44帰ってきましたら
アーツの練習も一休み。パーティは素材の整理と休憩にビギの村へと戻る。前はペットの厳選の為に移動時間になっていたのだ。
「早くあの子達に会いたいよ」
青華さんのペットに会いたいと言う心も理由の一つか。
「あらお帰り」
ビギの村では帰ってきたユーリカさんが、ペット達に囲まれていた。小猫を膝の上に乗せ、小猿を肩に、足元に小犬と兎をはべらせている。
「えーっ何でユーリカになついてるの?!」
「人懐っこい子達ね。私もこういう子が欲しいわ」
「駄目っ私の子なんだからね」
青華さんの抗議を気にすることなく、ユーリカさんはミケちゃんの背を撫でている。
「むぅーっ」
「落ち着きなさい青華。ユーリカ、お帰りなさい。種族の変換はうまくいったみたいね」
そうだったこの人はエルフになりに行ったんだった。
「成功よ。ほら」
ユーリカさんのかき上げた髪のから見える耳が長い。でも思ったよりも長くない。髪があるとあまり容姿も変わらない気がする。雰囲気は何というか、樹木っぽい気がする気配だ。
「茶が入ったぞ」
「ありがとう」
サムソンさんがお茶を入れて持って来てくれた。その様子がおかしい。俺達には普通に入れてくれるのにユーリカさんに渡す時顔が赤くなっている。
「ヒューヒュー」
「ラブラブですなぁ」
青華さんとクレイさんが二人を囃したてている。何があったのやら。クレイさんがにや着いた顔で俺の方を向く。
「この前ナントが死に戻ったやろ。あん時からなんや良い雰囲気でな」
「ユーリカはサムソンに引っ付いて離れないしね~」
どうしてこういう時ひそひそ話で相手に背を向け、固まって話すんだろうか。青華さんの追撃はサムソンさんに効果抜群だ。サムソンさんは顔を真っ赤にして後ろを向いてしまった。
「それはそれは。やっぱりリア充爆発しろと言ったらいいんでしょうか」
確かネットスラングでそんな事をいうらしい。詳しくないのでどういう状況で使うかあんまり知らない。
「やめてくれ。聞こえてるぞ」
「聞こえるように言うとんや」
クレイさんは確信犯の様だ。
「はいはいそこまで。それでユーリカの体調はどう?何か異常はある?」
リルさんがユーリカさんに話しかけた。サムソンさんがあからさまにほっとしている。何故か笑える。
「変換直後は意識がはっきりしてなくて、ふわふわとした夢現な感じだったわ。ただ、一緒に受けた4人の内の一人が「俺も今日からエルフだーっ!」とか言って走って行ったから私個人の状態かもしれないけど」
それはハイテンションの状態異常ではなかろうか。
「今日はゆっくりする?」
「いいえ、こっちに帰るまで十分ゆっくりだったから、出てみたいわ」
エルフと言えば弓と魔術が有名だ。丁度いいから俺もついていって見せてもらおう。
「俺も出よう」
そしてサムソンさんが言えば再びクレイさんと青華さんの餌食になっていた。
「それじゃあ、パーティを組みましょう。検証で丁度聞いてほしい事があるの」
さっきの話を続けるんだな。話を聞いたユーリカさんとサムソンさんは同意して検証がスタートする。
「それで、今どれくらいペットがいるの?」
まずは現状の確認から開始される。ペットを持つのは3人。ビギの草原でクレイさんが驢馬を捕まえたと言っていた。さっきリルさんがセカの磯辺で鴎を捕まえている。青華さんが目の前にいる子猫、小猿をカラーズの裏山で、兎、小犬をカラーズの森で捕まえている。
「つまり、後はビギの砂浜とセカの海で捕まえればいいのね」
ユーリカさんの言葉であるが、難しそうだ。何しろどう見ても食材にしか見えない。
「何を取るか決めてるの?」
「いいえ、貴方たち二人で決めて欲しいんだけど」
「どっちにする?」
「俺にはどちらも変わらん」
サムソンさんの言葉は食材を見ているからだろう。リルさんとユーリカさんの相談はまだまだ続く。
「それじゃあ、私が砂浜で朝顔を仲間にするわね。粉を噴出するから薬品の材料に使えそうだし」
「サムソンが海でペットを選んでね」
結論として二人の相談が終わった。サムソンさんは意見を言っていない。
「ところでナントは何かペットにしたの?」
ユーリカさんが話をこちらに振って来た。
「いえ、俺はペットは作っていません。ただ、宴会芸で使いたいと思っているので余った場所で使おうかと」
現在考えている宴会芸は空飛ぶ小型の何か、巻貝か海星を光らせて星座でも構成させようかと考えている。
「じゃあ何かセカの海で採らない?」
俺は予備なのでそういう方向に話がいくのは読めていましたよっと。
俺の私見では、やっぱりセカの海で採れるモンスターはあまり好みではない。基本食材だ。だから海老、烏賊、、鯛、昆布は無理だ。エイは食材以外にも使えそうだが、水生生物を連れてソロ活動は難しい。消去法で貝になる。
「ええと、シャコ貝ならいいですよ。真珠が作れそうですし」
普段は海に沈めておこう。
「シャコ貝なの?」
ユーリカさんの顔が曇る。そういえば、この前死にかけたのはシャコ貝のせいだった。
「あ、真珠が取れたらネックレスでもユーリカさんにプレゼントします」
悪い記憶は良い記憶で上書きすればいい。
「あら、いいの?」
「はい」
やっぱり女性は宝石が好きなんだと思った。
「待て、シャコ貝から真珠が取れるなら俺がペットにする」
横からサムソンさんが口を挟んできた。
「良いんですか?」
「ああ、真珠は食材としては是非使いたい物だからな」
明後日の方を向きながら答えるサムソンさんに、俺はおかしくなって笑ってしまった。クレイさん、青華さんは満面の笑みで笑い、リルさん達も苦笑いしている。
ちなみに、真珠は宝石なので硬く、食材としては実際は貝殻を使う場合が多いそうだ。
「それじゃあ今度は一緒に連れて行くね」
青華さんがペットを整列させて手をかざす。するとペットが次々とコインに変わっていった。
「コインになった」
見た事がなかったので驚いて呟いた俺に青華さんがコインを掌に乗せて見せてくれる。
「ペットは戦闘には使えないから移動の時は大体こういう形なの。移動には使えるから別にそのままでもいいけど、今回は戦闘になるのが確実だから」
確かに足手まといにならないようにアイテムボックスに入れておいた方が安全だ。
結局俺は特にペットを作らなくてもよくなった。そして、朝顔とシャコ貝は普通にペット化される。
そして名前が付け終った時、例の報告が鳴り響く。
『公式インフォメーション:運営からのお知らせ
おめでとうございます。ハイドルートNo2の条件を満たしました。これにより新システムとしてペット化システムの拡大が行われます。
新しくペット化に出来るモンスターが増えます。各都市周辺のフィールドの内、『クリムへ続く道』『レンジへ続く道』『イエロへ続く道』『ブルーへ続く道』『エメラルダへ続く道』『ヴィオレへ続く道』の6か所に置いてモンスターのペット化が可能になります。
ペット化可能フィールドでβ版においてアクセサリ・モンスターのイベント用モンスターだったアクセサリ・フォックス、アクセサリ・パンダが発生します。
さらに要望の多かったアクセサリーとしてアクセサリ・エンジェル、アクセサリ・デビル、アクセサリ・フェアリー・パピヨン、アクセサリ・タヌキがモンスターとして追加されます。この6種類はランダムに1フィールドに1種類につき1日1回限定で発生します。
初回限定報酬としてフィールド名:ペットの楽園への移動チケットがパーティメンバー全員に配布されます。移動チケットは1日1回引ける王都の商人ギルドでくじの景品として存在します。是非とも遊びに行ってください。
今後もSix Sense Onlinをよろしくお願いします』
運営から来たインフォメーションでこのリルさんの考えていた条件が正解だったと判明した。
「ハイドルート発見おめでとうございます」
「ありがとう、でもこんなに簡単に見つかるのは拍子抜けね」
リルさんは喜んでいるのか呆れているのか微妙な顔だ。
ハイドルートは発見すると報酬やどういう新機能が加わったかを説明するだけで、今までのインフォの様にどうやったらハイドルートに入れるかというのは出てこない。今回はペット用の新フィールドが増えるという物だろう。この配られた報酬のチケットはどう見てもペットが大量生息しているフィールドに思われる。
「モフモフ!早速行ってみようよ」
青華さんがチケットを実体化させてリルさんに迫る。
「ちょっと待って。先にまず成功報酬の意味もあるのでナントにペット化の石を10個あげるわ」
10個は多すぎると思うものの腐る物でもないので貰っておく。後で海星でも取りに来よう。
「先にモンスターの確認に行くわよ。ここでもいいけど、狐とパンダが出て来るでしょう?平原の方に行ってみましょう」
「それもあった。早速平原に行こう!」
青華さんの暴走は止まらない。
「狐とパンダか。エンジェルや何や増えたな。商品の流通具合が心配や」
クレイさんは別の事を考えている。
「それで、これからどうしますか?」
青華さんを抑えるリルさんに行動を聞いてみる。
「そうね、まずはこれらの条件をアップしないと。その後はさっき言った他の条件が可能かどうか調べるために聞き込みでしょうね」
昔の刑事ドラマみたいだ。NPC関係の事ならビギの村の村長に話せば早いだろう。




