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85side:レグルス

 目の前をダンジョンのボスモンスター、ハイドドラゴンの吐いたブレスが通る。本来俺を狙っていたブレスはそれをそれリーダーに向かった。

 ≪挑発≫センスから来るタウントスキルの一つで敵の攻撃を引き付け、アーツとして連動するカウンター技で逆にダメージを与えている。こぼれたブレスの欠片も大盾で防いでいる、見事なタンクだ。…、 リーダー、アベルトカインは竜騎士だから広い場所ならともかく狭いこんな洞窟じゃあタンクに徹するしかないもんな。まだ龍をゲットできてないし、それが何となく可笑しい。


「俺の装備になりやがれ!」


 エルフ、バターフライが短剣を鱗が剥げてむき出しになったポイント目がけて突き刺す。このダンジョンのボスモンスターは掲示板に乗っていたものをうまく発見できた。

 ハイドドラゴンというこのドラゴンは姿を隠す能力を持っている。今回ドラゴンで盗賊系の能力を持っているのはこのハイドドラゴンが初めてだから、盗賊であるエルフが必死になっているのも無理はない。


「シャインイング・アロー・フルバースト!」


 魔法使い、ポロポリスの光魔術がドラゴンに突き刺さる。それがとどめとなって黒っぽい巨体が首を地に伏せ、ドラゴンが倒れたというログが流れた。


「よっしゃよっしゃ、とったどー!」


 エルフという種族なのにこのバターフライはうるさい。盗賊の仕事の最中はいるか居ないか分からないくらい静かなのにギャップが酷い。


「落ち着け、まずはどんなアイテムがドロップしたか確認だ」


 このゲームは倒した相手のアイテムがはぎ取らずともアイテムボックスに行く。俺としては他のプレイヤーが予想していない場所を剥いでとんでもないアイテムをゲットするのが楽しいのだが、仕様なので仕方ない。

 ちなみに一番驚かれたのは尻尾をはぎ取ったら心臓が出てきた事か。胸からも心臓が出てきたのでこいつどういう構造のモンスターだと思った事がある。


「お、ドラゴンの牙ゲット」

「やっぱり革が多いな」

「魔力核はだれか獲った?」

「誰も持っていないようだ」


 口々にアイテムを確認しておく。今回は盗賊の装備を作るのが決まっていた。


「ようやく俺の装備が出来るぜ、皆ありがとな」


 うちのメンバーはドラゴンの装備で固めるのが基本なのだが盗賊型の装備というのはある意味ドラゴンと相性が悪い。ドラゴンは基本隠れないで暴れまわる物だから下位のドラゴンには滅多に出てこない。今回のハイドドラゴンは変異種の扱いになる。


「これでようやく全員分の装備が揃ったな」


 リーダーの言葉に皆が頷く。


「あら、全員でもないわよ。確かにメインのメンバーは装備が揃ったけど、サブや一時手伝いの予定の子の装備は手を付けてないわよね」


 現在いる俺達メインメンバーはここに居る6人だ。他のメンバーもハイドルートの周回などで少しずつ素材を集めていても全身ドラゴン素材という事はない。

 一時手伝いで入ってくれる予定のメンバーの装備など全く分からない。ポロポリスの心配も分かる。


「確かレグルスの兄貴も一時手伝いで入ってくれるんだよな、装備の具合はどうだ?この前は会ったときは鎧はプレイヤー製だったが」

「この前王都についたばかりだって言っていたから、全く集めてないだろうな」

「それじゃあ間に合わないじゃないか」


 大剣使いヤマタの言葉に俺は同意する。


「間に合わせで、もし戦争があったら俺の前の装備を貸しておくよ。体型は大して変わらないから」


 家でもほぼ兄弟で服を着まわしている。


「ぺース遅いな。何やってたんだ?」

「確かアーツの練習かな」


 今一緒に居る検証パーティに頼んでいたと言っていた。


「本当に遅いな。何やってんだか」


 ヤマタの次にバターフライが同じ言葉を口にする。


「さあ?兄弟ながら性格が天然だから、どういう思考回路をたどっているのか分からない。この前アーツの練習してたらハイドルートに入り込んだそうだし」

「もしかして匿名希望のハイドルート攻略者か!凄いな」

「いや始まりの草原のボスを倒しただけだから」


 二刀流使い、鬼神丸は興奮するがボスとは言っても所詮始まりの草原、β版プレイヤーが見つけていたら瞬殺している。


「どういうプレイをしているのか気になるな。私達の事は言ってあるのか?」


 リーダーも話に加わって来た。


「ドラゴン素材で装備を作る事と戦争で手を貸してくれという事は言ってある。基本的に人見知りでパーティプレイ向きの性格じゃないんだ」


 ぼっちと言うが、モブとして賑やかしに混ざっているくらいは人づきあいはある。


「どういう人物なのかよく分からないな。戦争の時にどう配置すればいいんだ。少し教えてくれないか」

「構わないよ」


 リーダーも大変だ。


「まず性格はどうなる?」

「よくある典型的日本人だな。そしてガキだ。世間知らずで自分の知っている範囲だけで生きているようなヤツ。のんき者の能天気で本人は真面目でやる気はあるけど空回りするから初めに何をやっておくか何をしてはいけないかをはっきり言っておかないといけない。そして一度言われたら辞めろと言われない限りやり続けるという」

「役立たずって言わないか?」


 バターフライが口を出してきた。


「実際兄弟だから慣れてるけど、どんくさいからイラっと来るときはある。取りあえず魔術でも弓でもいいから遠距離攻撃を出来るように言っておいた。後ろから援護射撃させてればいい。最初に言っておけばちゃんとやるから」

「典型的使えない人間だな」


 バターフライの言葉に俺は何も言わない。


「気を付けなければいけないのは、本人は良かれと思って、例えば弓を取っていたなら矢が尽きた後、敵に剣持って特攻していく事だな。やる事がないとやれる事をやるという考えが空回りしてるんだ。後面倒になってくるとやっぱり特攻しようとする」

「特攻て、脳筋だなあ」

「死を恐れないような性格は色々困るぞ」


 呆れたような鬼神丸の言葉とリーダーの言葉。


「さっきも言ったが、余計な事をするなと言って、目標を与えておけばそこで手を止めるよ。ただし、この場合、言われた事をなんでもしようとするから。戦闘中に冗談で水を取って来てくれと言ったら本当に取りに言った事がある」

「どういう性格だ?」

「ガキだから素直すぎて正直すぎるんだ。天然も入ってると思考方向がよく分からない。まあ悪い人間じゃないのは確かだけど」

「天然なのはわかる。なんで崖を登るのかわからないよな」


 鬼神丸は納得しヤマタの顔に訳が分からないという表情が出ている。


「ソロをやってるのはそういう部分を自覚して、人に迷惑をかけないようにと思ってるせいもある」

「さっき言った特攻をかけるというのとビビりというのは矛盾しないか?」


 ヤマタの言葉ももっともだ。


「兄貴はプライベートと仕事、ゲームと現実をきっちり分ける性格だから。ゲームなら死んでも生き返るだろう。だから自分が死んでも目的が達成されるなら平気で死ぬような攻撃を仕掛ける。同時に怠け者の部分もあるから、面倒くさくなってくると後の人間に丸投げする要領で特攻する。現実だとストレス解消で買い物かランニングに走るな。

 デスゲームに遭遇したときなんか笑ったぞ。人里離れた、でも危険なモンスターが居ない場所を探し出して、ゲームの中なのに引き籠ってた」


 俺にも一緒に隠れていようと言ってきたが、デスゲームは面白かったので隠れ家として使わせてもらって戦闘に参加した。今日びデスゲームでも死なないように設定を厳しくしてある物が多い。


「現実でないからどんな無茶でもする、しかし現実に命がかかると引き籠るか。まあ普通の人間だな」


 リーダーの結論は出たようだ。


「それじゃ、この話はここまでという事で、まあマジック・ポーション山と渡して魔術を射ち続けろと言っておけば本当に戦争の最後まで打ち続けるし、指揮官の命令には素直に従うから使いやすいのは確かだよ。後ゲームの金は金と考えていない部分があるから大金持ってるときは気前が良い。貸してと言ったら簡単に貸してくれる」

「なに。良い人だな」

「お前には間違っても貸さないように言っておく」


 バターフライが金を持つと装備の時以外はギャンブルか女に突っ込むからたまったもんではない。

 俺としては兄貴の運用は単純な物にしようと思っていた。


「ふむ、余計な事をさせないような独立遠距離部隊を作っておいた方が良いな。指揮官は…、レグルスやるか?」

「死んでも御免だ」


 兄貴以外にも問題児と一緒なんて面倒がメーター振り切るに違いない。


「とにかく、先に俺の装備作りに行こうぜ」


 バターフライの言葉をきっかけに、俺達はダンジョンの外へと移動した。


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