45村長に聞きました
『運営よりの公式インフォメーション
いつも拙作Six Sense Onlinを遊んでいただいてありがとうございます。
今回、プレイヤー:クレイ様率いるパーティが始まりの村、ビギにおいてハイドルートを攻略いたしました。条件が揃いましたので公表させていただきます。
今回攻略されたのはビギの村から入る事が出来る6つのフィールドです。6つのフィールドに置いてペット化が行われましたのでシステムの解禁条件を公表します。今回解禁条件はありません。
今後もSix Sense Onlinをよろしくお願いします』
これが実際に流れた公式インフォメーションだ。他のハイドルートに比べるとあっさりしているし条件も短い。狐を探してビギの平原で大量の狩りをしている所に流れてきた。
「ハイドルートNo2か。まだ初心者寄りの所にハイドルートがあるかもしれんという事やな」
クレイさんがリルさんに語りかけた。
「確率としてはさっき言ったモンスターを全種類ペットにしてみる事とNPCにペットを譲って牧場を作る事ね」
さっき言った事だな。でもペットの話はもう終わったんではないかな。
「NPCに何かするのが残されたハイドルートだと思うのよね」
ああ、成程。だからNPCに牧場と言う話になるのか。
「NPCにペットの移譲が出来るのか、私達がペット化したモンスターを飼えるのか。ペット自体どれが牧場に使えるのか分からないから、全種類集めて聞かないと」
「言っておくが、俺は食材に使えそうな物はペットにしないからな」
リルさんの言葉にサムソンさんが釘を刺す。シャコ貝は真珠の為に養殖しても貝自体を食べる訳ではない。ペットの鯛で作った刺身…えぐいな。
「じゃあクレイ、第一歩の磯辺でペット化してみない?」
「いや、海産物を何に使え言うんや。俺は行商が主な仕事やで」
「良いじゃない。蛸好きでしょ」
「そうそう関西はたこ焼きが本場でって、あんなん食えるかい。第一ペットの話やろう!」
何故か二人で漫才が始まった。
「私は猫も欲しいわ。サムソン、捕りに行くのに付き合って」
「任せろ」
こちらはこちらで熱い会話が交わされている二人がいる。
「私達も何かぼける?」
「いえいえ、そんな事より、NPCに牧場を作れるか知りたいんですよね。じゃあ村長に聞いてきましょう」
青華さんが漫才に乗り出したのでコンビを断る。そして俺は思っていた事をそのまま口に出す。それが一番早いと思う。
「え、ちょっと待って」
リルさんの声を聴きとる事もなく、善は急げという事で俺は近くのセカの村へと戻った。
「アクス村長こんにちは~」
村長宅でこれをかけても誰も出てこない。
「あ、ナントだ」
「何でジュリアがいるんだ?」
「お母さんの里帰りに付いてきたの。お父さんもいるよ。今アクスお爺ちゃんと庭で稽古してる」
やっぱりどこの世界でも赤ん坊の世話は大変なんだろう。実家に帰って休憩がてら手伝ってもらうと言う話だなきっと。
俺はジュリアに案内されてアクス村長とジュリアの父親のいる裏庭に行った。
「ナントなんだから勝手に入ればいいのに」
どういう意味だ。俺は強盗か。ジュリアの言葉に心の中で突っ込みを入れつつ、裏庭では激しい戦いが繰り広げられているのに驚いた。同時にやっぱり怪力の村長の稽古だからこういう物じゃないかと思っていた。
俺では持てないような重量級の銛と大剣が激突して火花が散っている。アクス村長の銛捌きは特に凄い。連続三連突きとはどこの新選組だ。
「おや、ナントじゃないか」
「どうも、久しぶりです」
俺が視線に入ってアクス村長が動きを止めた。
「そちらがジュリアのお父さんですか。初めましてナントです」
「これはこれは、ジュリアがお世話になっている。父親のウルクだ」
アレク村長の息子のはずだが村長よりも細い。母親似だろうか。
「それで、何か用か?」
「聞きたい事があって来ました」
後ろからリルさんが追いついて来て声を出す。
「おや、お前達も来たのか。ウルク、彼らがビギの村に来た生産職の空旅人達だ。何人か居ないようだが。お前はこの前の宴会では留守番だったろう」
「初めて来たときに挨拶はしたよ」
今回のパーティメンバーが挨拶したところで、リルさんが本題を話し出した。
「カラーズの裏山でもセカの海でもいいですが、初心者フィールドのモンスターは家畜化しないんですか?」
「初心者フィールドと言うのは何だな?」
おや、これは以前の俺とリルさん達の話している言葉が違って聞こえるのと同じ話かな?逆に村長から疑問が出た。初心者フィールドの話はアレク村長に入ったがまだこっちでは言っていなかった。
「ビギの草原、ビギの砂浜、カラーズの裏山、カラーズの森、セカの磯辺、セカの海の6か所を初心者でも安心して狩りが出来るという事でまとめてそう呼んでいるんです」
「空旅人は変わった呼び方をするな」
ちなみにペット化の解放がされた、○○への道というフィールドは6つ合わせて食材フィールドと言う名前になっている。弟と会ったのはレンジへの道になる。実際はコナン・リドルのメンバーと俺以外は行った事はない訳ですが。
俺の説明に親子三代で「へぇ」と異口同音を発した。
「それで質問は、セカの海で採れるモンスターを何故家畜化しないのかという事だったな。簡単に言えば、あそこでは世話をしなくとも増えるし手間がかからない。もっとも、モンスターは飼えない。特殊な薬や食材としてどうしてもモンスターの素材が欲しいという時に備えて村長一族は腕を磨いている」
村長一族って他の全部の村と血縁なのか?そうすると王様とも血縁という話になるから違うのか?何となく俺はジュリアを見る。
「良かったな。将来魔術師になって活躍できそうな未来が出てきて」
「何か不満~」
俺に文句を言われても困る。
「なら、もしモンスターをペット化した物をお礼に渡した場合、受け取ってもらえますか?」
リルさんが俺達には付き合わないで話を続けている。
「それは大歓迎だな。モンスターとはまた違った乳が取れたりするから。ただ、今この村にもビギの村にも牧畜業を知っている人間はいないから、どこかから連れて来ないといけない。魚ならうちでも出来る」
セカは漁師の多そうな村だから、魚の養殖は可能という事だろう。しかし、ペットを使うと取れるアイテムが違うのか。ペットの魚の兜焼き…あんまりアイテムに見えない。
「私達が大々的に牧場などを作って手欲しいとお願いした場合、やってもらえますか?」
「それはまず王都の方で人材募集し、土地も用意する事が大前提になる。規模が大きい物は王都で一旦調整しないと俺では手におえないから」
王都は村の行政に関係してくるのか。次々と判明する新事実に俺は呆れた。リルさんは牧場でもやるのか?青華さんがペットを利用して動物ランドを作りそうな気はする。
「この辺りで牧畜業をやるとしたらどんな生き物が良いでしょう?」
「別にここいらに住んでいるモンスターが元なら普通に育つな。気候が大体似通っていれば大丈夫じゃないか?流石に砂漠や雪山のモンスターがここいらで生活できんがね」
環境は元のモンスターと同じ物が良いと。ペット化と言い、この辺りは牧場を作れと言う運営の考えがあるんじゃないだろうか。
「最後に、こちらの初心者フィールドでペットから家畜化しているモンスターはいますか?」
これは村長の口ぶりから言っていないと思う。俺としてはイベントとしてどこかに隠れてそういう小犬を飼っている人がいると面白い。
「うん?今までそんな空旅人も村人もいなかったからそこは知らない。エルフの里にはモンスターを使った戦士団があるから何か知っているのではないか?」
アクス村長はユーリカさんを見た。俺も見る。ユーリカさんは首をふって知らないと主張した。
「ありがとうございました」
「いやいやこんな事誰でも知っている。「初心者の初心者」ならともかく」
いつまで俺はディスられなければならないのか。
『「クエスト:牧場を作ろう」が発生しました。実行しますか?』
村長宅から出てすぐにこんなインフォが発生した。イベントってこういう風に起こる物もあるんだと、決定権を持つパーティリーダーを見る。
クレイさんは「いいえ」を押してイベントを保留する。
「ナントが走り出すから驚いたわ」
「それはすみません」
別に走ってないから先走るの意味か?
「でも良かったじゃない。いろいろ聞けて。ところで牧場はペットふれあい広場にしない?」
青華さんがぶれない。ふれあい広場って獣系で溢れる場所なのが目に見える。
「土地を用意する方法と時間が問題ね」
「クエストが発生するくらいだからな」
ユーリカさんとサムソンさんが話し合っている。
「大分調べられたし、先に新しいペットを考えましょう。育て方を聞いて、どれが牧場に丁度いいかだけでも調べないと」
「リルさん達は牧場やらないんですか?」
俺はイベントついでに経営するかと思っていたので、否定的な響きのする言葉に質問していた。
「俺らは検証するだけやし、特に俺は行商人やから一つ所にはとどまらん。牧場なんて出来んよ。土地の取り方を調べるだけでイベントは終わるかな?」
クレイさんが説明してくれた。検証ギルドというのはそういう物なのか。
「そうね、牧場を作れば生産職の生産能力が一新されるかもしれないから、村長さんの言うとおりに人員募集してその人に譲る事になるわね」
リルさんが言った方が説得力あるのは何でだろう。
「ナント、口から考えがだだもれしとるで」
「正直に言っちゃ駄目な事もあるんだよ」
注意されたクレイさんから半眼の冷たい視線が、青華さんから温かい視線が飛んできているような気がする。
「それはそれでいいとして」
まとめに入られた。
「私の考えとしては生産職に良い牧場を作りたいの。使えそうなモンスターは牧畜が始まりの草原のモンスター、林業と農業がウッドトレント、裁縫がニードル・ビーとネット・スパイダーぐらいかしら」
リルさんが指を折ってモンスターを数える。サムソンさんの前の話から海産物は数えないんだろうな。
「はーい。私羊取りたい」
毛皮が目当てそうな青華さんが手を上げる。
「でも蜂と蜘蛛は良いの?裁縫系だけど」
「綿毛動物を取りたいの!」
ユーリカさんが注意しているのを聞こうとしない青華さんは毛に精神汚染されているようだ。
「仕方ない、サムソン、蜂なら蜂蜜が取れるかもしれないし、網は漁に必要でしょう?蜂と蜘蛛をお願いできるかしら」
「食材になりそうにないから良いぞ」
「蜂の子って食べるんじゃないんですか?」
長野名物にあったような気がしたので口に出したが、サムソンさんリルさんに冷たい目で見られた。
「食べたいの?」
「いいえ」
ゲテモノは苦手なので無理に食べる気はない。というかこの冷たい視線を向けられて食べる気は無くなった。




