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115図書館の村です

 話しながら歩いたり黙って歩いたり、休憩をはさみつつ歩いていたら大八車がやってきたのでそれに便乗させてもらう。最初は乗せてもらっていたので今は引っ張るのは俺になります。話のタネはそんなにないのです。引っ張るのは交代交代しているので思ったほどきつくはない。


「へぇ~。図書館の村には薬草料理があるんだ、意外」

「人間族の薬草料理の本から見つけて作られた料理なんだよ。最近ブームになっているようで、薬草が売り時だね」


 大八車を引いていた人、ビルさんとユウリが情報交換をしている。俺も聞くともなしに聞いていた。


「さあ付いた」

「ここが図書館の村か」

「正確には図書館の村から少し離れたところにある村の入り口の受付だね」


 神殿の村と同じように受付をする。さて本は何処だ。


「ナント、そんなに慌てなくても本は逃げないわよ」

「兄ちゃんは本が好きなんだね」


 石造りの道を続けて歩く。しばらく歩くとそこには本がたくさん並んだ夢のような場所があった。


「お~。ここが図書館の村か」


 本がたくさん並んだというが、どうもこれは家になるらしい。本を加工して作った家から小人族が出てくるのが見える。こういうのも小人らしいと思う。ただし本を傷つけたことには文句を言いたいようなファンタジーに浸っていたいようななんとも言えない気分である。天井は高いので図書館の部屋の一室かもしれない。


「何変な顔をしてるの」

「本を家にしてたら本が読めないんじゃないか?」

「ああ、その点は大丈夫。カモフラージュのために本の形をしているだけで、材料は破棄された本を使ってますからな」


 大八車のおっちゃんが教えてくれた。ビルさんはこの村出身者で百年ほど別の村で暮らして老後をこの村で暮らすために帰ってきたところだそうだ。百年というのがすごいな、ユウリもそれぐらい旅行するだろうか。


「ああ、ここです。私の家は。運んでくれてありがとうございます」


 気が急いてついそのまま引っ張ってきてしまった。お人よしにも運んであげたということにしておこう。


「積み下ろしは大丈夫ですか?」

「それはこっちで雇った人がいます。明日荷物の積み下ろしをする予定です」

「そうですか、お世話になりました」


 挨拶してユウリと宿泊所に向かう。


「さて、こっちではどうやって稼ごうか」

「この前はさっさと出て行ったのに今回は観光するのね」

「さっさと出て行ったというか、一度決めたことをやらないと気持ち悪くてな。ここは観光のし甲斐がありそうだ」

「観光というか、本を読む事でしょう。小人族用の本なら読み放題だけど」

「それは嬉しい」

「宿泊所のお金はちゃんと稼がないといけないわよ」

「それは勿論」


 ここもおそらく空旅人用の店があるはずなので、そこでクエストを受けられるかどうか聞いてみよう。


「そうね、聞いてみましょう」


 俺の意見にユウリが頷く。また受付に戻って話を聞いてもらう。


「空旅人用の店ですか」

「はい、どこにあるでしょう」

「そうですね、地図を用意します」


 今度は地図を用意された。図書館の村の方が本の積み上がり方で道が複雑に見えるせいかな。今度もユウリの案内で、俺はついていく。


「今度は町中みたいね」

「元の大きさに戻るのにどう対応するんだろう」

「広場が近くにあるみたいだからそこでやるんじゃない?」


 そんな会話をしながら目的の店に着く。


「ここか」


 ユウリが足を止めた場所は、外から見ると平積みの本を高く積んである場所だった。本は図鑑か辞書なので分厚い。扉があるから本じゃないと分かるな。


「すいません。ここは空旅人用のお店ですか」


 ユウリが扉に顔を入れて声を出した。


「はいはい、いらっしゃい。どっちが空旅人さんかな」


 小人の店員さんが早口で出迎えに来た。せっかちな性分なんだろうか。


「俺です。名前はナントと言います」

「ああ、ナントさん、聞いてるよ、方針転換のきっかけになった人とか」


 なんだそれ。変な噂だと広まって欲しくはない。


「いや、この店も広場を利用して大きな獲物を出せるように場所を取ったんだけどね、大きな人の獲物の大きさは小人族からすると大きすぎて小人虹鉱だと払いきれないから、作業とかを振り分ける方式になったけど、そうすると場所が無駄になったっていう」


 わっはっはと笑う店員さん、笑いごとでもないと思うんですが、おしゃべりな性格のようだ。


「ええと、それでその仕事を割り振りしてもらいに来たんです。何か仕事はありますか」

「はっはっは。実はね、ないんだよ」


 ないんかい、という突っ込みは心の中でしておく。


「実際どんな仕事だと空旅人にふさわしいかという話をしていてね、見事に小田原評定な訳だよ」

「別にすごい仕事をするもんでもないでしょう。普通に草むしりとかここなら古い本をばらすのを手伝うとか」


 何をすればいいのか分からないのはこちらも同じなのでお手伝いやアルバイトでもしそうなものを上げておく。


「空旅人はモンスターを狩って生計を立てているものがほとんどなんだろう?ここではそういう仕事はないからな」


 町中だからモンスター退治はないのは分かる。しかしゲームではダンジョンが色々とつながっているのに小人族にはそれがないのだろうか。


「あ、悪い悪い、お嬢さんもいるし、後は中で話をしよう」


 ユウリを見た店員のおっちゃんは店の戸を開いて俺達を招き入れた。部屋の中はカウンターと小さな椅子テーブルがあるくらいでこじんまりしている。


「それでは改めて、この店の店長をしているトロットだよ、よろしく」

「ビギの山の村から来たユウリです」

「改めて空旅人のナントです」


 店長さんは店の奥からお茶を持ってきて出してくれる。


「神殿の村の店で上の肉を出されて色々と混乱した事もあって、小人族と同じ仕事で小人虹鉱を渡す形に

しようと決定したわけだけど、その後も色々あってね」


 お茶を一口飲んでトロットさんは話を続ける。


「こちらでは上の肉なんて結構というか、とても手に入りにくい肉なんだよ」


 小人族も狩人がいると思うんだが、狩りはしないのだろうか。


「ナントが思っているのがどういうものかは分からないけど、小人族は基本的に遊牧と農耕の文化でね、敵に見つかったら逃げるというのが基本的な考えなんだ。猟になんて出ないから、ビギの草原の上の肉を持って来られてもめったに食べたことがないものだから小人虹鉱だとべらぼうな値段が付くのさ」


 基本的に逃げる文化というのは理解した。いつでも逃げられるように村程度の大きさで暮らしているんだな。


「上の肉が大量に手に入るとすると、今の値段じゃあ破産するから仕事に振ることにした訳だけど、今度はどんな仕事を振っていいかという話になる」


 モンスターを狩って生活というゲームとしてはしょうがない話になる。


「ダンジョンはないんですか?」


 俺は気になっていた部分を聞いてみる。


「ダンジョンはダンジョンの村からなら行けるけれどここみたいな場所からじゃあいけないからな」

「じゃあ討伐系のクエストは?例えばどこかの下水道で鰐が発生したから退治しに行くとか」


 都市伝説でよくあるパターンです。


「下水道の村でもそういうことはないな。せいぜい泥棒鼠を捕まえるような依頼だ」


 つまりシティーアドベンチャーの仕事しかないんだな。


「だったら最初ら討伐系の依頼はダンジョンの村しかないということをはっきりと明言しておいた方がいいですね、あくまでこの村みたいな店は町の清掃みたいな、街のお手伝いしかないとはっきり言っておいたら大丈夫だと思います」

「それで文句は出ないかな?」

「出す人は出すでしょうけど、最初に無理だと言っておけばよっぽどひどい事にはならないと思います。全部の村でそれを明言しておくのが一番ですね。皆できる仕事のところに行くようになるでしょう」

「そうか、この話は長老達に話してもいいかい」

「どうぞどうぞ」


 他にも意見があるだろうから意見の一つとしては妥当だろう。取り上げられるかどうかは知らない。


「ところでついでに、上の肉をこの村にも寄付してくれないかい。宿泊所をただにするよ」


 話のついでというようにトロットさんが上の肉を要求してきた。ちゃっかりしている。


「それは別に構いません」


 俺は残ったお茶を飲み干して広場に向かう。広場は普通誰かいるものなのに今は誰もいない。


「こう言う事もあろうかと貸し切っておいたんだ。じゃあ頼む」


 用意のいい人でもあった、巨大化してアイテムを取り出すとトロットさんに渡す。やはりアイテムボックス持ちだったらしくすんなりと肉はトロットさんへ渡った。


「ありがとう」


 トロットさんはそう言って店に閉店の看板を出して走っていく。


「どこに行くんだろう」

「切り分けに行くんじゃないかしら」


 確かに肉は大きいから切り分けるのも一苦労になる。ユウリは地図を広げた。


「とりあえず宿泊所に行きましょう」

「そうだな」


 地図を持ったユウリについて俺は歩く。その間にふっと思いついたことが出てきたのでユウリに話しかけた。


「ここが宿泊所みたいね」

「ここか、ところでユウリ、話したいことがあるんだけど」

「話?立ち話もなんだから部屋の中でしましょ」


 話す前に宿泊所についてしまったので、部屋の中で話すことになった。


「話というのはここからの行動なんだけど、俺はこの村をユウリが王都の全部の村を観光している間の俺の拠点にしたい」

「俺の拠点って、言う事は、私が他の村に行ってもナントはこの村にいるって言う事?」

「どっちかというと、俺は元の大きさで活動することの方が多いからここを連絡する場所にして、俺がレンジに行く時はレンジに行くという連絡をここにしてからユウリが来るまで待っている待合場所というのが正しいかな」

「他の村には興味がないの?」

「興味はあるけど外の用事をしないとどうにもならないし、小人虹鉱を持っていない俺は外で宿を取った方がいいと思ってる」

「そうなんだ」


 ユウリは考えこむ顔になった。


「じゃあ、レンジへは一緒に行ってくれるって事?」

「連れて行ってもらえるならありがたいよ。ただ、俺が小人虹鉱を集めるのにどれだけかかるかって事もあるし」


 今回は宿泊所がただになったわけだけど毎回それをやる訳にもいかない。上の肉も補給しないといけない。


「分かったわ。私はしばらくはここを観光するけどナントはすぐ行くの?」

「う~ん、今日は出ないで観光に付き合おうか。明日はユウリを運ぶための手段を用意するにも外に出よう」

「そうする?じゃあ早速今日は観光しましょう」


 ユウリが立ち上がったので俺もつられて立ち上がる。そのまま観光に図書館の村の観光に向かった。


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