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78ペットをあげました

 赤ん坊幼児は見ている分には可愛い物で、世話する分には手がかかりすぎて時間を忘れる物だ。寝ている間だけ天使と言うどこかの言葉を思い出す。

 俺はようやく終わった子守にストレッチをしながらそんな事を考えていた。


「中々集まった」


 広場には籠や樽が下ろされていく。子供が居る人はついでに柵の中から子供を連れて行っている。


「ありがとうね」

「いえいえ」


 お礼を言われるのは普通に嬉しい事だ。そして何か見覚えのある物ない物が広場に集まってきている。


「子供たちを見てくれてありがとう、ご苦労様」


 村長が身長とほぼ同じような茸を持って帰って来た。小人が茸を持っているとやっぱりというほどイメージがあっている。ビギの村の屋台で色々と材料を見ていた俺も見た事がないような物がある。結構採取もやっていたのでここの辺りは詳しいと思っていた。


「これは何です?」


 見た事があるようなないような柑橘類を指さす。


「みりんかんという。これを絞った汁は料理に色々と使える。皮は酒につけて果実酒に使うな」


 これはみりんかんだったのか。カラーズの裏山で採取した事がある。体の大きさが違うと全くの別物に見えるな。


「これは?」


 蓮の実のような蜂の巣のような木の実を聞いてみる。


「これはクロココの実だ」

「へえこれが」


 あの甘いジュースになるので、てっきり木苺みたいな果実だと思っていた。


「これ、どこを食べるんです?ジュースにするぐらいだからすぐに食べられると思っていました」


 俺は村長にクロココの実の事を聞くことにする。挨拶もするけれどこの前の宴会で減ったので補充するのが小人の村に来た目的だったのだ。


「これ、木の実なんですか草の実なんですか?」

「草の実だな。ここの、蜂の巣の部分が食べられない実の部分で、穴にぽつぽつと入っているのが種だ。

ジュースにするのは種の皮をむいた物だな。別の草の葉を一緒に樽に入れてしばらく漬けておくと甘くなる」


 クロココの実のジュースというのは発酵食品だったようだ。クロココの実は小人で胸に一抱えするくらい。そして種をよく見ると人間ならゴマ粒ぐらいのサイズだと思う。


「言っておくが大人間には取らせないぞ。我らの分が無くなってしまうからな」


 俺が採取しても良いけどこれ、人間の手でやったら凄まじく手間だな。最近はやりの生産魔術とかに採取魔術とかがあるなら良いけれど。


「いや、うまいけれど人間はそれほど取ろうとは思わないと思います。むしろ特産品という事で大量注文されてしまう未来が見えます」


 大量生産になれた世代という物なので間違いなくそうなる。


「ならば隠したほうがいいか」

「俺がこの前ビギの村の子供たちに配ったんですよ。だから、知ってる人はいます」


 何か村長に恨めしそうな目で見られた。


「対抗策としては、期間限定、数量限定である事をしっかり伝えておくか、種を大人間に渡してあっちで作ってもらうかですね」


 俺の言った解決策はTVからの流用だ。大量生産できない手作りな地方限定商品をどうやって生産するか、みたいなTVはよくあるのでこれくらいは俺にも分かる。


「どっちがいいと思う?」


 何で俺に聞くんだ。


「決めるのは村長で、この村の人でしょう。他の村に配ってるのか、とか、味は一定しない、とか、そういう事情は俺には分からないので」

「それもそうか」


 村長はどういう方向に向くのか分からないが、俺としてはまだ小人族が公表されている訳でもないので大丈夫だと思う。


「それはそれとして、クロココのジュースは一樽が欲しいんですが、ありますか?」


 もしかするとこれ以後飲めなくなるかもしれないので話してみる。


「あるぞ。そう長く持つ物でもないし大体一年で飲み干すようにしてあるから、宴会で料理に使ったりしてその年の収穫後は早めに古い物を使っている。それでよければある」

「構いません、以前貰った物はおいしかったし、人気でした」


 俺の言葉に村長が笑みを浮かべた。


「そうか、そうか。ならば、たしかナントはセカの海に行った事があるんだったな。そこの海の幸と交換でどうだ」


 海の幸とは意外な交換だ。いや、人間の方が体が大きいので一日で行ける距離でも小人族だと違うのか?それともモンスターを倒せないのかもしれない。

 なんだかんだと言って小人族にはモンスターが大きいから、海の幸は取りにくいのか。


「良いですよ、俺が大きくなってから交換にします?ここで出すと村が潰れそうなので」

「そんなに大きいのか」

「大きいというか、大量というか」


 とにかく狩りまくって称号が付いてしまったほどの狩りようというのは黙っておこう。


「それならどうせわたしと一緒に出掛けるんだから、その時出したらいいじゃない」


 ユウリが口を挟んできた。


「どこかに行くのか?」

「ユウリに頼まれたので」


 俺は村長の疑問に答えておいて、ユウリの方を見る。


「ユウリは準備が出来てるのか?」

「終わったわ。後は出るだけ」


 何をするのか知らない物の、格好からは特別な事をしそうには見えない。


「それではまず近場の大広場の方に行くか」


 村長の台詞で、何人かの小人たちと俺は海産物を出す為に向かった。

 思った通り、Lサイズの魚肉は村の建物一つ分はあった。


「流石にこれは無理がある。もう少し小さいサイズで、いくつか種類をくれないか」

「良いですよ」


 俺はセカの海の品を取り出していく。


「気前が良いな」

「そうですか?」


 狩りすぎの弊害がここに出てしまったか?何しろアイテムボックスを圧迫しているのでつい出し過ぎてしまう。


「これで十分だ。それで、これがクロココの実のジュース、一樽で良かったのか?」

「はい、有難うございます」


 前と同じような樽を貰ってアイテムボックスに入れておく。


「それじゃあ村長、わたしとナントは出かけるわ」

「それでは皆さん、お元気で」


 そのまま行くユウリを追いかけて俺は慌てて挨拶だけして走る。


「それで、ワンド・ツリーだったか、捕まえて何にするんだ」


 あれは杖の素材に使われる事が多い。ペットとしては、観葉植物の扱いだ。空気が綺麗にするのか、果物でも採れるのか。


「まずは獲ってから説明するわ。頑張ってね」


 頑張ってねと言われてもそうそう出てくる物でもない。俺はユウリを掌に乗せ、一緒に探してもらいながらカラーズの裏山を歩く。

 センスで感知系を取ったら敵の種類まで分かるのか?いやそれはまた別のセンスなのか?そんな事を考えながら、罠の扱いに等しい蛇と蜘蛛には注意して木を探す。


「居たわよ」


 レアな種類と言う訳でもないので普通に見つかった。いやユウリが見つけた。


「それでは」


 炎の剣のアーツを使用し、一気にHPを減らそう。

 ワンド・ツリーは倒れた。


「あれ?」

「あれじゃないわ、倒してどうするの」


 生木は燃えにくいからほどほどで止まると思っていた。


「それじゃあ次は雷で」


 雷の剣の力で麻痺を狙いつつ攻撃、ワンド・グツリーを倒した。


「あれ?」

「何で倒すのよ。わざわざ強い攻撃で倒さないで、普通に倒しなさいよ」

「分かった」


 俺が成長したのか運が良くなったのか。一撃で倒してしまうのでこれはどうしようもない。攻撃方法をロープ系の技で相手を動かなくして剣で突く形に変更する。


「良し、今度は成功」


 三度目の正直と人は言う。


「それじゃあ、能力決定の所に『ルーム』の項がないか見てみて」


 ルーム?部屋?いや住むとかの言葉でもあったか、項目をまず五十音順にしては行を探す。あった、これか。設定するとルーム・ツリーとなる。


「名前は」


 この前がサユウリからサユリだった。今回は、たゆうり、確かに多様な語感の言葉があった。たゆた

う、揺蕩う、たゆり、よしタユリにしよう。


「命名、タユリ」

「前は花の名前と分かったけど、タユリって何?」


 五十音順とか言ったら怒られそうだ。


「これはキャンプか何かの能力だと思うんだけど、どうだ?」

「そうね、小人族がそばにいる事を前提に出る選択肢よ。大人間は入れないから選択がないんだけど、私達なら十分棲家に出来るスペースを作って旅の間の住まいにするの」


 種族限定なのか。そういうのもあるなら調べてみよう。


「それで、ゆらゆら揺れるというたゆたうという言葉があって、旅に使うなら移動し続けるからというイメージでそこから名前を取った。後は前のサユリと合わせた語感を出そうと思って」


 中々良いつじつま合わせができた。


「結構考えてるのね」


 少し疑いの目だったユウリの視線が弱くなった。


「でもそれだと少しおかしいから、ゆらゆら揺れるなら揺籠、にするわ。旅の間安らかに眠れるように」


 渡す時の名前変更で却下された。


「それじゃあ揺籠、出てきて」


 出てきたルーム・ツリーは普通の木と変わらないように見える。ところどころ木の実ではなく幹が膨れた部分があって、そこが恐らく住まいになる所だろう。


「小さくなって、入ってみましょう」


 ユウリが俺に小さくなるように言ったのでスプーンを取り出す。

 木の根元には小人サイズの扉があった。ユウリを先頭に入る。


「へえ、意外と広い空間だ」


 入ってすぐに広間の様になっているスペースだった。上の方の幹にも住めるのだろうが、下にも普通に住まいがあるのだ。


「入るのは私も初めてだけど、この木はペットだという事で分かるみたいに、戦闘には向かない、だから幹は意外と皮が薄いの。だから何人も入る事が出来るのよ」


 本当に宿泊専用の木なんだな。


「それじゃあ、貴方にもお礼に一部屋使わせてあげるからどの部屋が良いか決めて」

「え?」


 俺の部屋?


「アイテム置き場?」

「この大きさで大人間のアイテムを置けるわけないでしょう。貴方、王都に行った後、レンジに行くのよね」

「そうだよ」

「その旅についていくわ」

「何で?」


 俺の旅にユウリが付いてくるって、何がしたいんだ?


「わたしは色々旅をしたいのは知ってるわよね」

「聞いたような気がする」


 鳩を取った時そう言っていたような。


「それでいきなり遠くに行くのも難しいから、貴方がいく方について行って安全を確保したいのよ」


 成程用心棒か。


「ボッチでお人よしでこっちのいう事を聞いてくれる相手なんてそうそういないし」


 その一言が余計という事を言いたい。


「でも、俺は王都で生産の能力を取ってから行くんだぞ」

「まだ練習するわよ。いきなり行けるとも思わないし」


 それならいいか?ちょっと待て、そういえばと俺は思い出した。


「王都に小人族の街か村かはあるのか?」

「あるわよ」

 あるのか、やっぱり。


「それならそこを案内してくれるのを報酬の一部にするならレンジに行くのを付き合うよ」


 観光に丁度いい。


「それでいいの。なら、商談成立ね。わたしに会いたい時は村に来て頂戴。いないときはこの辺りでキャンプの練習をしていると思うわ」


 商談成立。ユウリはそのままここでキャンプするそうなので俺もここに止めてもらう。どんな寝心地なのか楽しみだ。


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