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31小人族の宴会から逃げます

 弟達に小人の事は秘密になっているので人気が無くなるまで待つのを合わせて動かずに休憩する。これ、ディアトリマが戻ってくる事はないんだろうか。イベント用モンスターだと言っていたからまた来るだろう。小人族のイベントをクリアすればこっちには恐らく来ないと思う。

 HPが半分を越えなくても痛みは無くなったのでそろそろかと思っていると、見た事のある小鳥が飛んでくるのが見えた。


「ちょっと、大丈夫?」


 ユウリががけ下に降りてきて、俺の周りを飛んでいる。


「大丈夫。周りに人は?」


 動くのが面倒で、ユウリに確認を頼んでみる。


「いないわ。それで、どうする?小さくなる?このまま崖登りする?」

「できれば小さくなった後鳥に乗せてくださいお願いします」


 動かない体よりはましになるだろうとユウリの言葉にお願いする。


「じゃ、じっとしてて」


 毎度思うが、何でコント風にバズーカなんだろうか。発射されたビームを浴びると、みるみるうちに体が小さくなっていく。


「あれ、何故か体が軽い」


 傷は無くなっていないが、体力が戻ったような感じだ。


「小さくする時、いらない部分を一時的にこの中に入れるのがこの道具なのよ。だから、調整すれば体力を満タンにした状態を普段に出来るわ」


 それは便利な。冒険に物凄く役に立つだろう。戦いではなく逃げる時限定になるだろうが。


「さっさと行きましょ」

「分かった」


 小鳥に乗って飛んでいく。俺が居なくなったのがきっかけか、それとも時間設定があったのか、下にはディアトリマが茂みをかき分けて出てきた。危ない所だったかもしれない。


「ところで、ちゃんとアイテム貰ったの?」

「モツをもらった」

「モツって何?」


 あ、リアルの言葉とは違うんだな。


「内臓の事だよ、胃と腸を貰った」

「何でそんな気持ち悪い物貰うのよ」

「いらない部分を貰ったからだよ。俺とあっちのパ-ティの力の差を考えるとそんなもんだよ」


 俺がディアトリマを倒せたのも、弟達が逃げ出すまで弱めてくれたおかげなんだから、実際の力はどんな物か分からない。


(ふん)でもいいと言ってたから、大丈夫。早く戻ろう」


 空を飛ぶと移動が速い。あっと言う間に小人の村に着いた。村では荷物を持ち、大八車をはじめとした移動用の乗り物を準備している村人たちが家の外に出ている。


「何だろう、さっき見たかった怪獣が出てきた時の避難民のイメージだな。まだ逃げる気はないみたいだからちょっと違うか」

「何言ってるの?」


 俺の言葉にこっちを向いたユウリは、小鳥に降りるように指示した。


「おお、帰って来たか、討伐成功したんだな」


 村長が手を振りながら喜びの声を上げる。


「よっしゃー」

「ばんざーい」

「ユウリ姉ちゃんすごーい」


 何故か俺よりもユウリを褒める声が多く聞こえるんだが、俺はどういう扱いなんだろう。


「皆、宴じゃあ~」

『わーい』


 先に薬撒いた方が良いような気がするんだが、そこはどうなんだろう。

 馬車や大八車に積み込んでいた荷物が下ろされてそのまま宴会用の料理になっていく。


「村長、何で全部食べ物何です?」

「それは決まっている。成功するのは分かっていたら、こうなる事を見越して食料だけ積んでいた」


 なんと、何か感動した。そこまで信じられていたのか。


「それに、元々小人族は何代か旅を繰り返して何代か定住するのを繰り返している。家に備え付けてある物はいつでも作れるし、家もすぐに作れる。大事なのは食料だ」


 そんな種族特性あったのか。


「例え失敗してもとどめはユウリがさせるように超特殊爆弾を持たせておいた」


 どうりで皆ユウリを褒める訳だ。俺が倒したと思われてないかもしれない。


「さて、皆は宴会の準備をするが、こちらは香料の準備をしよう」

「ああ、俺のアイテムボックスに入ってます。どこでもいいと言ってたからモツ貰ってきましたけど、どうです?」

「モツとはなんだ?」


 何だか既視感(デジャヴ)だ。改めて村長に胃腸と説明をし直すと、村長は俺を

連れて家の中に入った。大きな台の上に中身を出すように指示される。


「ふむ、これがどれかは分かるか?」

「分からないですね。名札つけた方が良かった?」

「そうだな、もし次があるならそうした方が良い。今回はユウリが見ていたから良いが、難癖をつけるのが人間族だろう」


 アルバイトで言われた事を言われて、何だか社会勉強している気分になった。しかし、人間族って、普通の人間にはあくどいのがいるのか、値切ろうとしたのか知らないが、偏見を持たれている。

 この世界人間とその他種族の仲は悪いのか?後で弟に聞こう。


「さて、作ってる間、流石に秘密なので出て行ってくれ」

「分かりました。そういえば材料は余るんですか?余ったら欲しいんだけど」

「さて、初めて作るから分からない。何かに使うのか?」

「いや使わないけど、何かに使えるかとは思っています」


 駄目だったらギルドに売りに行こう。


「ふむ、それなら少し考えておこう」

「いや、香料の方を優先してください、また行けとか言われたら今度は死ぬ」


 弟もそうそう手助けしてくれるわけではないだろうし。


「ほら、何やってるの、宴に行くわよ」

「ちょっと待て、何で俺まで」

「主賓の一人でしょう。乾杯の音頭でも取りなさい」

「ユウリがとった方が良いじゃないか」

「私は戦わなかった。それなのにとったらおかしいでしょう」


 ユウリに首を掴まれている俺は必死に抵抗する。


「ほう、一人で戦ったのか」

「結構無茶な方法使ったけどね」

「いや、村長さん達が頑丈な柵を作ってくれたおかげだよ」


 俺は村長がユウリに話を聞くのを幸いと逃げ出そうとした。


「どこに行くのよ」


 脱出失敗した。


「俺は目立つのが嫌いだ」

「あのね、正当な理由でやる物はちゃんとしなさい。さもないと報酬を貰えないわよ」


 よくある事だ。気にしていない。


「ほら、私も目立ちたくないんだから、おとなしく囮になりなさい」

「本音を出したな」


 連れられて行った先には、乾杯用の飲み物を各自持って準備万端な小人族の皆さんが居ました。


「おう、中々やるじゃないか。一人であの鳥2匹倒したって?」


 柵作りに協力してくれた大工さんがバンバンと背中を叩いてくる。


「ほら、さっさと乾杯して。皆待ってるんだから」


 ここで逃げだせるほどの度胸はない。仕方ないから乾杯だけしてしまおう。


「何でここに立たされているのか分かりませんが、とりあえず、乾杯!」

『乾杯!』


 俺の号令で一斉に飲み始める小人族。舐めてみたが結構きつそうな酒の匂いがした。俺は酒が駄目なのでこっそりとアイテムボックスにしまう。


「ほら、何やってるの、手が空いてるじゃない、誰かお酒持って来て」

「俺は酒は飲めないんだ」


 ユウリがジョッキを持って俺に呑まそうと来た訳だが俺は今までで一番逃げたかった。


「大の男が何言ってるの」

「ぎゃーっ酒乱だ」


 実際に酒乱かどうかは知らないが、とにかく逃げる事にする。

 何故か俺に酒を呑ませようと言う集団が出来て、追いかけられます。


「何で飲まないのよっ」

「酒は嫌いなんだ。それに、まだ仕事は残ってるだろう」


 ユウリが声を上げて追いかけてくる。


「俺の酒が飲めないってのか!」

「仕事が終わったと判断したら飲みますって」


 大工さんも追いかけてくる。


「大人なのに酒が飲めないのは情けねー」

「子供が飲むな子供が」

「これジュースだよ」

「じゃあそっちくれ」

「大人だろ、酒飲めよ」


 何故か酒を持って追いかけてくる子供を注意したら倍になって声が帰って来た。まっすぐ村の中を走り抜ける。


「はっ」


 逃げながら急な方向転換から物陰に隠れ、≪隠蔽≫センスも発動。じっと隠れる。

 何とかやり過ごしやたようだ。


「どこか、無事に隠れられるところは…」


 ≪隠蔽≫センスは動くと効き目が無くなるので簡単に移動できない。しかもこの村には立ち寄ったのは村長の家しかない。


「あ、そういえば村長は今は忙しいから宴会には参加していなかったな」


 頼めば部屋を貸してくれるだろうと思い、俺は村長宅へ向かった。

 村長の家は宴会とは無縁に、実験室らしい場所から灯りが漏れている以外は静かだった。他の小人族もここには来ていない。


「もしもーし。村長頼みたい事があるんですが」


 扉を開けて素早く中に入ると、玄関から声をかける。


「うん?何だどうした」


 奥から村長が出てきた。


「おや、宴はどうした」

「すいませんが、酒を呑めないので匿ってください。どこか部屋を貸してくれるだけで良いですから」

「酒が呑めないのか。人生損しているな」

「本人はどうも思っていませんから、大丈夫です。それより、部屋を貸してください」


 村長は少し考えると、俺についてくるように言った。


「こっちの部屋で今、香料を作っている。見せる事は出来ないが何かあったら知らせてくれ」

「分かりました。でも、寝るのでそこまでの事はないですよ」


 ログアウトして時間でも潰そう。そう考えながら案内された部屋に入る。


「それではまた明日。おやすみなさい」

「お休み、こちらはまだ時間がかかるから、徹夜する」


 村長は眠ると言う俺に何となく恨めしそうな視線を向けて向かいの部屋に戻る。

 別になんという事はないんだが、また明日何かありそうなのでセンスの整理をしていると、村長の声が聞こえる。


「うわっ調合魔術でもこの手間か。もう魔力が少ないと言うのに。ポーションはどこだったか」

「すり潰すのぐらい他の奴にも手伝わせれば良かった」

「この草は3粒、こちらは5粒。本当に必要か?粒の割合で」


 何か難しそうな調合なのは分かった。俺も≪調合≫センスを上げていれば分かったかもしれないが、現在は分からない。さて、ログアウトが終わったら何をしようか。


 現実16日目。目を覚ますとそこは客間でした、と。そうか、昨日は夜中で逃げてたので確認しなかったがきっと製品を作って客に渡す都合でここなんだな、と勝手に納得する。


「おう、起きたか」


 扉を開ければ村長が同時に向かいの扉に入ろうとしていた所だった。


「村長さん、まだ完成してなかったんですか」

「いや、終わっている。後は撒くだけだ」


 昨日のログアウト直前の叫びからもっとかかるかと思っていた。そういや調合魔術ってなんだろう。職業専用魔術だろうか。


「それで、これを撒く仕事は、村人総出でやる事にした」

「それなら早いですね」

「そこで護衛としてついて来てもらいたい」

「分かりました」


 どの範囲に撒くのかは知らないが、護衛ならば大丈夫だと思う。俺は倒すのは無理でも時間稼ぎは出来る。そして、そんな村長との話し合いで村人全員が撒きに行くことになった訳で中には当然子供が混ざっていた。


「はい、この子背負って」

「うちの子達お願いね」

「ちょっと待って、護衛なんだから背負わせるのは勘弁してください、動けなくなる」


 何故かいざというときに巨大化すればいいと言う話から、何故か中央で子供に囲まれているのです。


「ちょっと髪の毛引っ張らない。痛い痛い」

「ほらほら、やめなさい」

「ぎゃあああ」

「何で泣くの?ええと、高い高~い」


 俺は子守に追われていた。ユウリが助手という事でついているが、髪の毛を食べていた子を引き離してくれたけど、あっちはあっちで面倒を見ているので大変そうだ。


「ところで何で子供を、というか幼児を俺が面倒みているんだ」

「あちこち動かれたら困るし、柵の中から出さないだけだから動かない人間が担当するのが一番でしょう」


 俺の答えを期待していなかった疑問にユウリが返答した。


「ちょっと待て、俺は護衛なんだろう」


 俺は動かないと言う部分に反応してユウリに言葉を返した。


「どこに必要かは、住んでいる私達の方がよく知ってる。それに、あの崖近辺以外にも撒くの。飛ぶのに慣れていない貴方よりも、村人総出でやった方が早いから」


 やっぱり俺は飛ぶのにはまだ技量が足りていないようだ。必要なセンスに≪騎乗≫とか≪飛行≫とか持っていないと駄目だろうか。戻ったら探してみよう。

 今度はそんなに時間もたたずに小人族皆戻ってきた。これでイベントがリンクして迷子探しになったらどうしようかとも思っていた所だ。かなり強くなっている弟と会ったので少しぐらいこちらも強くなって置かないといけないと思うようになっていた。


「ふう、これで一安心だ。さて、宴会をしよう」

「ちょっと待て、すると俺への依頼はひとまず終わりという事で区切りをつけても良いのか?」


 また宴会に巻き込まれてはたまらない。


「うむ、そうだな。ひとまずよかろう」

『レベルアップイベントをクリアしました。センスのランクをチェンジしますか?』


 俺はノーを選んで話を終わらせる。


「それでは今度こそ、宴会じゃあ。用事も終わった事だし、じゃんじゃんのめ」


 やっぱり宴会か。小人族は酒好きな種族なのか?俺は村長にバンバン背中を叩かれて押し出される。


「用は終わったから飲むのには構わないけれどな」


 呑むのはジュースですが。酒は苦手だ。


「あら、宴会は嫌いだと思ったけど、違うの?」

「仕事中に呑むのは嫌なんだよ」

「じゃあ飲み比べしましょう。昨日逃げられたから出来なかったでしょう」

「ちょっと待て、俺は酒を呑んだことはない。その上苦いのと炭酸が苦手だ」


 子供舌と弟に笑われている。サイダーみたいに炭酸だけなら大丈夫だが、刺激物は苦手だ。ちなみに子供の頃はサイダーすら飲めなかった。これはゲームで酒を呑んでもどうにもならないというのは知っているが、味として炭酸が嫌いなのだ。


「大丈夫。このクロココのお酒はお酒なのに子供でも呑めるほど甘いの」


 そうやって目の前に差し出されたジョッキを渡される。何かジョッキの渡し方自体がスッと渡す、と表現されるんじゃなくてドンッと突き出されたと言う感じで、呑まないと文句が出てきそうな雰囲気が出ている。


「いただきます」


 観念してジョッキに口をつける。甘い。酒という割には呑みやすいが、甘さはいつか飲んだ千葉のコーヒーより甘い。


「これは流石に甘すぎる。水で割らないとうまくない」

「でも呑めるのね」

「まあ、呑めた」


 俺がジョッキを呑み干すのを見届けて、ユウリがそのジョッキを逆さにしてまで呑み干したことを周りに伝える。


「じゃあ、クロココの酒のカクテルね。って、あれ、どうしたの?」


 ユウリの声を遠い物に聞きながら、俺の意識が急速になくなるのを感じていた。

酒を一定量呑むと眠くなるという人は知っていたが、ゲームの中とはいえ気絶するのは初めてだ。酒は怖いね。呑んでも記憶も理性も飛ばないので、口から出したなんて記憶はないので気絶しただけだと思うんだけど。

 記憶は酒を呑んだ後、何かユウリが言っていた所で途切れている。俺は寝ていると思うんだが、何かあったのか。寝ていた所は昨日の客間だった。起きて人を探すと村長にあったんだが、いきなり噴出された。


「おはようございます」

「おう、おはぷはっ」


 朝食を噴き出すほどおかしいらしい。心当たりというか、ネタとしてよくある話だと顔に落書きだ。鏡がある洗面所へ向かった。

 誰だ、完なんてネタを振ったのは。石鹸?らしい物を使って顔を擦る、ついでのようにたらこ唇な円が口の周りに書いてあるは眉に蝙蝠みたいな模様があるは、しばらく洗面所を占拠していた。


「おい、いい加減出てこい、笑ったのは謝るから」

「ふう、ようやく消えたかな。謝らなくても良いですよ、ネタは承知してますから」


 誰が書いたんだか知らないが、何で普通に肉と書いて終わらないんだ。


「一杯でひっくり返るとは驚いたぞ」

「酒に強くないと言ったでしょう」

「そういう人間もいるんだな。若い頃協力してもらった人間は凄まじく強かった」

「そうそう同じような体質の人間が来るはずもないでしょうに」


 おそらくβ版のプレイヤーだろう。情報がなかったからNPCかもしれないが。現実の体質に準じるのかどうかは不明だ。


「まあ落ち着いたら一つ村を見てみると良い。中々面白いぞ」

「はあ?」


 村長が何を言っているのか分からなかったが、家を出てみると理由が分かった。

 俗にいう宴会後の死屍累々な惨状、漫画だけかと思ったらこんな所で表現しなくてもと思わなくはない。


「あ、肉見つけた。米と中もある。俺はあまりか」


 顔に落書きされている男達を発見した。酔いつぶれた順なのか書いて回った人物がいるのか。


「あら、ナント、おはよう」

「ああ、ユウリか。おはよう」


 声をかけられて振り向くと、俺は思わず笑ってしまった。


「何笑ってるの」


「いや、顔を先に洗ってきた方が良いぞ」


 ユウリの顔には金銀仮面の合体後の漢字が書かれ、あごにはひげが書いてあった。


「あ、あいつまたやったわね。ちょっと待ってなさい」


 俺の言葉を聞いたのかどうか、ユウリは走っていった。俺は金銀仮面があるなら金だけと銀だけがないか探してみる。金は大工さんに、銀は俺に赤ん坊を背負わせようとした女性に書いてあった。


「ちょっと来なさい」

「痛い痛い」


 おや、ユウリが子供を連れてきた。


「ちょっと、この子を叱ってやって。毎回毎回宴会が終わるたびに顔に落書きするのよ」

「うちに代々伝わる伝統だよ!」


 変な伝統があるな。しかも個人的な伝統らしい。ユウリに首根っこを掴まれた子供は逃げようとばたついている。


「ところで、文字の意味は知ってるのか?」

「ずっと前に来た空旅人が、宴会の後には酔っぱらった人にこの字を書いてやらなきゃいけないって」


 空旅人と言えばプレイヤーか。β版でやった人物だろう。犯人は特定した。しかしプレイヤーの誰かは分からないままだ。


「意味を分かったら悪戯でしかないんだけどな」

「うちには百種類もあるんだ。意味のない物なんて一つもないぞ」


 物凄いでたらめ吹き込んだ奴がいる。


「いちいち書いてくるのよ。どうにかならない?」

「おそらく、宴会の時酔いつぶれて朝まで寝ているような人に限定していると思うぞ」


 あれ、自分で言ってなんだけど俺はどうなるんだ。一番しっかり書かれていた。


「俺にも書いていたけど、それは何でだ?」


 場所から言って、俺は酔いつぶれた後運び込まれたはずだ。


「え、村長さんが書いても良いって」


 村長、なんて事をするんだ。


「いっつも外で寝るほど酔いつぶれた奴は自業自得だから書いても良いって皆協力してくれる」


 にやりと笑って親指を立てる子供をユウリがはたく。村ぐるみな悪戯じゃないか。


「ユウリ」


 俺は何も言えなくなっているらしいユウリに言葉を放つ。


「村の事は村でどうにかしてくれ」

「解決する気はないわね」


 よそ者に出来る訳はないだろうに。

 いつもの朝の騒動らしい物が一段落すると村長が俺の前にやって来る。


「例のアイテム何だが、失敗もあったのでそんなに残らなかった」

「いえ、香料が優先なので別にいいです」


 羽で凄いアイテムが作られている事を祈ろう。


「それで、報酬だが、まずはこれだ」


 銀色のスプーンが差し出された。


「何ですこれ」

「これには小人族と人間族に姿を変える魔術が入っている。こうやって天にかざせば人間の大きさに戻れるし、また小人族の姿を取ってこちらに来れる」


 スプーン振り回しても巨大化は出来なかったと言う実際のネタを思い出したが、これはマジックアイテムなのでそういう事はないだろう。しかしここにこれを持ってくるか。


「次に、これが本来の報酬だが、クロココのジュース一樽だ。酒が駄目なようだから果汁にした。大きさは人間からすれば小さいが、人間サイズで使っても一滴をコップ一杯に垂らした場合、喉にも良い果汁水になる」


 あれ、そんな濃い物だったのか。いや、カクテルがどうとか言ってたし、水で割った物を呑まされたんだろう。


「もし欲しくなったら物々交換か依頼を受けてくれる事でまた出す」

「貨幣では駄目なんですか?」

「人間大の種族が使う貨幣は交換しやすいだろうが、小人族の使う貨幣は俺よりはるかに小さいから価値が酷く異なる。だからこういう形にした」


 β版での苦労が色々あったんだろう。俺は時間の流れという物を感じた。


「ありがとう、用が済んだらまた来ます。何か欲しい物はありますか」

「そうだな、魔物の素材なら何でもいいが」

「それなら今も少しありますよ、出しましょうか」


 百匹狩りの途中だったから丁度ある。


「いやいや、修行を中断させて用を受けてくれたのは知っている。一息ついてからでいい」

「まあ早めに来てね。来たら宴会するから」


 親切心でユウリが言っているんだろうが、それがプラスには働かないのは酒のせいだろう。


「分かった。それじゃあ、またこの次に」


 ようやく一連のイベントが終わって、俺は百匹狩りの続きをやる為にカラーズの裏山へと戻った。





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