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35泳ぎます

「せっかくだから海に行きません?一度見てみたいわ」


 ユーリカさんの言葉に海に行くことが決定した。


「去年は忙しくてVRでも泳げなかったから今年は泳ぎたいわ」

「賛成~」


 ユーリカさんと青華さんが先頭に立って海に向かって歩いていく。


「VRの季節と本当の季節はずれてるんじゃないんですか?それにシステムは泳ぎに対応しているんですか」


 俺は小学校で基本4種類の泳ぎを覚えているので普通に泳げる。全員を泳げるようにすると言う目標を掲げた先生だった。


「それはソフトの売りによるわね。いつでも泳げるように常夏のソフトもあるし季節感を大切にするソフトもあるから。フィールドや地方でも変える場合の方が多いけど」


 リルさんの説明を受けているうちに目的地に着いたようだ。


「泳ぐのは戦闘は≪泳ぎ≫のセンスがいるけど普通に泳ぐ分には大丈夫」


 それなら大丈夫か。俺も泳ぐのは好きなので一度ぐらい泳いでおこうと思っていた。


「う~み~!」


ザッパーン


 青華さんの声が聞こえて、応えるように荒波が岩礁に叩き付けられる。目の前はごつごつとした岩場で構成されたフィールドだ。向こうに見えるのは探偵物で犯人が自供しそうな断崖絶壁です。

 青華さんも叫んでから動きを止めている。


「ここが入門者の海か。泳ぎにくそうだな」


 石動さんの言葉に同意する。


「ンな訳ないやろ。ウィンドウの名前確認してみぃ。ここ、第一歩の磯辺やないか」


 クレイさんが高速でツッコミを入れた。


「ユーリカは方向音痴な所があるから気を付けてね」


 冷静なリルさんと顔を真っ赤にしているユーリカさんが対照的だ。俺も迷子になりやすいので気持ちは分かる。

 改めて隣のフィールドに向かって進み、セカの海、つまり入門者の海に到着する。

 今度はウィンドウも確認している。今度のフィールドは砂浜面積が多めで岩がちらほらある、穏やかな海だ。モンスターがいないのでこのまま砂遊びや日光浴が出来そうだ。


「さて、泳ぐか」


 早速泳ぐために準備体操を始める。ゲームでは泳ぐのに着替える必要はない。鎧をつけても泳げるのは便利だ。ただし俺が着ているのが系統として革鎧に当たるので可能であって、重い金属製鎧だと沈む。


「ナントは≪泳ぎ≫センスを持ってるのか?」

「持っていませんが、遊びで泳ぐぐらいなら大丈夫じゃないかと思います」


 サムソンの声に応えつつ砂浜から一歩踏み出す。足元の砂が崩れつつ埋まる感じ、波のかかる感触が気持ちいい。どんどん踏み込むと冷たさと濡れる感触がある、しかし触っても濡れているとは思えない。目を開けても痛くないファンタジー。

 最新程感触ははっきりすると言うから仕様なのかその感触をプログラムしていないのか。気持ち良いのでどっちでもいいと思う。

 目が痛くないかと最初は目をつぶってじっとしていた。心を決めて目を開ける。痛くない。こういうところはゲームだ。腕を伸ばして遠くに向かって泳ぐ。しばらく泳いでから下を見た。

 海の中は綺麗の一言だった。昆布や海藻が生えていて南の海とは違うが色とりどりの魚が泳いでいる。現実ではぼやけて見える部分もはっきり見える。

 七色の貝が固まっていたり真紅の鮫が普通の鮫の倍以上の速度で泳いでいると言うのはカラフルだ。普通の魚も銀色のきらめきが光で反射している。

 写真、は撮り方を知らない。リルさん達に撮ってもらうのもパーティも組んでいない人に頼むのは気が引ける。

 普通に泳いでも敵モンスターは来なかった。思い切って潜ってみると酸素のゲージが現れる。魚の群れの中を泳いでみたけれど別に散っていくだけで攻撃はない。これはモンスターではなかったからか。何か食べ物を持っていたらダイバーがやる餌やりを体験してみたいが、そういうアイテムは持っていないので残念だ。肉だと鮫でも寄ってきそうだ。


「ぷはっ」


 息はしないと普通に死ぬので浮かび上がる。酸素ゲージが潜っている間浮かんで出ている。呼吸自体は苦しくはない設定なので忘れそうだ。


「泳げる~?」


 陸から誰かの声が聞こえてきた。誰かは分からない。まだ25mも泳いでないけれど結構遠いな。


「泳ぐのは大丈夫です」


 戦闘はしていないので分からない。泳いでも敵モンスターは来なかったからビギの草原と同じような設定だろう。声を返したのは聞こえたのか?

 声は聞こえたようで何人か海に入って来た。よし、それではこちらは採取が出来るか試してみよう。魚は銛も持っていないので無理だろうが、貝なら普通に取れるだろう。そう思って海底を見れば見る限り海の底は平たいので砂に隠れている種類しかいないのような感じだ。磯のほうが貝を取りやすいかな?

 俺はしばらく楽しく遊んでいたが視界に入った他の人の方を見ると戦闘が開始されていた。何があってああなった?

 ユーリカさんが底の砂に足を取られて苦しそうだ。何か踏みつけたのか?その周りでサムソンさんが烏賊と、石動さんがエイと、青華が海老と戦っている。

 なんというかサムソンさんが凄い、刀のような包丁を振れば烏賊が短冊切りになり、海老がむき海老になる。俺も見物している場合ではなかった。助けに入らないと。まずはユーリカさんからだ。

 ビギの草原でもモンスターと戦っているプレイヤー(達)との間に入り込むと戦闘に参加したとみなされる。この海もそうだろう。今の装備で勝てるかどうか分からないのでユーリカさんの足元、砂の中に何があるか確かめるのを先にする。

 足元まで泳ぐと白い脚の埋まっている砂を掘っていく。柔らかい砂地はすぐに砂が入り込む。とにかく掘る、掘る、掘る。幸運にもそんなに深く埋まっていなかった。ユーリカさんの足を掴んでいるのは貝の様だ。持ち上げるために下に手を突っ込んでから引っ張り上げる。


『トラップ・シャコ』


 モンスターの名前が表示されたが動かなくなったユーリカさんに俺は慌てる。とにかく上に持っていく為に足を動かす。

 どうやら敵認定されたようで俺にもモンスターが襲ってくる。海老が弾丸のように飛んできて(泳いできて?)痛い。

 サムソンさんがこっちに向かって泳いできた。包丁が一振りされるとトラップ・シャコは貝柱と身の刺身になってからが消滅した。ユーリカさんがぷっかりと浮かび上がるのをサムソンさんが下から支えて浮かび上がる。

 俺も浮かび上がって酸素吸入だ。そう思って足を動かすとそれを妨害する何かがいる。なんだと下を向けば烏賊が足を捕まえている。酸素が足りない。触手で人気が出るのはエロゲーだけだ。離せ。

 そんな事が何故か頭の中に浮かびながら、体は酸素が切れて動かず俺は最後を迎えた。


 久しぶりの死に戻りだ。戻った先は借りている部屋だった。これなら瞬間移動と思っておこう。今回は案内だけだったのでアイテムを取る事はなかった。死に戻っても何も減らない。


「あれ?ナント、リル達とセカに行ったんじゃないの?」


 部屋を出た途端ジュリアに見つかった。


「ああ、海で泳いでいたら烏賊に殺された」

「弱いわね」


 ジュリアの目が何だか生温かい気がする。

 被害妄想は置いておいて、ジュリアは何でこの家にいるんだろう。


「リルから言われたの、自由に本を読んでいいって」


 ジュリアの手には『基礎魔術道具作成』と書かれている本があった。


「魔術道具の作成ね。石動さんか石破さんか、どっちだったか忘れたけど、あの人の本だろうな」


 同じドワーフみたいな顔をしているのでまだ判別が付き辛い。


「え、ナント本を読めるの?」

「人を何だと思っているんだ」


 酷い言いぐさだと思ったが、この世界の言葉はプレイヤーは≪言語≫センスを持っていないと見れないんだった。


「空旅人は見れない人が多いって言うから、てっきり」

「ああ、そういう設定だったな。しかし俺は読める。神殿で習った」


 そういえば子供達と遊ぶ約束もしていたな。何か遊ぶものを調べておこう。


「神殿かぁ。私、魔術師になりたいんだよね」

「なればいいんじゃないか?」


 魔術系のセンスを取って魔術でリゴブリンでも倒せばいい。


「あのね、空旅人みたいな反則人間と違って、人間はセンスを交換する事なんて出来ないの。付け加えるだけだし、それも元の才能がどうか調べないと」

「どこで調べるんだ」

「神殿よ。でもお父さんもお母さんも王都にはまだ早いって連れて行ってくれないの」


 リゴブリンが出るかもしれないしな。王都まで連れて行くには子供過ぎると言う事だろう。


「じゃあ俺が連れて行ってやろうか」

「え、ナント?不安だなぁ」


 俺の親切心を否定された。ジュリアは少し考えると俺に顔を合わせる。


「不安だけど、ナントなら悪い事をしそうにないし、連れて行って」

「その不安と言う部分が俺を物凄く不安にさせるのでリルさん達にも頼むことにする」


 今度はオークみたいなモンスターが襲ってきそうで怖くなった。護衛依頼は人死にが出ないようにするのが鉄則だ。


「リルか。リルなら安心だね」


 俺が連れて行く意味はなさそうだ。


「ナントも魔術使えるんでしょう」

「一通りは」

「どんなのが良いかな。どんなのがあるかな」

「そうだな。地、火、風、水、光、闇、氷、雷、木、金を中心に、料理魔術とかもあったな」

「知ってる。セカの村のメリンさんが使ってた」


 俺は小人族の村長の事を思い出した。そしてメリンさんというのは干し肉作りを教えてくれたあの人か。


「そういえば俺の知っている村長が、調合魔術使っていたな。将来を考えてそういう魔術も村長が使えるかもしれないし、まずは聞いてみたらどうだ?」

「お爺ちゃんならセンス魔術使えるよ」


 何だ初耳な魔術だ。センスを外して隙間を作る魔術の事だろうか。あれは覚えるような物なのか?


「それを含めてどんな物がいるかは自分で決めると言い。セカの村長とビギの村長の孫なら両方とも使えるかもしれない」

「そうなんだ。じゃあ聞いてみるね」


 話がそこまで決まるとジュリアは飛び出して家を出て行った。


「鉄砲玉って言うんだろうな、ああいう子供」


 俺はリルさんに無事という連絡を取りたいがパ-ティも組んでいなかったので連絡する方法がない。フレンド登録しておくんだったと後悔していた。



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