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29クエスト先で弟に会いました

 小鳥に乗って崖の下へ。俺の方向感覚から行くとてっきりビギの草原かと思ったが、見た事がない地形だった。


「どこだここ?」

「人がいるわ」


 フィールドなのは確かなようだ。下に見た事がない鎧を着たパーティがいる。さっきの鳥とは色違いの、白、青、黄色の鳥と戦っていた。どれが何かは分からないが、さっきの鳥からすると何かを防ぐ能力を持った鳥たちだと思う。


「鬼神丸、そっち行った」

「くそっ一番旨いのが逃げたのにまだ戦わないといけないなんて」

「文句を言ってないでさっさと倒してリポップを待ちましょう」


 一番旨いの…、逃げてきた2匹のどっちだろう。恐らくOディアトリマの方だろう。Cディアトリマの呪いを解けばうまいという可能性もある。


「タイミングを合わせてください。フリーズ・フィールド行きます」


 魔術士らしい女性が他に声をかける。


「フリーズ・フィールド!」

「よっ」

「はっ」

「ほっ」


 タイミングを合わせてパーティメンバーがジャンプする。一瞬で足元が氷に覆われ、氷に触れていた部分が凍ってディアトリマの脚を氷漬けにしていた。偶然足を上げていたディアトリマは一本足だけ凍って逆につらそうだ。

 フリーズ・フィールドは足を凍らせて動きを止めるという氷魔術でも上位の魔術だ。平原で使うとこうなるのか。ディアトリマの周辺以外は元の草原に戻っている。


「一人一体で片付けるぞ。プロポリスは援護を頼む」


 プロポリスって蜂のなんかだったな、という関係ない感想を思い浮かべている間に戦士3人は足の止まったディアトリマへ各自襲い掛かる。


「はあっ」


 大剣を持った男が思い切り剣を振ると両足が切断された。そのまま翼、首と刎ねていく。やっぱり大剣の破壊力は魅力的だ。青いディアトリマはそのままポリゴンと化した。


「だぁっ」


 もう一人の大剣使いも白いディアトリマの首を刎ねる。前の大剣使いよりも派手な鎧を着ている。


「何で、俺が、こいつなんだっ」


 片手剣に盾の装備の戦士が1本だけ足の凍った黄色いディアトリマと戦っている。脚が1本しか凍ってないせいか、攻撃にこうってない方の脚での蹴りが混ざっている。そのせいで男は近づけ無いようだ。


「鬼神丸、大丈夫か?手伝うか?」


 派手な鎧の方の大剣使いが話しかけている。


「いらない、よっと」


 片手剣が動く方の脚を切断した。そのまま相手の懐に飛び込んで、胸を突きす。黄色いディアトリマもポリゴンとなって消滅した。


「ふうう、一丁上がり」


 皆手慣れている所を見ると攻略組とかの上位パーティだろう。脚を凍らせるのは参考になった。今度からそれも含めて考えておこう。


「終わったみたいね」


 下での戦闘を見ていたユウリが俺に話しかけてきた。


「それじゃ、貴方行ってきて」

「待て、突き落そうとするな」


 さっきの今だ、流石に分かる。ユウリを警戒しながら、下のパーティを確認する。いかにも戦う人という感じのプレイヤー4人組だ。二人は大剣、一人は片手剣、一人は杖だから魔術士というバランス型だ。


「行ってみるか」

「わたしの事は黙っててね」

「分かってる」


 バズーカを構えるユウリに注意しながら飛び降りる。ユウリが同時に光線を放つ。


「わざわざ光線である意味はあるのかな」


 もう慣れて来たので俺は驚かない。


「うわっこいつどこから来やがった」


 見た事もない人間は普通驚く。俺が突然現れたように見えたんだろう、プレイヤー4人全員が武器を構えてこっちに向いている。


「ノーノー、俺は抵抗する気はない」


 両手を上げて降参のポーズ。攻撃されるのを回避に成功した。


「あれ、兄ちゃん」

「え、弟か」


 大剣を持って一番派手でごっつい鎧を着ていたのは弟でした。


「何だ、これがお前の兄貴か」

「そう。確か初心者の草原辺りでウロウロしてたはずだけど、何でここに?」

「俺もお前についてそれを聞きたいんだが」


 もう一人の大剣持ちが弟に話しかけ、弟が俺に話しかける。俺も疑問を返した。


「俺はカラーズの裏山というビギの村から行けるところで熟練度上げの狩りをずっとしていた。するとどこをどう通ったのか知らないが断崖絶壁に着いた。そこを飛び降りたらここに落ちた」

「上から落ちて来たのか」


 最初に俺を警戒していた片手剣のプレイヤーが俺の指さす方につられて家を見る。


「よく飛び降りて大丈夫だったな」

「ゲームだからな」


 どれだけ高くても大丈夫。


「兄ちゃんは勘違いしてると思うけど、下手したら脳みそが落ちた衝撃を勘違いして体に負担が来て死に戻るからな」

「そうなのか」


 魔物狩りゲームとは違った様だ。


「それで、貴方たちは一体どうしてここに?それ以前にここはどこなんですか?」

「丁寧語はやめてくれ。レグルスの兄貴なら俺達より年上だろう。

ここは王都から出て、賭博都市レンジの方に行く道の途中に当たる。向こうに始まりの草原があって、草原よりはレンジ側にあるフィールドだ」


 大体の位置は把握した。


「分かった、それじゃあこの口調で話させてもらう。自己紹介が遅れたが、レグルスの兄でナントだ。このゲームは、というかMMO系のゲームは基本やらないから初心者も良いところだ」


 俺は忘れていた自己紹介をする。


「俺は、今回パーティーリーダーをやっているヤマタだ。よろしく」


 大剣を持ったもう一人のアタッカーらしい男性プレイヤーだ。

「初めまして私は魔術師兼ヒーラーを務めていますプロポリスです」


 魔術師の恰好をしているのは女性だった。ぶかぶかローブなので武装は何か分からない。


「そしてトリが俺様、鬼神丸様だ」


 名前だけ聞くとこの片手剣のプレイヤーの方が大剣振り回すように聞こえる。


「ところで、俺が落ちた理由は、駝鳥の先祖みたいな鳥形モンスターと戦ったせいなんだが、何か知らないか?」

「もしかしてディアトリマか?」


 弟が口を開いた。


「そう、しかも二種類。一匹は炎の魔術使ったら燃え出したんで驚いた」


「そっちに行っていたのか」


 何か問題があった様だ。俺の疑問に答えるようにヤマタが話をし出す。


「ここのフィールドは別名食材のフィールドって呼ばれていてな。大体六大都市の周りには一つは食料を取りやすい場所があるんだが、レンジにとってはここがそうなんだ。主にとれるのは植物系と鶏肉系」


 もしかして鶏肉ってディアトリマか。


「ディアトリマは特定イベント系食材でギルドで依頼を貰ってから取りに行けるモンスターなんだ。5種類いるディアトリマの内どれが当たるかはやってみないと分からないんだけどな」

「戦闘でHPを削っていくと、必ず五匹の内二匹は逃げるんで有名なんです.」


 プロポリスさんが話を追加した。ストーリー的にはその逃げた分があの崖の上まで走って来たという事になるのか。


「俺達は食料集めの為に来たんだけどな。うまい物の方が嬉しいだろう」

「食材って、油と呪いで食べられないんじゃないか?」


 俺はヤマタの言葉に貰った二匹の素材の内容を思い出す。


「お、倒したのか」

「燃えたから倒せた」


 ヤマタの言葉に簡単に攻略を説明する。


「実は、一番うまいのはOディアトリマなんだ。今回はそれに逃げられたと思っていたんだが、良かったら俺達にくれないか?」


 交渉が始まった。これですぐに渡すのは構わないが、何で逃げるのかだけ聞いておこう。


「代わりに、他の三匹のディアトリマの名前と、どうして逃げるのか教えてくれたら上げるよ」

「逃げるってのは、逃げるんだが」

「ルートか逃げるきっかけが知りたい」


 交渉にヤマタが乗り出して来て質問を返された。俺としては、柵でも作れば登ってこないんじゃあないかと思う。それを確定するのに知りたい事があるのだ。


「兄ちゃん、言葉が分からないようになってるぞ。そっちから質問して答えた方が良いと思う」


 レグルスが助け船を出してくれた。


「分かった。じゃあまず他のディアトリマから名前を教えてくれ」

「ディアトリマは、オイルとカースは狩ったんだよな。残りは道具の効果が効かないマナディアトリマ、状態異常が効かないヘルシーディアトリマ、スキルが効かないハードディアトリマって言うんだよ」


 鬼神丸が説明してくれた。ディアトリマの名前の前に付く部分が恐らくその効かない、能力を弾き返す原因だろう。


「もう少し分かりやすく言った方が良いですよ。マナディアトリマは魔力で表面をカバーしています。これが道具の効果を散らしているようです。ヘルシーディアトリマは健康に関係するセンスを持っていて状態異常を防ぎます。ハードディアトリマはスキルをかけて攻撃しても異常に硬い羽毛と筋肉が弾いてしまいます」


 これに油で武器を滑らせるオイルディアトリマと呪いで魔術の効かないカースディアトリマが加わると。


「どれが逃げ出すのかはランダムなのか」

「W字に並んでいて、その都度後ろに位置する個体が逃げ出します」


 俺の質問にプロポリスさんが答えてくれた。

 順不同とすると、後ろにいるディアトリマが逃げ出さないならいい訳だ。しかし新しいい狩りの方法なんて考えつくものでもない。


「じゃあ、どうやって崖の上に来ると思う?走って来てるんだと思うんだけど」

「この崖だろ?」


 俺の背後の崖は登山家ならボルタリング、つまりでっぱりに手をのせ足をのせて登るだろうが、ほぼ垂直である。勢いをつけてからなら出来るがどうやって上るのか。上を見る鬼神丸も首を真上に曲げている。


「それが見ないと分からないので見ただろう貴方たちに聞いてる」

「ああ、そういう意味か」


 ようやく分かったとヤマタが手を叩いた。


「なんだかんだと言っても鳥だから、逃げる時まずこう羽を羽ばたかせるんだ。そしてまずあそこのでっぱりまで飛び上がる。脚力も十分ないと出来ないな。そのまま次のでっぱり、と言う感じで逃げていた」


 脚だけではなかったのか。鳥なら羽を使うのを忘れていた。


「教えてくれてありがとう。それじゃあ交換に肉を」

「あ、カースの方はいらないから。呪いを解いて料理する方法はまだ分かってないんだ」


 鬼神丸がそういって交換用ウィンドウから油でこんがり焼かれたディアトリマだけとっていく。


「なあ、一つ聞いても良いか?」

「何かあったか?」


 焼かれた鳥を見てヤマタが話しかけてきた。


「何で既に旨そうに調理されているんだ?」

「炎の魔術で攻撃したら火だるまになったんだ。森が焼けないように慌てて水をかけたり凍らせたりしたら羽が無くなった焼き鳥状態で倒れて、アイテムボックスに収納したらこうなった」


 そういえば弟が静かだ。いつも俺の発言に突っ込みしてくるのに、どこに行ったのか。水筒片手に座って休んでいた。話す用は俺にはないから良いか。


「どうやって戻ろうか」


 崖から降りた事になっているのでこの崖を登らなくては元の場所に戻れない。


「大変だな、頑張れよ」


 どうでもいいような応援を弟に受けつつ、俺は第一歩を踏み出す。


「三点で固定すると」


 聞きかじったやり方を試してゆっくりと登ることにした。


「じゃあ兄ちゃん、出来るだけ早くこっち来てくれよ。開始から3か月後はモンスターの氾濫イベントがありそうなんだ。それが終わればギルド実装だから」


 ゆっくり行くのでまだ身長ぐらいしか進んでいない俺の立ち位置。


「そうか、そういえば忘れていたが、お前のいるギルドはなんて名前なんだ」


 話しながらでも登れる。俺は体を動かす場合はさっさと目的地まで行く方だが、落ちるとさっき言われた本体に影響が出ると言うのが怖くてスピードが遅い。


「俺達のギルドか?ドラゴンロアーだよ」

「ちなみに竜の咆哮の意味な」


 兄弟の会話に鬼神丸が入ってきた。


「わかった。じゃあ、その時が来たらよろしく」

「おう」


 弟を含めたパーティは俺を置いて立ち去っって行った。

 弟たちと別れて崖登りを続ける。本来なら弟が見えなくなった時点で小鳥に乗せてもらう所だが、何だか楽しくなって登り切ってしまった。それは良いとして、どうやってあの鳥が来ないようにしようか。


「良くないわ。時間のかけ過ぎよ」


 こちらは小鳥に乗って登って来たユウリの言葉。


「それは悪かった。いつまで見てるか確認できなかったから」


 これも俺の本音だ。楽しかったのと比較すると3割7割の割合で。7割が崖のぼりです。


「つまり、あの鳥はああいう足場みたいな所に乗りながら駆け上がって来るんだよな」

「そういう事になるわね」


 上から崖を見れば登っている間休憩場所に使ったでっぱりがある。


「崖登りはきついから、でっぱりで一々休憩して数を数えた。でっぱりは5つある」

「崖の上に柵でも作るの?」

「いやそれだと壊されたり、崖の上に足を乗せた勢いで飛び越されるような気がする」


 こう、走り高跳びのノリで。最初の何回かは引っかかるかもしれないが、この崖を駆け上がってくる脚力だとそれぐらいできそうだ。


「要は、あのでっぱりが無くなればいいんだ」


 俺はステータスを開く。≪土才能≫と≪魔術≫が入っている事を確認。崖から頭を出した。


「ストーン・ボール」

 土の魔術を発動すれば、石が落ちていく。このまま積み重なっていけば足場が足場にならなくなると思っていた。

 魔術は魔力で一時的に構成する物で物質を生み出すものではありませんでした。


「何やってるの」


 ユウリの目が冷たい。ここはひとつごまかしを実行しよう。


「あのでっぱりが壊せないかと思って」


 さっきまで雪崩のように石を送り込んでいただけなのはその為という事にしておこう。


「もっと大きい魔術は使えないの?」

「ロック・スロウを使えるけど、壊れるかな」


 ロック・スロウを発動して落としてみる。命中を使わなかったからか根元には当たらなかった。『目標固定』をきかせてもう一度やってみる。今度は根元に当たったがびくともしない。あそこの地層が硬くなっているんだろう。


「そういえばユウリは何かアイディアないか」


 俺はこれぐらいしか思いつかない。ユウリは何かないかと聞いてみる。


「そうね、爆弾なら持ってるけど」

「それを何で持ってるのか聞きたい」


 物騒なキャラだ。普通爆弾を持ち歩くなんてない。


「自衛用だから相手をひるませる効果しかないわ」

「その相手はどのくらいの大きさになる?」

「猪かな」


 十分人間に聞きそうな物だ。


「俺の考えとしては、柵も作るけど岩のでっぱりを下の方だけでも壊しておくと来れなくなると思うんだ。」

「そうね、それは分かるわ」


 この道筋で行くか。


「まだセンスが熟練度+99まで行ってないから、まだレベルアップしない。だから魔術もそこまで強くない」


 魔術師は知力に極振りと言っていた。俺はそんなに振っていない。レベルアップも最低限しかしていないから、全く上がっていないに等しい。魔術を打つのは楽しかったから熟練度が上がる速さは弓より早かったが。


「爆弾が作れるなら、それを岩棚の上に置いて爆発させようと思うんだけど」

「それは派手で良いわね」


 派手なのは関係ないがユウリは気に入った様だ。


「爆弾は足りるのかというのが問題だ」

「そうね、わたしが持ってるのは」


 ごそごそと取り出された物はパイナップルという物だろう。本当にパイナップルの形をしているのがファンタジーというかメルヘンだ。


「今持ってるのは4個ね」


 一つのでっぱりにつき1個使う予定かな。そういえば火薬は誰が作ったんだ。


「ユウリがこの手榴弾作ったのか?」


 火薬自体を作れるならそっちの方が良い。


「作ったのはわたしだけどね、材料はもうないから取りにいかないと」


 作れるなら色々試せるな。


「それじゃあちょっと多めに、始めは2個使ってみよう。駄目なら俺も手伝うから材料集めという事で」

「材料は結構遠い所にあるのよ。私は行商人から買ってるし」

「げ」


 それだと無理かもしれない。仕方ない、乗りかかった船だ。


「まずは2個セット」


 小鳥に乗ったユウリに持って行ってもらう。


「≪火才能≫がセットしてあるのか確認して、ファイア・ボール」

 

ズドンッ


 結構な音がした。下を覗けば壊れたでっぱりが見える。しかし、人が十分寝そべられるスペースがかろうじて座れるスペースになったぐらいしか削れていない。あの鳥がどのくらいの勢いで登って来るのか知らないが、脚をひっかける事は出来そうだ。


「あんまり削れなかったな。根っこの方は広く地面に引っ付いているから仕方ないか」

「でも2個であれだけなら、全部爆弾で削ろうとしたらこの崖崩れないかしら」

「ああ、そういえば。結構爆発力強いみたいだしな」


 崖崩れが起きて垂直で無くなったなら逆に登りやすくなってしまう。


「仕方ない。鼠返しの要領で柵をつくるか」

「鼠返し?」


 高床式倉庫の柱に使われていた、柱に垂直に板を挟む方法である。


「でも作り方は知らないからどうしよう」

「貴方が分からない事でも村長が知ってるかもしれないわ。一旦帰りましょう」

「ああ、クエスト失敗だなぁ」


 これがクエストなのかどうなのか知らないが、俺としては失敗した事になる。小鳥にのって再び小人の村へ戻る間、モンモンとした気分だった。


「成程、そんな風になっていたか」


 帰ってすぐに村長に報告にいくと、そんな風に言われた。


「済みません、俺の力ではあれを壊すのは出来ません、もっと土魔術が上の使い手でないと」


 俺は熟練度を上げてから魔術にチェンジさせることを選んだ。そのやり方に問題はないが、こういう時にはどうしようもなくなる。


「いやいや、それだけわかれば十分だ。そうそう、まだ終わってないと言うならば一つ手伝ってくれ」


 何だろう、俺に気が使われたような気がする。

 案内されたのは本が壁にみっちりと詰まった部屋だった。


「代々の村長がその技術を書き残した本だ。どれかにそのディアトリマの嫌う匂いが書かれてある本があるはずだ」


「匂い?なんで匂いなんです」


 俺は疑問を村長に聞いてみる。


「小人族は、小さい。一部の鳥や動物とは仲良く暮らしているが、実際大きな動物に襲われる事は日常茶飯事だ」


 確かに。というか、あのディアトリマぐらい大きいと餌と思われたかもしれない。


「だからこそ、そういった生き物に対して嫌う匂いをばらまくことでその生き物を来ないようにする形で安全を確保してきた」

「するとこの中にディアトリマの嫌いな匂いの香水なり匂いの作り方なりが書いてあるわけですか」


 ずいぶん古い本もある。小人族が何年生きるのか知らないが、何代にもわたった物なのは間違いない。やっぱり小さいならではの苦労話は色々あった様だ。


「さて、これは読める人間は限られている。古い時代の本だからな。ユウリは付いてくるのは良いが、読めるのか?」

「う…読めないわ」


 古い本は現代の小人が読めない時代の物らしい。俺も後ろから覗きこんでみると読めなかった。しかし、俺には≪言語≫のセンスがある。

 センスをセットすると読めない単語もあるが、文全体は読めない事もない。昔から英語が苦手なので本文よりも分かる単語と答えの文章から正解を導いてきた腕を見せてやろう。


「ナントは読めるのか」

「ぼちぼち、といった感じですが」

「読めるなら丁度いい、探すのを手伝ってくれ。ユウリは茶を入れてくれ」


 村長の指示を受けて俺は本棚に、ユウリは部屋を出て行った。


「何々、『○月の赤の日、朝から雨が降っていた、この日私はウィレムに結婚を申し込みに』いけない、どう見てもプライベートな日記だ」

「それは読まんで宜しい。父の日記だ。こっちで読む」


 そんなこんなで本をとっかえひっかえ読んでいく。


「こっちは何々、ムクウのシンシャはタイリャ…。すいません、単語そのものが読めません」

「まあ、古い分だと多少読めるだけでは無理だな。分からない物はこっちに置いてくれ」


 古い文を読めるほどには≪言語≫のセンスは高くなかったようだ。


「やっぱり、香水とか香りとか書かれている本ですか?」

「いや、動物の本かもしれない。ディアトリマのページに載っている場合もあるだろう」


 今まで使っていた人それぞれで色々分類や書いた方法が違うので探し方も総当たりになった。

 そんな中、植物を使った薬品の本の中に気になる事が書いてあった。つまり、


『…黄炎草は硫黄を多く含む。そして木で作った炭、最後に白硝石を粉にした物をまぜた結果爆発を起こした…』


 これ、この世界での黒色火薬の作り方ではないだろうか。面白い物が見れた。後でユウリに確認しよう。


「って、遊んでいる場合じゃないな。ディアトリマ、て、テイオウライオン、テイオウペンギンこれじゃないか。これより前の本はっと」


 動物図鑑から潰していった俺は謎の生き物の絵を見る。この先にいるモンスターだろうか。それとも絶滅動物だろうか。


「うむ、あったぞ」


 村長の声が上がった。俺は現在本棚を二つ空にした所だった。


「ありましたか」

「うん、しかし、この材料は…」


 何か難しい材料なんだろうか。


「難しいな。これは。正確にはどんな生き物でも嫌う匂いだが、材料がそのモンスター素材だ」


 ディアトリマを倒さないといけない訳だ。鼠が猫の首に鈴をつける相談の昔話に似ている。


「別にフンでもいいが、今回は5種類もいるのだ。全部を得られるまで時間がかかる。一々やるには材料が心もとない」


 C・ディアトリマの素材は丸ごと一つ俺のアイテムボックスに入っている。それを引いても後4つは必要か。フンの見分け何てつかないし、材料の制限があるならば直接倒すしかない。そしてこの場合、俺が担当になるのは分かっていた。


「小人族は隠れ住んでいるんですよね」

「こちらが認めた人間には隠していないが、出来るだけ秘密にしてほしい」


 そうか。それならパーティ募集しようと思ったが駄目だな。


「というか、俺は普通に連れて来られましたが」

「ああ、いかにもボッチでお人よし…」

「こちらを助けてくれた恩があったからな」


 ユウリの言葉を大声でかき消そうとする村長さん。いやよく言われるから気にしてない。しかし仮想世界でも言われるのか。泣きたくなってきた。


「それじゃあ、明日まで時間は大丈夫ですか?」

「今日はもう倒したから大丈夫だと思う。何かするのか?」


 今日弟と出会った話から行くと、下で狩りをした結果上に飛んでくるという事が分かった。つまり、また下で狩りをすれば上に飛んでくる。


「今日ユウリも会ったけど、弟に協力を頼みます。大きなギルドの戦力らしいから大丈夫でしょう」

「私達の事を話すの?」


 ユウリが何となく怒っているような声を出す。


「別に、言わなくても出来ると思う。試してみるよ。さしあたって、今日泊めて欲しいんですが」


 ログアウトした方が手っ取り早い。


「分かった。それでは明日まで待とう」


 村長の許可を貰って、空いた部屋に案内された。


「じゃあお休み」


 俺は小人族の家でログアウトする。




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