47ユウリにあいました
気持ちを取り直して蜘蛛を取る事にする。蜘蛛が取れるのはカラーズの裏山だ。ついでに猫も獲れる。リベンジの為にここで狩りをした時のやり方を説明する。
「蜘蛛も取るとボスが出て気ますかね?」
「養蜂に女王蜂は必要だが、蜘蛛の糸を取るのに女王蜘蛛みたいなものはいらないだろう」
「上質の糸が取れるとかいう話ならどうです」
「上位の蜘蛛というなら、別のフィールドにいるわよ。ペット化は出来ないけれど、上質な糸を落とすわ」
俺の考えはサムソン・ユーリカ・カップルズに否定された。仲の宜しい事で。
実際十匹取っても何も起こらなかったからいないんだろう。
「後は猫ですか」
ユーリカさんが猫を持って魔術師をやると魔女みたいに見える。
「猫は何色が良いんだ?」
「黒が良いわね、でもそこまでこだわらないから、ぶちとか虎縞でもいいわ。ただ、ちゃんとぴんときたかどうかは大事ね」
ユーリカさんは自分の感性を信じる方らしい。そしてまた厳選の旅が始まりそうだ。
「これは私のこだわりだから、ナントは別に練習に行ってもいいわよ?」
ユーリカさんから思いもよらない言葉が来た。
「良いんですか?」
「いいわ。こっちは時間がかかるかもしれないけど、サムソンと一緒に探すから」
ここまで言われれば流石に分かります。お言葉に甘えよう。二人から離れて行動する。
「それではお二人さん、どうぞごゆっくり」
「ちょっと待て、気になる言い方だぞ!」
サムソンさんが何か言って来たが気にせずに、俺は奥の方を目指す。
ここまで来たのも久しぶりだ。前に来たときはリベンジな狩りに夢中になっていた。そして今は
「みりんかんって何だこれ」
搾り汁がみりんと同じという謎の柑橘類が取れた。
「紅抹茶?紅茶なのか抹茶なのかはっきりして欲しいな」
俺にはどっちなのか分からない物が採れる。
「ワサビーンズ?噛むと鼻へ抜けるような辛さがある?これ山葵の代用品になりそうだ」
サムソンさんに貰った海鮮丼がより一歩完成に近づいた。どうもここも味に関係しそうな素材が取れるような気がしてきた。山葵が来たなら辛子も取れるかな?しかし俺は辛い物が苦手だ。寿司も基本サビ抜きなのであまり意味はない。
そう、今は採取を中心にしていた。襲い掛かってこない物は無視する。
山葵が山で採れたので川で何が取れるかとやって来た。
「数日前なのに懐かしいな、前は似たようなところで昼寝してたらユウリが鳥に追われていたんだよな」
今回は川の石をひっくり返したりして何かないか探してみる。
「いい加減諦めなさいよ!」
さてはフラグを立てたか。聞き覚えのある声が聞こえる。見れば鳩に追われている小人が。
「さて、砂金でも出ないかな」
「ちょっと見てないで助けなさい!」
俺としてはスルーしたかったが言われたので仕方ない。しかし鳩とはつくづくイベントモンスターが多いな、小人関係は。この前の烏と言いここには出ないモンスターばかりだ。
「ウォーター・ボール」
傷をつけないでアイテムゲットにはこれぐらいが良い。水棲生物には使えないが、これを基本にしよう。落ちてきた鳩がアイテムボックスに入ったのを確認して、俺はユウリに声をかけた。
「大丈夫か」
鳩は倒したが何度も追いかけられているという事は何かやってるんじゃないかという話になる。またやっても危ないから解決した方が良いかもしれない。でもイベントは面倒だ、どうしよう。
「それで、何でまた鳥に追いかけられていたんだ。この前も追いかけられていただろう」
俺はユウリに事情を聞いてみる。フィールドを越境してまで行くような何をやっているんだろうか。
「別に大したことないわよ。捕まえようとしただけで」
「捕まえるって、あの鳥って鳩を調教したような物なのか?」
あの乗る事の出来る小鳥は丁度鳩ぐらいの大きさだ。
「違うわよ。あの鳥は代々鳥飼の一族が飼っているの。私だけの鳥が欲しいのよ」
何か事情でもあるのだろうか。
「鳩が何か関係あるのか?ああ、この前は烏だったか」
「私はいろんな街を巡ってみたいの。だから自衛術を身に着けて、鑑定のセンスも身に着けて、基本的な薬学も身に着けたわ」
凄い努力家だ。怠けて流されるままの俺とは大違いだ。ユウリの顔が真面目なのでからかうのはやめておいた。
「でも移動手段がどうしても必要になるの。小人族は秘密の魔法陣を使っても歩幅は人間より小さいから、鳥飼の鳥は鳥飼の許可がいるから、自分だけの鳥が欲しいのよ」
あの鳥は鳥飼の一族が貸し出している物だから自分の車、じゃなかった鳥が欲しいと言う訳か。
「あれ、近くにレインボー・バードがいなかったかな?」
カラーズの森にはいたはず。
「あれは旅行には向かないの。こっそり鳥飼から秘伝を教わったりしてるんだけど、中々うまく行かなくて。あ、そういえば有難う、助かったわ」
「いやいや」
ということは旅行に向いた鳥を捕まえてやればいいと言う話だ。このカラーズの裏山には別の鳥がいないので別のフィールドに行かないとな。俺は掌にユウリを乗せる。
「え、何?」
「鳩はどこまで行ったら取れるんだ?」
「え、あっちの方だけど、途中から人間の大きさじゃ駄目よ。小人族の通路を通るから」
指さされた方に進んでいく。俺の脚だと結構近い場所に境界があった。もしかしてこの川が境界の一種だろうか。
「ちょっと離れてくれ」
例の銀のスプーンを取り出すと空高く掲げてみる。ちゃんと念じているのでこの前とは逆に小さくなっていった。
しかし、これは、大きくなるのと違って一瞬で小さくならない。段階を踏んで半分、また半分と軽い衝撃と一緒に変身している。どこか古いアニメに銀のスプーンが魔力の源のおばあさんが小人になるアニメがあったような。
「それじゃあ、鳩を捕まえよう」
「良いの?」
ユウリが何か言いたそうな顔でこちらを見ている。
「自力だけで捕まえるのか?」
「え、ええと、手伝ってくれたらいいなぁ」
何で変な猫撫で声になるのだろう。
入っていくとどこかは知らないが別世界の様に印象の変わる場所だった。確か弟のいるレンジヘ行く
「レンジヘ続く道」という名前のフィールドに鳩が居たはず。この前弟と会った事もあるのでフィールドのデータとしては隣接しているのかもしれない。
「どこに鳩が居るかな」
「あ、あそこ」
空を飛んでいる鳩が居た。
「さっきはどうやったら追いかけられたんだ?」
そのまま実行すればまたこちらに追いかけてくるだろう。その後の事にはアイディアがある。
「爆弾を投げつけたのよ。気を引こうと思って」
普通に怒るような事をやっている。俺はファイア・ボールを投げておくとしよう。こちらに気付いたか、怒っているようで、勢いよく向かってきた。
「さて逃げよう」
「え、何で?」
「ここだと目立つから、さっきの場所まで逃げるんだよ」
説明する暇も惜しいほど嘴でのつつき攻撃が、爪でのひっかき攻撃が繰り出されてくる。
「ボア・ストレート!」
俺はユウリを担いで久しぶりに≪逃げ足≫センスを使用した。≪逃走≫になっても昔のセンスは使えるから何とかなった。使った事のないスキルの方が多いのでなかったら逃げられなかったろう。境界の穴に滑り込んですぐさまユウリを下ろして巨大化の念を送る。
「!」
巨大化は光と共に一瞬で終わる。目論見通り光といきなり現れた人間に鳩が驚いて硬直している。
「エレキ・パラライズ」
麻痺の雷魔術を使用してみた。そのまま捕まえる。鳩と言えばいつか串焼きで売っていたのでいつかサムソンさんに持って行ってみよう。生きたままの方が新鮮に違いない。
鳩は足を掴まれてぶらんとぶら下がっている。動こうとしても痺れているようだ。
「ふむ」
つんつんと言う感じで刀で突いてみる。定期的に麻痺はかけて動きは止める。HPが徐々に減っていった。
「ここでこれを使ってみる」
リルさんから報酬でもらったペット化の石を取り出して使用する。緑の光が放たれ、無事に鳩はペットになった。
『ペット化に成功しました。能力を決定してください』
ウィンドウが開いて指示を出してきた。へえ、この時に能力をつけてやると名前が設定されるのか。すると青華さんの小猿は跳躍の能力を貰ったからジャンパーなんて名前が付いたんだな。
能力一覧を見ればゲームを始めた時の設定のセンスほどにある。選択肢が多い。
「「旅行」にしてみよう」
現実にもリョコウバトという鳩がいたはずだ。絶滅した生き物だったか。「旅行」のセンスは旅の距離を稼ぐ能力を持っているセンスらしい。
名前はユウリに近くしておくか。アユウリ、イユウリ、…キユウリ、胡瓜にしたら怒られるから、クユウリ、…サユウリ、小百合にしよう。カタカナでサユリ。
「ネーム、サユリっと」
打ち込んで鳩が一瞬ポリゴン化した後目の前に実体化する。
「ポッポー」
元気そうな鳩が出てきた。種族名はトラベル・ピジョンとなっている。
「コイン化」
俺は鳩をコインに変えるとユウリに渡す。
「はい、ユウリ、やるよ」
「え?」
俺のやる事を見ていたユウリが目の前のコインを見て驚いた。
「貴方のペットじゃないの?」
「俺はペットは飼わない主義だから。ユウリが必要なんだろう」
コインをユウリに渡すと、再びウィドウが現れる。
『ペットを譲渡しますか?』
はいを選択する。
『名前を変更しますか?』
「名前を変えられるみたいだ、ユウリ、変えるなら今だけ見たいだぞ」
「このままでいいわよ」
いいえを選択して、ユウリへの譲渡が終わった。
「一度出して、乗れるかどうか見て見なよ」
「え、うん。出てきて」
コインが光ると鳩が現れる。
「ポッポー」
「で、乗れそうかな」
前に載った鳥には鞍と手綱が付いていた。まだ鳩には付いていない。
「うん、乗れるわ。鞍は後で作ってもらえればいいし」
鳩の背に載ってユウリが飛び上がった。俺の顔の高さでホバリングしている。
「それじゃ、もう危ない事しないでな」
「あ、ありがとうっ」
何かフラグが立ちそうだったので断ち切ってみたが、喜ばれたなら何よりだ。遠くまで鳥を採りに行くイベントが起きなくて良かった。良かった。




