117王都のお店です
図書館の村観光をしてからユウリと別れる。外の世界に戻るために受付で巨大化できる場所を聞いてみると、図書館の村では2つパターンがあるらしい。村自体が使われていない部屋の中にあるので図書館の中に出てから巨大化する方法と神殿の村と同じく通路を通って図書館の外に行き巨大化する方法だ。ここの図書館は利用したことがあるが入り口に司書さんが受け付けているので入ったかどうかはばれるような気がした。そこで外に出て巨大化する方法を選ぶ。
「箱で隠れろって事なんだろうけど、なんで隙間は狭いんだ」
再び箱をミシミシと音を立てて巨大化することになった。
「ふう、もうちょっと考えないとな」
小人族は巨大化して店を持つとかしないのだろうか。そんな人がいたなら普通の人と変わらないはずだからその人の店などで巨大化した方が安全だ。
「今度聞いてみるか」
俺はふらふらと店を見ながらユウリが入る何かを考えていた。パッと思いついたのは虫かごなのだが、虫かごは中が透けて見えるので隠すのに向かない。鎧にそういうポケットを付けてもらう事も考えたがユーキさんは小人族云々を知っている人なので再び小人族に出会えたことがばれてしまう。単純に考えてみるか。用は箱を用意して空気穴をあけておけばいいんだ。
「そんな箱は作ってもらわないとないよな」
ゲームなので包装紙のようなものは基本使われない。気の向くままに歩いて行って、宿屋についてしまった。俺が定宿にしている宿屋である。
「そういえばいつかお菓子を買ってきてもらった時に、プリンは箱に入っていたな」
空気が入るかどうか分からないのでその箱をそのまま使う訳にはいかない。ゲームだけに完全密封されていそうだ。箱はあるということは分かる。早速ミミリアさんに聞いてみよう。
「お菓子の箱ですか?」
「そうなんだよ。あれはお店で作ってるのかい?どこかで売ってるものを買ってるのかい?」
「お菓子はともかく箱が欲しい人を初めて見ました」
「ちょっと色々あってね」
カウンターで部屋の鍵をもらいながら話をする。そういう仕様なのか、プレイヤーはNPCにさほど深く事情を聞かれない。
「箱はあの店は自分の所で作ってるはずですよ、箱がそんなに大量に買えるなんて店ないですから」
「箱を売っている店ってないのかい」
「ないですね」
現代社会の100均のありがたみが分かる。
「それじゃあ箱を作ってくれる職人さんか店はないかな」
「箱をなんに使うかですね、悪いことに使うんじゃないですよね」
ああ、それは聞いてくるのか。
「悪い事でないのは神様に誓える。欲しいのは、こう、プレゼントを入れるような丈夫な紙か薄い木の板でできたような箱なんだけど」
両手で大きさを説明しつつ材料を説明する。
「プレゼントですか。彼女ができたんですか?」
何か迫ってこられた。女の子は恋バナが好きだというのは知っている。しかし俺には浮いた話は欠片もないのだった。
「いや、まったく彼女なんかとかは関係ない。欲しいのは中に生き物を入れても大丈夫な運ぶのにちょうどいい、プレゼントに使えそうな箱というもので、お店を教えてもらえると嬉しいんだけど」
「彼女じゃないんですか、でも、私は箱だけ売っているなんて店は知りませんね」
「そうか、じゃあプレイヤーの屋台でも探してみるしかないか」
プレゼント包装をやっている人はいるかもしれない。
一旦ログアウトすることにして、部屋に入った。
休憩してログインしました。何か運営からメールが来ている。動画付きだ。何々、簡単に言うともう慣れてきただろうから武闘大会をするというメールだった。俺には関係なさそうだ。自分の実力では出られるクラスにないのは承知している。
さて、どこに行けば箱は手に入るだろうか。
「サンドマンさんに話を聞けば早いか」
問題は小人虹鉱の話くらいしか話のタネがない事だが、構わないだろうか。もうちょっとネタを仕入れてからの方がいいかもしれない。毎度のことながら行き当たりばったりだ。
「ごめんください」
「おや、ナントいらっしゃい」
商品確認のような事をやっているサンドマンさんがお店の中で人と話していた。
「忙しいなら勝手に買って帰りますよ」
「いや、丁度良いと思っていた。上の素材が必要なので、いくつか売ってくれ。初心者フィールドの上の素材は結構量があるんだろう」
「そこまではないですね、なんだったら狩ってきます」
初心者フィールドなら何とかなると思う。急ぎなら無理だが。
「そうか、じゃあこんなアイテムはあるか?」
出されたメモのウィンドウをこちらで比べる。いくつかはあった。
「それじゃあこれだけを」
「ありがとう、これは対価だ」
サンドマンさんから1万デンもらった。高いような低いような値段だ。
「結構需要はあるんだが、初心者フィールドは行くプレイヤーが少なくてな、供給は少ないんだ」
弟も似たようなことを言っていたな。今更初心者フィ-ルドを回る意味はないみたいな話だった。
「それで、ポーションが欲しいのと、一つ相談があるんです」
「相談?なんだ?」
「クエスト関係で、生き物を入れても大丈夫な箱が欲しいんです。プレゼントに使う箱みたいな物に空気穴を開けようかと思っているんですが。包装関係の物がないのでそういった箱を取り扱っている店を知りませんか?」
実際は違う訳だがごまかしつつ箱の販売店を聞く。
「箱ぐらいならうちの店にもあるぞ。よくある紙の箱だろう」
「そうです。水に濡れると困るので耐水の紙か防水の塗料も欲しいんですが」
サンドマンさんは頭に手をやって少し考えたようだ。
「そこまでやるんならいっそのこと鞄にしたらどうだ。首下げ鞄なら簡単に手に入るぞ」
「生き物を入れるんですが、息は大丈夫ですか」
「そこは生産職に言って作ってもらうしかない。紹介しようか?」
「お願いします」
「分かった。それでポーションはいくつだ?」
「とりあえず1ダースずつ、HPとMPのやつをください」
「毎度あり」
サンドマンさんから生産職への紹介状をもらった。まだ露店の方で店を出している人のようだ。
「ええと、一文字でRさんか。裁縫系かな」
肩掛け鞄と言われればイメージとしては布カバンをイメージしてしまうのです。
前にサンドマンさんが露店を開いていた西のプレイヤー露店に来る。サンドマンさんたちが抜けると過疎化するかと思っていたがまだまだ賑やかだ。立ち代わり入れ替わり店が出ているということだろう。
「ここかな、すいませーん」
「はーいはい、ちょっと待ってー」
布を積んである露店で看板を確認して声をかける。中から女性の声がした。
「はい、お待たせ、お客さんかな~」
出てきたのは今まで見たことのあるプレイヤーと違って年齢が上そうな人だった。母親ぐらいか?
「サンドマンさんの紹介でここに鞄を作ってもらいに来たんですけど、Rさんですか」
「そうです。私が裁縫職人、布製品のRです。で、君は?」
「あ、ナントです、これが紹介状、よろしくお願いします」
紹介状を渡すとRさんはそれを読み始める。
「成程ね~。生き物を入れる鞄か、皮革だと熱もこもるからいっそのこと皮を枠にして中をつぶさないように、中が見えない厚さの薄絹で息ができるようにした方がいいかな」
「できますか?」
「できるよ、難しいものでもないから素材が揃ったらね。大きさはどのくらい?」
「ええと」
小人族がまあ大体で人間の拳くらい。荷物があるだろうからその何倍かを想定して箱として考えていたとしたら体積で最少が拳8個ぐらいか?
「このくらいですかね」
大体の大きさを手で表現する。
「20㎝くらい?正方形?」
「最低がそのくらいじゃないかと思うんです。イメージとしては余裕を持って広げたらそのくらいになる鞄という感じですか」
「じゃあもう少し余裕を持たせて、背中に背負えるようにする?」
「それがいいならそうしてください」
今気づいたがユウリがどうやって外を覗くのかは分からない。やっぱり横に肩掛けにしていた方が前は見やすいな。
「やっぱり肩掛け型でお願いします」
「そう、それで材料の事なんだけど」
うん、特殊な材料になりそうな気がする。
「そうする?お金で払ってもいいけど、今ならクエストで手に入るよ。クエストを受けて私に余った分を売ってくれるなら安くするけど」
「安くなる方でお願いします」
お金はかからない方がいいと思うんです。
「そう、それじゃあクエストを受けてきてね~」
「なんのクエストですか?」
そこでRさんはためを作って俺を見た。
「惜別の残月ってクエスト、知ってる?」
「知りません」
知らないというか覚えていないというか。
「もう、公式インフォメーションにあった、β版の時間軸に行くことができるってクエストだよ」
「そういえばそんな話がありましたね」
俺はある意味関係ないと存在を覚えようとしてなかった。
「つまり、採れる素材は過去にある訳ですか?」
「そう、過去のあるダンジョンで獲れるシルキー・モスマンってモンスターのアイテムなの。過去の六大ダンジョンで出てくるモンスターだから、初心者でも大丈夫」
初心者というのがばれているあたりサンドマンさんの紹介状に書いてあったんだな。
「それは今は取れないんですか?」
「今は樹網都市エメラダのダンジョンの方で獲れるの。今からさっと行って採ってこれる?」
「無理ですね」
行くのは簡単だ。このゲームは行くだけなら街道を通れば時間はかかるけれど安全に行けるようになっている。俺にはその後の採る部分が問題だ。相手の強さが分からないので何とも言えないがダンジョンと言えば一つしか潜っていないような人間に採ってくるのは難しいだろう。
六大ダンジョンならまだ初心者用だと思うので大丈夫だと思う。β版だからはっきりとは断言できないのが問題だ。鬼畜仕様だったらどうしよう。
「β版では職業で別れていたという感じではなくて、森林系、砂漠系とか環境で別れていたの。シルキー・モスマンがいるのは森林系のモンスターがいる通称森のダンジョン」
つまりその森のダンジョンでシルキー・モスマンを倒してこいという話ですね。
「分かりました。早速行ってきます」
「ちょっと待って、いくらいるか言ってないでしょう」
「そうでした」
危ない危ない。また変な称号が付くほど狩るところだった。
「鞄に必要なのは20枚。余分に10枚いるとして、30枚必要。後は採ってきた分だけ買い取るわよ」
「それだけですか」
20枚というのは思ったよりは少ない。きっと落とすのは蛾の羽だから100枚くらいいるものと考えていた。
「まあ後はシルキー・モスマンを見た時のお楽しみね」
「もしかして何かありますか?」
「大丈夫よ、普通に六大ダンジョンに挑めるなら大丈夫な相手だから」
引っかかるものを感じながら俺は過去に飛ぶべく店を後にした。




