83襲われました
「この先に魔術師が待っている。作戦はあるのか?」
黒天狗さんが俺を呼ぶ。
「そうですね、弓で≪命中≫センスを持っているので当たるだけなら当たります」
「そんな事言って全部初心者の装備じゃないか。アーツ使っても大した威力ないぞ」
それが問題だな。
「仕方ない。良いか、俺がまず魔術師に突っ込む。早々に片をつけるから、ナントは他の奴の足止めと護衛をやってくれ。メイドも居るし、初心者向けクエストだから何とかなるだろう」
流石騎士団に入っているだけはある。俺が怪我する前に頑張って活躍して欲しい。
「それじゃあ、普通に進みましょう」
俺が御者台でそういうと、馬車は再び動き出した。俺の隣に並んで馬を歩かせる黒天狗さんは作戦を次々と伝えてくる。
「盾を持ってるなら≪挑発≫センス、あるんだろう。発動しておいてくれ」
「盾は身を守るためだけに使ってますから、持っていません」
「使えないな」
俺はソロで戦うので≪挑発≫センスはとっても意味がない。いや、矢を撃ち尽くした後に挑発に入るのはアリか?弟にどうするか聞いてみよう。
「じゃあ盾なら守りの能力がなんかあるだろう。初心者でも確か「ファースト・シールド」という相手の攻撃をまず自分で受けるスキルがあるはずだ」
それは覚えている。ソロだと意味があるのかないのか分からない技だと思っていた。こういう時だと役に立つ。
「とにかく馬車を守っておいてくれ。後は俺が片付ける」
おお、かっこいい。すぐに逃げようとする俺とはえらい違いだ。戦闘は任せよう。任せられるとなると急に気が楽になり俺はのんびりと風景を見つつ察知のセンスを交互に発動させて練習を繰り返したりアーツを組みなおしたりする。
黒天狗さんが直接戦闘なら≪弓≫センスで援護したほうがいいか。
「うっ」
俺がうめき声をあげると黒天狗さんが何かに気が付いたように前を見る。
俺の≪気配察知≫センスは魔術師どころかその周囲の大量に召喚された何かを見ていた。うごうごと何かが密集して動いている様子が見てとれて、それが何か気色悪いのだ。
「大量のリゴブリンが居ます」
≪視覚察知≫で改めて何が居るのか確認して、俺は黒天狗さんに警告する。
「分かった。俺はすぐに突撃する。これ以上召喚されても困るからな」
既に感知していたのか魔術師が見えたと同時に黒天狗さんはすぐさま突撃する。
「はあっ!」
「近寄らせるな。我らの大儀の為、王家の血を奪うのだ!」
魔術師がリゴブリンに命令を下す。リゴブリンが馬に乗った黒天狗さんに集中して攻撃し、他にいた盗賊が馬車へ、つまり俺の方へやって来る。
普通の盗賊だけなら分かるが何でリゴブリンをこんなに操作できるような魔術師が出てくるんだ。やっぱり王族系のクエストだからか?
「確かお姫様だったな。おい、お姫様を置いて行けばお前らは見逃してやる」
悪役のテンプレな台詞だ。
「悪党の言葉に耳を貸すことなどありません」
中から出てきた、ええと、金髪ポニーテールのシーナさんだったか、メイドさんの一人が外に出てきて俺に並ぶ。その手には長剣を構えている。馬車の上が開いて、そこからクロスボウを取り出した誰か、良く見えないので名前が分からないがメイドさんの一人が陣取る。
「くそっ人間はともかくリゴブリンが面倒くさいっ」
黒天狗さんは人間とリゴブリンの数の暴力に押されているようだ。
「ファースト・シールド」
早速俺はスキルを展開。盗賊の後から飛んできた矢が俺だけに当たる。
「はあっ!」
シーナさんの剣が盗賊を倒す。見事な腕だ。
「こっちも一斉に掛かれ!」
盗賊が声を荒げて襲い掛かって来た
「ファースト・シールド」
俺は慌てず騒がずスキルを展開する。シーナさんに向かっていたはずの盗賊も俺に向き直る。理由は分かっているけれどどういう現象だ。ゲームの仕様と言うやつだな。
「これで一丁上がり!」
黒天狗さんが先に自分の近くの盗賊を倒したため、俺の方に盗賊、黒天狗さんの方にリゴブリンと見事に別れた。魔術師は分厚いリゴブリンの壁の向こうだ。
「黒天狗さん!守りを代わって下さい、リゴブリンを倒すのに大技を使います!」
俺が大声で怒鳴る。大技というのはいつもの矢の雨です。名前を設定しても良いけれどもう少し先に進んでスキルが上位に進んだ後にでもしようと思ってそのままだ。しかしそんな事をちらりと考えただけでも盗賊の剣が俺に襲ってくる。≪盾術≫センスがなければ死んでいる。
俺の後には馬車があり、俺が防御に専念している分飛び込んで切り込み、戻るというヒットアンドアウェイを繰り返すシーナさんと矢を的確に撃って出鼻をくじいているメイドさんがほぼ攻撃の中心だ。
俺も時々「シールドバッシュ」、盾で殴るスキルで攻撃してはいるが微々たるものだな。流石に攻撃がきつくなってきたのかメイドさんが追加される。今度は青竜偃月刀のような大きな薙刀?をもって黒髪ショートカットのイーナさん?が参戦だ。
「無理だ!そっちで何とかしてくれ」
無情な黒天狗さんの言葉が返ってきた。
「死ねや!」
盗賊の男が振り下ろす剣を盾で防ぐ。この盗賊はプレイヤーではない。NPCだ。それでもジュリア達の様に普通に付き合っていたキャラクターと比べてしまう。あちらは一般村民で人を殺さなくても生きていけると前提が違う所に居る。あれ、現在襲ってきている盗賊より村長に殺されかけた時の方が怖いな。
「おい、守ってばかりいないで少しは攻撃しろ!」
黒天狗さんの声が飛んできた。微々たるものでも攻撃していますよ、と言いたい。しているように見えないのが問題だろう。
実はゲームで会っても人殺しはやったことがない。モンスターは巨大なのから小さいのまで良く狩りに行っているからから殺す行動にためらいないのは違いがないか。
「危ない!」
イーナさんにどこから飛んできたのか火の玉が飛んできた。盾を振りまわすように動かして防ぐ。代わりに俺の鎧に矢が刺さる。上質な鎧になっていて助かった。スキル発動後のチャージ時間との兼ね合いもきつくなってきた。
「大丈夫ですか?」
「大丈夫です」
メイドさんからの問いかけに答えて、そちらを見ればオーラを纏うメイドさんが大技を放っていた。
「ハイイィィィ!」
イーナさんが中国映画で出てきそうな無双乱舞な技で近くの敵を吹き飛ばしている。うちもらしは馬車からの矢が確実に仕留めている辺り元々の連携の一種か。
「まあ攻撃があれば楽できる」
「ぐわあぁぁぁ!」
このゲームフラグという物はあるらしい。俺が独り言をつぶやいた瞬間に黒天狗さんが大ダメージで気絶する。
「まずい。ちょっと連れてきます!」
「え、はい!」
気絶はまだ死んでいないので俺は慌てて黒天狗さんを連れに行く。≪逃げ足≫だった≪逃走≫センス大活躍の場面だ。
まだそこまで熟練度を上げていないので使っているのは「ラビットジャンプ」「ボアストレート」と≪逃げ足≫センスのスキルだけ、何しろ≪逃走≫センスだとそのまま逃げていくようなすスキルなのでどうしてもこうなる。でも十分何とかなる。
馬を引っ張ったらおとなしく?ついてきてくれた。逃げ出したかったようで少し引きずられたような気もする。イーナさんの攻撃でスペースが開いていたのも運が良かった。
「回復には時間がかかりそうですね」
「ポーションでは気絶は直りませんよね。でも衝撃で目が覚めるかもしれない。かけてみますか?」
馬車からから出てきた黒髪ロングヘアのビーナさん?が診察するのに俺はポーションを差し出してみる。状態異常の一種なので普通のポーションでは効かない。
気絶は時間が来れば直るタイプの状態異常だけれど個人によって時間は様々だ。水をぶっかけるという意味で使ってみればどうだろう。それで目覚めた人はいるそうだ。
「無駄です、やめておきなさい」
意思は伝わらなかったようで、俺はポーションをそのままに盾を構えてシーナさんへの攻撃を防ぐ。
「危ない」
「ありがとうございます。それで、どうしましょう。このままでは手が足りないですよ」
シーナさんが相手を牽制しながらビーナさんを見た。
「エーナ、彼を起こします。許可を良いですか?」
何が始まるんだ。何か凄い事が起こりそうな場面だ。
「死にやがれ!」
「こういう時には邪魔何で、ちょっと黙っておいて」
「ぐぼっ」
突撃してきた盗賊を「シールドバッシュ」で弾き返しておいて俺はおなじみのスキルを発動する。
「タートルガード」
今回はこれだけで発動している。その分時間や範囲をあげて発動したスキルはいつもよりも魔力やスタミナの消費は大きい。
「これは、有難うございます」
「出来るだけ早くしてください」
ビーナさんがお礼を言ってくるのを急かして俺は守りの維持に専念する。
「ビーナ、許可します」
「天の神よ、勇敢なるこの方の意識を元に戻されますことを」
空から何か光が降ってくる。天使のはしごとかいう現象じゃないか?いやこの場合エフェクトというのが正しいな。さっき呪文を唱えていたし、これはもしかして治癒魔術の発見ではないだろうか。
「ううっ」
黒天狗さんが目を覚ました。
「俺は一体」
「黒天狗さんは気絶していました。こっちに引っ張って来て意識を取り戻すようにして貰いました」
俺が簡単に事情を説明すると、黒天狗さんは跳ねるように体を起こした。
「まだ終わってないんだな、良し、魔術師め今度こそ倒してやる」
「先にビーナさんにお礼言っておいた方が良いですよ。何をしたのか分かりませんが、けがの治療もしてくれたんですから」
お礼を言っておかないと二度とさっきのような事してくれないというのは困るだろう。
「ありがとな、改まった礼はこいつが終わってからにする」
ちらりと見るようにビーナさんにお礼を言った黒天狗さんはリゴブリンの方に向き直る。
「もしかして、照れてます?」
「うるさい。さっさと倒すぞ」
「あらあら」
俺が顔が赤いので突っ込んでみると黒天狗さんが大声で怒鳴った。ビーナさんは手を口元に当ててくすくす笑い、メイドさん達も笑っている。さて、戦闘再開と行くか。
さて話は後で聞けるので、俺は毎度の事を実行しよう。
「黒天狗さん、魔術を使います。魔術師はアンチマジックみたいな事をやってましたか」
魔法過ン多な反射全滅は御免です。
「リゴブリンの召喚しかしていないから召喚術に特化しているようだ。そこまで近づけなかったから詳細は分からん」
何も分かっていないのか。魔術はやめた方が良いか?
「それでは早速」
「ナントは弓使いだったのか」
遠距離攻撃目標なんです恐らく。黒天狗さんの言葉を受けて弓攻撃のアーツを放つ。
「≪命中≫「目標固定」≪弓≫「二矢連射」≪弓≫「矢殴」」
簡単に説明すれば≪命中≫は変わらない。新しいのは≪弓≫センスのスキルで、「二矢連射」は文字通り本来ならば2本の矢を同時に撃つ方法。なんとこのセンスを試したところ何故か持てる数が上限の10本から20本に増えた。
「矢殴」は本来は剣の代わりに矢を棒の様に使えるというセンスだ。これを使用するとこの場合矢の衝撃が刺さる、切れるタイプの物から打つ、殴るの殴打タイプへ変更される。
≪命中≫センスで絶対当たるので俺は勢いをつける意味もあって高く矢を放つ。するとこのスキルは威力がました。イメージとしては矢の雨が降るのと投石の雨が降るのとどっちが痛いかだ。これで≪必中≫センスの様に弱点を確実に射抜くのならともかく、初心者の武器で射つ当たり具合は運任せの技なのでこっちの方が良いかと思ってこういう仕様になった。
「ぐあわわわああぁぁぁ」
どんんどんどんんどん
何かあまり矢と言う音でもないが、肉に石でも当たるような音が連続して鳴り響く。矢が当たったリゴブリンがもがいて、または落ちた矢が地面に落ちて、土煙が上がる。一度セットしたらアーツはこういう時楽だ、改めて狙わなくてもいい。
リゴブリンは一撃で死んだ奴もいた。結構効いたようだ。とにかく連射するしかないので射てるだけ射つ。とはいえレベルをさほど上げていない、スタミナ魔力も初心者の域を出ていない俺の攻撃はこういう威力重視でしてどんどんゲージを減らすような技はすぐに使えなくなった。
「どのくらい生き残りました?」
黒天狗さんが土煙に隠れた魔術師一党の方を睨んでいるので聞いてみる。俺には何も見えない。
「リゴブリンはほとんどやったな。魔術師にもいくらかダメージがいったようだ。土煙であっちも周りを見えない今がチャンスだな」
黒天狗さんは良く見える物だ。
「俺は『暗視』のスキルを持っているからな。熟練度を上げれば土煙ぐらいなら透視できるスキルもある」
俺の疑問が顔に出ていたのか、黒天狗さんが教えてくれた。
「今のうちに行かせてもらおう」
流石有名ギルドに入れるだけの腕を持つプレイヤーだ。土煙の中から絶叫が響き、土煙が晴れた後には切り裂かれた魔術師が倒されていた。魔術師はここでのモンスター的な扱いの敵らしく光の粒になって消えた。
「お前ら、まだやるか?」
黒天狗さんが剣を残ったリゴブリン、盗賊に突きつけて殺気を放つ。こちらも大声を上げて逃げて行った。俺ももう疲労がたまっていたので有難い。
「アイテムドロップはなしか。何か手がかりがあればと思ったんだが」
ステータスウィンドウを操作していた黒天狗さんの声が聞こえた。
「アイテムはクエスト進行中の戦闘だと手に入らないんですか?」
「イベント、クエストによるな。今なら魔術師の持ってるアイテムぐらいは手に入ると思ったんだが、持ってなかった。こういうクエストだと、依頼主の方にアイテムがいっている場合もあるしな」
俺が疑問を口にすると黒天狗さんは律儀にも答えてくれる。成程、するとお姫様の方に行ったかもしれ
ないのか。
「すいません、皆さん、アイテムは手に入りましたか?」
俺は戦闘に参加したメイドさん達に声をかけてみる。
「それを貴方に言う必要はありません」
今まで馬車の中にいたエーナさんが顔を出してきた。
「別にもらおうとは思ってません」
「こういう事はちゃんと聞いとけ。こっちが聞きたいのは二つだ」
黒天狗さんが話に入って来てエーナさんを見る。
「まず一つは前提で、アイテムを貰ったのかどうか。二つ目がアイテム魔術反射とかのこっちに不利になるような物だったか。それだけ教えてくれればいい」
エーナさんと各メイドさん達との間にアイコンタクトが交わされる。
「そのくらいなら良いでしょう。確かに私達の方にアイテムが来ました。これは魔術反射を含めて、防御に使う物はありません」
エーナさんの言葉に黒天狗さんが何か考えている。
「すると、あの大義がどうと言ってきていた相手は、召喚を自力で行って、戦闘に使うようなアイテム装備はしていなかったと」
人間の方か。そういう人材を使い捨てにする場合、もっと強い同系統が後で出てくるのがお約束だ。王族うんぬんという事は偽王国騎士団さんの方に関わるかもしれない。
できれば俺の方には来てほしくない。祈っておこう。
「皆さんけがはありませんか?」
ビーナさんが黒天狗さんと俺に聞いてきた。そういえばさっきのは治癒魔術だったんじゃないだろうか。
「あの、さっき黒天狗さんに使った魔術なんですか」
「申し訳ありませんが、守秘義務に触りますので」
やんわりと断られた。仕方ない。方向性を変えよう。偽王国騎士団なら王族の警護もするから黒天狗さんに聞いてみよう。そう思って俺が黒天狗さんを見れば、もう馬に乗って準備していた。
「ナントも早く乗って下さい」
シーナさんから注意を受けて俺は御者台に登る。護衛の仕事に集中するとしよう。
依頼としてはやっぱり初心者向けだったという事か、全く襲撃者は来ずにビギの村に着いた。
「なんだかもやもやの残るクエストだったな」
往復護衛のクエストなのでまだ帰りもある。それでも構えていた分暴れたりないような気分もどこかにあるという気分だ。安全で良いんだけれども肩すかしというのはこういう気分か。
「うむ、ビギの村は久しぶりだのう」
門を抜けるとお姫様が顔を出す。
「お姫様はビギの村に来た事があるんですか?」
お姫様というか、王族でもこんな子供が何をしに村に来るんだ?プレイヤーが来る最初の場所だから別荘地にはあまりよくない。
「結構来るぞ」
「姫様」
「あ、いやそんなには来ないのう。二度目じゃ」
あ、お姫様がエーナさんに言われて手を振って誤魔化している。何度も来るような場所は襲われやすいから秘密にするものと聞いた覚えはある。
「あ、ナントじゃない。何でいるの?!」
こっちの声は聞き覚えがある。
「あ、ジュリア、こんにちは」
御者台の上から挨拶するとジュリアが寄ってくる。
「王都に行ったって来たけど、もう帰って来たの?」
「帰って来たというか、ビギの村への配達クエストなんだけどな」
「何だ、王都でコテンパンにやられたから逃げて来たのかと思った」
この子は俺をどういう目で見ているんだ。
「おう、ジュリア、久しいのう」
「あ、サンローズ様。お久しぶりです」
お姫様が顔を出してジュリアに手を振った。
「今から村長の所に行くんじゃ。一緒に乗って行かんか?」
「良いの?乗る!」
友達なのは確かなようだ。そしてジュリアは何故か俺の方にやって来た。
「あれ、中に乗らないか?」
「外の方が良いの」
「そうか」
もう村の中だし移動速度は速くない。俺は御者台から降りるとジュリアを抱えてさっきまで座っていた場所に座らせる。
「何でナントが降りるの!」
「俺まで乗ったら狭いだろう。仕事中なんだから動きやすい方が良い」
何故ジュリアは顔を膨らませるのか分からない。そして御者さんは苦笑している。
そういえば本来の目的を果たさなければ。
「ジュリア、一つ聞きたいんだけど、リルさんはどこにいるか知ってるかい」
本来の目的、それはリルさんに話を聞いて金の事を聞く事である。
「リルは鍛冶をするのに部屋に籠ってるよ。もうしばらく出てこないんじゃないかな」
「じゃあクレイさんは?」
「クレイは行商でどっかに言ってる」
「他の人は?屋台か?」
「ううん、今はどこかに冒険に行ってるよ」
それはリルさん以外村にはいないという事だな。
「本当にナントとジュリアは中が良いんだのう」
お姫様が話に入って来た。
「そうですか?でもユーともこれくらいは話しますよ」
今考えたらプレイヤーの方には検証パーティー以外話す人がいない。分かってはいたがぼっちだった。
「なんと、ユーとも友達なのか。お主、意外とやるのう」
何をやるんだ?
「ユーは父様が漁師で強い男しか見ないから、見る目が厳しいでのう」
そうなのか。なら俺はきっと友達というかジュリアの子分の延長線上で見られているな。
「それにしても村も変わったのう、エーナ。どう見る?」
「そうですね、あちらには屋台村と描かれていた看板がありましたし、いくつか大きな建物もありました。すべて空旅人関係の物ですよね」
「そうだよ。あっちの建物にはナントが住んでるの」
まだ部屋を取っておいてくれているのかな。それも聞いておこう。
「ジュリアの案内がないと迷う所でした」
そんなに変わったのか。中に居る人には分からないという話は本当なんだな。俺がそんな事を考えていると村長宅に着いた。
「それで、どうしましょう。赤ちゃんにプレゼントを贈りに来たなら、このまま村長の所にお邪魔するのも悪いでしょう、俺達はどこにいますか?」
何か儀式があって面倒そうだ。
「そうですね、いったんここで解散しましょう。私達はこのまま村長宅に宿泊して明日帰ります。いつも護衛の者は村長宅の離れに宿泊していますが、どうしますか」
「その離れに案内してくれ。ナントはログアウトしておかなくていいか?」
黒天狗さんは離れで一旦出るようだ。
「それじゃあ俺も離れに行きます」
俺もログアウトはしたい。なんだかんだと言って戦闘に疲れたので俺も一旦ゲームから離れる事にする。




