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71なんだこれ

 何故か黒い縄で縛られたまま気にぶら下げられています。口まで黒い縄が来ているのでじゃべる事も出来ない。


「これより被告人の裁判を始める」


 紳士同盟を名乗る変態集団が俺の周りに固まって裁判の様に整列して並んでいる。椅子とかどうやって用意したんだ。


「被告は古い習慣を利用し、幼女へ結婚を申し込んだ。これはプレイヤーの法律に触れる重罪である」

「裁判長、弁護人として、被告人に言い訳、じゃなくて言い分を聞きたいと思います」


 何だその嫌な言い間違いは。


「民主的にもっともな話である。被告人、言いたい事はあるか」

「ふごーっ」


 口までおおわれている魔術の縄の為に俺は声が声にならない。


「うむ、本人も罪を認めているようなので、判決、死に戻りの刑」

「ふがーっ」


 待てと言いたくとも声が言葉でないので言葉にならない。こんな感じの主人公がいたな。主人公に俺がなりたいとかすかに思ってもこういう主人公の場合はありまなりたくない。


「やめなさいって言ってるでしょう!」


 リルさんの声が響く。コナン・ドリルのメンバーが出てきて助かったと思ったら厳正に裁判すると言ってこの状態だ。


「これは我ら紳士同盟の活動の本質にかかわる事件なんだ!」

「だからと言って、ジュリアを見なさい、自分のせいだと怯えているのよ!」


 これはまずい。ジュリアを怯えさえる気はなかった。一度死んで紳士同盟とかの気がすむなら死んでもいいが、このジュリアを見ると目の前で死ぬのは良くない。


「ふむ、確かに少女の目の前で惨たらしく死なせるのはこちらも望む事ではない」


 惨たらしく殺すのは決定なのか。


「隊長、良いアイディアがあります。ここは彼を解放してはどうでしょうか」


 全員同じ姿で顔を隠しているので誰だかは分からないが、解放を言ってくれる人が居た。


「後で暗殺部隊を向かわせればばっちりです」


 全く良くない。暗殺部隊って、それはPKという物だ。


「ちなみに、暗殺とは言ってもPvPを挑むのでPKにはならない」


 それは暗殺と言うのか?


「それじゃあ駄目でしょうが」


 リルさんも呆れるしかないようだ。自分の命がかかってるとはいえ俺も馬鹿馬鹿しい気分になる。村長達は叱られた分おとなしくなり、冷静になった様だ。そして俺の方を憐れんでいる目で見ているのはやめてほしい。


「わーはっはっは。お困りのようだね!」


 検証パーティと変態集団のにらみ合いが続いて、どうにもならなくなっている時、高らかな笑い声が聞こえた。今度は何だ。


「とうっ!」


 どこからともなく一人の男性プレイヤーが俺の前に降り立った。


「閃光の騎士ジーティー参上!」


 金髪碧眼のよくある騎士の恰好をしたプレイヤーは、びしっポーズをとって見栄を切る。

 その鎧どこかで見たような。普通の形にカラフルな色使いなので目立つ。一度見れば忘れられないような鎧だけれど色遣いをどこかで見た。


「ああ、貴方が事件を巻き起こすと言う」


 リルさんが物騒な事を言っている。


「あのね、あの人は自称正義の味方で、正義の為に色々やってる人なんだけど、いろんな事に首を突っ込んで騒ぎが増える事もあるから色々言われているの」


 青華さんが説明してくれた。つまり今回もどっちに転ぶのか分からない訳ですか。


「また来たのか」


 どうも紳士同盟とは知り合いらしい。きっと何度も騒ぎを起こしては解決に乗り出すと言うのを繰り返してきたに違いない。


「やあ紳士同盟の諸君、久しぶりに決闘騒ぎまで起こしているようだね」


 またポーズを決めるジーティーさん。ああ、こういうキャラなのか。


「どいていると良い。今回は幼女に結婚を申し込んだという史上最悪の犯罪者を罰しなければならないのだ」


 知らなかったと言っているのに聞く耳は持たないんだろうな。


「コナン・リドルのリルさんだったね、それは本当かい?」

「勘違い系イベントの一種で、ビギの草原の家畜系モンスターをプレゼントするのが昔の風習という話があるの。今は廃れているわ。当時を知る孫馬鹿な村長が暴走したという話ね。実際はペット化したモンスターを欲しがってる子にあげたというだけの話だわ」


 俺としてもそれだけの話だったんだけど、何故こうなったんだろう。


「つまり、紳士同盟の諸君は、結婚申し込みをした彼を許せないと。そして彼はそれを知らなかったと」


 結論はそうなる。俺はぶらぶらと揺れながら事を見守っている。それしか出来ないので。


「そして紳士同盟の諸君、本音は?」

「どう見ても同じモブ顔なのに結婚できるとは羨ましいわ妬ましいわ」


 モブ顔なのが恨まれる原因というのは初めて聞いた。


「成程、それでは本人の意見を聞いておこう。はっ」


 ジーティーさんの剣が一振りして俺の身が自由になった。黒い魔術の縄が切れたと同時に身体は空中にあるので物理法則に従って落ちる。


「あたたたた。お尻をうった」


 突然の事なので俺はお尻から地面に落ちる。こういう痛みは戦闘とは違って全身に響く気がする。


「大丈夫かい」

「大丈夫です。助けていただいてありがとうございます」


 お礼はしっかりとしておこう。物を持って行く気は起らない。せめて声をかけてくれれば良かった。


「君の名前は?」

「ナントです」

「ではナント、紳士同盟が言った事は本当かい?」


 直接俺に聞くのか。


「嘘をついているとは思わないんですか?」

「大丈夫。≪嘘感知≫のセンスを持っているからね」


 そんな物があるのか。便利そうだ。


「俺は知らなかったとしか言いようがないです。出来ればもう一人にも渡す約束をしているので、はっきりさせておきたいですね」


 ユーに渡す時別の何かの話がありそうで怖い。


「それは後で村長に聞くとして、ナントは真実を言っている事が分かった。僕はナントに味方しよう。紳士同盟はどうする?彼をまだ審判するかい?」

「くっジーティーはトップクラスの実力の持ち主、ここでやっても勝てない」


 悔しそうに紳士同盟の、リーダーらしいプレイヤーが口を閉じる。


「隊長、ここは引きましょう。ひいて…」


 このパターンは後で挑んでくるという話だな。


「後から挑むならここで決着をつけましょう。俺は1対1のPvPなら受けますから」


 勝てなくても体を動かせばすっきりするだろう。


「くそっ意外とヒーローっぽい奴だった」

「やっぱりああいうのがもてるんだな」


 ヒーローっぽいか?人間体を動かすと雑念が無くなるとTVで言っていたのを実行しているだけだけれど、思い返してみれば確かにかっこいい。嫌だな、こういうのは俺のキャラじゃないんだ。

 ゲームの中でもてても意味がないと思うんだが、紳士同盟ってどういう活動何だろうか。嫉妬の仮面が率いる軍団みたいにもてるための何かをやっているんじゃないのか?


「仕方ない。仲裁が入った事だし、今回はやめておこう。しかし忘れるな。再びもてるようになった時、我々は現れる」

「それは悪役の台詞じゃありませんか?」

「うるさい」


 俺が正直に感想を述べたら怒られた。白い鎧の軍団は現れた時と同じようにどこに行くのか分からない形で消えていった。


「何だったんだあれ」

「悪い人たちじゃあないんだけどね。いつだったか、NPCを悪どく、奴隷の様に使うプレイヤーからNPCを解放してたし、逆に魔術で呪いをかけられた奴隷の解放の方法を探して来たり」


 それが奴隷使いプレイヤーなのか?紳士同盟も確かに良い事をしている。


「その奴隷キャラ達は全員女性だったけど」


 もてようとする活動の方だったかもしれない。


「あ、それはそれとして、改めて有難うございました。リルさん、サムソンさん、クレイさん、青華さん、ユーリカさん、石破さん、石動さん、ジーティーさん」


 まずはプレイヤーに頭を下げる。


「気にしないで良いわ」

「そうや、まだ肉を売ってもらう予定やし」


 代表してリルさんとクレイさんが口を開く。


「いやいや、悪のある所、罪なき人の居る所、それが僕の活躍の場さ」


 ジーティーさんが親指を立てている。無駄に爽やかだ。


「ウルクさん、アガインさん、それからおばあさんと奥さんたち、有難うございます」


 NPCにもお礼を言う。


「親父の暴走は今に始まった事じゃないからな」

「ユーが慌てて呼びに来たから何かと思ったが、無事でよかったな」


 ユーも動いてくれたのか。


「ジュリア、ユーも有難う」

「お爺ちゃんがごめんなさい」

「ナントが死ぬのを見るのはもう嫌だから」


 ユーの目の前で死んだ事なんてあったか?ああ、あの勘違いで決闘した時か。


「ところでアガインさん、ジュリアに馬をあげた時、ユーにもあげると言ったんですが、また何か変な掟とか儀式とかありますか?」

「何だ、ユーにも?良いのか?」

「お世話になっていますから」


 正確には仲の良い子供たちには公平に与えたいなという気分なだけです。


「いやそういう事なら先に言っておいてくれたら分かる」

「それじゃあ、後で取ってきます」

「本当にいいのか?」


 アガインさんと話しているとユーが割り込んできた。


「別に、俺は戦いの練習の為にやってるから、気にしないでいいよ」


 何だか一斉に話しかけられる。何故だろう。


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