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58ビギの砂浜です

「ヒャッハー。狩るぞ狩るぞ狩るぞ~!」


 現実22日目、やっぱり死に戻りを繰り返していてストレスが溜まっていたのだ。何か狩りとなるといつも以上に気分が高揚する。

 …、失礼しました。笑顔全開でノンアクティブモンスターを狩りまくっている自分に正気に戻ると家畜の虐殺者そのものという事実に恐れおののいた。狩りすぎて危うく馬モンスターが出るかもしれなかった。危ない危ない。

 必要なのはビギの草原のアイテムではなくビギの砂浜のアイテムだ。いや肉も必要だからいらない物ではないが必要そうなアイテムは数が少なそうな様子なのでここで無双を楽しんでいる場合ではない。

 さてやってきましたビギの砂浜。そして何故か人が多い。あちらでは潮干狩りをやっているドワーフがいる。あちらでは砂の城を作っているエルフがいる。モンスターを狩っている様子はなく、ここもビーチとしてあまり泳がない人向けに開発されている。何があった?


「あら、ナント。狩りに来たの?」


 ユーリカさんがペットの朝顔を連れてやって来た。そして今初めて朝顔がペットという事に疑問を持った。蔓を這わせて器用というか、不器用というか、蛸が歩いているような感じだ。歩く必要があるのかどうかは知らない。


「ユーリカさんがここにいるなんて珍しいですね。薬草でも取りに来ましたか?」

「この子の散歩を兼ねてね」


 朝顔は蔓を伸ばして握手するようにユーリカさんに絡ませる。器用な物だ。薔薇怪獣みたいになりそうな気がする。


「ここ、何が採れるんです?」


 俺はここでは薬草の様にフィールドに生えている物を採取していなかったので何があるのか知らない。


「採取してないの?ここでは元々塩と何か打ち上げられた物が採れるのよ。一種の初心者救済らしくて一番の値打ち物は鉄の剣なんかも波打ち際にあったわ」


 そういう感じの場所なのか。草は取れそうにないが運試し的な場所の様だ。


「それにしても何でこんなに人が多いんですか?」


 人が多いという事は獲物が少ないという事だ。どうい見てもビーチだけれどその場合は安全の為に退治しておくと言う話になってやっぱりモンスターが少ない。


「入門者の海が海水浴場に開発され出したから、あぶれた人たちがこっちに来てるのよ。砂遊びならこっちの方がやりやすいし」


 フィールドの名前からも分かるようにビギの砂浜は砂浜の割合が多いので肌を焼く人と砂遊びの人が多いようだ。何だか泳ぐよりもカップルが遊んでいる割合が多いように見える。

 実際話している場所よりは離れた方で、波打ち際のカップルが水の掛け合いをしている。いつの青春ドラマだ。


「泳ぐ人と砂で遊ぶ人で分けたという事ですか。でも、ここ基本的に狩場ですよね。素材はどうしてるんですか?」


 俺が狩る分が無くなってしまう。ユーリカさんは疑問に答えてくれた。しかし、


「狩りは端っこの方でやってるわね。初心者用だから難しくないし」


 それは初心者に優しくない。俺もこれからやるんだからなおさら面倒だ。


「ここも牧場にした方が良いかもしれませんね」

「そうね、でも責任者を探すのは難しいしね」


 首を突っ込めない人間がいっても無駄だな。俺は奥で狩りをするために挨拶してユーリカさんと別れた。

 奥の方奥の方と歩いていけばいつの間にか人のいない区画に入ったらしい。前に見たのと同じように魚や海星が空を飛ぶ普通の風景へと周辺が変わっていない場所に出た。人は一人もいない。


「なんだ、結構残してるんだな」


 流石に狩場を消すような真似をする人はいなかったようだ。こういった場所を残しているなら海水浴場になっても問題ない。

 ここの狩場はノンアクティブとは言ってもビギの草原の動物よりも的が小さいのと動きが素早いのが倒しづらい問題になっている。とはいえ俺には≪命中≫があるので関係ない。問題なのは防具を身に着けていないのでいつもの接近戦が出来ないことか。

 魔術の練習と思って魔術を選び攻撃する。群れへの攻撃だから普通に空を飛んでいるモンスターは倒しやすい。問題はハイドフィッシュの鱗が必要なのに今の所出てきていない事だ。前は確か砂に隠れていたか。もうちょっと波打ち際だったかもしれない。

 俺は波打ち際の方を歩く。水の感触が気持ちいような気持ち悪いような。


「そういえば採取も忘れていた」


 塩がここで採れるなら買わなくても良かったと気付いてしまった。まあ村長達と会えたことで良しとしよう。

 知らないなりに色々採取をしてみた。≪サバイバル≫のセンスは初級とはいえ≪採取≫センスの働きをしているので何かしらは採れる。


 干からびたクラゲ

 海星型の石

 船のおもちゃ

 魚の骨

 赤い貝の破片

 青い貝の破片

 黄色い貝の破片

 珊瑚の欠片


 ここら辺は俗にいうゴミ、もしくは小さすぎて何にも使えない物だ。珊瑚の欠片は宝石じゃないかという人もいるだろう。有名な星の砂も珊瑚の欠片の一種だ、どう使えと。再生みたいな魔術は存在していない。


 手紙の入った瓶

 海賊船の封筒入れ


 変な物も流れ着く。何かイベントが起こりそうだから中は取り出さないでおこう。


 鋼鉄の剣

 鋼鉄の盾

 鋼鉄の弓


 名前だけ聞けは物凄い物に聞こえるが全部錆びてぼろぼろだ。隣に何故(錆)と表記されないのか不思議なほど。ただし物凄い物も採れた。


 青銅の斧

 青銅の槍


 これは錆びていない。青銅だからモンスター素材の最前線の物には及ばないけれど俺が使う、売る分には丁度いい。俺はセンスを持っていないから売るか?

 一番気になった素材はこれである。


『ビギの塩

 ビギの砂浜で採れる塩の結晶。食塩としては可もなく不可もなく』


 おや、採れたのは良いがこのパターンはもしかして味はあるけれど特殊効果はないと言うパターンではないだろうか。ためしに持っていた塩の樽から塩を取り出して見比べてみる。


『セカの村産の塩

 セカの村で作られた塩。ミネラルを含むのでやや黄色い』


 どうもこちらの方が良い品の様だ。どんな味なのか気になる。後でサムソンさんに違いを比べてもらおう。

 そんな事を考えつつ波打ち際の往復を繰り返す。ついにハイド・フィッシュと戦闘になった。気付かずに踏みつけてしまった。

 身体の真ん中を踏まれて相手を振り落とそうとハイド・フィッシュが暴れまわるのに俺は無意識にタートル・ガードを発動させる。じたばたする魚の攻撃は全く俺には届かなかったが、タートル・ガードが転がされた。

 俺も思ってはみなかったことで慌てたが体はスキルの発動中なので動かない。タートル・ガードの発動する形は亀の甲羅を模しているのは知っていたがまさか地面とはくっついていない物だったとは考えていなかった。

 普段は地中に埋まっている部分がハイド・フィッシュの背中に現れていたので球形に近いバリヤーはハイド・フィッシュの動きに押されて転がったという訳だ。

「おえ、気持ち悪い」


 自動車でも遊園地のコーヒーカップでもいいが、回転する物に乗るのはひどく気持ちが悪くなる場合がある。バリアーが転がり続ける間、俺は中心で体は動かず景色は転がるというアクロバット状態だ。今回はそれで吐きそうになった。これは状態異常とは言わないのだろうか。ステータスに何もない所から状態異常に含まれないようだ。

 アクティブ状態になって追いかけてくるハイド・フィッシュは待ってくれない。魔術でとどめを刺させてもらい両手両足を地面につけて吐かないけれど何かこみあげてきそうな気分が治まるのを待つ。

 ようやく気分が治まった時には結構時間が経っていた。最初に馬鹿笑いして狩りをやっていたせいが主な理由だが、少しは効率よく探さないといけない。この前は何も考えず手当たり次第に倒していったのでハイド・フィッシュがどうやって出てきたか覚えていない。

 狩りすぎるとまたボスモンスターが出てくる可能性も無きにしも非ず、考えを変えないといけない。前は結構取れた物だが今回採れないのは物欲レーダーというものが働いてるんだろうか。

 地道に杖で行く先を叩いて行く事に決めた。漢探知だったか、罠があるのを承知で踏みつぶすのは。普段ならそれをやると思う。今は鎧がないので防御力を考えると死に戻りしそうだ。


「なんか幼稚園の頃こんなことやったような。とんとん、まあーえとか言って」


 何でやったんだろうか。落とし穴にはまるような遊びだったと思う。こうやって叩いていればそれなりにハイド・フィッシュが現れる。俺は杖を持っているのでついでに魔術を使用して倒す。

 結構な数が取れたのでひとまず素材を渡すために村へ戻った。


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