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116図書館の村で観光です

 図書館の村と言っても図書館の中にある村なのでどういう名所があるかは分からない。ユウリに任せよう。


「まずは図書館の村名物は本から見つける料理研究の結果でその時々に変わる食事よね。今は薬草で作った薬膳料理が流行ってるらしいわ」


 薬膳か。中華なイメージなんだけれど小人族はどの文化なのかよく分からないので西洋風かもしれない。


「ここでもらいましょ」


 食事処と看板が出ている店を発見してユウリが入っていく。


「ここっておいしいのか?」

「これ、今年出たガイドブックなんだけど、ビルさんにもらったのよ」


 しっかりしている。


「いらっしゃい。今日はとっておきなのが出てるよ」

「とっておきってなんですか?」

「なんと、空旅人が上の肉を寄付してくれたんでね、上の肉の料理があるんだ」


 どうもその空旅人です。心の中で突っ込みを入れておいてユウリを見る。


「どうする?おすすめにする?」

「う~ん、ナントといれば食べられそうだし、ここはやっぱり薬草料理にしましょう」

「そうだな。すいません、注文お願いします」


 小人族のウェイトレスさんに呼びかける。


「はいはい、ご注文は」

「お勧めの薬草料理って何があります?」

「体薬草のスープから始めてのコース料理がお勧めだよ」

「ユウリはどうする?」

「やっぱりここはお勧めなんだからそのフルコースでしょう」

「じゃあそのコースを2つお願いします」

「はい、薬草コースを2点ですね。他には何かありますか?」

「薬草のコースってデザートはついているんですか?」

 

俺は甘いものが付いているのか聞いてみた。


「ちゃんとついてますよ」

「俺はそれだけで。ユウリはどうする?」

「私もそれだけでいいわ」


 来たのはスープから始まってなかなかおいしい料理だった。


「確かにおいしいかった」

「本当にね」


 満面の笑みでユウリが微笑んでいる。ちなみに代金はいつか返すとしてユウリに借金の形になる。俺は借金が嫌いだからできるだけ早く返そう。


「次はね、やっぱり人間族の本を見ておかないと」

「人間の本ってどうやって見る気だ」


 人間大のままの本なんて大きすぎて開けないものもあると思う。


「そこはこの村の特徴だもの。こっちね」


 連れられてきたのは立っている巨大な本とその本を囲んで建物があるという変な構造の建物だった。本は分厚い表紙の本で左右に開かれている。


「ここでは一年に一回本を取り換えて一年間開きっぱなしの本を展示してあるそうよ」

「こういう見方で来たか」


 看板には世界の薬草辞典が公開中と書いている。


「見るのはタダだから行きましょう」

「こういう形で本を見るのは初めてだ」


 首を上にあげないといけない形で本を見るというのも初めてだ。


「あそこにさっき食べた体薬草の絵があるわね」


 本は表紙の下をしっかりと固定されていてページはめくれるようになっている。車輪付きの移動式階段で高いところの文を読むようだ。一台借りて高いところの文を読む。


「ページをめくるのはどうするんだ」

「めくりたい人がめくるみたいよ」

「誰か、このページをめくるのを手伝ってくれませんか~」


 俺の疑問に答えたユウリの言葉にかぶさる様に声が響く。何人か集まっていく。


「話のタネにやってみようか」

「そうね、どうやってめくる気かしら」


 ここまで現在の身長からすると10倍の大きさの本をめくるためにはまずページを固定してある楔を抜く事から始まった。

 下でページが移動しないようにしている楔が何本も刺さっているのでそれを一本ずつ抜いていく。


「あ、駄目だ、そこを抜くと本がめくれる。真ん中と端っこを残してその2本は一気に抜くんだ」

「そうなんですか」


 もう色々役目は決まっているようで俺達が抜こうとしたら他の小人が注意してきた。

 なかなかファンタジーな体験だ。最後の楔はひもで引っ張って抜くようで、楔を抜くと一気にページがめくれて本がばらばらという音と小人族の服をたなびかせる風を吹かせてページがばらばらに開く。


「それでは今から開きたい項目を探すのでちょっと待ってください」


 声を出したのはこの研究者のような小人かな。俺は他の小人と一緒に目次のページを開いて左右で抑えている役目をしている。その間に少し開いた隙間に階段を使って上から下まで目次を探しているようだ。


「本を開くのって結構大変ね」


 ユウリが隣で抑えながら呟く。実際力を抜くと戻りそうなので挟まれたら人身事故ということになるのか?


「ありました。108ページです」


 小人達はいったん本から離れる。俺達も離れた。研究者がページを数えていく。


「ここです、皆さんお願いします」


 再び本に取り付いて、必要なページを持って左右に開いていく。今度は本が戻ろうとする勢いが強いので気を抜いたらページが戻って挟まれてしまうだろう。


「それでは楔を打っていきます」


 掛け声が響くと次々に楔が運ばれてきて撃ち込まれていく。何本か打ち込むと本から離れてもいいと声がかかった。


「ありがとうございました」


 研究者が頭を下げている。来た人に何か渡しているがなんだろう。俺ももらった。一粒の小人虹鉱だった。


「これでもらえるのか」

「感謝してるって事でしょう。くれない人もいるみたいだし」


 ユウリは手をはたいている。俺はゲームなので汚れず体が痛む事もないのだが、肩が凝ったような気分になって腕を回す。


「あんまりやりたいことでもないわね」

「こういうのを空旅人の仕事にしたらいいんだと思う」


 ユウリの感想に俺は思いついたことをそのまま口に出す。


「そうね、面倒な仕事なら小人虹鉱を渡す仕事にしてもいいわね」


 本を動かした面々はそれぞれ出て行った。


「でも大きくなったらページをめくるのも楽なんじゃないの?」

「それは楽だけどな」

「一人で済みそうね」

「人間が入れるスペースがあったらいいけどないようだから難しいと思うな」


 ざっと図書館の村を見ても中央にある広場以外人間の大きさになれそうな場所がない。


「それじゃ次に行きましょ。次は図書館よ」

「図書館の村の図書館ってのも変な話に聞こえるよな」


 ユウリはガイドブックを見ながら案内を開始した。俺はそれについていく。


「ここが図書館よ」

「おお」


 村で一番巨大な建物だった。壁際に作ってあって上や横の作業場を見る限りますます大きくなっていっているようだ。


「図書館の村は、人間の本を書き写すことを仕事にしている人がいるの。その人たちの作業場が元だから、どんどん建て増していったらしいわ」


 広場が図書館の前にあり、そこで小人達が巨大な本を横に寝かせて開いている。文を読み上げてはそれを書き写すことをしているようだ。


「違うよ、そこの文法は強調で最後の単語を主語に持ってくる形だからここは胡桃だよ」

「何を言う。それでは今までの文が全部間違いになるからここだけその文だというのおかしい」


 学者的な話もあるようだ。


「空旅人のナントならどんな文か分かるんじゃないの?」

「さあ。俺は≪言語≫センスを取ってはいるけれど古文書を解読できるほどじゃあないのは知ってるだろう。村長の所で本を探したときに」

「そういえば村長より読めてなかったわね」


 ユウリは頷くと騒がしい本をよけて図書館へと進む。


「おお、普通の図書館だ」


 王都の図書館のように水の中の本とか空中島の本棚とかはない。


「普通じゃない図書館って、何?」

「王都の図書館の中には普通じゃ見られない本があって、それは普通じゃない場所にあるんだよ」


 ユウリの質問に答えながら俺は受付に進む。


「すいません、本を読みたいんですが、手続きはどうなっているでしょうか」

「はい、本を読むのは自由です。館内は飲食禁止です。本を借りたいときは受付に持ってきてください」

「ありがとうございます」


 それだけ聞けは十分だ。


「ユウリは何か本を読まないのか?」

「読むわよ。次の町への情報収集とか、色々あるんだから」

「そうだな。あ、そうだユウリ、もしもいろんな小人族の村の載っている本があったら教えてくれないか。俺が行きたい村の参考にしたい」

「あら、レンジで終わりじゃないの?」


 確かに弟とはレンジで待ち合わせていますけどもおそらく自由行動になる見込みです。


「登録をしに弟の所へ行くけど、その後は連絡があるまで自由時間という話だな。その間うろうろするのは自由だと思う。もしかすると王都に駐在してくれとかいうような話が出てくるかもしれないから断言できないけど」

「ふうん」


 ユウリは納得してない顔ですたすたと歩くと本を一冊取ってきた。


「これが今ある村の特徴とかを書いてある本よ。基本だからこれならいいでしょう」

「ありがとう」


 礼を言って本を受けとる。本のタイトルは『小人族の村』とだけ書かれている。


「どういう本だろう」


 開いてみると写真付きで分かりやすい本だった。


「そういえば王都の図書館は写真じゃなくて絵だったな。機人との交流がある方が文明度高いのか」


 村を高い場所から一望した写真に、名物などは別の写真で載っている。


「水中の村はガラス製のような何かの中にあるのか。SFな深海都市みたいだな」


 逆に岩で覆って存在を隠している水中の村もあった。どう違うのか。地域で言うと岩で隠れている方がブルーというからには湖上都市ブルーの近くであると思われる。透明カバーの村の方は聞いた事がないアクアマリンと書いてある。隠れ里か未実装エリアという物の所にあるんだろう。


「へー。雲の中に浮かんでいる村もあるのか」


 地面に建てた巨大な杭につないで風船のようになっている。小人族がSF系人類をやっているような気がしてきた。


「ねえ、私はもう宿泊所に行くけど、ナントはどうする?」

「え、もうそんな時間か」


 ユウリに話しかけられて顔を上げる。図書館に籠りたいけれど体力その他を回復するために宿屋に行かなければいけない。


「じゃあ俺は外の宿屋に泊まるよ」


 どうせやることがある。ユウリを運ぶための箱を用意しようと思う。




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