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27小人の村ですよ

 小人に連れられてというか、連れてと言うか、俺はユウリというその小人を掌に乗せて移動した。


「ほらあっち。ずれないで」


 歩くだけとはいえ小人だったら崖とか岡とかになりそうな結構アップダウンの激しい土地を進んでいく。


「ここよ」

「なんだこれ」


 えらく古いお社のような物があった。


「そこの穴が見えるでしょ。そこに入って」


 言われれば入るが腰をかがめてようやくという狭さだ。武器が収納できるからまだいけるが武器を持っていたらまず無理だろう。


「俺じゃなければどうしたんだか」

「あっちにもっと広い道があるからそっちを使ったわ」


 ぼそっと呟いた独り言に対応されて、俺はユウリを見る。


「それなら俺もそっちが良かった」

「こっちの方が村には近いのよ」


 ユウリは俺を村に連れて行こうとしていたようだ。


「小人の村ね、まあ楽しみだけど」


 流石に掌に乗せては移動できないので、俺が芋虫のように進む間にユウリには先に行ってもらう。

 狭いので周りの土か木か、削りながら進んで、ようやく抜けたかと思ったら、目の前に何人かの小人がいた。小人のサイズなら大砲の一種、俺なら銃になるようなアイテムをこちらに向けている。


「ノー!アイアム無罪」


 何で銃を向けられるとえせでも英語をしゃべろうとするんだろうか。


「原子分解縮小砲、発射」

「何それ、ぎゃーっ」


 昔の怪獣特撮で対怪獣部隊の隊員が持っていたような変な未来道具型アイテムから光線が発射され、俺は気を失った。


「死に戻ってない」


 気が付くとどこかの部屋のベットの上でした。てっきり死に戻ったのかと思っ

たが、どうにもなっていないようだ。正確には体格が変わっている。小人のそれに。


「あ、目が覚めた?」

「もしかしてユウリ、か?」

「そうよ」


 小さいのではっきり確認してなかったが、ユウリは女性の様だ。言葉遣いを変えたいがここで変えると何かおかしいと思ったのでそのまま通す。


「さっきのは何だ?」

「さっきのって、原子分解縮小砲の事?」

「そう。小人化するアイテムなのは分かった。それ以外で何か異常を持ってないか?」


 第一名前が物騒だ。


「いったん原子分解して、原子から縮小して再構成するのよ」

「なんてファンタジーな世界なのにここだけ科学的なんだ」


 俺は特撮という名のファンタジーが小人の担当なのかと思った。


「何を言ってるのか分からないけど、機械的な物は機人が普通に使ってるでしょ」

「そういえばそんな話があったような」


 ロボットみたいな種族らしい。まだ見た事はないが。


「あれは機人に依頼して作ってもらったの、だから異常はないはずよ」


 その言葉を信じておこう。

 俺は賭けられていた布団をどけると起き上がった。装備もそのまま小さくなっている。


「それで、わざわざ俺を小さくした理由は何?」


 おそらくイベントだと思うが、小人関連のイベントなんて聞いたことはない。


「落ち着きなさい。まず、同じサイズにしたのは村長と会ってもらうためよ。大きいままじゃ話しにくいでしょう」

「成程」

「あと、頼み事を解決するのにそこまで行く道が私達サイズじゃないと通えないのよ」

「納得した」


 それなら小人サイズでも構わない。俺は立ち上がって体の調子を見る。

 小人の体型はSD的な物だと思っていたが、自分で動かすと何か違和感もある。逆に自由に動くのがおかしい気分になった。


「それじゃあ村長の所に行くか」

「もういいの?じゃあついて来て」


 扉を開けると、そこはファンタジーな小人の世界でした。

 家は茸で建てている物もあるが、木をそのままマンションにしたようないかにも自然系な建築方法だ。フィールドの名前では小人の草原村となっている。


 かと思うと何故か無線機他機械を積み上げたジャンクショップのような店がある。やっぱり木でできている店の様だから違和感は何となくある。


 小鳥に乗って移動している小人が見える。

 虫に乗って移動している小人が見える。

 鼠に乗って移動している小人が見える。


 サイズの問題でその大きさの生き物になるようで、小人より大きい兎や猫などと言った生き物はいない。


「小鳥は乗ってみたいな」


 乗れるかと思うと楽しみだ。俺は後で乗り方を聞こうと決心する。


「こっちよ」


 ユウリに案内されたのは切り倒した後の切り株を家にしている住宅だった。樹齢何百年の木だったのか、かなり大きい。人間でもテーブルに出来るだろう。


「今の村長の職業は倉庫業だったから、こんなに大きいのよ。村長が代々権力者と言う訳じゃないわ」


 この切り株は倉庫だったのか。


「村長~。空旅人連れて来たわよ」

「こらユウリ。お前はまた勝手な事をして。悪い奴だったらどうするんだ」


 そんな気はしていたがユウリという娘は強引なタイプだったらしい。


「大丈夫よ。めんどくさがり屋なのにわたしを助けて、見て見ぬふりをしようとしても出来ないお人よしだから」


 酷い評価だ。


「まあお人よしそうな顔はしておる」


 村長もひどい事を言う。


「それで、お人よしな俺に何かご用でしょうか」


 さっさと話を進めて百匹狩りに戻りたいんだけども、村長とユウリは喧嘩腰で話していて進みそうにない。


「おやすまんの、ついうっかり本音が出てしまった」


 建前は大事だと思う。


「村長のガイゲルだ。実は、儂らはこの少し閉じている場所で平和に暮らしている」


 それは見ればわかる。


「この場所は位置としては、ビギの草原とカラーズの裏山と人間たちが呼んでい

る場所の丁度中間になる。高い山の上じゃ」


 もしかすると、ビギの草原の終わりを示している崖の上じゃないだろうか。


「遥か昔、小人族はこの高い絶壁の上に村を作ることで他の種族とのかかわりを調整した」

「すいません、かかわりを調整すると言うと、何か凄い能力があるんですか?」


 小人は鍛冶が達人というのが北欧神話での立ち位置だ。ただし大体のゲームではドワーフがその立ち位置に来ているのが普通になっている。


「それをいう事は話を出来んな。お前さんとはあったばかりだから」


 それもそうだ。


「別に大した事はないわよ」

「こらユウリ、言うな」


 強い口調で村長はユウリの言葉を封じる。


「とにかく、それは今回の依頼と全く関係ない」

「関係ないなら聞きません」


 俺としては早く本題に入って欲しい。


「それはそれとして、今回の依頼は最終的には相手を倒す事をやらなければならないから腕っぷしがいる。人格はともかく、腕を試させもらおうか」


 おお、何だか用心棒みたいな展開になって来た。


「裏の倉庫に最近鼠が入り込んでいる様だ。それを追っ払ってくれたら依頼をしよう」


『クエスト:「小人村長からの依頼01」が開始しました。依頼を受けますか?Yes/No』


 何かのクエストの発生だ。断る気はないのでYesを選択する。


「良し、それでは早速倉庫の方に行こう。ユウリ、案内してくれ」

「分かったわ」


 ユウリが俺を引っ張る。そのまま引っ張られて切り株の出入り口の真裏に来た。


「ここから入ったらいいわ」

「倉庫って、別の建物を建ててるのかと思ったら、同じ切り株なのか」

「前の3分の1を家に使って、残りが倉庫よ」

「こんな所に何の鼠がいるんだ」

「この前流れてきた野鼠のごろつきがたむろってるのよ」


 ちょっと待て、スパイ的な物の例えかと思ったらそのものずばりな上あまり好みじゃない展開でした。

 やくざの前に行くのは例えゲームとはいえやくざみたいな物の前に立つのは遠慮したい。どうやって前に出ないで相手を倒すかと考える。テンプレの話を思いついた。


「もしかして、今いるここの野鼠って、俺の腕を試すために近所の鼠に頼んでいるとか言う話じゃないか?」

「何よそれ」


 どうも違う様だ。仕方ない、他に思いつかないので捕まえるとしよう。


「ロープを用意しないといけないな」

「何故?」

「殺す気はないんだ」

「ちゃっちゃとやっちゃえばいいのに」

「いや、出来るだけ知的生命体を殺したいと思わないぞ。それにここで戦闘になったら倉庫中がぐちゃぐちゃじゃすまないぞ」


 片づけをするつもりもない。


「じゃあどうするの」

「普通に、捕まえて処分を村長に任せる」


 面倒事は人任せ。


「それで、ロープってどこで手に入る?」

「村長に聞いてみる?」

「分かった」


 村長に言ってロープを貰い、部屋を貸してもらってセンスを入れ替える。


「じゃあ行ってきます」


 扉を開けて倉庫の中に入る。何故かユウリも付いてきた。


「ユウリは危ないから出ておいてくれ」

「ちゃんと見届けないといけないでしょ」


 そういう物か?「夜目」が効いて、少し離れた所に鼠が2匹二歩脚で立っているのが分かる。


「もしもし、野鼠さん達、出来ればおとなしく出て行ってほしいんですが」

「何だい、今日の寝床もないんだから、寝床を作るぐらいいいだろ」


 どうもやくざというより浮浪者だったようだ。


「ここは倉庫で、使っている場所です。寝るなら村長に行って寝ても良い所を聞いて下さい」

「村長が良いって言ったんだよ!」


 俺はユウリを見る。


「ああ言ってるけど、本当か?」


 ユウリは頷いた。


「一日だけね。来た日だけ見つけたのが夜も遅かったから、そのまま許可したの」


 それでそのまま居座られたという訳か。


「すいませんが、やっぱりここは使う場所なので出て行ってほしいんです」

「やだ。屋根付きで眠れるところはないんだぞ」


 小人の村には物置はないのか?


「じゃあ実力行使という事で」

「来るのか?来るなら抵抗するぞ」


 しゃーっと声を立てて前歯を光らせる鼠たちに俺は魔術を使う。


「エレキテル・パラライズ」


 雷魔術の麻痺用魔術です。『目標固定』も使ってしっかり当てた魔術は相手を麻痺させる。こういうどこに当たっても良い魔術だと≪命中≫センスと相性がいいと思う。


「しびしびしび」

「しびれるぅぅぅ」

「よっこいしょ」


 鼠達の腕を縛って動きを封じる。

 そう言えばどうやって外に出すの考えてなかった。


「ユウリ、手伝ってくれる人を呼んでくれないか?この人たちを外に出すから」

「早かったわね」


 魔術を使うと早いだけです。


「おや、早かったな」


 ユウリが連れて来たのは村長だった。


「この鼠達を外に出したいんです。後は任せていいですか?」

「ふむ、それで、どうするのかな?」

「どうすると言いますと?」


 村長が俺を見て、鼠を見て、話してくる。


「鼠は殺したりしないのかね」

「ユウリも言ってましたけど何で殺すのが前提何ですか」

「いや、以前話した空旅人は倒して終わりだったからな」


 そこは人それぞれとしか言いようがない。


「俺はあまり殺すのは好きじゃないんです」


 ビギの草原などで大量虐殺をやっている人間の言う台詞でもないか。


「話が出来るんだから、ここはしばらく働かせて罪を償わせ、後は家を建ててやれば普通に暮らすと思います」

「また倉庫を占拠したらどうするね」

「そうなったら、また捕まえて、どこか遠い所に連れて行きますよ。小人の脚よりは俺の脚の方が遠くに行けますから」


 王都まで連れて行ったら十分だろう。


「うん、甘いが、まあ及第点という所だろう」


 及第点を貰った。


「お前の言うとおり、しばらく働かせてから解放しよう。村に住むかすまないかは別としてな」

「村長」


 村長が俺の言うとおりにすると言った時、その後から声がした。見れば小人の男性が何人か居るようだ。


「おう、すまないが、この鼠達を広場に運んでおいてくれないか」


 村長が頼んだ人手だった男性たちは鼠を連れて言った。


「それでは早速依頼の話をしよう。実は、ここ最近動物が移動している事があってな。ここにはいない動物が現れ、村の物を襲う様になった」


 動物に襲われるなんて何かやらかしたんじゃないかと俺はユウリを見て考える。


「何か変な事考えてない?」

「いや、何も」


 ユウリの感は鋭いようだ。


「ここは少し来にくいような場所だから、わざわざ来るという事はおかしい。調査した結果、何か大型の鳥がこの場所に来ることで追われた動物たちが襲って来たりするという事が分かった」


 普通の動物が来にくい所に家を建てるというのは普通だ。それでも動物なら普通にくるだろう。


「ある意味特殊な結界でな。小人族の手におえないような大型の動物は来ないように調整されている。ある意味隔離されているともいえる」

「その結界を直すんですか?」


 その結界が破れたという話なのか?


「結界とは言っても物理的な効力はない。急なトラブルから外来種が来ることはあり得る」

「今回もそれで外来種が来たとう訳ですか」

「うむ、それで時々外来種が現れると大変な事になる」

「外来種って、隔絶しているんならどうやって来るんですか?」

「うむ、空を飛ぶ空旅人がアイテムを落としたこともあるし、このあたりにはいない鳥が飛んできた事もある。それで、今回の依頼だが、その飛んできた鳥を倒してほしい」


 鳥が飛んでくるのは当たり前ではなかろうか。その前にさっきの銃で撃てば早いのでは。疑問が出て来たので村長に聞き返す。


「もっともな疑問だが、まずその鳥は空を飛ばない鳥であるらしく、どうやって来たのかが疑問がある。出来ればやって来たルートを調べて欲しい」


 飛ばない鳥は鶏か駝鳥か。


「次に、あの光線銃は人間を含めた人型種族を案内するために作ってもらったので、それ以外に使おうとしても効果がない。その効果がある銃は値段が10倍になる」


 何だ単なる予算の問題か。しかし他に武器はないのか?


「最後に何か武器がないかと言うんじゃないかと思うんだが、はっきり言えばない。小人族の使う武器は人間でいえば針の剣や蜂の槍のような小さい物だ。魔術なら使える者もいるが、相対的に量が足らない」


 事情は分かった。じゃあなんで俺みたいな人間に頼むのか。最後の質問をする。


「まあ儂らでは巨大だが、人間には大きくないと言うのが珍しくないからな。小さいまま戦うような話の時は別として、元の大きさで戦ってもらえば早く済む」


 村長の言葉は実に当たり前というか合理的判断だった。


「それで、引き受けてくれるかな」

「分かりました、引き受けます」


 小人のままなら無理だが、元の大きさなら大丈夫だろう。俺の能力は高くないので依頼は慎重にしないと。相手が困る。


「おお、それでは冒険者ギルドにならって依頼を出そう」


 村長は紙にサラサラと何か書いて俺に渡してきた。


『依頼表

 謎の怪鳥を退治する事。

 報酬は要相談』


 報酬って要相談でやる物なのか?


「この要相談ってなんですか?」

「うむ、何しろ物々交換が主なので外の世界のように貨幣がない。珍しい食べ物やアイテムといった形になるな」


 珍しいか、アイテムの方が良いな。俺はそう考えてアイテムにしてくれるように頼む。


「アイテムか。どういった物があったかな」

「それは後でもいいです。ところでどの段階で元に戻してもらえるんでしょうか」


 依頼を受ける事にした俺は珍しい依頼なので早くやってみたくなる。


「ユウリ、案内してやれ、モンスターのいる所は大体分かるだろう?」

「分かるわ。それじゃ、行きましょ」


 村長がユウリに命じるとユウリは俺の手を取って引っ張る。


「いやちょっと」


 そのまま引っ張られて、俺は外に出た。


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