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60戦ったら

どうも面倒になって来た。


「ユー、手をこっちにくれるかい」

「え、何?」


 俺は面倒になって来たのでてっとり早い解決方法を選ぶことにする。まずアイテムボックスからあるだけのウェブ・スパイダーの網を取りだした。百匹狩りをやっている最中にユウリに会ったし、その後は検証パーティと行った上死に戻ったのでので34個と数はない。


「済みませんが、何かこれを入れる袋はないですか?ユーに渡してください」

「何をする気だ」


 警戒してパーティが武器を取り出している。


「何もしませんよ。ただこの子に必要アイテムを渡すだけです」


ユーはアイテムボックス持ちではないから袋にでも入れないと持ち運べない。


「え、ナント、今くれてどうするんだ?」

「俺は弱いからこうしないと駄目らしい」


 袋をくれないので直接ユーにアイテムを渡す。持ちにくそうだ。俺のアイテムの中に何か丁度いいものはないのか?ああ、ビギの草原の動物の革なら広い物があるかもしてない。探してみればサイズがLLという物があった。


「これの上に乗せて運んだらいい」


 網を乗せて折りたたみ、ユーに渡した。


「じゃあやりましょうか」


 俺はまだ浮かんでいたPvPの申し込みを受諾する。俺と大丸だけが残りあとのメンバーは外に出された。


「勝負を受けたって事は過ちを認めるんだな」

「さっさと勝負を始めましょう」


 俺はまだ何か言いそうな大丸を止めて杖を構える。


「魔術士なら大人しく後衛をやっていればいいのに、前衛に奴隷を使うと言う根性を叩きなおしてやる」

「だから違うと言っているんですが」


 聞く耳持たない大丸は勝負が始まった途端アーツを仕掛けてくる。


「うおぉぉぉぉっ。竜神飛翔斬」


 どういう技なのか、エフェクトはドラゴンの形で飛んできた。

 防御の足しになればと杖を顔の前にかざしたぐらいで、俺は抵抗もせずにその技を受けると一気にHPバーが砕け散った。

 決着がついたので周囲の壁がなくなる。流石に俺は一瞬で死ぬだけのダメージを受けたので地面に両手両足をつけて頭を下に向けている。大技のせいか過剰攻撃と判断されたのか痛くはなかったが衝撃は酷い。辛いので息を荒げる。


「ナント!」


 ユーが抱え寄ってくる。心配をかけてしまった。勝負を受けて負けたら納得されると思って受けた勝負は精神的肉体的な、負担を軽く見ていた。ここまできついとは。


「何だ?弱いぞ。そんな事だから奴隷使い何て安直な道を選ぶんだ」


 まだ何か言っている。頭に血が昇ったままか、失敗したな。


「ちょっと待って、あれ、初心者の杖よ。それに装備も裸装備みたい」


 相手パーティの女性プレイヤーが気が付いてくれた。


「何?裸プレイ?奴隷使いとは言っても子供に期待抱き過ぎじゃないか?」

「馬鹿!普通そんな初心者がこっちに来るわけないでしょ!本当に初心者がクエストを受けていたみたいだわ」


 初心者を脱してはいるはずなんだがここで口を出すとまたこんがらがるので黙っていよう。


「何だって!」


 大丸は俺の方を見たような気がする。俺は下を向いているので実際は分からない。


「ナント大丈夫か?」


 ユーが俺の背中をさすってくれる。ああ、たとえVRだとしても心配されるのは有難い。何か向こうが騒がしくなった。


「だから、頭を下げた方が無難…」

「いや、Wikiに乗ってるほどの情報なんだから最初からやっても…」

「でも武装もない初心者に…」

「私は嫌よ。あの子もなついてる…」


 誰がだれやらという会話である。紹介もされてないので仕方ない。


「分かったよ、俺が出ていきゃいいんだろ!」


 どこがどうなったのか、大丸が大声を上げた後走り去った。


「大丈夫?」


 まだ息を荒げている俺を見かねてか女性プレイヤーが話しかけてきた。


「大丈夫です」


 まだきつい物のいつまでもこの格好でいても仕方ない。立ち上がるとふらつくのは衝撃か俺が貧弱なのか。衝撃のせいだと思っておこう。


「それで、俺は先にクエストを済ませてしまいたいんですが、もう通って良いですか?」


 何故か俺にしがみついて相手を睨みつけているユーの頭を撫でて元の目的を続けようとしてみる。


「貴方が良いなら良いけど、さっきは何でPvPを受けたの?」


 何故と言われても困る質問が飛んできた。


「そこまで深くは考えていませんね。この子に頼まれてクエストをやるのが最優先で、大丸さんはどうも頭に血が昇っていたようなので俺が負ければ落ち着くと思っただけですし、PvPなら死に戻りにはならないでしょう」


 それ以上の意味はない。


「負けるのは嫌じゃないの?」

「いえ別に」


 人生負ける事は沢山あるので、死ぬよりはましだ。でも結構死に戻りしているのは秘密です。


「本当に死ぬならともかく、俺達は生き返る訳だからどうという事はないです。別に凄いアイテム持ってる訳でもないし」


 何か相手は呆れているような雰囲気を感じる。変な事を言ったかな?


「それでは、失礼します」

「え、ええ、さようなら」


 取りあえず先に進もうと脚を動かせば何故かユーを引きずるような形になった。


「あれ?」


 このまま引きずっていくわけにもいかないので、ユーからまずアイテムを受け取り、その手を引いてその場から離れた。


「なあ、ナント、大丈夫なのか?」

「大丈夫だよ」


 傷はないしHPも減っていない。おかしい所は何もないはず。


「弱いのに無理してるぞ」

「いや、別に。弱いのは事実だけれど、さっきの勝負は死なないで決闘する物だからどうもない」


 さっきから何かユーが心配している。俺がユーの手を引いてさっきのパーティから離れたのにまだ言っている。


「アイテムをちょっと取られたのは痛いかな?それぐらいだよ」


 先に蜘蛛のアイテムはユーに渡しておいたから取られていない。ギュッと握ってくるユーの手はどうも心配が強いようだ。心配性なのか?


「そして俺が主導したら武器付リゴブリンが出ると」


 すっかり忘れていた。一通行で一回じゃあなかったのか。今回のリゴブリンは5匹、武器は持っているが杖を持っている物はいないのでシャーマンはいない。


「大変だ、リゴブリンの武器持った奴は出会ったら逃げないといけないんだ」

「そうなのか」


 やっぱりNPCとプレイヤーでは対応が違うんだと思った。リゴブリンは声を出して威嚇している。


「アーツ発動」


 魔術用のアーツを発動する。とはいっても基本単発なファイア・アローの数を増やしているだけだ。3本の火の矢がリゴブリンを襲う。


「ぎゃぎゃぎゃ」


 リゴブリンが全滅した。魔術って凄い物だ。


「凄い凄い。ナントって凄い魔術師だったんだな!何で弱いっていうんだ!?」


 ただリゴブリンを倒すだけでこんなに喜んでもらえて、こちらとしては困る反応だ。


「いや凄い人はたくさんいるよ。俺は弱い方なんだ、さっきの勝負を見ても分かるだろう?他のプレイヤーには敵わない」


 変な事にこだわっているせいで進みが遅いとも言う。

 ユーは変な顔をしている。その後は言葉もなくセカの村に着いた。


「あっユー。どこに行ってたんだ!」


 門番の兵士さんにいきなり大声で叫ばれた時には驚いた。


「ユーは何も言ってこなかったのか?」

「え、ちゃんと言って来たぞ」


 とはいえこの慌て様はいなくなって探していましたと言う状況である。


「馬鹿野郎、心配したんだぞ!」


 走って来た男性がユーをはたく。


「痛っ。ちゃんとジュリアの所に行くって言ったじゃないか」

「ジュリアちゃんがこっちにいると思っていたらビギの方にいるんじゃないか。リゴブリンが出たらどうする」

「殴って倒したよ!」


 親子喧嘩の様である。


「すいません、そのくらいで、ユーも無事だったんだし」

「うん?あんたは確か、ナントとか言う初心者」


 父親に言われたがもう言われるのに慣れてきた。


「ユーの依頼を受けて、ひとまず俺が持ってるウェブ・スパイダーの網を持ってきました。34個で足りればいいんですが」


 親子喧嘩を止めて網を一つ見せる。


「おお、30個あれば十分だ。ありがとう。挨拶がまだだったな、俺はガアイン、漁師だ」

「どうも、俺をわざわざ探しに来たユーちゃんが凄いので、あまり怒らないで下さい」


 人が起こられているのを見るとこっちも怒られている気分になる。


「仕方ない、だが今度からビギの村に行くときはビギの村に行くと言ってから行くんだぞ」

「は~い」


 ユーは納得していないような顔だ。俺にはちょっとした考えがあるのでとにかく話を進めよう。


「それで、何かモンスターが出てそれに網が必要という事でしたが」

「ああそうだ、先に言っておくが、漁場を荒らされてはたまらないから空旅人を連れて行く気はないぞ」


 先に釘を刺された。残念。俺はもう一つの目的の方を話す。


「わざわざ蜘蛛の網を使うという事は、何か特殊な網だと思うんですが、作り方を教えてくれませんか?」

「何に使うんだ?」


 逆に尋ねられた。やっぱり漁に使うと思われているんだろうか。


「あるモンスターを倒すのに使いたいんです。俺は大して力がないので、動きを封じるのに丁度いいと思ったんです」


 正直に答える。


「人間に使う気はないんだな」


 何で人間に使わなければいけないのか?


「過去には奴隷商人がこの網を使って人間を捕まえたと言う話もある。滅多に渡せるものではない」


 奴隷商人いるのか。奴隷使い何てプレイヤーがいる以上いるとは思っていた。しかし俺は人間を捕まえたいわけではない。


「モンスターです。その事は誓えます」

「一つ上げて良いよ、ナントは俺を助けてくれたんだ」


 ユーの援護に父親として悩んだらしいガアインさんは、一つだけと念を押して分けてくれる事になった。


「ただし、使いきりだからもう30、網が必要だぞ」

「俺が用意するんですね、分かります」


 話が最初に戻ってしまった。


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