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オトギの国のルイス〜王子様になるために来ました〜  作者: 城壁ミラノ
第3章

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奇石で叶えた方がいいこと

 日が昇る頃、ルイスはアクビをしながら川で顔を洗った。見張りの緊張感と睡眠時間が短くなったことで、なんだか眠気が残っていた。

 バシャバシャと勢いよく洗っていると、ペルタが近づいてきた。


「王子様のエレガントさに欠けてるわ、ルイス君」

「へへ、眠気を覚まそうと思って」


 ルイスはエレガントを意識して、丁寧にタオルで顔を拭いた。


「野宿じゃやっぱり、ぐっすり眠れないでしょ?」

「はい。ぐっすり眠れたら、後は楽しいだけなんですけど」

「そうね、後、お風呂とトイレの問題さえなければね」

「そうですね、川で裸になるのは危険ですよね。後、トイレか……そういえば、アンドリューさんがトイレ行ってるの見てないですね」


 火起こしをしているアンドリューに目を向けた。


「アンドリューは、トイレに行かなくていい体なのよ」

「えっ!」

「正確には、トイレに行かなくていいように、体をコントロールできるんだったかしら」

「トイレに行かないでいいようにするって、奇石で叶えたい願い事ランキングの上位にありますよね。僕も忘れずに叶えないと」


 ルイスとペルタはアンドリューの元に行った。


「ねぇ、アンドリューは、トイレに行かなくていい体なのよね?」

「ああ、いつもは行くがな。冒険中とかは行かなくてもいいようにできるんだ。行こうにもトイレがないだろ? 無防備になって危ないと、子供の頃からみんな言ってた。奇石に忘れず願うんだと」

「ふふ、電撃とトイレをコントロールする能力を叶えるって、夢と現実が混ざり合ってますね」

「クフフ、全くだ。しかし、どちらも重要な能力だ」


 アンドリューはお腹をぐるぐる撫でた。


「俺は、腹を撫でる想像と腹の消化物が消える想像をしながら“腹を撫でるだけで消化物を消したい”と願った。想像と願い方次第で、完全に行かなくてもいい体になれるそうだが、俺はなんとなく、トイレには行く体でいたくてな」

「トイレに行きたいのわかります、なんとなく。僕はどっちにしようかなぁ」


 悩むルイスの隣で、ペルタは眉を寄せた。


「私は、行かなくてよくなりたい。お姫様はトイレなんて行けないもんね」

「僕は、行っても気にしませんけど、王子様も行けませんかね?」

「気にしないわ! そして私も、ルイス君みたいな王子様を見つけなきゃ」

「やっぱり、トイレは行きたいですよね」


 ふたりはニッと笑いあった。


「ふたりとも、ルイスはまだ早いとしても、ファウストはそろそろ奇石を使わないのか?」


 アンドリューが腕を組んで聞いた。


「自分に必要な能力もわかってきただろう? 傷を負わない体とか」

「うん、だけど……私は、私の王子様に会ってから決めたいの。王子様のために、必要な能力があるかもしれないでしょ? それを叶えたいの」


 ペルタは照れてもじもじした。


「フム、王子様のためにか」


 アンドリューはあきれるやら、感心するやらで複雑な顔をした。


 ルイスはペルタに共感して、笑顔を向けた。


「僕も、僕の相棒になってくれるドラゴンに会って、ドラゴンと上手くやっていくための能力にしようと思ってるんです!」

「ルイス君も!? やっぱり、一緒に生きていく相手のために奇石を上手く使いたいわよね!」

「はい!」

「フム、優しさと思いやりがあるな、ふたりとも」


 アンドリューは深く感動したが、トイレからの流れだけに苦笑いした。

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