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63漁をします

 波止場にあった船にのって沖に出る。船は結構大きめの船だが近場用の漁船なので階層があるとかいう物でもない。ボートが大きくなったタイプだ。

 沖に出る事が出来たのか、というのがプレイヤーとしての感想だ、これがきっとイベント限定でいく事が出来る、NPCの為の地形という所だろう。村はまだ見える波の静かな所に船を止めると、釣竿を渡された。


「あいつは釣りでも網でも漁をしているとやってきて、魚を取っていく。だから釣りをしていればやって来るはずだ」

「成程。俺は釣りをやったことがありませんが、大丈夫ですか?」


 二重の意味で、釣りのセンスもない。ゲームで釣りをやると早く上げ過ぎとかで釣りに時間がかかるタイプです。


「大丈夫だ、ちゃんと考えている。釣れないなら釣れないでもいい」


 アガインさんが撒き餌をすると魚の影が見える。俺はさっさと針を投げ込むユーを見て、マネしながら近くに投げる。昔ながらの釣だな。モンスターを釣る為の釣り、と。


「アガインさん、敵モンスターの姿を聞いていませんでしたが、どんな姿なんですか?」


 敵の姿を知っていないと釣った時どれが敵か分からないので聞いてみる。


「あいつは上半身が半魚人だ。下半身は魚で、人魚の一種だな」


 江戸時代の人魚妖怪みたいな格好だ。


「何かかかった」

「お、魚がかかったんだな、ゆっくりと引っ張り上げろ」


 初めての釣果だ。ユーの言葉に従って慎重に引っ張り上げる。


「普通の魚だ」


『サヴァ

 刺身、フライと色々な調理方法のある魚』


 サバじゃないのか。ゲームらしいと言えばそうだけども。


「あ、俺も釣れた」


 ユーの声に何となくそっちを見る。


『アジィ

刺身、フライと色々な調理方法のある魚』


 テキストが手抜きの様に思えるのは気のせいか?


「ほら遊んでないで竿を出せ」

「はい」


 出てくるまでは釣りを続けなければならない。その後も結構色々な物が釣れた。


「この世界で長靴を釣るとは思わなかった」

「何だそれ」

「水をはじく素材でできているから水場や雨の中を歩くのに使う靴。恐らくすっぽ抜けたのが流れて来たんだろうな」


 この世界には長靴がないらしい。β版では作らなかったのか?


「おおっでっかいのが来た」

「普通にモンスターじゃないか?カジキみたいな鮪って」


 カジキの様に鼻先が長くとがっているのに体型は鮪という魚をユーが釣りあげる。大きさから行くとチュウボウと呼ぶんだったか?危なく鼻先に刺さりかけた。名前はカジキデナイマグロ。カジキは鮪と付いていてもサバの種類だったはずだ。

 俺とユーがにぎやかに釣りをしている間も、アガインさんは物凄い速度で次から次に魚を釣り上げている。定期的に撒き餌もしているし釣り船屋やったら儲かりそうだ。


「おっ今度もでっかいぞ」


 ユーの竿がひかれて、ユーが力を入れる。その途端逆に引っ張られた。


「ユー!」


 隣にいたがとっさの事で手が出なかった。慌てて船べりから海の中を見る。


「ナント、どうした」

「ユーが引っ張り込まれました。助けに行きます」


 慌てているのは百も承知で、船べりから海に飛び込む。


「あ、馬鹿」


 水が冷たい。少し冷静になった頭では二次遭難という言葉が出てきた。それでも飛び込んだ物は仕方ないので、ユーを探す。すぐに見つかった。釣り竿を掴んだまま引っ張られている。

 その釣糸の先にいるのは手を生やしたサバだった。人魚何て綺麗な物じゃなく、半魚人何て怖い物でもない。怖い物でもない事に安心しつつユーを掴む。どうやら海に飛び込んだショックで気絶している様だ。この場合モンスターを倒せば早いが一番効くだろう雷の魔術を使うとユーも俺も死んでしまう。


「フラッシュ!」


 目をつぶってからフラッシュ一発。海底にすんでいるなら目にダメージがいくかと思って発動した目つぶしは結構効いたようだ。引っ張る力が無くなった。


「ファイア・ボール」


 魔力を多めに入れたファイア・ボールを糸に点火するような形で出して糸を切る。うまく切れたのでとにかく息をさせるためにユーを掴んで上に上る。


「ぷはっおいユー、起きろ、目を覚ませ!」

「ナント!」


 船から少し離れた所に顔を出す。俺はユーを揺さぶるがまだ目を離さない。釣竿も離していない。死んでいたら冗談にならない。後ろに寄って来たアガインさんが声を出して、船が近くに来ている事に気付いた。


「早く、引き上げて」


 ユーを船に向かって持ち上げる。腕の力がそんなにないので下から支えるのも一苦労だ。


「良し、受け取ったぞ」

「それじゃあ次は俺が」


 そこまで言ったところで足が何かに捕まれるような感触があった。不吉な予感がした通り今度は俺が海へと引きずり込まれる。


「ぶごごごご」


 鼻に水が入ってむせた。脚は例の腕の生えた魚に掴まれている。


「このっこのっ」


 杖を取り出して突きを繰り替えす。杖も残ってる腕で掴まれた。


「ならばブライト・アロー!」


 杖の先から矢を出せば槍の様に突き刺さる。力が緩んだので足を動かして脱出に成功。息を吸いに浮上する。


「ぷっはっ」


 時間自体はそんなに立っていないし酸素ゲージもまだ余裕があっても足を掴まれているだけで物凄くあせってそれどころではなかった。とにかく船に上ろう。


「ブライト・アロー!」


 また掴まれるのは嫌なので牽制に光の矢を撃っておく。


「登れるか?」

「登るのでお願いします」


 とにかく船の上に上らないと攻撃も何もあった物ではない。アガインさんに引っ張りあげられてなんとか船の上に登る。


「ふう、ところでユーは」


 俺の目の前にまだ釣竿持って倒れているユーが居た。


「わーっ。アガインさん、ユーはどうなってるんですか」

「安心しろ、気絶しているだけだ。気絶したから水もあまり飲んでいないようだ」


 アガインさんに太鼓判を押されて、一安心だ。よく見れば気道確保の姿勢になっている。人工呼吸をやったんだろう。


「それで、あのモンスターは」


 俺の脚を引っ張った魚モンスターは顔を水面に出してこちらを見ている。


「おう、あいつだ、あいつが最近漁の邪魔をする奴だ」

「あれ、人魚ですかぁ?」


 人魚には見えないが一応聞いてみる。


「人魚じゃない。俺達はゴウワンサヴァと呼んでいるやつだ」


 あ、名前を聞いたため敵の頭上に名前を示すマーカーが浮かんだ。


「ブライト・アロー」


 何発か光魔術の矢を放って倒せないかとやってみる。意外と素早い動きで避ける。≪命中≫を混ぜたアーツでやってやろうか。


「よし、準備が出来た。ナント、網を使うぞ、そこをどいてくれ」


 ガアインさんは銛に網球を括り付けた物を持っている。


「何で球を銛に取り付けているんですか?」


 そういう物なら矢にくくらなければいけない。


「何、この球は直に体に当てると広がるようになっているからな。俺は当てやすい銛に付けてる」


 そういうとアガインさんは狙いをつけて腕魚に向かって銛を放つ。銛は網球が当たるように少し離れた位置に落ちて網球が腕魚に当たる。途端に網球がはじけて魚の全身を覆った。


「シャーッ」


 声というよりも空気の吹き抜ける音を立てながらゴウワンサヴァは暴れる物の粘着性の蜘蛛の網なので動きが取れない。そのまま沈んでいこうとしていた。それを銛が邪魔して沈むことを許さない。


「良し、これを引っ張れ」


銛についていたロープを渡された。


「ううん」

「あ、ユーも目が覚めたのか。身体は大丈夫か?」

「え、ええと、大丈夫」

「なら良かった」


 俺はユーと会話しながらアガインさんと二人でロープを引っ張る。だんだん重くなるロープを引っ張っていくと、手で中止と合図された。


「よし、とどめを刺すからしっかり持っておいてくれ」


 俺はあまり力に自信がないので、とにかく力いっぱい引っ張っておく。ロープから相手が動いているのが分かる振動が伝わる。


「俺も手伝うよ」


 ユーにも手伝ってもらう。何となく情けない気分だ。


「どりゃっ」


 気合一発、アガインさんが打ち込んだ二本目の銛は見事相手に突き刺さった様だ。振動が無くなった。


「良し、上に上げるぞ」

「はい」

「おうっ」


 倒したゴウワンサヴァを船に引き上げる。見れば見るほど魚に腕の付いた変な魚なだけだ。


「こいつ、人魚と関わり合いとかはありますか?」

「ない。人魚がここに来る時が時々あるが、その時に聞いた。人魚もこいつを食べるそうだ」


 普通の魚の部分は良いとして、腕の所も食べるのか。


「あんまりうまそうなところがないんですが」


 全体的造形がおかしい物は食う気が起こらない。


「腕の部分が一番旨いぞ。ここは鰭が変化したらしいが、身が良くついている」


 指は水かきが付いていてそれ以外はウルトラマン並みに銀色の腕はうまそうに見えない。


「さて、今日は戻ろう。まだ他にもいるからな」

「他にもいるんですか」

「ああ。確認しただけでも5匹はいる」


 網一つでどう対処する気だったんだろう。


「そこで相談だ。お前が網を取って来てくれ。勿論報酬と、欲しがっていた網球を一つ渡す」


 そう来たか。一種のチェーンクエストと言うやつだな。


「分かりました。それで、網球5つ分で良いんですか?」

「予備を含めて6つ分欲しい」

「それじゃあ早速行ってきます」


 90個網を取って2往復すればいいか。波止場に着いた俺は持っていた網をユーに渡して蜘蛛を狩るためにビギの村に戻る事にした。

 そしてビギの村に帰って作業場を覗くとまだ出来ていないようだ。別に作業は隠れてやっている訳ではないので見ておいて後で参考にしよう。

 この前は土台に骨を融合させるのに知らない魔術を使っていたので今度も凄い魔術を使っているだろう、と思っていました。


 ぺりぺり←革と鱗を剥ぎ取る。

 ペタペタ←新しい革と鱗を張っている。

 コリコリ←形を調整するのに彫刻刀か何かで削っている。


「うわぉ、地味だ」

「作ってやっているのに何を言うか」

「あ、すいません。でも地味ですよね、魔術は何かないんですか?」


 石破さんに怒られた。この前が派手な魔術だったからてっきりそれだけで済ませているのかと思っていました。


「ふん、あんな魔術だけでちゃんとした物は完成せん。最後の調整は自分の手でやらないといかん」

 これは手間をかけて修繕してくれている。お礼に干し肉を追加しよう。

「これで完成だ」

「ようやく完成しましたか」

「お前が素材を大量にとって来るから調子に乗ってしまった」


 俺が悪いのか?石動さんから渡された鎧は、形は相変わらず肩のない胴鎧だ。ただし前に隠蔽用にハイドフィッシュの隠れ鱗が使われていた所に何か知らない材料が付いていて隠れ鱗は隙間なく全体に張られている。


「ここは何を使ったんです?」


 前に隠れ鱗の張っていた場所を指さすと石破さんが自慢げに髭をしごいた。


「よくぞ聞いてくれた。ここは知り合いの錬金術師に連絡を取ってな、素材を合成してもらい隠蔽の強い蜘蛛、蛇、シャコガイ等を材料にすることで隠蔽能力の強い素材に加工してもらった」


 それをしたから時間がかかったのでは。まだ初心者用のフィールドなのでそこまでは望んでなかった。でも有難く頂きます。

 新しい鎧は形としては変わらない。剣道の胴防具に近い形の胴体だけ覆う鎧だ。肩鎧や腰を覆うようなパーツはない。以前と違うのはやはりほぼ全面に張られたハイド・フィッシュの隠れ鱗だろう。

 隠れ鱗は能力はともかく色自体は暗い青だ。以前は毛皮の茶色のところどころに見つけられた鱗がびっしり張られているので鎧の印象がガラッと変わっている。


「これで防具も整った。ちょっと狩りに行ってきます」


 まずは今日中に蜘蛛を狩っておこう。


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