28小人のクエストですよ
空を飛ばない鳥が何故か隔離されたような土地にいる。普通に考えると誰かが連れてきたと言うのが第一だ。
次にさっきも村長が上から空を飛ぶ魔術師が落し物をした事があるというので鶏なりを空中運送していた人が落とした可能性もある。
普通にチョコ○みたいな物凄い脚力の鳥がいる可能性も捨てきれない。何しろファンタジーなんだから、オリジナルモンスターもいるだろう。
「ほら、こっちこっち」
ユウリの案内でそのモンスターが現れたと言う場所に連れて行かれる。
小鳥に乗って。
ひゃほーい。念願の小鳥に乗ったぞ~。
口には出さないが心の中は喜んで飛び回っている。
「何にやにやしているの?」
顔に出ていたか、気をつけねば。それでも、
「いや、鳥に乗るなんて行動は初めて何で、何か楽しい」
「そうなの?人間にも鳥騎兵とかいうのがいるそうじゃない」
いるのか、鳥騎兵。どこの国だろう。いや、この世界は人間は人間だけで国を作って、王都と六大都市という大きな生活圏があるだけで後は妖精とか人魚とかの国があるようだ。ネットで見た未確認情報なのでまだアップデートされていない部分になるだろう。
小人がいると言うのも載っていなかったから深海に人魚か半魚人が居てもおかしくないし、鳥騎兵に乗った豚が居てもおかしくない。今度Wikiをあさってみようか。
空を飛ぶのは楽しい。しかし、不満としては、俺が手綱を握っているのではない事だろうか。
「乗った事もない人間に手綱渡す訳ないでしょう」
ユウリのいう事が正論だ。
「それで、後どのくらいで着くんだ?」
「もう着くわよ、ほら、あそこの枝にとまりましょう」
何だか今魔術を使った時と同じぐらいのファンタジーを感じている。細い枝の上に乗るなんていう事自体がファンタジーだ。子供の頃木登りをやったことを思い出す。何故か木に登るのがマイブームだった時があるのだ。
目の前に示された場所は、恐らくその生き物が通った後が道になったんだろう。まっすぐ村に向かって土が露出しているので最近できた獣道に見える。
「じゃあここで俺を元に戻してくれ」
「はい」
ユウリが気負いもなく俺を突き落した。
「何故落とす!」
とっさの出来事で俺は何の反応も出来ずに落とされる。
「原子分解拡大光線」
バズーカ砲のような物を取り出して落ちていく俺が的になり、俺に光線が当たった。
「うう」
また気絶した俺が目を覚ますとまだモンスターは来ていないようだ。
「あ、目が覚めた?」
「こら待て。俺を突き落したことに対しての謝罪はないのか」
「てっとり早いじゃない。貴方はそういう事じゃあ怒りそうにないし」
確かにそれが必要な事なら怒らないが、何か釈然としない。
「もっと先に行くと崖があるの。だからどんな風に鳥が来るのか分からないわ」
鳥が鶏系なら普通に飛びそうな気がする。俺は≪隠蔽≫を発動、木の陰に隠れて敵を待つ。
「それから、鳥の数は2匹。前来たやつは1匹は武器が効かなくて1匹は魔術が効かないの」
「ちょっと待て」
物凄く重要な事を今頃言われた。それを問い返そうとしたがモンスターはそれを待たずにやって来た。
それは駝鳥のようなタイプの足の速い鳥だった。ただし、首は太く嘴は大きい。それなりに首が長い。どこかで見たような姿だと思っていたら、むかしの生物図鑑とかで見たディアトリマとかジャイアントモアとかそういう鳥に似ている。脚の頑丈なタイプのモンスターだったか。
「氷、弓、目標固定、発射」
いつも通り弓から10本の矢を放つ。≪弓≫センスの上、≪弓術≫センスだったかさらにその上だったか忘れたが、派生形に10本の矢を同時に撃つと言うスキルが存在していた。威力はあちらが高いが、今やっている方法の便利な点としてはある程度連射が効くという事だ。
敵に命中するまでスキルの拘束時間があるが、その後すぐにもう一度打てる。相手との距離がどれだけあるか、相手がどれだけ素早いかが問題だ。攻撃力ははっきり言ってない。まだ初心者の弓から先に進んでないから。
それでも牽制と多少のダメージを与えられる。ただ一匹には結構効いたと思うが、もう一匹にはほとんど効いていない。魔術が効かないのか矢が効かないのか。
「武器を交換して」
相手との戦闘に入る前に武器を交換しておく。距離のある攻撃だと戦闘直前に武器を交換できるほど時間がある。≪隠蔽≫のおかげで相手がこちらを見つけにくいという部分もあるが、時間稼ぎには丁度いい。
武器を魔術師用の杖に交換、さらに剣と盾も用意する。
「クキュケェェェェッ」
俺が鳥の前に姿を現すと、鳥が威嚇の声を上げる。うるさい。スタンという硬直させる効果はないようだ。まだ初心者フィールドの範囲のはずなのでないのかその手の能力を持っていないのかは不明だ。
「グキュケェェェェッ」
「クキュケェェェェッ」
もう一匹も現れた。二匹の違いは先に来た方が緑、後から来た方が赤の羽になっている。
「とりあえず、くらっとけ、ファイア・アロー」
炎の矢を打ち出してみる。魔術耐性がどちらかを確かめようと近くの緑の鳥に放った魔術は魔術耐性ではない方なようで普通に効く。効く?鳥が火だるまになって暴れている。隣の赤い鳥も仲間が火に巻かれたせいか何か慌てたように暴れている。
「いかん、ウォーターボール!」
慌てて水をかけて消す。あまり消える様子はない。緑の鳥は暴れているので危なくて近づけられない。
「ちょっと、森を燃やす気?!」
「いやそんなつもりはない」
戦闘中だと言うのにユウリの声が入ってくる。
「リトルウェーブ」
一番の水系統の大技を出し、
「スノーウェーブ」
水を冷やす意味で氷の範囲攻撃をかけてみた。
「ク、ケェ」
鳥はお亡くなりになりました。全力戦闘のために出したこの刀と盾の意味はどこへ。
「やり過ぎよ」
「俺もここまで燃えやすいとは思わなかった」
これで一匹は片付いたとしておいてもう一匹と戦うために改めて刀を構える。紅い鳥は仲間を焼き殺されたのが効いたのか、逆に俺を恐れているようだ。
いや、よく見るとHPが半分以下になっている。戦闘から逃げ出してきたという形なんだろうか。
「来ないならこっちから行くぞ」
俺は刀を突きの形に構えて、盾の陰から腕を振るう。ちまちまとしか当たらないが、かすった分だけ羽毛が飛び散る。
「逃げ足が速い」
さっさっという擬音でも付きそうな動きを見せる。鳥のくせに達人ようなの足さばきだ。俺は狙いを変更して、とにかく足を狙う事にした。動きを止めないと何も出来ない。
「そういえば」
どこかの映画で見た攻撃を思い出す。
「ボアストレート!」
俺は一旦距離を取るために直線を走る。
緑の鳥が嘴を空振りさせるのを見ながら初心者の杖に武器を変える。
「こんなんでどうだ!」
足元に差し込まれた杖に長い脚が絡まって赤い鳥が倒れる。
「良し成功、後は倒すだけ」
杖と足がもつれているので立てない鳥は翼と首を振って暴れている。俺は当たらないように気を付けながら上に乗って抑えようとした。
「うわっ」
大きく振り回された首に頭突きされて俺は吹っ飛ばされる。俺が転がっている間に鳥は起き上がって、こっちに向かって追撃の嘴攻撃を始めた。
「痛たたた」
盾で慌てて防ぐ。初心者の盾は普通の盾でラージ・シールドと言うような大きなものではないので身体は隠れても下半身は隠れない。鳥は俺の上半身を狙っているから何とかなっている状況だ。
「ファイア・アローっ」
ナントは炎の矢を放った。しかし弾かれてしまった。
こっちの鳥が魔術の効かない鳥だった。まずい、スキルやアーツを放ちたくても相手の攻撃が激しくて行動する暇がない。
「えいっ」
ボンッ
俺には聞きなれた、火薬の爆発する音がした。
「早く逃げて!」
ユウリが加勢してくれたようだ。鳥はユウリの方に注意を取られて鳥をついばもうと上に頭を上げた。
「ボアストレート!」
自分の脚では逃げられそうにないので合うキルを使用して逃げる。逃げるのには成功した。しかし今はユウリが危ない。そうそう作戦を思いつくわけでもない。テンプレ的などこかで見た発想であろうと、思いついた物を即実行した。
「ボアストレート!」
上を向いてユウリの乗る鳥を追いかけている赤い羽根の鳥へ向かって、体当たりに変えてボアストレートを実行。ユウリから引き離す。
「ボアストレート!」
そのまま連続してスキルを実行。自分の力はかなわないかも知れなくてもスキルなら勝手に体が動いてくれる分自分の力よりは勢いはある。
「ボアストレート!」
めきめきと音を立てて木をなぎ倒しながら、鳥を推してとにかく突き進む。方向はちゃんと考えていたので崖に墜落というオチはない。あってたまるか。
「ボアストレート!」
何かにぶつかって止まるまでとにかくスキルを連打する。何かにぶつかって止まった。細い木ならともかく太い木や岩があったら止まるスキルなのでここで終わりだろう。
「ボアストレート!」
だめ押しでさらに押しておく。何か嫌な音が聞こえたような気がする。
一旦離れて盾を構えると、鳥は岩に叩き付けられたことで動かなくなっていた。
鳥が起き上がらないように盾で首を抑え、初心者の刀を取り出す。そのまま上から刀を振り下ろす。紅い鳥は首をはねられて消滅した。
「最初はともかくきつい戦いだった」
リゴブリンの次に、イベントで最初からアクティブに動くモンスターを倒した事になる。
「お疲れ様」
ユウリが近くの小枝まで来た。視線を合わせるためか下には降りようとしない。
「いきなり燃えたのには驚いたわね」
「俺も驚いた。ああ、確認しておこう」
何故だろう。アイテムボックスの中に入っている獲得アイテムで確認してみる。
『Oディアトリマの焼肉
Oディアトリマを炎で焼いた肉。本来武器を弾く油が我が身を焼いてしまった。
油たっぷりの鳥なのでまるで油で揚げたように香ばしくなっている』
何じゃこりゃ。心の中でツッコミを入れる。Oというのがオイルとかオイリーだと思うが、油で武器を弾くタイプだったか。
食事アイテムが最初から出来上がりでできていると言う珍しいよく分からない状態になった。
『Cディアトリマの肉
魔術を弾くために呪いを受けている鳥。食べると呪われる』
こっちはこっちでまた使い辛い能力だ。呪いの効果はどんなものかは分からないが、倒しただけで呪いが発動するわけではないようだ。恐らく食べると呪われる物だろう。
「ほら、何やってるの。どうして登って来るのか確認しないと」
「あ、そうか。分かった」
とんでもない戦いだったのでもう一つの目的を忘れかけていた。
盾を出したままディアトリマ達が来た方へ行く。さっきユウリが言ったとおりその先は崖だった。道になっている部分は崖下の方から続いている。
「うーん。分からん」
下をのぞいてみても霞がかっていて見えない。別フィールドになっているのだろう。
「分からないなら降りてみたら?」
「ロープを持って来てないしな」
「じゃあ小さくなればまた鳥で行けるじゃない」
「確かにそうだがっ」
ユウリの言葉が終わらない内に俺は光線を浴びる。
「ぎゃああぁぁぁ、あれ、気絶しない」
また気絶してしまうかと思ったが、今度は何ともない。
「一度縮小と巨大化を一度経験すると体がなれるらしくて二度目から痛くないわ」
「へぇ」
今度から村に行く用があったら来易くなるな。鳥に乗って下へ下る。崖がしばらく続いていたが、しばらくすると何かの線を越えたような感触があり、草原のような場所が見えてきた。




