ばっかりな物だから最初の一歩で止まってる。≪神力≫と≪魔術≫でヒールという治癒魔術が発動したのは確かだ」
「まあ色々やってみたら?俺がいうのもなんだけど、初心者フィールドに行くプレイヤーにパーティを組んでもらうとか」
「今まで他のプレイヤーと付き合った事がない」
「攻撃手段は?何か持っていないのか?」
「≪杖≫ぐらいだな≪格闘≫を取ろうか迷ってるところだ」
ううむ、何かセンスの相談会みたいになっている。俺はこういう事をやる柄ではない。リルさんが居たら丸投げしたい。あの人は相談役がうまそうだ。
「とりあえず俺に言えるのは、誰か組んでくれる人を見つける事をまずやるということかな。俺も王都には長くいる訳ではないから、それしか言えない」
「やっぱり戦わないと上がらないか」
「このゲームは例えば攻撃力なら実際の戦闘と、生産活動の内鍛冶で上がるようになってるから、何かで上がるかもしれない。けれど、俺はそれを知らない。辻ヒールとか治療師みたいな事をやる訳にもいかないし。治療師みたいな物ができないか聞いてみたらどうだ?」
治療師は神殿に言えばやらせてもらえるかもしれない。部屋に着いたので取りあえず寝るように言って押し込んでから、俺はセンスを買いに戻った。
「こんなもんかな」
ああ、予算を気にせずに物が買えるというのは素晴らしい。籠にセンスを入れて会計に持って行く。
「おや、ナントさん。先ほどはメシアを運んでくれたようで、有難うございます」
ラジエルさんが店番をやっていた。
「お久しぶりです。あと2つほど用を済ませたら王都でしばらく暮らします」
そうだ。弟と話した速さを上げる生産職を聞いておこう。
「相談なんですが、王都では生産を主にして生活する予定なんです。圧倒的に能力が足らないので、先に進むのにも能力を上げる生産職をと思いまして、攻撃を鍛冶、器用さを細工で上げる予定なんです」
「空旅人にはそういう人が多いですね、私達は思いもつきませんよ」
NPCはそういう鍛え方をしないのか?
「相談とはずれますけど、こちらの方はどうやって鍛えるんです?」
「戦士志望の方は近所の元戦士や元冒険者の方に鍛えてもらったり、騎士団に入って鍛えたり、ああ、町に警備隊用の訓練所がありますが、そこに行ったりしていますよ?」
ラジエルさんが教えてくれた。もしかして飛ばしたチュートリアルの方に訓練所の話があったかもしれない。訓練所で初心者の訓練をするのはよくある話だ。
「そうなんですか。それで、話を戻しますが、速さってどんな生産職で上がるんですか?」
「速さですか」
ラジエルさんが腕を組んで顎に手をやる。
「さっきも言いましたが、あまり足を鍛えようと言う事で仕事をする人はいないんですよ。脚が速い人は、普通に伝令や配達人に就職しますし」
やっぱり配達系クエストなのか?
「速さと言えば、都会の人は歩くのが速くて走るのは遅く、田舎の人は歩くのは遅いけれど走るのは早いって聞きました」
それは現実でもある事実である。それを実現するには農業でもやればいいのか?
「後は狩りをする人や盗賊が逃げ足が速いと」
速さがコツで早いのかスピードが速いのか悩むな。
「それではまずは配達を頑張ってみます。これだけ下さい」
籠に入れたセンスをラジエルさんに渡す。
「これは凄いですね」
「生産用なんですけど、金が入ったので買っておこうと思いました。また盗まれても困るので」
「はっはっは」
冗談と思われたのか笑われた。前に一度ありました。
「それにしても、≪神力≫ですか、メシアの苦労が実になって何よりです」
職業としては神官になるのか?どうもメシアを見ていると気になる。
「何言ってるんですか。ナントさんも持ってるじゃないですか」
「えっ」
会計の間のおしゃべりで話しかけたら変な事を言われた。ステータスウィンドウを開いてセンスを確認する。
『条件を満たしましたので隠されていたセンスを公開します』
その一文と共にしれっと≪神力≫センスが加わっていた。
「えっ?俺は修行なんてしていませんよ」
ここでは文字の勉強をしたか、依頼を一つ受けた事しか心当たりがない。どっちだろう。それはそれと
して、何か凄い物が手に入ったのは分かる。
「≪神力≫何て、神官でもないのに何で手に入ったんでしょう」
俺は思わずラジエルさんに確認してしまう。
「そうですね、神の力を感じる何かに出会ったとか、触ったとかありますか?」
特に思い出さない。しいて言えば荷物を運ぶのを手伝ったくらいだ。
「とにかく、そういう事でも≪神力≫は身に付きます。最も神殿で修行するよりもはるかに少ない力ですから、治癒魔術なんかも範囲や威力が少ないですけどね」
それでも何か力があるのは確かだ、ラッキー、もうけ儲けと思っておこう。いやそうじゃなくて。それが本当ならさっきのメシアの話の掲示板で広報できる。
「≪神力≫はあのメシアが治癒魔術が出来ると言ってましたが、鍛え方ってどうなんですか?治癒魔術の連続ですか?」
これは聞いておかないと俺も治癒が使えるかどうかの瀬戸際だ。使えるようになったらポーションを買
いに行く時間が少し減る。ほとんど買っていませんけど回復は必要なのは分かっているんです。
「一番は修行ですね、毎日の祈りで力は増します。確かに治癒魔術でも上がりはします」
俺には向かない方法だ。俺は治癒魔術のほうで熟練度を上げよう。
「ああそうだ、ラジエルさん、その事をメシアに教えてあげましたか?」
「いえ、彼は自力で≪神力≫を得ましたから、後は熱心にその力を上げる修行をしていますし」
なまじ自力で獲得したから駄目な方か。
「メシアは≪神力≫の事で色々と悩んで寝不足なようですから、教えてあげて下さい。倒れない方が良いでしょう」
普通にセンスを買いに来たのに毎度毎度倒れられていても驚いて心臓に悪い。
「そうなんですか。何も言わないので、修行熱心な人とは思っていましたけど」
なんというか、俺に似ている人間だ。あれだ、人に聞きたいけど聞くのは悪いかと思って一人で解決しようとして無理する性格。俺と同じ部分がある。考え過ぎで空回りとも言います。そうか、この感情は同族への同情心みたいな物だったのか。
「ところで、メシア以外に神殿に親しい空旅人はいますか?」
俺の頭についでだから神殿で対処してもらおうという考えが浮かんだ。プレイヤーはセンスを買いに来る人がいるから前に受けた直接の依頼を受ける人も居るはずだ。
「いませんね」
否定が帰って来た。
「空旅人の方々はどうも神殿を神への祈りの場所というよりもセンスを買いに来る場所と思っているようです」
これは俺もそう思っているので否定できない。どれだけ親しかったらクエストを受けられるんだろう
か。
「それでは戦士系の神官とかはいますか?」
「神殿騎士ですか?何人かはいますがメシアは神官ですし、神殿騎士は神官が自分たちの訓練に入ってくるのを嫌いますから、組むのはちょっと難しいですね」
「いえ、神殿騎士さん?そちらでもいいんですが、戦闘訓練を積んでいる神官さんはどうですか?」
「神官は神殿での修業が第一ですから、外で戦闘訓練をすると言う事はまずありません」
ふう、もう思いつかない。俺はやるだけやったという事で、諦めよう。メシアに俺に説明した事を教えておいてくれるようにラジカルさんに頼んで俺は神殿を出た。次また会うとしても、今回は忙しいので後回しにしよう。
次は鎧を作ってもらおう。生産の屋台には久しぶりに行く。そして迷いかけた。やっぱり王都は複雑だ。
「そして店がないという」
以前鎧を作ってもらったユーキさんの屋台は無くなって、別の人が屋台を引いていた。
「ユーキ?ああ、ここに前に屋台を開いていた人か。あの人なら金が溜まったんで店を開くってさ。流石生産のトッププレイヤーは違うね」
あの人はトッププレイヤーだったのか。良い物を作ってもらったんだな。それは嬉しいと思いながら、その新しい屋台で買った牛串焼きを食べながら店の場所を聞くと知らないという。さて困った。用件が詰まっているのにどうしようか。
何となく妖怪いそがしに取りつかれているような気分がする。せわしない気分だ。




