101メシアと話しました
現実31日目ログイン。もう1か月とは月日が経つのは早いものだ。俺の予想ではもう王都に来て剣の10本も作っているという予定だったんだが、クエストを受けすぎたのか?
『公式インフォメーション
運営からのお知らせです。ゲーム開始より一ヶ月経ちました。皆様どうお過ごしでしょうか。稼働一ヶ月の記念イベントとしまして、明日午前0時からイベントクエスト:「惜別の残月」が加わります。一ヶ月間の期間中、一人一回、別サーバーにおいてβ版プレイ時の時間軸でのプレイを楽しむことができます。クエスト完了まではこのサーバーでの行動となりますので、過去にしか取れなかった素材、懐かしい顔ぶれの友たちとの再会など、お楽しみください。
』
何か来た。β版プレイ時の時間軸ということは、一種のタイムスリップ気分になれるという事か。でも俺はβ版に参加などしていないのでやることもないだろう。
鎧がなくてもやれることといえば、神殿で子供たちに遊びを教える約束があった。宿屋から出て早速神殿に行く。
「おや今日は何の御用ですか」
神殿の外で掃き掃除していたラジエルさんと出会った。
「いえ、子供たちに遊びを教えるという約束をしているんですが、文字を覚える教室は今度いつあくのか確認に」
「この前もそんな事を言ってましたね」
「そうですね、用ができたので結局これませんでしたが」
それでも約束したので果たしておこうと思う訳です。
「そうですね、一番近いのは2日後ですね」
また少し早いのか。
「それじゃあ今度は2日後にまた来ます」
今日は別にセンスを買う用はないのでお参りだけしておくか。
「あ」
「は?」
メシアというプレイヤーが出てきて、目が合った。手に箒を持っているので掃除に来たのかもしれない。俺を見つけると同時に箒を放り出して俺に向かって突進してくる。
「なんだなんだ」
「捕まえた!」
「いや一体何なんだ」
「よし、どこで神力をゲットしたか教えてくれ」
ああそういえば≪神力≫センスを修行でしか取れないから苦労しているんだったな。
「いやまったく心当たりがない」
「そこを何とか。今まで何のクエストを受けたか教えてくれるだけでもいいから」
クエストといってもそこまで受けてない。
「俺がこの神殿で受けたクエストといえば、言葉を教えてもらうクエストが一つ。聖なる力が溢れているのが幽霊と勘違いされたので、その幽霊の正体を調べるクエストが一つ。この前一緒にやった聖なる物の掃除で一つ。3つしかやってない。
いや最後にこの前のセンシズの彫像のところに連れて行くというものを合わせたら4つか」
俺が数えつつ教えるとメシアは手を離した。
「それだけしか受けてないのか?なら調べるのも簡単だな」
「どうやって調べるんだ」
「それは、そのクエストを受けてみて神力を持てたら成功という事だろう」
なんとなく聞いてみた質問にメシアは当たり前というように答えた。
「メシアって、もう≪神力≫センス持ってなかったか」
「そうだった」
≪神力≫センスを持っていてこのクエストをやると神力が増えるのか、追加で≪神力≫センスがもう一つ増えるのか?普通後の方はないか。
「どうしよう」
「どうしようって、俺も≪神力≫センス持ってるから協力しても意味がないし」
うんうんうなっているメシアは不気味だ。そういえばこういうのは検証になるのか?リルさんに連絡してみよう。
「もしもしリルさん、今いいですか」
『あらナント。どうしたの』
フレンド通信をしてリルさんを呼んでみる。これ、初めてのフレンド通信だな。俺は簡単に事情を説明する。
「というわけで、≪神力≫センスを取ったらしいんですが、協力してくれる検証役は誰かいませんか」
『また厄介な話に首をつっこんだのね』
ため息が向こう側から聞こえる。
『情報屋プレイをしている所に行けば情報を買ってくれるけど、そのプレイヤーのために治癒魔術を広めたいのね』
いやそこまでは考えていません。
「まあ無茶をやってるプレイヤーなので多少無茶は減らせると思います」
『そうね、じゃあ「Tea Party」の方に手伝ってもらうわ。初心者の補助にも役立つだろうし』
「本当ですか。ありがとうございます」
『お礼はミカエルにね。それじゃあ話を通したらまた連絡するわ』
「はい、ありがとうございました」
連絡をしている俺の横でメシアが俺を凝視していた。何か怖い。
「今連絡して、初心者サポートパーティの「Tea Party」というところに協力を頼んでみることになった。そこからどうなるかは知らない」
「ありがとうぅー」
メシアが俺の手をつかんで上下に振り回す。大げさなことだ。
「先に俺が言ったクエストができるかどうかを確認しておかないと」
「おおそうだな」
メシアにクエストの確認を頼む。それでは俺はここで帰らせてもらおう。
「すまないが、「Tea Party」の人が来るまで手伝ってくれ」
「手伝うのはいいけど、いったい何を」
「主に人付き合いで」
要は紹介しろという事か。俺も苦手なんだが。
「「Tea Party」の人が来るまでどうしようか」
「俺はクエストを聞いてくるから掃除を手伝ってくれるとありがたい」
いつ来るか分からないから仕方ない。掃除をするために腕まくりするとリルさんから連絡があった。
「もしもしナントです」
『ナント、今は大丈夫?』
「はい」
『ミカエルの方に連絡したら、広めても構わないという情報検証が趣味の人が近くにいるからそちらを紹介されたわ』
「そんな人がいるんですか」
『別に検証しても有料で出さなくてはいけないっていう決まりはないしね。私たちのパーティも検証はするけど伝えていないことは多いのよ。聞かれれば答えるけどね』
なるほど、秘匿はしていないけど聞かれないから答えないという形で隠しているんですね。
『治癒魔術は看板商品になるから、先に唾つけときたいというのもあるでしょうね』
商売する気はあるんではないだろうか。治癒魔術を取ってもその先に何があるのかはまだ未定だから看板商品にはなるだろう。
『その人の名前はミマイルというの、所属パーティがそちらにもう向かっているそうだから少し待っていて』
「分かりました」
通信を切って、メシアの落とした箒を持って掃除しているとメシアが出てきた。
「夜の見回りは月一でやっているそうだから、クエストはある。後はどんな人が来るかなんだが、どうなった」
「情報検証が趣味の人に連絡を取ってもらって、その人にやってもらうそうだ。そのミマイルという人が来るけど、何人で来るかは知らない」
俺は箒をメシアに渡しつつ説明する。箒を渡したので掃除は終わりとしたかったのだが、今度はラジエルさんに箒を渡された。仕方ない、掃除を続けよう。
掃除をしているとしばらくして人が寄ってきた。プレイヤーはセンスのために神殿中に入るので外を掃除している人間によって来るのは珍しい。
「おーい。ナントというプレイヤーは居るかい」
俺が目的だった。
「もしかして、ミマイルさんですか」
「そうだ、ここで治癒魔術を覚える検証をしているって聞いたんだが、本当かい」
ミマイルさんは何か庶民のような恰好をしていた。鎧をつけないのは魔術師によくある装備だが杖も持っていない。ある意味モブ市民と一緒の格好だ。
「本当です。詳しいことは治癒魔術を見つけたメシアさんにまず話を聞いてください」
俺の後ろで箒を持ったまま固まっているメシアを前に押し出す。
「この人が治癒魔術に必要な≪神力≫のセンスを見つけたんです」
「ははじゃめまして」
メシアが噛んでる。
「大丈夫か?この人」
「どうなんでしょう」
普通に人と話すのをするのに何で慌てているんだろう。
「すまない、あまり人と話すことがないのでちょっと戸惑ってしまった」
ああ、俺もよくあることだ。
「まずは来てくれてありがとう。俺が≪神力≫センスを見つけて治癒魔術を発生させたメシアというものだ」
これで会話が移った。後は図書館で時間つぶしでもしよう。
「そしてこちらが何の修行もしてないのに≪神力≫センスを持ったナントだ」
なぜか俺が引き合いに出された。
「なるほど、そのナントのやった行動をまねて神力がゲットできるかどうか確かめたいという事か」
「そうなる。ナントが受けたクエストは言葉を教えてもらうクエスト、夜の見回りクエスト、聖なるアイテムの整理クエストだけだから、それだけやってもらえば身につくと思う」
「うん、しかし、ほかにも細かい動きをしたんじゃないか?素人はそういうところを省くから」
省いたクエストは特にない。
「クエストは、後は創造神センシズの背中の光の模様がなかったのを、ほかの場所で見つけたセンシズの像でどんな形なのか教えたという事をやったけれど、メシアはその頃もう≪神力≫センスを持っていたから関係ないと思う」
「ふむ、メシアはどうやって神力をゲットできたんだ」
俺の説明にうなずいてミマイルさんがメシアに話を振る。
「真面目に修行したらいつの間にか身についていた。その修行をしたということを、治癒魔術が使えるようになった時に掲示板に上げたらそんなのできるかと言われたうえ釣り扱いされた」
「なるほど、確認しておくが釣りじゃないんだな」
「当たり前だ。センス構成見せようか?」
メシアはステータスを開いた。見せるといっても戦闘センスだけだ。
戦闘センス:≪治癒魔術≫≪祈祷≫≪魔術≫≪神力≫≪格闘≫≪杖≫
「確かに見たことのないセンスがあるな。これが治癒魔術か」
「あれ?てっきり才能系センスと同じで≪神力≫センスが消えるかと思ったら消えてないんだな」
俺もメシアのセンスを覗いてみると予想とは違ったセンスがあった。
「ああ、これはいったん消えたんだけど、いつも通り修行してたらまた出てきた。何か意味があるかもしれないと思ってこっちに入れている」
≪神力≫は何度でももらえるようだ。
「よし分かった。じゃあ検証を引き受けよう。メシア、ナント、よろしく」
俺も検証班の一部に入っているようだ。




