表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
オトギの国のルイス〜王子様になるために来ました〜  作者: 城壁ミラノ
第1章

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

30/184

第21話  一組の○○誕生!?

 ルイス一行は浜辺に並んで、ティアマトを見送った。雨も止んで、夕日が見えていた。


「本当に帰ってくれるとはな」


 アンドリューが感心して言った。


「一度、ドラゴンと会話した事があるが、メチャクチャ頑固だったぞ。結局、どこかへ飛び去ってそれきりだ」

「いいなぁ、僕もドラゴンと話したい」


 ペルタがルイスの肩に腕を回して抱き寄せた。


「ルイス君、助けてくれてありがと。神話のように私と結婚」

「しません。僕には恋人が居るので。それに、ペルたんさんは自力で助かってたじゃないですか?」

「そう! 王子様と勇者も居るのに、どっちも助けてくれなかった!」

「ごめん、間に合わなかった」


 ブロウが苦笑いして言った。


「間に合わなかった」


 アンドリューは腕を組んで素っ気なく言った。


「普通、間に合うでしょう! 日頃の運動不足、怠慢(たいまん)、それが私を危機に陥れたのです。私というか、貴方達を。絶滅の危機に。いざという時に、女性を救えない男性なんて絶滅ですよ」


 耳を傾けるルイスとブロウの肩を、アンドリューが後ろから引っ張った。


「わかったら、とっととやり直し。ティアマトを呼んできなさい。私が追われてるシーンから」

「いいから、早く来い! レストランを掃除するぞ!」


 アンドリューの呼び声に、ペルタは後ろを振り返った。


「もう、あんなに遠くに⋯⋯フン!」


 ペルタは立腹しながらも、ルイス達の元へ走った。



 ◇◇◇◇◇◇◇


 レストランの掃除を手伝う内に夜になってしまい、ルイス達は海岸近くのホテルに泊まる事になった。


 食後に、ルイスはホテルの庭に出た。昼間ティアマトが暴れたとは思えない静かな海が見えた。


「綺麗な星空だなぁ⋯⋯」


 ルイスは夜空を見上げて、思わず感動のため息をついた。


 その時、ブロウとペルタが連れ立って現れたので、ルイスはとっさに、ヤシの木に隠れた。


「なんですの? 大事な話って?」


 夜空を見上げるブロウの後ろから、ペルタがもじもじしながら聞いた。

 ブロウは振り返って、ペルタの肩に両手をおいた。ペルタは当然ビックリしたが、ルイスもビックリした。


「ブロウさん、まさか」


 ルイスは思わず呟いた。


「ペルたん。ティアマトの件、確かに僕は情けなかった。運動不足、怠慢、君に叱られて目が覚めたよ。もう一度チャンスをくれ」

「ブロウさん、まさか」


 ルイスはまた呟いた。


 ペルタはポカンと口を開けてブロウに釘付けになっている。呼吸さえ忘れている様にルイスには見えた。


「僕を弟子にしてくれ」


 ブロウの志願に、ペルタはもう一度口をポカンと開けた。ルイスはガックリと脱力した。


「弟子にしてください。僕を鍛え直して」

「お断りします!」


 ペルタは噛みつく様に言うと、ブロウに背を向けて歩き出した。


「待って、ペルたん、ペルさん、ペル師匠!」

「ペルって誰ですか? 名前も覚えてないのですか!?」

「待って!」


 怒れるペルタと、それを引き留めるブロウはホテルに消えた。

 ルイスはペルタには悪いと思いつつも、笑いが収まるまでしばらく立てなかった。


 次の日、朝食の席で、ムッとした顔のペルタを怪しむアンドリューに、ルイスは一部始終を教えた。


「いいじゃないか、弟子にすれば」


 アンドリューの説得に、しばらくムッとした顔を変えなかったペルタは、突然ニヤリとした。


「そうね、いいかもしれない。師匠と弟子、揺るぎない絆が、いつしか愛に⋯⋯」


 ペルタの思わせ振りな言い方に、ブロウは食べていたスクランブルエッグを吹き出しそうになった。


「迎えます、貴方を弟子に」


 ペルタは期待を込めた笑みを浮かべて、ブロウの目を見ながら言った。


「やっぱり、やめておきます」


 ブロウはそう言うとペルタに頭を下げた。


 ショックで口が聞けない様子のペルタを見ないようにして、三人は笑いをこらえながら食事を続けた。


 ♢♢♢♢♢♢♢


「王子様ー!!」


 ホテルを出た帰り道、ペルタは突然浜に走って行くと、海に向かって叫んだ。


「気が済みましたか?」


 ルイスは後ろからそっと声をかけた。


「うん⋯⋯」

「じゃあ、帰りますよ」


 ルイスは保護者の様に、ペルタの手を引っ張って海を後にした。


 町へ帰りつき、ペルタは本当にスッキリした笑顔を見せて、ルイス達にお礼を言って手を振ると家に入った。


 アンドリューは別れ際、ルイスに厳重注意を与えた。


「ドラゴンを見ると、お前は我を忘れるところがある。気をつけろ、お前の為の忠告だぞ」


 アンドリューは滑って転んで強打した膝を、無意識に擦っていた。


「はい、気をつけます」

「遊びに行って、叱られるなんて、ルイス君もまだ子供だね」


 ブロウの言葉に、ルイスは照れ笑いするしかなかった。


「ブロウ王子、今回は助かりましたよ。また、お願いします」


 アンドリューの出した手を、ブロウはしっかりと握った。


「そうだね、年に一回ならいいかな」

「少ない⋯⋯」


 アンドリューは気が抜けた声で呟くと、ふたりに手を振って家路についた。


 無事、城に帰りつくと、ルイスはブロウと握手した。


「楽しかったよ、ありがとう」

「僕も楽しかったです! 本当にまた、遊びに行きましょう」

「うん、僕も今度は王子様らしい、カッコいいところを見せるよ」


 笑顔のブロウと別れて、ルイスは離れへ帰った。


 お土産の磯蟹を夕食に出してもらい、フアンを招いて、ルイスは海での出来事を聞かせた。


 食事を終えて部屋に戻ると、ルイスはリュックから綺麗な貝殻と、ティアマトの鱗を出した。

 貝殻はキャロルへのプレゼントに、大切に封筒に仕舞った。

 そして、ベッドに寝転がると、ティアマトが残していった鱗をいつまでも眺めていた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ