オトギの国へようこそ
次に魚に塩を振り枝に刺すと、それを地面に刺して焚き火でパリパリになるまで焼いた。
「これ、憧れだったんです」
「THE、冒険ご飯って感じよねぇ」
ルイスのわくわくに、ペルタとアンドリューも笑って応えた。
「もう、いいかもな」
「いただきます……美味しい!」
ルイスは川魚を初めて食べたが、柔らかい身とぼよい塩味が、疲れた体を回復させてくれるようで夢中で食べた。
2匹をペロリと平らげると、チタンマグに入ったスープを飲んだ。
夕焼けのなか、まったりとした空気が流れた。
「どうだ、ルイス、オトギの国の森は?」
アンドリューが聞き、ペルタが笑いかけた。
「とても楽しいです。モンスターも見たし……」
ルイスは一日を思い返し森を見た。
「ドラゴンは、この辺にはいないみたいだけど」
平らな森から連なる山に目を向けて、あっちにはいるかなと思った。しかし、深い森がそのまま山になっていて、登るのは大変そうだった。中心に城があるはずだが、山の向こうにさらに山があるだけだ。
「この辺は、人がよく歩くからな」
ルイスは顔を焚き火の方に戻してうなずいた。
「人といえば、この辺にいる冒険者達はみんな、悪い人じゃなさそうですね。危ない感じがないというか」
隣で野宿している冒険者達も、昨日隣で野宿していた冒険者達も、町を歩いていた者達も。
なんとなく、観光客な雰囲気もあった。
「まだ、序盤の場所だからでしょうか?」
「そうだろう」
「王子様全員、この辺に居てくれたらいいんだけど」
ペルタは悲しげに目を閉じたが、すぐに思い直して目を開けた。
「まぁ、どこにでも居てくれるのも、嬉しいけど」
「うん、悪い人ばっかりじゃ困りますもんね。奥に進むとどんなだろう? 来た時の楽しみにしてたから、オトギの国についてよく知らないんです」
ルイスはわくわくして笑った。
「手に負えないほど暴れる奴はそういない。多くは国王決定戦が始まるまで、無駄な争いは避け、力を温存しているのだろう」
「数年に一度の、イベントみたいなものよね」
「全く、王を決めるのだぞ。それがお祭り騒ぎであきれた国だ」
アンドリューは生まれた国に容赦なく言った。
「ほとんどの人は、王になるためにオトギの国に来てるんですかね?」
「どうだろうな、冒険を楽しむだけで去る者もいるし、町の住人になる者もいるし」
「僕も、オトギの国の住人になりに来た者ですよ」
アンドリューとペルタは笑顔になった。
「歓迎する」
「大歓迎よ」
ルイスは感謝と喜びの笑顔を返した。
その夜は、ラグに横たわって、満天の星空を眺めながら眠りについた。
一日目にはなかった動物の鳴き声がよく聞こえた。キェーッという甲高い鳴き声は、昼間見た怪鳥だろうかと一行は警戒した。しかしそれだけで、やはり平穏無事だった。




