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77PKされて

 部屋に戻ってもちょっとの間ぼけっとしていた。脳が理解できていないという事だ。PK、プレイヤーキラーに殺されたのかもしれないと考え着いた時、恐怖が襲ってきた。

 怖っ今までにないほど怖い。PKにキルされるというのがこんなに怖いとは。兄弟が居るので人の視線は気になる方で、今まで別のゲームで感づいた時もあったから油断していた。全く気が付かなかったのは≪隠蔽≫系のセンスでも使っていた為だろう。

 ようやく一息ついた所に心臓を一突きされれば恐怖の方が強かった。ゲームとはいえ引きこもりになりたくなった。

 まずは落ち着くためにログアウト、その後丸一日普通通りに過ごしてストレスを解消した。

 考えてみればあれはゲームの一部で、現実に通り魔に襲われれるならともかく引き籠る必要はないじゃないか、というくらいには回復する。

 対抗手段があるのだからまずは他にも感知系のセンスを取りに行くことから始めよう。どんなものがあるかを調べてから現実28日目、ログインする。


「結構な額だよな」


 下位のセンスはお手頃な価格設定になっているけれど上位のセンスは高い。まずはリルさんに言っていくらか貰おう。こういう時は預けておいたからアイテム以外無くなっていない。せっかく採れたサファイアが無くなったのは残念だけれども、本当に残念なんだけれども。せっかく集めてみようと思っていた物を取られると結構へこむ。


「え、ちょっと待って。そんなに急に言われても。何をそんなに慌ててるの?」


 焦っていたようだ。まだ俺は落ち着いていないのか。


「いや、PKされました。急いで感知系のセンスを買いに行こうと思います」

「PKが出たの?」


 何でそんなに驚くのだろうか。リルさんの目配せで近くに居た青華さんが走って行った。


「まずは落ち着いて。貴方が今まで持って来ていたお肉は大量なのよ、時々上質な肉も卸していたでしょう?今の手持ちじゃ到底足りないで、掛けで買って行った人もいるのよ」


 売掛金買掛金て、簿記で習ったな。要はツケで買って行った人が居る訳か。


「じゃあ手持ちで困らない範囲で良いので下さい。凄く不安なんです」


 この気持ちを止める事なんて出来ない。


「それじゃあこれくらいで良い?結構な金額だけど」


 とにかく急いでいるので金額は確認せずにお金を貰う。


「それじゃあ」

「ちょっと待って、どこでPKされたかだけ教えて」

「ビギの草原ですが、どうしたんです?」


 PKなんてどこにでもいるだろうに変な事を聞かれるな。


「ミカエルが巡回して、初心者フィールドだとPKはいないはずなのよ」


 そんな事までやっていたのか。初心者サポートというのも奥が深い。


「ははあ。すると流れ者か初心者のPKだったんですね」

「そういう事ね」


 初心者に殺されるとは俺らしいというべきかなんというべきか。


「王都に行った後の予定はどうするの?」

「弟と合流するまで生産系のセンスを取って、自活できるようになろうと思っています。本拠地は王都ですね」


 ユーとの約束は果たされたので王都に行っても大丈夫。しかし王都の方がPKが多そうなのが問題だ。まあ何とかなるだろう。


「ジュリア達にお別れは言った?」

「会ってないですね」

「ちゃんと言って行きなさい。色々お世話になってるでしょう」


 そうだな。とはいってもユーはセカの村の住人なのでいないかもしれない。ジュリアに伝言を頼むとしよう。


「と言う訳でやってきました村長の家」


 俺は挨拶だけして行こうと思っていた。


「えっ王都に行くの」


 ジュリアが何か反応がおかしい。


「ナントは弱いからここで暮らたらいいじゃん。肉を取って生活してたんだし」


 ユーも丁度良くいた。俺は別に猟師をやっている気はなかったんで、それを言われても困る。


「いや、弟と合流するのが第一の目的だから。ここにとどまることも出来ないよ」


 元々ユーのペットが終わったら王都でギルド結成クエスト解禁の残りの日々を過ごす予定だ。


「これこれ、無理を言ってはいかんぞ。ナントは前から弟の所に行くと言っていただろう」

「その弟さんはこっちに来ないの?」


 アレク村長の言葉にジュリアが俺を見る。


「あいつは今レンジの方に居るトッププレイヤーの一人だからな。あいつが作りたいギルドはドラゴンのアイテムで武装するのを第一にしているから、ここら辺がドラゴンの棲家にでもならないと無理だろうな」


 初心者フィールドがドラゴンの棲家になるという事はないだろう。運営がまたβ版からの変更の様に時間を流したらどうなるか知らない。そういう風に運営していたゲームがあった。


「と言う訳で長い事お世話になりました。また来る事もありますので、その時はよろしくお願いします」

「うむ、分かった。頑張れよ」

「はい。じゃあ、ジュリアもユーも元気でな。また来るから」


 俺の挨拶にジュリアもユーも返事をしない。何か二人で話し合っている。


「それでは」


 村長宅を出て一つ思い出す。王都に行くならあそこにも挨拶しておかないとな。

 次にやって来たのはカラーズの裏山です。ここには狩りで来た訳ではなく人に会いに来たのです。あの祠に着いたのでなんとなくお参りする。この祠、形式は和風なので賽銭箱がないのが物足りない。そう、 俺は小人族に会いに来たのだ。


「ジュワッ」


 アイテムボックスから取り出した銀のスプーンで何となくネタをやってみる。スプーンを天にかざすと半分、また半分という形で小さくなって小人と同じ大きさになる。


「さてと、どういったか覚えが定かでないな」


 確かまっすぐに行っていただけだったと思う。トンネルを歩いて出るとそのまままっすぐ進む。

 いや前にも思ったが大きさが違うと元の物の視点とか大きさの割合とかが違って新鮮だ。葉っぱでも開

いた傘ぐらいあるので落ちて来たとき意外と風圧を感じた。

 道端を歩くときのちょっと大きめの石が腰ぐらいまである岩の扱いになる。下から上へ木を見上げれば世界樹でも見ているような気分になった。

 この前の嫌な記憶を浄化されるような気分で散歩気分で歩いていると見た事があるような風景になって来て、そこで人と会った。

「あら」

「こんにちは」


 久しぶりに会った小人の、初めてであった人は子守を頼みこんできた人だ。


「空旅人の、名前は確か…ナットウだったかしら」


 俺の名前はナントです。誰が粘った豆だというツッコミは心の中でしておいて、俺もこの人の名前を知らないのでお相子だ。しかし前も言われたなこんな事。


「お久しぶりです」

「丁度良かったわ。今日子守を誰かに頼もうと思ってたの。お願いね」

「はい?」


 いやこれは承諾ではなくて疑問形の言葉です。俺は引っ張られて行く。


「おやナント、また丁度いい時に。狙って来たのか?


 広場では籠を担いだ小人族たちが何かがやがやと集まっていた。


「何がですか?あ、村長さんこんにちは」


 村長が笑いながら寄って来た。疑問の次に思い出して挨拶する。


「今から村総出で森の恵みを集めに行く所だ」


 集団で採取に行くようなものか。本拠地システムというものが出てきた以上小人族だとどんな風になるのか見てみたいので採取にはついていきたい。


「護衛でついていきましょうか?」

「駄目よ、子守をしてもらわないと」


 駄目だった。


「ユウリをつけるから、子守を頼む。おーいユウリ」


 背中に背負っていただろう籠を下しながらユウリがやってきた。


「分かりました」


 挨拶に来ただけので変なイベントが起きないかは心配だ。けれど俺がここに来た目的があるので待つぐらいならどうという事はない。


「あら久しぶり」

「この前鳩の時に会ったと思うけど久しぶり。あの鳩どうなった?」


 うまく乗れるようになってたら俺も乗せてもらおうかと考えつつ話を振ってみる。


「あの子は結構遠くまで飛べるようになったわ。戦闘はからきしだけど」


 それはペット化だから仕方ない。俺はいつだか子守をした広場でまた柵の中に入った。


「あーぶ」

「あ、こらそれは石だから食べてもうまくないよ」

「びえぇぇぇ」

「ほら言ったのに、よしよし」

「あ、ナントこの子のおむつ変えといて」

「いや俺それはやった事ないぞ」


 ユウリと一緒に子守をする方が大変だな、何故おむつは紙おむつではないんだ。前に来たプレイヤーが開発してくれれば良かったのに。布おむつをまあ股が隠れるような感じで結んでおく。


「ちょっと、それじゃ後がやりにくいでしょ」


 ユウリに怒られた。世のお父さんの気持ちが分かる。


「それにしてもナント、挨拶に来るなんて何の用があったの?」

「いや、王都に行くんで、その挨拶をしようと思っただけ」


 隠すこともないのでそのまま説明する。


「王都に行くんだ」

「ようやくだよ」

「じゃあその前にもう一つ私のお願い聞いてくれない?」

「え?」


 こんなことをユウリが言うのは珍しい。思わず顔を見てしまった。ユウリは手を合わせたお願いのポーズになっている。


「良いよ、それで何?」

「もう1匹、ペットが欲しいの。それを捕まえるのを手伝って」


 ペットがもう1匹?旅行用に鳩だけでは足りないのか?ああ、潜水用に水系が欲しいとかかな。


「良いよ、どんなものを取りに行く?」


 どれを取るかでビギの砂浜に行くかセカの海に行くかが決まる。


「ワンド・ツリーって木があるでしょう。あの木を捕まえたいの」


 何で樹木?俺の顔に疑問が浮かんでいたのに気付いたのか、ユウリがにやりと笑った。


「ついでに面白い事を教えてあげるわ」



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