1はじめてみますか
好きでそうなっている訳ではないが暇人な現在。弟からVRMMOに誘われた。
「Six Sense Online?なんじゃそりゃ?」
「今度オープン版でやるやつだよ。兄ちゃんもやらないか」
「別にいいけど。俺のゲーム好みを知ってるだろうに」
俺はシューティングとか格闘とかは全く駄目だ。やるのはRPGと推理物だけ。レース物で逆走して周回したこともある。
「安心していい。RPG、みたいな物だから。兄ちゃんでも出来る」
「珍しいな。お前が俺を誘うとは」
兄弟仲は悪くない。というか、小学生にもなると兄弟の付き合いは家族で一緒に出かける用事ぐらいなもんだ。
うちの場合、何となく話したいときにはそれぞれの部屋に転がり込んで一方的に話すという感じで、何か手伝ってもらいたいときには協力を頼むのが常だ。
「いや、パーティはβ版の時からの奴らがいるけども戦争設定の時は人手がいるから」
「俺は猫の手か」
まあそんな感じだとは思っていた。
「兄ちゃんはソロでもなんでもしといてくれ。人手がいる時に呼ぶから」
「まあ良いけどな。ソフトの発売はいつだ」
「明日。俺が二本予約してあるから金を出せ」
「強盗だ。強盗がここにいる」
ちょうど手元にあったので金を出す。うう、今月の漫画代が減ってしまった。俺は自分でやるゲームは借りるのではなく買う主義だ。弟もそれは知っている。
というか、バージョンで出てくるモンスターが違うとかいうソフトの場合それぞれが買ってプレイする事が多い。
「じゃ、そういう事で」
「分かった」
そんな感じでまあ始める事になったのでネットで攻略サイトでも巡ってみる。
弟は結構色々とゲームをやっているから話は聞いている。しかし俺はどちらかというと現物の紙の本を読んでいる方が好きで、やっているゲームはRPGとしてはドラ○エかポケ○ンなどの有名どころだけだ。 TRPGのリプレイなら本で読んで雰囲気は分かる。ある意味部屋に勝手に入ってタンスを漁るようなゲームしかやっていない。
VRゲームの注意点としてそういう事を勝手にやるとNPCの好感度が下がるという話がVRもののゲームに関係してネタにもなっている。普通の人は常識としてやらないだろうし、俺も出来ない。人に話を聞くだけならともかく人の家に入るなんて度胸がない。
俺はVR装置は持っている。安いのだけど。価格が低くても使うのが図鑑のようなものを読むときぐらいなので別に困らない。
第一、バイオコンピューターが普通に出回っているのでアルバイトでためた金で買っている。見た目はサボテン、水やりも最低限だからからさないようにしないだけでずいぶん楽だ。外付けの頭にかぶるバイザーが最低限でもコンピューターがそれなりで、最近はソフトの方が発展してるから困らない。
とにかくネットを見ると、Six Sense Onlineとは普通の冒険ファンタジーの様だ。名前が名前だけに某映画風の奴か超能力の話かと思ったが単純にとれる能力が六つだけという設定の為に作られたらしい。
このゲームの特徴としてレベルと取ることのできる能力の切り離しがある。最初の15ぐらいまでは格下のモンスターを大量に倒してもレベルは上がるが、それ以後は同レベル以上のモンスターと戦わなければいけない。または街や人にあるいろいろなイベントをこなせば上がったり下がったりする。レベルは回避力とか目に見えないパラメーターに影響するらしい。
能力は本人に身に着けて成長させるのと、武装装飾につけて成長させるもの、両方センスと呼ばれている。
簡単に例えば剣を使うなら≪剣≫のセンスを取らないと剣でダメージは付かない。センスにはセンスでレベルがあって、≪剣+99≫などと表示される。熟練度とか技レベルと呼んでいた。
一定の数字まで行くと次の上位センスに書き換える事が出来る。別に≪剣+99≫まで上げなくてもよく、例えば≪剣≫ならば+30ぐらいで≪剣術≫となる。書き換えるためにはレベルを上げる必要があるので、普通レベル上げの前にしっかり鍛える物らしい。
熟練度を上げるごとに小技を覚え、これはスキルと呼ばれている。≪剣+30≫で「唐竹割り」のスキルを覚えるとか。
ちなみにセンスは買えるものとイベントで手に入るもの、いつの間にか手に入れているものがあるという。初級と呼ばれる最初に手に入るものは安く、上級と呼ばれる本来熟練度を上げてセンスを上の段階に上げた後のセンスは高い。課金できるけれどそこまで必死にやる気はない。
アーツは要は必殺技である。というか自分で使うやり方次第の様だ。イベント等で覚えるものと自分で登録するものがある。登録するのは例えば普通に例えば縦切りと横切りを連続して出すのを登録するとそのアーツを選択するだけでその技が出る。同時に特定の武装の組み合わせで新しいアーツが発動する場合がある。
もう一つソフトの特徴として戦闘でなくともステータスを上げる事が出来るようだ。六つしか能力が取れないと言ったが、正確には戦闘用のスペースに六つ入れる事が出来る。
次に生産系と呼ぶべきか、非戦闘のスペースに六つ取ることが出来る。この生産系というのが、自分で決められる六つのステータスである、
攻撃(Strength)
防御の防御力(Defence)
魔術攻撃の知力(Intelligence)
魔術防御の精神力(Mind)
敏捷度(Agility)
魔法・状態異常に対抗する活力(Vitality)
というものに対応する仕事をすると戦闘せずにその能力が上がる。鍛冶をやると攻撃力が上がる、と言った具合だ。
そして予備のスペースに六つ入れる事が出来る。これが一種のミソというもので、予備スペースに入れておいたら使用できないが常に発動する、または判定にかかるセンスは認識される。火傷をしない等の能力の≪炎耐性≫のように持ってるだけでいいならここに入れておいたほうが便利という話だ。
とにかく数字の六にこだわったゲームで、敵やイベントの数も六で割れるとかなんとか。武器に着ける事が出来るスキルもフル装備状態で六つという扱いだという。
ただしプレイの具合でばらつきがあるので六つセンスをつけた剣を持っているプレイヤーの場合他の鎧になんかにはセンスをつけられない。正確には装備出来ない、または発動できない。
通称祝福とか加護いう神様にお参りすると枠外で着く取り外し不可能なセンスやスキルもあるのでそこは考え所だ。
うまくいったら普通には合計二十四個の能力が持てる事になる。
「あ、兄ちゃん、武器は弓を取ってくれよ。もしくは遠距離出来そうな奴」
「魔術師か?」
「それでも良いよ」
こんな確認をするのは前に二人とも剣で挑んだ事があったからだ。弟は剣を使ってたから俺には飛び道具で補佐して欲しかったらしい。言われなきゃ分かる訳がない。
ソフトを渡しながら念を押してくる弟に俺は苦笑する。
さて、いくつかサイトを巡って何となく予想は付けた。しかし屑と呼ばれているセンスやら定番と言われているものやらいろいろある。まあ距離のあるサポート役なんてやったことがないので勝手が分からない。思いつくままとっておこう。
目標は取りあえず狙撃手的な物でいこうか。掲示板を見るとチュートリアルはなくても大丈夫そうな話がある。
ゲーム会社のHPに体験版がある。最初に選択できる武器6種類を選んでお試しできるようだ。弓がどんな感じになるか試してみよう。
VRのバイザーを装着して
『よく来たな、吾輩はこの訓練場の主フォースだ。お前が希望する武器を教えよう』
個人特定せずVRゲームのハードでやるゲームだが、意識を使うのでそれなりにどういう動きになるのか試せる。
『システムアシストがあるから初心者でも十分に動けるぞ』
アシストがあるのは有難い。
弓は遠距離として使う事は決定しているので後は接近戦の武器だ。試すだけならただなので色々と試してみる。武術の心得はある訳でもないので見よう見まねだ。
剣は普通に振れる。ためしに巻き藁を切って見ても下まで切れない。ちなみに巻き藁は日本独自の文化である様で、海外のゲームだと木の人形らしい。
「おおっ」
それでも縦一文字に振った剣が綺麗に的に切れ目を入れると楽しい。
槍は突きだ。これは巻き藁を貫いた。格好よく回転させて棒術の様に敵の攻撃を捌くような柄の使い方は出来ない。逆に抜くのに苦労する。
斧は重かった。巻き藁は真っ二つだ。振り上げて下ろすとふらつく。重心の問題だろう。
鎚も重い、しかし初心者ならハンマーというかメイスで戦うのが一番いいらしい。
手甲はボクシングスタイルになる。他に知らないから仕方ない。
初心者としてはメイスか剣だろう。それなら剣にしておこう。やってみたい事もある。後重い一撃よりもとにかく自分の体を動かしての攻撃がしたい。
そして一番の目標の弓の攻撃は宜しくなかった。
『お主、弓はあきらめたほうがいいぞ』
弓を選んで特訓を試しているわけだが、あまりに当たらないので溜息交じりにそんな事を言われた。
体験版ゲームなので腕力とかは特に設定されていないデフォルトだ。問題を一言で言えば命中率が低い。眼鏡をかけているとかいないとかそういう話ではない。
「いやしかし弓か魔術で遠距離攻撃というのが約束なので、変える気はないです」
どうにかして命中するようにしないと、きれいに真円を保ち傷一つない的がこれでは駄目だと主張している。矢は飛ぶには飛ぶので
『そうか、ならば命中率を上げるセンスをとるしかないな。後は、実戦で使えるようになるまで、ほかの武器を必ず併用して戦うように』
そういうキャラクターなんだろうが親切に打開策を教えてくれた。
「ありがとうございます。まずは弓と剣で戦っていきます」
『うむ、センスには本人の弱点を補強する効果のある物が多い、上級センスは買えるものでも値段が高いが、低級センスでも最初か育てれば強い力になる。頑張って鍛えろよ』
やっぱり弓の腕は無理ということを示していた。体験版でもやってみてよかった。これを踏まえてセンスの構成を考えてみよう。
サイトでは最低戦闘スペースには一つでも武器にする道具のスキルを取れとあった。初期設定で取れるのは剣、槍、斧、杖、格闘(拳用武器)、弓とある。まあ弓を取っておく。
予備スペースには戦闘に使ったり生産に使ったりするものを取っておくそうだ。センス自体の付け替えは可能だが、付け替えるのは神殿またはギルドスペース等、専用の部屋に行かないといけない。あとは宿屋でもできるので普通はここでやるんだろう。
予備スペースのスキルは戦闘状態やイベント中でないならばその場で戦闘スペースの能力と入れ替える事が出来る。大体攻略する人は戦闘系のスキルを、生産する人は生産系のスキルを入れておくと言うのでそのようにする。
最後に生産スペースには何を入れようか。特にやりたいことがない。フィールドに出た時役に立つ物にしておこう。攻略のプロは使う武器に沿って≪剣≫持ちなら≪鍛冶≫と言うように武器を修復する物を入れておくのが普通だそうだ。
レベル自体はお使いのクエストイベントでも一つ上がるのでスキルの取得は簡単だろう。後でいろいろ聞いて駄目な奴は外すとしよう。
翌日、弟が宅配便の報せと同時に飛び出していき、戻ってきたときにはソフトを手にしていた。もらってインストールを開始する。今日の12時から開始で今は11時。十分間に合うだろう。
「兄ちゃんそろそろ始まるから一緒に行こう。通信登録だけしたら後が楽だから」
「分かった。じゃあ俺はいつも通り名前はナントで」
名前は生まれ月の星座、射手座に南斗六星が含まれているからそういう名前で通している。もしも獅子座ならレグルスとかにしただろう。弟がそれだが。兄弟で思考は似るのだろうか。
12時になった。さて、始めるか。調査で電磁波で体つきを調べるがこれがあまり好きではない。ぞわぞわする。そうして作られたアバターは俺と全く変わらない。
大体のVRMMOのソフトがそうであるようにあまり激しい変更は許されていないのでここでは髪と瞳の色を変えるだけだが、面倒なので金髪碧眼にでもしておく。後は必須項目だけを埋めていこう。
このソフトはディフォルメという簡略化が可能なのか。使うと何となく漫画っぽくなる。必ずディフォルメするように必須項目になっている。ディフォルメの度合いはゲームで普通と言われている30%ぐらいを使用。分かりやすく例えれば中年が顔の皺が無くなる程度だ。
痛みは一般的な20%以上はカットする事でいい。ゲームによるが全カットは現実に帰って来たとき痛みを予想できなくて事故を起こすので法律で決まっている。
ステータス振りは、どうしようか。まあ弓使いだそうだから攻撃(力)と足(素早さ)、器用を同等に上げておいて、後は平均に。端数は健康(活力)でいいか。
はっきりと言ってしまえばわくわくしている。とにかく早くやりたい。後は飛ばしてさっさとダイブする。
さあて、どんな事になるやら。




