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21図書館ですよ

 現実12日目、ログインする。

 神殿で何か色々やっていたようだが挨拶しようとセンス屋の方に向かう。


「こんにちは」

「あら、ナントさん、目が覚めたの?」


 こちらではログアウト中は眠っている扱いの様だ。


「ありがとうございます、よく眠れました」


 サンドラさんにお礼を言って本題に入る。


「ところで昨日のあれは結局どうなりました?」

「ああ、あれ、あれはね、あれは狭い守りの結界という一か所に聖なる物を詰め

込み過ぎたからその場所に収まりきれない分が溢れていた物だったの」

「それで?」

「結界は広くしたから大丈夫だと思うけれど、今以上に広くは出来ないからもしまた力が溢れたら出てくるだろうって」

「大丈夫なんですか、それは」

「さあ、でもお化けとかじゃなくて危ない物でもないからすぐに対処出来るわよ」

「そうですか」


 専門家が言うのだから大丈夫だろう。

 挨拶をして部屋を出た。ふと神像が置いてある部屋を見ると変な人がいる。

ローブを頭からすっぽり被っているプレイヤーで、何か大きな紙に神像を書き写している。ぎりぎりまで近くまで寄っているが、あれは良いのか?あ、柵を乗り越えようとして捕まった。土下座して謝っている。

 ここまで行くと見事だ。何が彼をかき立てているのだろうか。


「良いですか、今度やったら追い出しますよ」

「分かりました。申しません」


 土下座するという物一種の暴力じゃないかと思う、されるともう後は何も言えなくなる。


「もしもし、何をしてるんですか」


 それはそれとして、何をやっているのか気になったので、話しかけてみる事にする。


「あ、プレイヤーか」


 神官が居なくなり俺だけなのを見てローブの人は頭を上げた。


「俺の名はメシア。この世界の神官王になる男だ」

「はいはい、ネタは良いから。俺はナント。何やってるんです」


 フードの下から顔を出したのは俺よりは年下の少年だった。


「何って、神官としてまずは神像のデータを取るために書き写して、気になったところを添削してる最中だ」


 見せられた紙には神像の姿があるが、赤ペンで色々書かれていた。


「神官の職業は未だにないからな。人とは違う事をやるのが成功する秘訣だと聞いている」


 間違ってはないが、迷惑をかけたら神官になれないのではないだろうか。


「お前は神殿は長いのか?」

「オープン版からのプレイだしそこまで長くない。今日は依頼を受けたから来たんだ」


 しかし柵を越えるほど気になる事とは何だろうか。


「ああ、俺が気になったのは、7柱の神の内6柱、背中に球をつけているだろう。そこに何か文字が書いてあるようなんだ」

「文字が?」


 神像の内、背中に仏教の仏像でいう光背がついているのは天、海、地の対になった6柱の神々だ。センスの神にはついていない。


「文字、ね」


 俺も柵の外から見てみる。すると確かに模様の中に文字が見えた。そして俺は≪言語≫のセンスを持ち前回は子供と一緒に読み書きをした人間である。


「俺は文字が読めるな」

「何?!教えてくれ」

「落ち着け」


 飛びかかってきたメシアを抑えてよく文字に集中する。


「それぞれに6つ、文字があるように見えるな」

「そうか」

「ええと、まず天の男神には、風、雷、火、水、氷、いや雪?それから光」

「ふむふむ」


 俺の言葉にうなずいて書き写すメシア。


「≪言語≫を取ってないのか?神殿で基本的な読み書きを教えてくれるぞ」

「そうなのか。残念ながら取ってない。言葉は通じるから取らなくても大丈夫と言っていたWikiを信じた俺が馬鹿だった」


 悔しそうにするメシアを見ていると何故かメシアがこっちを見返してくる。


「もう終わったのか?」

「何が?」

「文字をすべて読み上げてくれないと」

「別に構わないが」


 自分でやるのかと思っていた。

 それぞれの光背に書かれた文字は、すべて地、火、風、水、心などの組み合わせのどれかでそれぞれに6文字書かれている。意味はまったく分からない。


「ふむ、これでまた一つ神の知識に近づいた。礼をいうぞ」


 神官王を目指すなんて言ってるだけに偉そうだ。


「ところで、何で文字を覚えようとしているんだ。普通に見聞き出来るだろうに」

「見聞き出来ても読み書きできないから、依頼書が読めないんだよ」

「物知らずだな。その場合、依頼書をこう、ステータスの翻訳用ウィンドウに重ねれば意味は分かるぞ」

「それは知らなかった」

「はっはっは。これで教え教えらえ、借りは返したぞ」

「なんだそりゃ」


 結構訳の分からないやつである事は分かった。


「ところで、多少でも神殿に通ってるなら、神官に関係ありそうな話を何か知らないか」

「いや、全く知らないな。ちょっとセンス取りに失敗して、金稼ぎにビギの村にお世話になりつつ、ビギの草原で狩りしてたから」


 メシアの質問に答えた俺に、メシアが寄って来た。


「そのビギの村とか草原とか、どういう場所だ?」


 俺自身弟に言っただけだが誰も知らないのか?


「どこと言われたら、村長から聞いた始まりの村の本当の名前と始まりの草原の正式名称だな」


 俺の答えにメシアが考え出す。


「もしかして神殿にも本名があるのかな?」

「本名かどうかは知らないけど、どうも名前はNPCに聞かないと分からないようだし、知らない人は多いようだな」

「新しい要素なのか?」

「流石に知らないよ。オープン版からの参加だって言っただろう」


 分からない事ははっきりというのが俺の主義です。


「どうもこのゲームはβプレイヤーの話で先に行くのが多いみたいだから、ここら辺の事は知られてないのかもしれない」


 失敗談の塊がここにいます。


「確かにそうだが、名前なんて物を見過ごすか?」

「そんな事言ったら、神官になる方法なんてのも分かってないんだろう。どうやって見つけるんだ」


 メシアの反論を封じる。特に意味を考えた訳ではない言葉だった。その言葉に詰まるメシア。


「神官になる方法って、どうやる気だったんだ」


 何となく話を聞いてみる。


「よくぞ聞いてくれた。まず、この世界は戦士なら武器を手に戦って、生産職なら作品を作ってギルドに納品して、職業見習いの称号が付く。とすると、神殿からのクエストを神殿所属の人間がやれば神官見習いの称号が付くはずだ。という事を考えて神殿に所属主してからクエストを受けたら、見事神官見習いの称号が付いた」

「それは凄い」

「そうだろうそうだろう」


 腕を組んで偉そうに言うメシアは俺が驚いて褒めると満足げに頷いた。


「それじゃあ神官が探されている理由の、治癒魔術は覚えたのか?」

「うっ…それは覚えてない」


 メシアの腕がだらんと垂れた。何故神官の人気がないのかと言えば、治癒魔術に代表される神官魔術という物がないせいである。ゲームとして普通に職業が何だろうと魔術は覚える。

 それなら魔術師と変わらない。魔術師は冒険者ギルドでリゴブリン退治で終わるが、メシアのいう事が正しいなら、神官は神殿を選んで登録し、そこのクエストを受けないといけないという。魔術を使うならば魔術師の方が早いし何か称号で適性を持ちやすいんではないだろうか。

 β版では神官系を含めた治癒魔術は全く見つからなかったらしい。だから神官をプレイしようという人は少ない。


「おそらくだが、魔術には≪魔術≫センスが必要なように神官にはセンスとして神聖力とか聖力とか呼ばれている力がどこかにあるんだと思う。それを探しているんだ」

「だから神様の文字を見ていたのか」


 神様に書かれている文字にヒントを探していたという訳だ。


「後は神話を調べているんだ」

「それは普通だな。でも、使う人の方から偉人伝の方が良くないか?」


 まだ見ていないが神話の話はどんなのがあるのか。神官独自の魔術を調べているならばいっそ偉人伝を調べた方が早い様な気もする。


「それもちゃんと調べる。まだ調査の段階だからな。しっかり調べて、それからクエストだ」

「クエストをうけまくっていた方が良い様な気もする」


 サンドラさんに誘われたクエストの様に何かよく分からない力が湧きだしている者もある。あれが聖なる力と言っていたからその物ズバリなのではないか?そう思いついて受けたクエストをメシアに話してみる。


「聖なる力が溢れただって?」

「そう、つまり、神官たちはそういう力の事を普通に知っているから、話を聞いたら教えてくれないかな?」


 希望的観測ではあるが教えてくれそうとも思う。


「そんなクエストがあったのか。では早速は俺も受けてこよう。百聞は一見にしかずだ」


 今日は倉庫の整理で終わりそうだが、それはどうなっているのか知らない。


「それでは、俺は神殿めぐりを続けようと思うが、お前はどうする」


「用があるから失礼するよ」

「あらナントさん、ここにいらっしゃったんですね」


 今度はモニカさんに捕まった。


「少しお手伝いをして欲しいのですが宜しいですか?」

「はい、出来る事なら」


 神殿の掃除だったら逃げよう。


「昨日の神殿の部屋に集めていた聖なる道具なんですが、運び出すのに時間がかかってしまって、お手伝いをお願いしたいのです。急な事なので人手が足りなくて」


 運ぶだけか。なら出来る。ついでだからメシアに手伝わせよう。


「メシアも手伝ってくれ。昨日言った聖なるアイテムだ。触ってみるのもありだろう」

「なるほど、良し分かった。モニカ神官、私も手伝わせて下さい」


 あっさり乗って来た。


「あら有難う。助かるわ。こちらです」


 案内された部屋は物置で連想する小部屋ではなく、多目的ホールと言ってもいい大きさだった。これは時間がかかるだろう。さらに聖なる道具と言うのは細かいアイテムが多いようだ。一つ一つ、片手に一つづつと運んでいる。


「まとめて運んだら駄目ですか?」

「すべて聖なる力が籠った物です。複数運ぶと何かあった時の対処が大変になります」


 道具は一つ一つ丁寧に包装されている。それを一つ一つ運ぶのでこれは時間がかかる。

 手伝いなのでとにかく運ぶことに集中する。包装された物なので中身は分からなかったが大体は箱だ。時々剣や杖もあった。


「包装は?解くんですか?」

「いえ、そのままで結構です」


 モニカさんに話を聞きつつ運ぶ。


「おう、何か聖なる力が見える」


 時々あるどう見ても何かのオーラを発しているアイテムにメシアが何か言っている。今手に持っているのは呪いのオーラじゃなかろうか、怪しい文字が書いてあり真っ黒な感じがする。


「誰です、呪いのアイテムを混ぜたのは」

「そんなのも交じってましたか」


 モニカさんのお小言も聞きながら、なんだかんだと半日経ってしまった。


「ご苦労様、溢れる力を抑える儀式は何日もかかかります。直すのはその後ですので今日は終わりです」

「そうですか。それでは失礼しても良いですか?」

「はい、有難うございます」


 モニカさんにお礼を言われた俺は神殿を飛び出す。思ったよりも時間がかかってしまった。そう、今回のログインは目的がちゃんと決まっているのだ。

 神殿を出た俺は≪方向感覚≫を駆使して王都の町中を駆け抜ける。王都は広いので≪方向感覚≫の熟練度も少しだが上がった。単に道に迷ったともいう。おかげでスキルとして『現在位置地図』をゲットした。自分がどこにいるのか示すスキルだ。

 そしてようやく目的地に到着した。


「ここが王都の図書館か」


 大貴族の屋敷のような建物で庭も広い。俺は早速入館する。


「入館料500デンです」


 金が必要だった。今回は何とかはいる事が出来る。次回は急いでモンスター退

治に行かなければ。


「おお~」


 思わずため息が出た。空中にすら本棚が浮かぶ巨大図書館。向こうを見れば何か図書館の中に穴を掘って石板を発掘している。反対側を見れば本なのに水の中に浮かんでいる本がある。


「これはまた凄い」


 どうも日本と同じような形の本区分をしているようだ。


「博覧は0番か」


 まずは図鑑系の本を探してみる。


「ううう、小説に気分がひかれる」


 やっぱり大衆が借りにくるのが多いのか小説などの娯楽系は手前にあった。実際の図書館と同じ9番の番号を先頭に番号が振ってある。この世界の人たちはどんな小説を書くのか、物凄く見てみたい。とはいえ話を知っても出てくる動物が分からなければ話が分かるはずもないので先に図鑑を先に探す。一緒に読めば分かるかな?


「あった、動物図鑑」


 言葉で分けた大辞典の横に名前順に図鑑が置いてあった。

 次は読み物だ。こういう時は民話を読むのが早いと思うので王都の民話という本を選ぶ。両方の本を読んで分かったのはまだ≪言語≫の熟練度が足りないという事だ。王都で貴族系の話が多いせいか装飾語や貴族独特の言い回しらしいものがあってそれが読めない。単語だけなら分かるが誰がどうしたかという接続語やらが何かおかしい。俺の読み方がおかしいはずなので熟練度不足だろう。単語も読めない場所があるけど何だろう。

 こういう時は初心に帰ってテンプレ通りに絵本から始めよう。


「あれ?」


 絵本をすぐに見つけたがそこは絵本のある場所ではない。よくある季節ごとにテーマを作って一つの台、本棚にまとめたような置き方だった。


「すいません、司書さん。この本なんですが」

「はい、何かおかしい所がありましたか?」


 近くにいた職員の名札を付けた人に話を聞く。


「近場のモンスターとか、王都近辺の情報が書いてあるコーナーの様ですが、これって常設なんですか」


 俺が気になったのはもし、これが今回作られたコーナーならば、何かイベントがあるかもしれないという事だった。


「はい。最近空旅人さんが再び来られだしましたので、初心者用に基本的な事をまとめたんですよ」


 初心者用と言う言葉にちょっと怒りが込み上げてくるが本に罪はない。


「ありがとうございます」


 俺はお礼を言ってその本棚を読破する事にした。


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