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72宴会を見ます

 村長達が前に出てきた。


「すまんの、どうやら誤解じゃったようだな」

「大人気なく本気を出そうとしてすまん」


 本気を出されていたのか。スキルで防がなければ体が真っ二つにされる勢いだったぞ。


「初心者に本気を出すとは我ながら頭に血が昇っていた」


 もしかして皆が心配してくれているように寄ってくるのは初心者だからか。物凄く弱いと思われているんだろうな。


「別に無事だったから構いませんよ」

「そうか、そういってくれるとありがたい。ところで」


 アレク村長がずいっと俺に顔を近づけてきた。近い近い。


「本当にジュリアを嫁にしようとした訳ではないな」

「神に誓って」


 普通の日本人程度の信仰心しか持っていないがテンプレとして言葉が出てしまった。


「ならば良い。神に誓うとは覚悟があるな」


 あれ、ゲームの設定として神様はどうも厳しいのか?そういえばまだ神官魔術的な物は発見されていなかった。名前は忘れたが、会えたら神官王になるとかいうあのプレイヤーに聞いてみようか。いや先に普通にセンス屋の神官さんに聞いた方が早いか。


「ああ、すいません、青華さんなら持っていると思うんですが、ペット化の石を10個ほどもらえませんか。代金は払います」

「持ってるけど、ナントはペットは飼わないんでしょ。どうするの?」


 俺はペットを飼わないと宣言しているので青華さんに疑問を持たれた。


「ユーにもペットをあげると約束したんです。ここら辺のボスに猫が居たら猫を、異なかったら仔馬をと」


 俺の説明に何故かクレイさんがにやりと笑う。


「そうか、本命はユーやったんやな」


 あ、アガインさんがクレイさんの肩を叩いている。その笑顔が怖い。


「クレイはほっといて良いわ。それで、小馬を取りに行くのね」

「はい。まあ弟からはハイドルートに入った人間が行けば何か変化があるかもしれないと全部の場所に行って来いと言われましたよ」


 予定では王都に行った後です。


「ボスの事?あれを解放したのは私達とミカエル達で一番乗りをゲットしたのよ。一通りめぐってみたけれど何もなかったわ」


 リルさん達がクリアした人か。それなら同じような物だし俺が行かなくても良いだろう。


「何かハイドルートについて変化はありましたか」

「特にないわね、それよりも体は大丈夫なの?」


 そう言われて初めて疲労を感じだした。主に精神的な物だ。


「すいません、きついので一旦休ませて下さい」

「まあ待て、流石に悪いのでお詫びをさせてくれ」

「何ですか?」


 村長にお詫びなんて言われると何かもらえるのかと期待してしまう。


「宴会を」

「すいませんちょっと休ませて下さい。限界です」


 宴会なんてやったら精神が限界に達しそうな気がする。半分逃げるようにログアウトした。

 ログアウトして時間をつぶしてからもう一度入ってみる。今度こそ普通の行動が起こせますように。


「おう、待っておったぞ」


 部屋から出た途端村長のお迎えがありました。


「今度は何ですか?」


 待たれていてもあまり良い予感がない。


「うむ、宴会じゃ」

「帰らせていただきます」


 もう一度ログアウトするために部屋の扉を閉めようとしたが妨害された。扉を閉めようにも怪力の村長の方が強かった。


「そう嫌がらんでも良いぞ。お前さんは主賓で、儂らが宴会芸を見せる事にしたからな」

「何ですかそれ?」


 思わず疑問が出た。


「何かしてやれることはないかとリルに聞くと、宴会芸で悩んでいると言っていたので、参考のために宴会芸を見せようと言う事になったんじゃ」


 有難いような迷惑なような気分だ。


「さあ行くとしよう」


 気づけば俺はアレク村長に担がれて広場に直行していた。いや何で家を飛び越えてまで直線で行くんですか馬鹿ですか。


「死ぬかと思った」


 ボス対戦とでも見なかった走馬灯をこんな所で見るとは思わなかった。つくづく規格外の人だ。


「ナント大丈夫?はい、お水」


 ジュリアが飲み物を持って来てくれた。


「大丈夫。ありがとう」


 普通に水がうまい。一気に飲み干した。


「ぷはっ」

「中々凄い事になっとるな」

「あ、クレイさん」


 俺の姿を見てかクレイさんが寄って来た。


「先に清算しとこうか。ペット化の石を10個と、ポーションや。また忘れたらひどいやろう」

「ありがとうございます」


 クレイさんは必要なアイテムを持って来てくれたのか。すぐさまアイテムボックスに入れておく。これで忘れないだろう。


「NPC達の宴会芸を見せてくれるんやて?」

「そうです。俺が宴会芸を出来ないのを気にしていると言ったらしいんですが、クレイさん達は何か聞かれました?」

「おう、聞かれたで。でもなあ、宴会芸に悩んでいるのもそうやけど、いつになったら王都に、弟の所に行けるのか悩んでいるとか、アーツなんかのゲームスキルのやり方で悩んでいるとか話したんやけど」


 そこから宴会芸がチョイスされている辺り村長達の性格がよく出ていると思う。


「まあ、ここまで来たら楽しめや。実際参考にはなるやろうしな」

「そうします」


 やってくれるというなら見ておこう。別に俺がやる訳でもないし。


「まずは儂の宴会芸じゃ。そりゃっ」


 アレク村長は巨大な、導火線に火のついたいかにもな爆弾を取り出した。


「え、ちょっと」

「ふんっふんっふんっふんっ」


 アレク村長はお手玉のように爆弾を放り投げては受け止めるのを繰り返す。弾みが付いているのかだんだんと爆弾は高く投げられていた。


「これで最期じゃっ」


 導火線が爆弾ギリギリにまでで迫ったところでアレク村長の腕が今までで一番の高さへと危険物を投げ上げる。


ドーン


 見事な花火だった。


「って、良いのかあれは」

「良いのよ、何でも村長が宴会の開始を告げる球だそうだから」


 ジュリアが横で説明してくれた。


「うちの村長も宴会の時やってるよ」


 ユーの説明にアクス村長もやるのかと思う。元々兄弟だし、村長家に伝わる芸と言うやつだろう。二つに分裂した村だから同じ始まりなんだろうけれど。


「ジュリアも村長になったらあれやるのか?大きな花火放り投げて」

「う…魔術師になるから魔術でやるの!」


 普通に女の子で怪力自慢の技を受け継ぎたいとも思わないか。


「そうか?カッコイイじゃん」


 ユーは怪力に憧れるのか?まあ男社会な漁師の子供だし、そんな物か?


「さて、ここで一番は俺がやるぜ」


 いつだったかどこだったかで見た顔だ。大体の村人はそうだけれど、男性は樽を持って来た。


「俺はこの樽の中にとっておきの酒をブレンドして一気飲みするぜ」


 ああ、最初に酒場で見たような気がする。俺を空旅人じゃなく堕落人間と言ってた頃の酒場だ。


「さあ、皆酒を入れてくれ!」

「もったいないわ!」


 おそらく飲んべ仲間からだろう、酒瓶が投げつけられて頭にぶつかる。男の芸はそこで終わった。


「毎度毎度一回はやるな」

「人の酒をたかろうとするからああなる」

「さて、それじゃあ恒例の馬鹿も仕留めたし、乾杯!」


 どうもここまでが普段通りの始まりの様だ。倒れた男性は放置されている。


「それでは今度こそ始まり。魅惑のダンサー、ミライさん!」


 いつの間にか蝶ネクタイを付けた男性が司会に立っていた。


「何ですかあの恰好?」

「ああ、あれは昔空旅人が宴会の進行役はああいう首輪をつけるって村に寄贈していったの。声が大きくなるからいざという時の知らせにも使えて便利よ」


 β版の時の影響がこんな所にもあったのか。でもこっちの人は普通に使いこなしてるよな。非常事態の拡声器代わりと言う訳か。


「あれも空旅人が置いて行った物なのよ」


 ジュリアの指さす方を見れば人間大の黒い毛だらけの何かが入った樽がある。


「あれに芸が終わるたびに剣を刺していって、中の人形が飛び出れば終わりなの」


 黒ひげが危機一髪な人形は変な使われ方になっているようだ。


 俺がジュリアに説明を聞いている間に、ダンスが終わっていた。しまった、美人がフラメンコ踊るのは普通に見たかった。


「さて次はブーリンの犬使い」


 犬が指示に従って火の輪くぐり、森にダッシュしての狩猟と動いている。ビーストマスターの一種がそこにいた。ハウンドマスターというのか。初心者では勝てない。


「さらにハンスの曲射ち」


 あ、クエストを担当していた猟師さんだ。流石に大した弓の腕だ。他の人たちが投げたり隠したりした的に矢を命中させている。

 何だか楽しくなってきた。


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