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87自由時間です

 ログインしました。掲示板では俺、というかユウリが可愛いという話は出ていたが俺については全く出てこなかった。何となく寂しいものです。どちらかというとあの黒い城が何だ、という話で下水道に向かうパーティが増え、ドラゴンはどこだ、という話で各地の都市でイベントを探す人が増えたという。


 俺はマイペースに進めるだけだ。という事で割り当てられていた客室から出る。黒天狗さんはいないようだ。


「すいません、今日は一日待機ですか?」


 メイドさんに話を聞くことにする。出来ればリルさんに話を聞きたい。


「国王からの贈り物を渡すのは夜になりますから一日自由時間で良いですよ」


 シーナさんからお墨付きをもらう。


「でも村の外はやめてくださいよ、以前死に戻って役に立たなかった人が居ましたから」


 結構きつい事をいう。別に出る用もないけれど、クエスト中にどうやったら死に戻るんだ。お土産でも探して山にでも入ったかな。


「それじゃあお言葉に甘えまして、行ってきます」


 早速外へ出掛けよう。

 俺の借りていた部屋のある建物がリルさん達予定ギルド「コナン・ドリル」の仮本拠地でもある。


「お久しぶりの、というほどでもないか」


 すぐに返って来てしまった物は仕方ない。ログアウトの時間もあるしもう鍛冶も終わっていると予想する。終わってなかったら待たせてもらおう。


「すいません、リルさんはいますか」

「はーい。あらナント、もう王都の用は終わったの?」


 リルさんは鍛冶が終わったばかりなのか顔の汗をタオルで拭きながら顔を出した。皆して俺が即行で村に帰ってくると思っているのか。


「まだ王都の用は終わっていません、それよりもリルさんに聞きたい事があるんです」


 俺はステータスウィンドウを展開した所持金を確認する。金額欄は五百万から変わっていない。


「凄い金額が入ってたんですが、仕入れ金とかを間違えて入れていませんか?」


 大金は持っている不安になる。小市民などとは言わないでもらいたい。


「いいえ、適正価格よ」

「適正って、どこをどうすればこんな金額になるんですか!」


 思わず声を大きくしてしまった。いけない、大金を持っている時は小さな声でないと盗賊を呼びよせそうな気がしてならない。


「あなたね、貴方が殆どあの屋台街の肉を一人で供給していたの、理解してる?」


 俺一人?そんなに屋台は少なかっけ?疑問はそのまま口に出ていた。リルさんに勧められるまま椅子に座る。


「屋台が少ないんじゃなくて、貴方が肉を採りすぎているの。流石は『家畜虐殺者』なんて称号を貰うくらいだわ。あれだけの屋台の必要量を満たして余るなんて」


 確かに百回を区切りにして何回か往復した。仔馬に出会ってからは仔馬を出現させる方法を他に知らないので頑張って百匹倒しては仔馬を呼んでいた。俺が食べ切れる物でもないので全部屋台用に卸していた訳ですが。


「結果としては良かったんだけどね」


 良かったのか、なら今度からもそうしよう。


「元々、β版プレイヤーが先に色々説明したから初心者フィールドに来る人は少なかったの。基本的にβ版ブレイヤーは自分たちが有利になる都市に行くし、必要なアイテムを採ったら見向きもしないわ。

 今も居るのは本拠地システムが解放されたからどんな場所か見てみようという見物人、砂浜の観光客、ペットを望むプレイヤー、王都やここで生産しているプレイヤーが主ね」


 少ないのは納得した。β版での情報が多かった弊害というものだ。


「それでも多すぎませんか?」


 俺に大金が来る理由が分からない。例えば肉を卸していた屋台の料理人が料理大会で優勝して、練習に肉をくれた俺に感謝して寄付をくれたとか。…自分で言っておいてなんだがないな。


「じゃあネタ晴らししましょうか。大金の理由はガーディアン・フォウルの肉のせいよ」


 ボスの仔馬に何かあったのか。やっぱりボスだけあって特別な力があったのか?


「何がありました?」

「あの肉を腕のいい料理人が調理すると、防御系のバフが付くの」


 俺の疑問に対してのリルさんの解答はちょっと予想外だった。俺は武装的な意味で何かあったと思っていた。


「あの仔馬のガーディアンという称号にあるように、防御系のバフが付くけれど、それ自体はそこまで強くないわ。ただ、料理でバフを上限までかけたプレイヤーにも追加でかかるのよ。満腹値さえなければ上限知らずでね」


 つまり、防御系の能力向上を満腹という裏メーターがいっぱいになるまでかける事が出来るのか。満腹というメーターは初めて聞いた。


「満腹なんてメーターがあるんですか」

「知らなかったの?普段のステータスで空腹バーが満タンになるのはいわば腹八分目なの。実際はもう少し入るのよ」


 卸していたのは上肉ではなく普通の肉だったのに、流石ボスの肉だ。


「それに、初心者の段階では他のボスもバフが付くけれど、ボスの肉を卸していたのは貴方だけなの。普通は自分たちで食べるしね。初心者フィールドはボスであっても必要じゃない限り上位プレイヤーは来ないから」


 つまり市場に流れないから高く売買されたと。


「実際タイミングも良かったのよ。いくつかのトップギルドと呼ばれるところが強力なボスモンスターと戦うのにギリギリまでバフをつけたいからって買って行ったんだから」


 もしかして弟がヒュドラ退治に買って行ったというんじゃないだろうか。


「それにクレイが調子に乗ってオークションなんてするから余計に値が上がって」


 それが原因か。通りで異常な値段になったと思った。俺はリルさんの説明にようやく納得した。これでサファイアをはじめとした上質な素材を販売したら恐ろしい事になりそうだ。気を付けよう。


「それで、私からも聞きたい事があるんだけど」


 リルさんが頬杖を突きながら俺を見る。おお、美人にそうみられると背中がこそばゆい。


「動画を見たわよ」


 見られていたかするとリルさんが次に言ってくる言葉も分かる。


「小人族の事を聞いても良いかしら?」


 ほら来た。


「話さない約束ですから、先に話していいかどうかを聞いてからにしたいです」


 せめてゲームの中でくらい四角四面に約束を守らないといけない。俺なりのプレイヤーロールという物だ。リルさんの言葉をはぐらかすような形になった。


「そういうと思ったわ」


 俺の答えは予想されていたようだ。


「でも居場所はともかく、何かの素材が採れるかは教えてくれるでしょう?変わった物がありそうだし」


 リルさんの目が怖いです。獲物を狙う鷹の目だ。

 しかし、俺がやった事と言えばディアトリマシリーズを弟の手を借りて倒した事と子守だけだ。そこを正直に言っておく。


「そのディアトリマの時の動物用忌避剤は何かに使えそうね」

「そうですか?」

「例えば、牧場、養蜂場に野生動物が来ないように狼や熊用の忌避剤を使えば見張りが楽になるわ」


 成程、やっぱり考える人は考えるんだな。


「あ、そうだ。クロココの実のジュース、あれは小人族からもらった物ですが、材料の実を見ました。こっちでも見ればわかります」

「おいしかったあのジュースね?どんな木の実なの?」

「木の実じゃなくて草の実ですね」


 例え分かっていても俺は作る気にならない。


「小人族の掌くらいの実みたいな物からゴマ粒くらいの実際の実を取り出して漬けるんです。人間には無理があります」


 何となく防衛線を張っておく。俺としてはまた貰いに行きたいのであまり輸入されると困る。


「そうなの。それは高価な品になるわね。でも現物は見ておきたいわ。SS撮ってない?」

「撮っていません。でも高価なものになるなら売れないでしょう」


 俺の考えをリルさんが左右に指を振りながら否定する。


「そこは値段を調整するわ。三方よしが商売の基本よ」


 リルさん、あんた、滋賀県民だね!心の中でツッコミを入れてしまった。

 滋賀県、つまり近江の商人は三方よしと言って買う人、自分、売った人、皆が得したと思う様に商売するという。そんな話は置いておくにしてもリルさんの方がクレイさんより商売上手に見える。


「実は後二つ、こっちに来た用があるんですが良いですか?」


 リルさんに別の目的の話を聞いてみる事にする。話をそらそうという気持ちは半分しかない。


「まずは動画見たなら知ってると思いますけど、ドワーフが追っかけられていたサラマンダーかファイア・ドラゴンのようなドラゴンの情報が欲しいんです。リルさんは鍛冶をやっているからドワーフ経由で

何かありませんか?」


 弟の用を先にしよう。


「ああ、あのドラゴンね、動画では知ってるわ。私もどんな鉱石が手に入ったのか知りたいから知り合いに聞いてみたけど、分からなかったわね。石動がなにか心当たりがあるって言ってたから、戻ってきたら聞いてみると良いわ」


 おお、思いがけない幸運だ。俺が村を離れるまでに戻って来てくれたらいいんだが。


「それから、俺が今回受けたクエストなんですが、称号に『ビギ・セカの村の一員』という物があるのが条件の一つでした。まだ何か変な称号増えていませんか?見てください」

「『ビギ・セカの一員』?何の称号なの?」

「ギルド長のグジラさんによるとこの称号を持っているプレイヤーは本拠地をビギの村、セカの村に置いてなくても全初心者フィールドに入る事が出来る称号と言ってました」


 つまりこういうタイプの称号を持っていると、一々本拠地を設定しなくてもその場所には入る事が出来るという事だろう。


「同じような称号はありそうね、それが本拠地以外で通用する土地を持てるという事ならば役に立つわ」


 弟のいるレンジとビギの村。俺としては役に立つような気がしない。


「それじゃあ称号を見せてもらうわ。良いかしら」

「どうぞお願いします」


 変更されている称号があるのは知っている。「初心者の初心者」が「初心者の出世魚」とかいう鰤か鱸みたいな扱いになっている。「読書家」から「乱読家」というのもあった。どうか変な称号が増えていませんように。


「結構変更があるわね」

「そうですか?」


 リルさんが見た隠し称号を含めて現在俺のステータスウィンドウから見られる称号は普通の称号として


「戦士見習い」

「行商人見習い」

「魔術師見習い」

「冒険者見習い」

「乱読家」

「王都冒険者ギルドの新人」

「初心者の出世魚」」

「ビギ・セカの一員」


 が付いている。これは納得できる。俺も取ろうと思っていた職業が大体だ。弓矢用に「狩人見習い」も欲しい所で、これは後でギルドから依頼を受けよう。

 そして問題の隠し称号で初めて見たのは


「初心者武器の鬼」

「上級家畜虐殺者」

「七神信仰者」

「小人族の友」


 確かに称号が変化していた。合わせて確認すれば新しい称号と呼べるのは「ビギ・セカの一員」だけになる。変化した称号の内どれがどの称号かと言えば


「初心者の出世魚」が元「初心者の初心者」

「初心者武器の鬼」が元「初心者武器の趣味人」

「上級家畜虐殺者」が元「家畜虐殺者」

「七神信仰者」が元「神殿関係者(小)」


 どういう変化をしたんだ。


『初心者の出世魚

 「初心者の初心者」の称号を持っているプレイヤーがNPCに認められた証し。一部のNPCから好意的に見られる』


『初心者武器の鬼

 初心者の武器を使いボス討伐を行った証し。初心者の武器を使っている間攻撃力が1.5倍される』


『上級家畜虐殺者

 称号「家畜虐殺者」を所持しビギの草原でガーディアン・フォウルを狩り続けた証し。ノンアクティブモンスターからの経験値、アイテムドロップが得られがたくなっている。またすべてのフィールドでペット化が不可能


※現在「初心者の出世魚」の効果でアイテムドロップへは効果無効となっています 』


『七神信仰者

 この世界の七大神の真実に祈りを捧げた証し。一部真実に気付いたために次の段階へ進むことが出来る』


『ビギ・セカの一員

ビギの村、セカの村の住人に一定以上認められた証し』


 「初心者の出世魚」「七神信仰者」がよく分からない。NPCに好感をもたれるという事はクエストを受けやすいとかか?

 神殿で全部の神様にお参りしたのは事実だけれどそれで付いていた称号は「神殿関係者(小)」のはずで、どこで変化したのか分からない。

 逆に「初心者武器の鬼」「上級家畜虐殺者」は分かりやすい。そしてショックだ、俺はペットを持つことが不可能になっていた。嫌な事実だ。

 「ビギ・セカの一員」も分からない方に入る。効果はグジラさんから教えられたような本拠地でなくとも本拠地システムのような恩恵を受けられるとかだろう。そこまで何をした事もないのだが、何故もらったんだろうか。


「ええと、ご愁傷様?」


 「上級家畜虐殺者」を見たリルさんに慰められた。いや別にペットが欲しい訳でもないんだ、としておこう。


「しかし新しい変化はありましたけど意外と称号は増えませんでした」

「気にしないでもいいわ。「初心者武器の趣味人」や「家畜虐殺者」に上があるのが分かっただけでもいい情報だから」


 うむ、俺の心にグサッと来る台詞だ。いざとなったらテイマー系のセンスを取ってテイムしてやる。


「大丈夫、変な称号ならいくらでもあるからあなただけが変な称号という訳でもないわ」

「変な称号ってなんです?」

「ある動物系のテイマーが「モフモフテイマー」という称号を取ってるそうよ、効果は動物系しかテイムできないとか」


 普通に羨ましい。ペットというか、手触りの良い毛皮の可能性は残っている。俺の顔を見たリルさんが何故か慌てている。そんなに変な顔になっていたか?


「そうねクレイも持ってるけど、「食肉供給者」の称号は、初心者フィールドでのモンスターアイテムが必ず肉になるわ。それに宿屋に引き籠って仲間から養われているプレイヤーに、「ニート」の称号が付いたらしいし」


 何故か饒舌なリルさん。


「ところが別の人には「パラサイト」の称号が付いたのよ。何でなのか調べてる人が居たわ」


 結局鎧のパターンが分からなかった星の闘士の敵ですか?と、言うよりも、


「クレイさんの称号を言っても良いんですか?」


 人の称号をばらすのは良くないという傾向だろう。


「大丈夫、掲示板には書き込んである情報ばかりだし、クレイも知り合いには公表してるから。そうしないと自分で採れるアイテムが食料系だけになって商売に差し支えるしね」


 クレイさんの称号と商売を考えるとまずいのか。


「ナントが居るってホントか」


 ユーが息を切らせて入って来た。


「おや、ユーこんにちは」

「何で王都に行くんだよ、うちの村で狩りしてもらおうと思ってたのに」


 俺は別に狩りで生活をしている訳でもないんだか。きっとイベントと言う意味だろう。漁村だから養蜂なんて物があるなら養殖もありそうだ。


「いやちょっとセンスを買いに、後は王都に拠点を移すからその為に」


 とはいえ現在まで全く移せていない宿屋ぐらしだ。


「あのな、実は…」

「あーっユー、言っちゃ駄目!」


 何か言おうとしたユーにジュリアが後ろから口を塞ぐ。


「ふごふご」

「ナントをびっくりさせるんだから」

「今それを言われると何もビックリしなくなると思うよ。観念してネタ晴らししたら?」


 俺の目の前でびっくりさせる何て言われても困る。ジュリアに促してみる。


「秘密!きっと物凄く驚くよ!」


 驚くのは確定で何かあるのか。にやにやと笑っているジュリアの顔から何をするのか楽しみにしていよう。


「ああ、そういえば二人に言わないといけない事があったんだ」

「ぷはっいい加減離せよ。何だ、言いたい事って」


 ジュリアの手を振り払ってユーが離れた。俺はペットを渡した二人に丁度いいと思って説明を始める。


「つまり、もうペットを取ってくることが出来なくなったのね」

「え~っ海で海豚とかを取って欲しかったのに」


 ユーは海豚を何に使うのか。一緒に泳ぐとか芸を仕込むとかかな。


「他の子や弟の分も取って来てほしかったのに」


 なんだかんだと言ってジュリアは弟の事を大事なようだ。良い事だ。


「まあ称号を消す方法を探してみるけど、当てにしないでくれ」

「王都にあるのは称号を隠す人がいるだけよ。しかも、今はハイドルートで隠れているのかいつもの場所にはいなかったらしいわ」


 また面倒な話になって来た。


「そんな話どこかで聞いたような。そうそう、魔力炉とかいうモンスター素材に対応して加工できる特別な炉を教えてくれる人が居なくなってたとかいう話をどこかの掲示板で見ました」


 俺が掲示板に話を出したのは仔馬を倒す時のSS撮り方だけで、基本見る専門だ。


「そうなのよ。うちは偶然で手に入れたからいいものの、現在のハイドルートで見つかっていないのは都市だと王都とブルーだけエメラダは発見されてもクリアされてないし、最初に10あると言われたからさらにどこか一つあると言われているの」


 成程。


「王都は偽王国騎士団が主に活動してるから突き上げられているらしいわよ」


 黒天狗さんも大変だ。


「俺は今王都で依頼を受けたんですが、その偽王国騎士団が今回の依頼を譲ってくれないかと言われました」

「あっちも焦ってるのね」


 リルさんがさもあらんと頭を振る。


「偽王国騎士団て、今日来た人は王国騎士団じゃないの?」


 ジュリアが話に入って来た。そういえば村長の家にいるんだった。


「いや、王国騎士団の人だから安心していい。どういえばいいのかな。ジュリア達の言う空旅人の内、王国騎士団に入った人が自分たちをしゃれで偽王国騎士団と呼んでいるんだよ。この世界の生まれじゃないからって」


 間違いではないと思う説明になった。ギルドが出来ればギルド王国騎士団になるかもしれないけれど、今は偽王国騎士団で通しているからこれでいいか。


「それで、俺の依頼は俺が「ビギ・セカの村の一員」を持っているから依頼された依頼だという事で、グジラさんに拒否されましたよ。結局俺が自分の護衛を頼む形で一緒について来てもらいました」

「すると今偽王国騎士団の人が村にいるのね」


 リルさんが立ち上がる。


「一緒に来た黒天狗さんという人がいますね」

「合わせてもらえないかしら」

「ジュリア、黒天狗さんは村長さんの家にいる?」


 ログアウトしているかもしれないのでジュリアに聞いてみる。


「いるよ、お爺ちゃんと話をしてる」


 きっとハイドルートの事でも調べているんだろう。


「それじゃあ紹介しますよ」


 俺も席を立って村長の家に向かった。


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