19鎧を頼みました
プレイヤーがやっている露店は今日もにぎわっている。
「おう、坊主、一本買っていかないか」
焼き鳥の屋台から声がかかった。
「へえ、焼き鳥か。一本頂戴」
「おう、ありがとさんっ。一本30デンだ」
お金を払ってもらった焼き鳥はクックとは違う鳥の様だ。
「これは何の肉だい」
「おう、これは王都から北、遊戯都市へ行く道の途中で捕れるレンジウェイ・ピジョンの肉さ」
へえ、他にも鳥肉が取れるかもしれない。焼き鳥ぐらいなら旅の最中でもできるから作ってみるか。しかしそこで一つ問題がある。この現在食べている焼き鳥は塩焼きではない。何か知らないが醤油ベースの甘辛いタレがついている。
「肉もうまいが、タレがうまいな」
「おう。うちの自慢のタレだ」
タレを褒めると屋台の親父は笑み一色で応える。
「今、もう醤油作れるのか?」
ついでだから調味料を聞いておこう。俺はソースよりは醤油が好きで目玉焼きは醤油派だ。
「いや、醤油は大豆から作るような分は、まだ作れない。料理ギルドがいろいろやってるそうだ」
「じゃあこれは?」
「おう、俺の秘伝だがな。魚醤って知ってるか?」
確か魚から取れる醤油みたいなもので原始的な醤油という扱いの物だったはず。
「俺は魚の塩漬けから魚醤に発展させたんだが、それを色々な果物やハーブを使って臭みを消したりして醤油のタレに近づけてるのさ」
成程。それなら海辺のセカにもあるかもしれない。
「ところで、ピリッと辛いのは何だ?果物じゃないだろ」
「それは始まりの草原で捕れる激辛草さ。確かに辛いだけの草だが一味唐辛子みたいな扱いをすれば使える」
「へえ」
もしかしてビギの草原で捕れる草は基本的な味付け用かもしれない。本当に必要な物があそこで手に入るようになってるな。
「親父さん、聞きたい事があるんだが、ここら辺で安心価格で防御力も強い鎧を作ってるのは誰か知ってるか?」
ついでなので聞いてみる。親父さんは顎を撫でながら露店街の奥の方に目をやった。
「金はあるのか?」
「1万デンが予算だな」
俺は残りの購入予定のセンスも全部購入したいのでそんな感じになる。
「あんまり金がないようだな。それじゃあユーキの店って書かれた店に行けば良い。あそこは良心的だ」
「ありがとう。あ、ついでに焼き鳥もう5本」
「毎度あり」
親父さんから包まれた肉を貰うと、俺は言われた方に向かう。
中々見ているだけで楽しい。特に多く目についた店は食事用屋台で武器屋防具屋はそこまでない。薬屋も結構あるが、ポーションに味をつけていたりどこかのゲームで見たような瓶に入っていたりと売り方に工夫している。
「ユーキの店、ああここだ」
結構儲かっているのか看板がある。その横には
『モンスター素材を材料として持ち込んでいただく事で割り引いて製作します』
そうなのか。しまった、さっきビギの草原のアイテムは下位アイテムをほとんど売ってしまった。まあまだビギの砂浜の分がある。
「すいませーん」
「はーい」
中から声がして女の人が出てきた。
「素材持ち込みで鎧の製作をお願いしたいんですが」
屋台のおっちゃんと口調が違うと言われるだろうが、何となく女性には丁寧語になってしまう。
「はい。持ち込んだ材料は何ですか?」
「ここで出して大丈夫ですか?結構あるんですが」
「あ、じゃあ一個づつ出してください」
テーブルを指さされて、俺はアイテムボックスをあさった。
『『獲得アイテム:『獲得アイテム::ワンドツリーの実
ワンドツリーの葉
ワンドツリーの幹
ワンドツリーの油実
ワンドツリーの若葉
ワンドツリーの堅枝
ワンドツリーの堅幹
ワンドツリーの樹皮
ドンキーの革
ドンキーの骨
ドンキーの短骨
ドンキーの蹄
ドンキーの頭
ホルスの乳
ホルスの肉
ホルスの骨
ホルスの頭骨
ホルスの革
ホルスの広骨
ホルスの白乳
ホルスの肉
ホルスの上肉
ホルスの巨角
シープの毛
シープの肉
シープの骨
シープの柔毛
シープの革
シープの中骨
シープの頭骨
ダックの羽毛
ダックの肉
ダックの骨
ダックの柔羽
ダックの上肉
ダックの堅骨
ダックの宝卵
クックの羽毛
クックの嘴
クックの肉
クックの骨
クックの卵
クックの上肉
クックの鋭骨
クックの鋭羽
クックの宝卵
シールドクラブの甲羅
シールドクラブの鋏
シールドクラブの泡液
シールドクラブの大鋏
シールドクラブの堅甲
シー・シュリケンの刃
シー・シュリケンの毒針
シー・シュリケンの鋭刃
ピット・シェルの貝殻
ピット・シェルのむき身
ピット・シェルの麻痺液
ハイドフィッシュの鱗
ハイドフィッシュの隠鱗
ハイドフィッシュの革
ハイドフィッシュの骨
ソルトモーニングロリーの蔓
ソルトモーニングロリーの花
ソルトモーニングロリーの花粉(麻痺)
ソルトモーニングロリーの花粉(毒)
ソルトモーニングロリーの花粉(眠り)
ブレード・フライングの鰭
ブレード・フライングの飛鰭
ブレード・フライングの刃鰭
ブレード・フライングの鱗
ブレード・フライングの軽鱗 』
取り出したアイテムは何が必要か分からないのでまずは一種類づつ取り出した。例えばバブルクラブの焼蟹肉などは出していない。肉は膠を取るのに使うという話を聞いた記憶があるし、塗料に花粉を混ぜて耐性をつけるというような事を見た事がある。だから上位素材も出し惜しみせずに出す。
結構な量になった。
「これは凄いねぇ」
目の前に置いた素材を見て店員さんは腕を組んだ。
「金属はないから基本革鎧に鱗をつけたスケイル鎧になりそうだね。骨で要所を固めて、鱗は足りないからこっちが出して。それでいい?」
「良いですよ。ところで貴方がユーキさんですか?」
「あははは。時々いるよ、貴方みたいな人。値引きって書いてあるから飛び入りで来るの。そう。アタシがこの店の主人、鎧職人のユーキです。以後よろしく」
「あ、どうも。オープン版から入ったナントです。ところで、何で俺の体触ってるんですか」
自己紹介すると肩腰胸と触られた。
「大体のサイズを計ったの。オーダーメイドにする?既製品の型もあるから、それならLサイズで良いね」
「既製品でお願いします」
「それじゃあ、それで。ところで、これ全部使っていいのは?」
「使える分は使っていいですが。使わない分は戻したいので、どのくらいいりますか」
さっきユーキさんが言っていた言葉からすると、毛皮や革、鱗と甲殻ぐらいはいるだろう。そして殻を使うかと思って出しだ卵はさすがにいらないだろう。
「え、その卵とかしまっちゃうの?」
「使わないみたいなので。何か使うんですか?」
「いや、アタシは別に使わないけど。後ろの人が」
「後ろ?」
ユーキさんの指さす方に振り返ってみると、何人かの屋台系の人が俺を凄い目で見てました。
「ええと、作るのに時間とお金どれくらいかかります?」
首をユーキさんの方に戻して最低限必要な事を聞く。
「そうだね、材料持込みだし、予算はどれくらい?」
「1万デンを予算として取ってます」
「じゃあ1万デンで良いよ。時間は、1日欲しいけど」
「じゃあ明後日に。料金先払いで」
口を動かしつつ出した素材を直しこむ。
「じゃ」
回れ右をしてさっさと帰ろうとすると、
「「「待て」」」
予想通り入り口にいた屋台の主たちに捕まった。
「おう、兄ちゃん良い物もってんじゃねぇか。クックの宝卵をこのおでん屋シトラスに売ってくれないかい」
「待て待て、この焼肉屋カイモンの方が先だ。さっき上肉あったよな。あれ全部くれ」
「海鮮物、売ってくれない?サービスするよ?」
金策の一環として持ち続けているので別に売っても良いんだが、どうしよう。何か人数が増えてる。
「すいません、俺は時間がないので顔役の人呼んでもらえますか」
面倒になって来たので俺は人に丸投げすることにした。
「おーい、サンドマンさん呼んで来い」
「サンドマンさんならさっきあっちの屋台に」
「来たぞ」
プレイヤーらしい人が人ごみをかき分けて現れた。
「俺を呼んだのはアンタかい」
「はい。ナントと言います。今持っているアイテムを売ってくれと言われたんですが、どう分けたらいいのか分からないので、一括で引き取って下さい」
サンドマンさんという顔役は顔を笑顔の形にした。
「良いのかい?手数料もかかるしどこかの店にまとめて売った方が金になると思うが」
「一か所だけに売ると後が怖いので。リストはこれです」
「ほう、こいつは」
笑顔だけど笑顔でない顔を改めて少し考える顔になった。
「中々の物だな。良いのかい、売って」
「もう売らないという選択肢がないので」
ステータスからサンドマンさんに素材を渡す。売らなかったら文句が飛んでくるどころか包丁でも飛んできそうなほど殺気立っている。
「分かった。特別に手数料は2割の所を1割にしてやろう。金はどうする?」
「明後日に鎧を取りに来ますので、その時に下さい」
「よし、分かった。おい、お前ら一旦散れ、後で欲しい物を調整してやる」
サンドマンさんの一声で料理人たちが散っていく。
「済まないな、どうやら鎧を作るのにアイテムを出していた所を狙われたみたいだな」
「本当に問題だよ、サンドマンさん。今度から気を付けるように言って。前もこんなことあったよ」
前もあったのか。常連だとするとたちが悪い。
「そうだな、今度から場外買い取り場を設けよう。持ち込みで使用した素材以外を欲しかったらそちらを中継するように」
ユーキさんとサンドマンさんが会話を続けるようなので、俺は失礼する事にした。
「それでは後はよろしくお願いします」
「ああ、ちょっと待て」
まだ何かあるのか、サンドマンさんに呼び止められた。
「フレンド登録しておこう。次来たときに呼んでくれ」
「それじゃあアタシも」
サンドマン。ユーキの名前がフレンドリストに登録された。何気に弟以外では3、4人目と珍しい。
「それじゃあお前さんは用があるようだし、次来たときは必ず連絡くれよ」
「鎧出来たら連絡するね」
二人に頭を下げて俺は露店を後にした。
いや生産職の迫力も怖い物だ。金が出来たので早速残りのセンスを買っておこうと思う。




