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オトギの国のルイス〜王子様になるために来ました〜  作者: 城壁ミラノ
第3章

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第36話 有難い仲間

 シュヴァルツの城を出立したルイス一行は、再び森の中の道を進んでいた。


「ロッド君がついて来なくて、落ち込むかと思ってたわ」


 勇んで歩くルイスを見て、ペルタはほっとして笑顔になった。


「ロッドの言うことは最もですからね。シュヴァルツ様の右腕になってほしいな」

「シュヴァルツ様も、治安維持の集会への参加を再開するそうだ。この辺りの治安は、益々良くなるだろう」


 シュヴァルツひとりで、城や森の警備をしている状況を危惧していたアンドリューもほっとしていた。


 ルイスは見送ってくれた時の、シュヴァルツ王子の優しい微笑みを思い出した。


「シュヴァルツさん、見送ってくれた時初めて笑ってくれましたね。僕達でちょっとは、優しさを補充できましたかね?」


 ルイスが笑顔で目を向けると、ペルタは嬉しそうにうなずいた。


「うん! 間違いないわ! ……後もう少しで、私の愛もそそげたのに……」


 ペルタは立ち止まると、うっとりと城を振り返った。


 ルイスはかける言葉が最早見つからず、さっさと歩き続けるアンドリューに続いた。


「あ、待ちなさいよ!」


 ぽつんとなったことに気づいたペルタは、急いでふたりを追った。


「歩みを合わせろ。バラけると危険だ」

「フン! 私に合わせなさい!」


 グダグダになるだろうなと、ルイスは不安になった。


「ルイスに合わせるんだ」

「ありがとうございます」


 だけどアンドリューさんに合わせるのは大変だろうなと思ったので、ルイスはほっとした。


「それなら、わかったわ」

「俺になら、反抗していたのか?」

「当たり前でしょ? アンドリューに合わせるの大変なんだから。すぐにクタクタになっちゃう」

「やっぱり」


 笑い合うペルタとルイスに、今度はアンドリューが鼻を鳴らした。


「ふふ、今のところ楽勝な雰囲気ですが、どの辺りまで安全なんでしょう?」


 城が見えなくなり、ルイスは油断無くキョロキョロした。


「どの辺りまで安全なんだろう?」


 城から遠ざかる恐怖が襲って来て、ルイスは油断無くキョロキョロした。


「もう少し先に、休憩ポイントがある。そこまでは安全な⋯⋯筈だ」


 しばらく進むと、木のテーブルとイスが設置されている休憩ポイントにたどり着いた。リンゴの木があって、ルイスは実っているリンゴを採ると、初めて小型ナイフを使った。


「いよいよ、今日は野宿かな?」


 リンゴを食べながら、ルイスはサバイバル気分が高まるのを感じていた。


「お望み通り、今日は野宿だな」


 アンドリューが前向きな様子のルイスを見て、嬉しそうに答えた。ペルタも嬉しそうなふたりに、優しい笑顔を見せた。


「久しぶりだわ、森の中を歩くのは。カッコいい王子様に、出会えますように」


 嬉しそうに祈るペルタに、ルイスも微笑んだ。


「そんなことはいい、それより、これを見ろ。この辺の情報を集めた時、手配書にまじってた」


 アンドリューが紙を出して、ペルタに渡した。


「なぜ? なぜ、私が要注意人物なの?」


 ルイスが紙を覗いて見ると、要注意人物の文字の下に、ペルタの名前と似顔絵、簡単な特徴が書いてあった。『奇石を悪用の恐れあり、世の男は警戒せよ』の文字が、ルイスの笑いを誘った。


「国からの手配書でないのが、せめてもの救いだな」


 手配書は、武骨な字で書いてあった。ペルタが確認したところ、国発行の印もなかった。


「なんだ! 脅かすんじゃないわよ! どこの小心者の仕業かしら? 今度会ったら、覚えてらっしゃい!」


 ペルタはぎこちない笑みを見せると、震える手で手配書をカバンに入れた。


「手配書なんて、初めて見ました」

「ルイス、あまり驚いてないな。良くない事だぞ」


 アンドリューはペルタをにらんだ。しかし、ルイスは顔が笑うのを止められなかった。


「でも、ペルたんが手配される理由は、ひとつしかないですから。手配書なんて大げさだなぁ」

「ルイス、慣れてきたな⋯⋯」


 手配書の原因は、恐らく、求愛を拒まれたペルタが奇石を悪用して復讐するとでも言って、危険人物に認定された為だろう。アンドリューも同じ予測をしていたらしく、動じないルイスを困惑して見ていた。


「僕はペルたんの味方ですよ? 一緒に捕まるのかな?」


 恋人探しを手伝っているルイスは、手配書を迷惑にさえ思った。


「そんな事はさせないわ! もしもの時は、ルイス君もアンドリューも、私と一緒に逃亡生活よ!」

「断る!」

「まぁまぁ、僕達はもう、巻き込まれてしまったんですよ」

「そうよ、私達仲間でしょ? なにがあっても、助け合いましょう。とにかく、この辺で恋人探しはしにくいわね⋯⋯」

「そうですね、もう行きましょう」


 逃亡生活にも動じないルイスに、アンドリューは呆然としていたが、ふたりに笑顔で呼ばれて逃げることはできなかった。 

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