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68ペットを渡します

「聞いたわよナント。また何かしでかしたんですって?」


 リルさんが来て第一声がこれなのは酷いと思う。


「いえ、俺がどうというよりもミスと偶然が重なったせいですから」


 ポーションを忘れてペット化の石を投げたと言うだけだ。


「それで、私達に話したい事があるんでしょう?」


 俺は順に今回の戦いを話す。MCさんは大爆笑し、リルさん、青華さんは何とも言えない顔になった。理由は分かる。


「それで、どんな子がペットになったの?」


 青華さんは興味津々だ。この店はペットOKなので俺はコインからエクレウスを呼んだ。現れると同時

に俺から離れて青華さんの方に行く。青華さんの頬に自分の顔をこすり付けるほどアピールするとはどこかの漫画のユニコーンか。


「あれ、私に何か用なの?」

「いえ、どうも嫌われているようです。こういう性格のなのか俺の称号のせいで嫌われているのかは分かりませんが」

「そういえば、『家畜の虐殺者』の称号持ってたわね」


 リルさんが納得した顔になる。


「なんだ、『家畜の虐殺者』を持ってるのはナントだったのか」


 どうやら有名になっていたようだ。それなりに嬉しい気がする。


「そんな称号もらうまで始まりの草原に居続けるなんて誰だって噂になってたんだ」


 俺にとっては嬉しくない形だった。


「この子の尻尾も鬣もサラサラー。撫でると気持ち良いよ」


 青華さんはマイペースにエクレウスを撫でている。


「試してみましょうか。青華ちょっとお願い」

「何?」


 女性二人が場を離れると仔馬は付いて行こうとする。


「流石に待ってろ、何か邪魔になる」


 俺が止めるために手を当てるとサラサラという毛に触れた。確かにこれは気持ちがいい。

 毛を触っていられたのも少しの間、すぐにエクレウスは逃げ出す。店の中なので俺から離れて、睨むように見てくる。


「本当に嫌われてるな」

「好きで嫌われてるんじゃないんです。称号を外すか消すかしないと話が進みそうにないですよ」


 MCさんがコーヒーを飲みながら俺達のやり取りを見物していた。


「そういえば、サムソンさんとかはともかくとして、青華さんが店を開いているとは思いませんでした。何か知ってますか?」

「うん?ああ。それは俺も悪かったから知ってる。実は、知り合いにネタでアニメの技とかを再現するフレンドがいるんだ。そいつのさらに知り合いの内の一人が、ノーザン群狼拳という技を作ってな、知ってるか?」

「昔見ました」


 知っている。星の戦士のアニメオリジナル話の戦士だ。


「まあ、狼と一緒に突っ込む攻撃何だが、調子に乗って多くの狼をペットにして食費に困ったんだ」


 この世界に保健所があるのかどうか知らないが処分に困ったんだな。


「それで、ペットにした狼たちの処分に困ってここにきて、誰か貰ってくれないかとやっていたのをあの娘が見つけて、引き取ったんだ。いや、物凄い見世物だった」


 予想はあっていたが見世物の部分が分からない。


「見世物って?」

「青華がそいつと会った時、派手に説教かましてさ。愛がなければ飼ってはいけない、みたいな内容で、周りから拍手喝采だ」


 青華さんらしいと言うか、目立つな。


「だって、あいつは殺処分はシステム上出来ないから捨てようとしてたんだよ。ペットは愛情込めて育てる家族だもの」


 いい言葉なんだけれど今の店を見ると行き過ぎなような気もする。

 リルさん、青華さんともう一人女性のプレイヤーが何匹もペットの動物達を連れて来た。このうちビギの草原で獲得できる6種類はすべて、後の場所で獲得できる種類は1匹づついる。


「本当に『家畜の虐殺者』が効いているようね」


 目の前に並べられたペットの内ビギの草原で出会うモンスター達が元のペットはすべて怯え、警戒し、逃げようと青華さん達に縋り付き、警戒心むき出しで俺に頭突きをしようと構えている。最後のは相変わらずのエクレウスです。


「こりゃどうも確実だな」


 MCさんにとどめを刺された。


「この子はどうかしら。ビギの草原で見つけたんだけど」


 前に出されたのは狸だった。元のアクセサリ・タヌキはレアじゃなかったか?狸は俺を見ても怯えもせずにあくびなどしている。どうやら平気なようだ。


「でも、この子達も何かおかしいよ?」


 青華さんのいうとおりにビギの草原の出身と同じように怯えているのは蜂、馬、駱駝等だ。


「養蜂は家畜の一種に数えられるからじゃないでしょうか」


 家畜が人間に育てられる食べるための生き物だとすると養蜂に使われる蜂もそうだし、馬や駱駝は言わずもがな。とにかく家畜に相性の悪い称号の様だ。ここにはいないが食用蛙にも効くかもしれない。


「それにしても青華さんが店を開くとは驚きました」


 少し話をそらす意味もあって気になっていた事を口にした。俺の言葉に青華さんが胸を張る。


「え、私の店じゃないよ。こっちが店長のプップーちゃん」


 あれ違ったか。隣にいるショートカットの女性は齢は青華さんと同じくらいか?共通の制服に眼鏡をかけた女性プレイヤーだ。


「初めまして、ナントと言います」

「ご丁寧に、プップーです」


 変わった名前だけれども普通の人の様だ。


「ぷーちゃんはこのお店をペットの救助にするのを手伝ってくれているの」

「ぷーちゃん言うなや。プップーや」


 言葉から行くと関西人か?いやクレイさんみたいな場合もある。


「別にペットの救済やっとる訳やないよ。これはビジネスなんや」

「ビジネスですか」

「そう。ただ喫茶店をやっても看板になる物がないと人はよって来ん。ペットを紹介したりペットと触れ合ったりが看板なら現実世界にもあって人気な分はずれがない」

「成程」

「それにどんなペットを飼うか悩んどる人にも実際に見てもらえるから丁度いい。将来はレンタルも予定しとる」


 これはしっかりした人だ。


「なんてね、プップーちゃんはペットを全部飼いたいと言う野望があったんだけど、一人じゃ手が回らないからこういう形にしたの」


 青華さんが真相らしい物を暴露する。


「何言うとんや」


 おお、青華さんにツッコミが入った。プップーさんは顔を赤くしている。


「いや、それでも凄いですよ。自分の希望を叶えて人の希望も助ける。頭良いな」


 俺の方にもツッコミが飛んできた。何故だ、褒めたのに。


「馬鹿な事言わんで、この馬はどうするんや?」

「それで聞きたかったんですが、ペットは人に渡す以外にどんな解放方法がありますか?」


 俺はその場にいるメンバーに尋ねる。こう攻撃的に嫌われているのに傍に居させるのも酷い。解放してボスに戻れるかどうかは知らない、しかし俺と一緒に居るよりはましだろう。俺のペットになった以上殺されはしないだろうが落とし穴に突き落されるぐらいされそうな気がする。


「実はペットから解放した後どうなるのかは分かっていないの。コインの状態で解放を選択するんだけど、コインそのものが消滅するから」


 ポケモン方式か。


「青華なんかはそれは死んでるんじゃないかと嫌がって、この店につながったしな」

「プップーちゃんが店長を引き受けてくれたからだよ」


 リルさんの説明をプップーさんが引き取った。つまり青華さんはペットの引き取り先を作ったと言う訳だ。

 俺も青華さんの気持ちが分かる。どうなるか分からないのは気持ちが悪い。ラスカルでも最後にはお別れの形で見送ったのにそれもないのは嫌な気分だ。死んでしまうとすればとてももったいない。


「そうですね、解放はやめてどうするのか考えてみます」


 俺は問題を先送りして、もう一つの本題であるボスモンスターの討伐の仕方をMCさんに説明する。


「おう、有難う、これで図鑑が埋まる」


 そう言って図鑑を広げたMCさんが手を止めた。


「増えてる」

「え?」

「白紙のページが増えてるんだよ!」


 突き出された図鑑のぺージは今までのビギの草原とビギの砂浜の間だけではなく初心者フィールドと呼んでいた場所の間間に白紙ページが1ずつ増えていた。


「もしかして初心者フィールドにボスモンスターは発生するようになったんじゃないの?本拠地システムからいくとビギの村に登録しておかないとビギの草原のボスモンスターと戦えないみたいだし」


 リルさんの考えは恐らく正しい。それにしてもまだボスモンスターがいるのか。王都に行くのが遠くなりそうだ。俺も一回ぐらい全部に挑んでみたいので。


「御馳走様でした」


 俺はお金を払わずに店を出た。単に現金を持っていないだけでリルさんに預けてある報酬から天引きしてくれと言ってある。無銭飲食ではない。

 それにしてもどうしようか。エクレウスを実体化させて部屋に戻りながら考えてしまう。人に譲り渡すにしてもイベントがありそうだから近くに置いておきたい。

 検証パーティの面々やあの喫茶店では移動したり仕事中だったりでイベントが起こりにくいか俺が付いていけない場所にいるかという予想が立つ。預けるのは最終手段にしよう。


「あ、ナントだ」

「本当だ、何やってるの?」


 ジュリアとユーが寄って来た。そして閃く。NPCなら丁度いいんじゃないかと。ビギの村に住んでいるならここに来れば会いやすい。


「いや、ビギの草原のボスをペットにしてしまったんで、どうしようかと思っていたんだ。ジュリア、引き取ってくれないか?」


 駄目元で聞いてみる。


「えっこの子があの草原の主モンスターなの?」

「そう」

「いいなーナント俺にくれよ」


 ユーでも別に構わない。俺はジュリアの反応を待つ。


「この子、ナントが捕まえたんじゃないの?」

「捕まえたは良いけれど俺の事嫌いなようで、嫌がっているから。だったらいい人に貰ってもらいたいと思う」


 ジュリアがじっとエクレウスを見るとエクレウスは近寄って行ってジュリアに頬ずりする。


「くすぐったい」

「こいつはジュリアを気に入ったみたいだけど、どう?」

「ナント、俺は?」

「ユーでもいいよ。エクレウス。どうだ?」


 尋ねてみればエクレウスはユーにも頬ずりしてなついている。


「分かった。私に頂戴。大事にする」

「俺は俺は?」


 ジュリアが決心した所にユーも欲しがる。


「ゴメンな、ユー。別のモンスターを捕りに行く予定だから今回はジュリアに譲ってくれ」


 部屋の事でビギの村にはお世話になっているし、こっちを優先しておこう。


「えー。じゃあ俺は猫が良い。魚を食べにくる鼠を追いかけてくれるやつ」


 近所のボスに猫が居たかな?調べてみよう。


「分かった。でも近所に居なかったら諦めてくれ。その代わりその場合にはもう一匹馬を捕まえて来るから」


 俺は手続きをしてウィンドウを開く。


「名前は何か自分でつける?」

「そうね、ユニコーンから取ってユニがいい」


 ジュリアの希望に名前を変えて元エクレウスのコインを渡す。


「大事に可愛がってくれよ」

「うん。ありがとう」


 これで一つ要件がすんだ。俺はようやくという気分でログアウトした。


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