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103神殿を出ました

 結論から言うと、ガリオンさん、セイレンさんに≪神力≫センスはついていた。ミマイルさんが鑑定しても神力の文字はどこにもないので、センス売り場の神官さんに確認してもらってみると、≪神力≫センスが付いているという。インフォも二人にあったようで、その後の確認で初めて≪神力≫センスが確認された。


「やっぱりさっきのあの白いのを触らないと駄目なんだな」

「ミマイルさんには付いてないですか」

「ああ、駄目だった」


 俺がミマイルさんに確認すると肩をすくめてミマイルさんが答える。


「やっぱり神様拝んだだけじゃ駄目か」

「そうみたいですね」


 特にがっくりしている様子もない。メシアはその間どうやって治癒魔術を使うのかを質問されていた。


「やっぱり≪魔術≫センスがないと治癒魔術としては使用できないみたいだ」

「才能系センスと同じ扱いなんだな」


 セイレンさんがミマイルさんに報告する。


「俺はどうしようか。≪魔術≫センスを持っていないから、このままだと宝の持ち腐れだな」


 ならどうして≪神力≫センスを取ろうとしたんだろう。


「神官戦士の盾役をイメージしたんだけどな。神官戦士に知り合いは居ないか?」


 ガリオンさんにそんな事を聞かれる。神官戦士か、そういう存在がいるのは知っている。俺には面識はない。メシアの方はどうだろう。


「メシア、神官戦士に面識はないかって言うけど、メシアには面識はないか?」

「ないな。俺よりモニカさんとかに聞いた方がよくないか?」


 神殿の中でも引きこもって生活しているように見えるのはどうしてだろう。


「そうか、なら夜回りクエストの報告ついでに聞いてみよう」

「役に立たなくてすいません」

「いや、神官戦士がいるのが分かったのはありがたい」


 神官戦士に興味はあれど俺がなる気はない。戒律がどうのこうのありそうだから。

 夜回りの報告に行くとモニカさんが待っていてくれた。ありがたい。


「それで、聖なる力はどうでしたか?」

「溢れてました。物の数を減らしたか結界強化したかしたんですよね」

「そうですね、それでも溢れるとなるとお手上げです」


 俺がモニカさんと話しているとクエストクリアのインフォが流れた。


「よし、じゃあ俺は掲示板にあげてから落ちるわ。ナント、今日はありがとうな」

「いえいえ、ほら、メシアもお礼を言って」

「今日はありがとうございました。よろしくお願いします」


 ミマイルさんが掲示板に情報を流すためか神殿を出た。そういえばメシアが情報拡散を希望したから検証の人を呼んだんだった。


「すまないが、先に神官戦士について聞いてもらっていいか?」


 同じようにログアウトするとセイレンさんが出ていき、ガリオンさんがそんなことを言ってきた。手間でもないのでモニカさんのところに取って返す。


「すいません、話をいいですか」

「あら何かしら」

「神官戦士ってどうやってなるんですか?」

「ナントは神官戦士にありたいのかしら」


 興味を持たれてしまった。


「いえ、神官戦士になりたいという人が今日の夜回りにいたんです」


 俺でないことを強調しておく。


「空旅人がどうやってなるのかは知らないから、私たちのなり方でいいかしら」

「それでいいと思います」


 このゲーム称号はあっても職業はないので神官戦士の称号がどこをどうしたらなるのかは不明です。俺の返事にモニカさんが口を開く。


「まず、仕える神を選んで神官の誓いを立てること。そして将来弱いものを助ける誓いを立てて奉仕活動の部分を戦士の修行に費やします。戦いのたびに神に感謝の祈りを捧げます」

「奉仕活動だけをしていると神官ですか」

「そうです。さすがに戦士の修行までやるのは無理があるので、将来一人でも多くの人を助けるという誓いを神に立てます」


 予想より楽そうだ。戦士の修行は普段通りの戦士のロールプレイでいいんじゃないかな。


「神殿の神官戦士は修行が非常に厳しいので、途中でやめるものも多いです。そして必然的に精鋭部隊になります。空旅人が神官戦士になるのは止めることはできませんが、神官戦士として下手なことをやった場合神殿から苦情が来ることもあります。その人がなりたいなら、街に着いたら神殿に必ず顔を出しておいた方がいいでしょう」


 精鋭部隊で誇り高いから無礼者が神官戦士になったりした場合神殿が刺客を送ってきそうな話だ。


「神官へはどうやってなるんですか?」

「神官は神へ誓いの誓紙を差し出せば神官と認められます。その後は修行次第ですね」


 誓いの紙を差し出すだけなら簡単だ。


「ところで、メシアは何をしてあんなになってたんでしょう。寝不足とか過労とかひどいことになってたんですが」


 モニカさんが顔に手を当てて首を振る。


「あの子は真面目に修行するのはいいんですがやりすぎるのです。寝ずに修行を続けたり奉仕活動をしたり。人々に感謝されるのが神官の修行ですから、内にこもって修行を続けるだけではいけないというのに、中々神殿の外に出ようとしません。どうしましょうか」


 俺にその話をされても困ります。


「修行として神殿で空旅人と同じような事をしているタイプの人たちと一緒に行動させるとかぐらいしか思いつきませんね」


 俺が同行できる話ではない。


「ところで神官戦士のこの話、このまま伝えていいですか?」


 モニカさんに確認する。


「話すのは構いません。ですが、神殿の責任がかかっていることを特に教えておいてください」


 責任ってやっぱり下手なことをしたら神殿から刺客が放たれそうな話だ。モニカさんにお礼を言うとガリオンさんのところに戻る。面子があることを第一に説明する。


「つまり、修行は戦士のレベルを上げていけばいいんだな。後はどの神を信じるかを決めて、誓紙を差し出すと」

「そうなりますね」

「面子ってのがすごいよな。面子をつぶすような行動をしたら破門されるんだろうか」

「それは聞いてなかったですね。聞いてきましょう」

「大体分かったからいいよ、ありがとう。後はこっちでやってみる」


 ガリオンさんも神殿を出て行った。俺もちょっと休憩するか。モニカさんとメシアに挨拶して宿屋に戻ってログアウトする。


 小休止した後ログインする。時間を見ると朝になったあたりのようだ。今日鎧ができているはずなので早速ユーキさんの店に行く。少し迷いつつ午前中のうちに着いた。


「すいませーん。ユーキさんは居ますか」


 表で声をかけて店に入る。サンドマンさんの店と違って、カウンターがあり鎧と服が置いてある。金属的なものはなく革や骨が主なようだ。俺の鎧もそうだから防具の店といっても革鎧で有名なのか?動物の皮を使う以上、どうしてもモンスターなハンター風になるのはどうしようもないのか。


「いらっしゃい、鎧はできてるよ」


 ユーキさんにカウンターの奥に通された。鎧が台の上に置いてある。前の鱗を張り付けたスケイル鎧よりは毛皮の部分が多めになっているものの表面に鱗を張り巡らせた様子は変わらない。胴部分以外にも、腰、脚、腕もそろっている。


「面白いものができたよ。見てみて」


 勧められて鎧を手に取ると、俺は鎧を見る。


『始まりの鎧(改)DF 50


 始まりの草原と呼ばれる場所で獲れるすべてのモンスターの素材でできた鎧。防御力に+20する。一部を別フィールドの素材でカスタムされている』


 何か同じ場所で獲れた場合にボーナスが付く仕様のようだ。


「ガーディアン・フォウルの素材を中心に始まりの草原で獲れる素材だけで鎧を作ると、始まりの鎧って アイテムが作れたんだ。こういうのは初めてだったから面白かったよ。ハイド・フィッシュの鱗で表面を覆ったりして前と同じような改造をしたら、改が付いたけど」


「同じ場所の素材で作るとボーナスが付くというのは知られてなかったんですか?」


 ガーディアン・フォウルは俺が初めて倒したのが始まりだからビギの草原での鎧は初めてにしても。


「なんとなく同じ系統の素材や同じボスモンスターからとれる素材だけっていう作り方が多くてね、場所でボーナスが入るのは初めてだったんだよ」


 まあ俺よりも強い人たちはボスモンスターを多く倒して素材を獲ってますよね。


「ところで相談があるんだけど」


 ずいっとユーキさんが俺に顔を近づけてきた。近い近い。


「ガーディアン・フォウルと連戦する気ない?」


 なんだそれ。


「連戦って、何かアイテムがいるんですか?」

「そうなの、プレイヤーがオーブって呼んでるアイテムなんだけど、稀に宝石みたいなアイテムが採れるのよね。ボスモンスターの名前に宝石って形の名前で、それがあればもしかするともう一段上の性能になると思うんだ」


 あああれか。


「おいおい、無茶を言うな」

「あれサンドマンさん、こんにちは」


 店の扉からサンドマンさんが現れた。


「おう、どうも。ナントの姿が見えたんで小人族の話を聞きに来たんだけどな」


 アイテムを買い取るという話があったな。


「まだ初心者武器のままの初心者に無理を言うな。腐ってもボスモンスターだぞ」

「いえあの」

「大丈夫だよ。武器はともかく防御はこの鎧で十分耐えきれるって」


 俺が口を開く暇がない。


「一回づつは戦えるだろうから、もう少し武器を整えさせるのを優先して、王都のダンジョンに潜った後まで待てばいいだろう」

「すいません、話を聞いてください」


 二人の間に手を出してこっちに注意を向ける。


「ガーディアン・フォウルのサファイアだったら持ってます。これですか」


 残り少ないサファイアの一つを取り出す。


「そうこれよ」

「持ってたのか。運がいいんだな。ところで、ほかにも持ってないか?」


 俺が取り出した宝石に二人の掌がひっくり返る。


「出せるのはこれだけですね」


 そんなに多く出したいアイテムではない。高く売れそうだから将来の金欠に備えて残しておかないと。


「それを貸して、すぐ終わるから」


 俺がサファイアを渡すと胴体の一部分をほどく。そのままそこにサファイアを組み込んでまた戻した。


「さあ、どうなってるかしら」


 もう一度鎧をみる。


『始まりの鎧・真(改)DF 50


 始まりの草原と呼ばれる場所で獲れるすべてのモンスターの素材でできた鎧。防御力に+30する。一部を別フィールドの素材でカスタムされている』


 鎧の名前とボーナスが増えていた。


「やっぱりね、これからすると、オーブを使うバリエーションが増えるわね」

「オーブって使われてないんですか」


 物が宝石なのでアクセサリに使われていると思っていた。


「そうね。素材として採れた場合、何かの素材に融合させて使うのが普通ね。今回はそのまま使ったけど」


 そこでユーキさんはセリフを切った。


「実は、『始まりの鎧・真』にしてからいくつかできてなかった鎧のレシピが埋まったのよね。きっとレシピを完成させるためには真の鎧を作らないといけないものがあるみたい」

「へ~」


 俺としてはそういう返事を返すしかない。俺も将来剣を作るときに真の剣を作らないといけないのだろうか。


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